数キロ先で機体が爆発したのが見えた、黒い煙りとオレンジ色の炎が上がる。      
わずかでも脱出が遅れていたら自分も機体と共に黒焦げになる所だった、たった一瞬の油断
が招いたミスだった。                               
 

 
整備兵の手で胴体下と主翼に取り付けられたミサイルの安全装置が外され、地上機材のアシ
ストで二基のJ79ターボジェットが目を覚す。                   
管制塔からの滑走路への侵入許可を待つ間にニーボードに挟まれた作戦指令書をもう一度確
認する。                                     
「現在回送中の機体が着陸侵入中、あと2、3分待て」                
「スカーフェイス01了解、待機する」                       
目の前の滑走路に一機の可変翼機が着陸する。                    
「アレが補充の機体か」                              
「ドラグーン、あいつが間に合わなくて悔しいんじゃないか?」            
「こいつも良い戦闘機だけどな」                          
たわいも無い会話をRIO(レーダー迎撃士官)のグリーンと暫く続けていた。     
突然無線が入る、                                 
「済まないが急いで離陸してくれ、此所の防空圏内に敵の部隊が入った、ぐずぐずしてると
基地ごと黒焦げになるぞ!」                            
「了解、直ぐに離陸する!」                            
ちらりとハンガーの方を見るスクランブル待機していたMig31とF−15が二機づつ発
進しようとしていた。                               
アフターバーナを焚いて機体が加速する、グリーンが速度を読み上げる、離陸した愛機の機
首を南南東へ向けると同時に地上の管制官と防空部隊の無線が聞こえた。        
『アインハンダーリード、アンカーヘッドGICボギーは、方位030、高度2000…』
『アインハンダー03、アインハンダーリード、上空からの援護を頼む』        
『アインハンダーリード、アインハンダー03了解、援護する』            
『防空中隊システム作動確認、ただし発砲は、防空指揮官の指事を…』         
『アンカーヘッドGICは、ガンズフリーを宣告くり返すアンカーヘッドGICは、…』 
いつもならこちらの防空圏内に顔を出すだけの敵が今日は、本格的な空襲を目論んでいるよ
うだった。                                    
「会合点へ急ごう、ぐずぐずしてると空襲に巻き込まれる。」             
「分かってる、基地の事は、他の連中へ任せるしか無い。」              
出来れば防空戦に参加したかったが任務の方を優先した。               
 

 
会合点には、既に何機かの作戦参加機が集結し三機の空中給油機から給油を受けていた。 
「もう少し、あと少し、繋がった、これより給油を開始する」             
キャノピー後方の給油口ヘ空中給油機の後ろから伸びたノズルが差し込まれる、コックピッ
トの内にケロシンの流れ込む音が聞こえる。                     
ここ数日の間、空軍との共同作戦で機材の消耗が激しく今回の作戦では、増槽の手配が出来
無かったのとここ暫く空中給油機側の練習が出来なかった為今回は、こんな面倒な事をする
羽目になった。                                  
数分で給油が終わると全機それぞれの持ち場、クーデター軍の輸送機による物資投下の阻止
のため割り当てられた襲撃ポイントへと向かって行った。               
 

 
クルーの手でミサイルが搭載され、エンジンを止めずに燃料を給油した機体にパイロット 
──ここまでそれに乗ってきた白人の予備役のパイロットでは無く、アジア系の小柄な女性
パイロット──が乗り込み機付の整備兵と短い会話を交わし、握った左手の親指を上げる、
基地を最優先で離陸したその機体は、先行する部隊のあとを約20分遅れで追って行った。
 

 
「ダークナイト編隊これより物資の投下を開始、くり返すダークナイト編隊これより物資の
投下を開始する。」                                
C−17二機の後部ランプから次々と補給物資が投下される、武器弾薬や食料、車両部品と
言ったそれらの荷物を受け取る為に地上部隊のトラックが向かってきているのが見えた。 
「CAPからダークナイト編隊、敵が接近中これより迎撃する」            
護衛のドラケンが機体を敵の方向へ向ける、たった一機の敵、しかし足の遅い輸送機から見
れば野獣に襲われたのと同じだった。                        
 

