『駄目です大佐、左の主翼を持ってかれました!』

『そんな事操縦桿握ってればわかる!一番近い味方の基地は、何処だ!チャペック』

『真方位2-3-5、距離は、180マイル、陸軍の…』

『…よりエンジェルフライト離陸、そのまま南に…』

『莫迦野郎!その南側のパトリオットに…』

無線機に雑音だけが聞こえてくる、

「やられたみたいだな」

そう呟くと操縦席席右側スティックを握り直した、

「ドラグーンこれより突入する」

F-16の高度を下げ渓谷ヘ突入した。

ミーティングの為ブリーティングルームに集まっていたパイロット達から一斉にうめき声が上がった、

大陸中西部の南側メリトン地方の渓谷に作られた滑走路が今回の作戦での攻撃目標だった。

『言っておくけど私は、付き合う気は、無いわ』

『俺も嫌だね、こんな作戦考え付いた奴は、……』

どう考えてもかなりの損害が出るのが判っていた。

二機のサンダーボルトは、渓谷の中へ死と破壊をまき散らしながら飛行していた、

既に何ケ所かの対空機銃陣地と半固定式の短射程SAMが破壊されている、

『前線航空管制よりスターダスト編隊へ、スカーフェイス01侵入!作戦空域より離脱…』

「スターダスト01、了解!」

編隊長は、そう返信すると渓谷北部の谷の切れ目から味方の制空権のある方向へ離脱した。

格納庫に一機の戦闘機が用意されていた。

大きな特徴とも言える滑らかな曲線で形作られた機体、

水滴型のキャノピー、

異機種間訓練で見慣れたF-16だが何かが違った。

「中尉、C型の改良型です、メーカーが、空軍向けの機体を回してくれたんですよ」

年配の整備兵がそう言った、

「取りあえず飛ばしてみる」

そう言って、機体に取り付けられた梯子を昇った

機動性と引き替えに安定性が低い機体が気流の影響で揺すられ、

対地レーダーが何秒かに一度電波を発信しレーダーディスプレイの上に新しい地形を記録して行く、

僅かにスロットを緩め、ゆっくりといつもより慎重に機体をロールさせる。

数分前に敵の空襲を受けた基地――仮設滑走路と地方空港レベルの管制設備しか無い――は、

完全に混乱していた、駐機していた大形輸送機のうち一機が炎上している、

その混乱の中何機かの戦闘機が赤いF-14を先頭に離陸して行く、

最後の一機、ここへ整備兵と各種機材を運んできたC-5輸送機が、

管制塔の前からのろのろとタクシーウエイ(になるはずだった通路)へ進み出した。

谷に掛かっている橋の下を潜り抜ける、

ブリーティングで確認した目標までに大きな屈折部あと二つ

時折先行部隊が撃ち漏らした機銃がこちらへ向けて発砲してきたが、

弾が当たる事は、無かった。

ターボファンエンジンが轟音をあげる、巨大な機体が加速を始める、しかし間に合わない…

パイロットには、それが分かっていた、

運が良ければ離陸出来るかもしれない、

更に幸運が続けば敵の戦闘機のパイロットの気まぐれで見のがしてもらえるかもしれない、

黒い影が目の前の滑走路上に落下するのが見えた、

家族の事を思い出す暇すら無かった。

後ろを見た、主翼の付け根に取り付けられていた、

2発の500ポンドFAE(燃料帰化爆弾)が、基地を包み込むように爆発したのが見えた。

『…くり返す、近辺の敵防空網及び航空基地の壊滅を確認、作戦参加機は、直ちに…』

機体を上昇させ渓谷の外へ出る、

それと同時にレーダを対空モードへ変更した直後にレーダースコープに複数の味方とアンノウの表示がでる、

兵装をもう一度確認する、サイドワインダーとスパローが2発づつ、一番近い敵にロックオン、

FCSからスパローへデータを送り込む、

その間にもう一度後ろを確認する、左手前方に何か光る物が見えた、

一度ロックオンを解除そちらへ機種を向けた瞬間だった、

警告音が鳴り響いた、咄嗟に機体を右へロールししながら操縦桿を引いた、

一瞬だが相手の機体が見えた、

「赤いトムキャット…」

二機の戦闘機がすれ違う、

それが合図だったように敵味方の戦闘機がお互いの基地へ向かって空域から離れて行った。

   

  

  

  

  


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