 
短い機銃の連射音が断続的に響く、空に浮かぶように並んだコンテナを一つ、また一つと破
壊して行く、自機の周囲を何機もの敵の戦闘機が飛び交う中で、ノイズ混じりの無線から他
の部隊も苦戦してることが判る、…援軍は、無しか…ならば独自に戦うしか無い。    
旋回のGで息が苦しくなり、視界が黒く染まりかける、バックミラーの隅に一瞬ドラケンの
ノーズが見えた瞬間僅かに操縦桿を右に傾け、機体を樽の回りで螺旋を書くようにファント
ムを飛ばす、樽の中心に当たる位置を飛行していた敵の後ろへ回りこみ排気ノズルからの熱
を火器管制を通しIRシーカーへ送り込む、左主翼内側のレールランチャーからE型のサイ
ドワインダーが放たれるが命中を確認している余裕が無い。              
「グリーン、コンテナとの高度差は、どれ位だ?」                  
「約1600フィート(約500メーター)高い」                  
計器に視線を送り現在の高度を確認する、約8000フィート(約2440メーター)から
背面で機体を降下させてから再びロール、下からコンテナを狙い銃撃をくわえるが正面から
のCAP機の襲撃、至近距離からの銃撃でキャノピーにヒビが入る、機首を起こし上昇、そ
こから一転相手の背中を目指し旋回しながら降下、胴体下の半埋め込み式のキャリアーから
ミサイルを発射レーダーで誘導し、命中を確認したその時だった。一機のF−14が目の前
を通過した。                                   
「ドラグーン、エッジ護衛に回る」                         
「助かった、急いで残りのコンテナを潰す、グリーン残ったコンテナの数は、」     
「残り2つ高度1300フィート付近に一つもう一つは、その100フィート下」    
十数秒の間にコンテナの残りを全て破壊する、機体のチェック、ダメージは、無いが機銃の
弾を使い切っていた。                               
 

 
地上のレーダーから電磁波が照射される、それと同時に二基の地対空ミサイルを納めたコン
テナがトレーラーの荷台から起き上がり敵の戦闘機に向けて四発のミサイルが発射された。
 

 
「ロックされた、振り切れ!」                           
「敵の残りか!」                                 
「後ろに居ないレーダに…」                            
機体右側の森裂け目から一つ、二つ、三つ、                     
「全部で四発来る!」                               
無線からエッジの声が聞こえる、本能的にスロットルをミリタリー一杯で旋回してチャフと
フレアーを撒いてミサイルのレーダーシーカーの探知範囲から避けようとする、一発、二 
発、あと少し…機体右側後部…主翼と尾翼の下アイリス板の辺りで弾頭が爆発した。   
「二番油圧が抜けてる、右主翼とラダーが損傷、タンクから火が出ている」       
自動消火装置が作動している様子も無い。右側の燃料タンクに残っていたケロシンを主翼翼
端から放出し延焼を防ぐと同時に電気系統を切り二番エンジンを停止する。       
「まだか!まだ火は、消えないか!」                        
「駄目だ、まだ消えない!」                            
コックピット内に警告音が鳴り響く右エンジンが停止した状況では、長く飛び続けることが
出来ない、操縦桿とペダルを操り機体をいったん安定させようとするが不規則な揺れが続き
機首が落ちる。                                  
「味方の勢力圏内に入た、今直ぐ脱出して」                     
「…………脱出する。」                              
機内通話でそう言うとキャノピーを飛ばす為シート下のレバーに手がのびる、冷たい金属の
感触がグローブを通じて伝わる、取っ手を引くと同時にキャノピーが吹き飛び、バックシー
タのシートが放出されるこの数カ月苦楽を共にしてきた愛機へ別れの言葉をひとこと告げ 
フェイスガードを降ろし衝撃と共に身体が突き上げられる。              
パラシュートにぶら下がり機体が爆発したのを見たところで意識が薄れて行くのが分かっ 
た。                                       

 

 

 


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