はじめに



◆操体法の施療です

操体法は、東西医学と異なる未病医学に基づく独自の診断・臨床法をもつ日本医学であると言えます。
操体哲学として「息・食・動・想」と「環境」という生命力学のバランスの重要性を説いています。
操体法の源流は骨格関節の動きを二者択一的に比較対照させて分析し、辛いほうから楽な方へと体を操って運動系の歪みを正すことにより、症候の治癒、改善をはかったもので、当初は紛れもない正体術そのものであったとも言われています。
正体術と同じ『比較対照した運動感覚差から楽な方に動き、たわめの間をとり、呼気で瞬間急速脱力』させていた方法から操体法の本流となった原始感覚(快・不快の生命感覚)のききわけへと変化しています。

◆ムーヴメントセラピー(般若身経療法)

操体法には「般若身経」という、からだの使い方・動かし方の根本経典というものが存在しています。
日常の我々の動作はすべて自動的であって、しかもその大半が無意識の内になされているのです。これらの動作や姿勢は、人間の思考の型と感情の型に基づいて一定の動作や姿勢の癖ができあがります。この習慣的な動作や姿勢が心とからだの歪みをつくりだすのです。そして自分に可能な習慣的な姿勢や動作でさえ、全部有効に用いているとはとても言えないということです。つまり、個性に従って自分に可能な姿勢と動作の内の一定の数しか使っていないということになります。そのため、個々の人間の姿勢と動作のレパートリーは非常に限られたものだということになります。
これらの姿勢、足どり、身振りなどの種類というものは限られていて、普通人がまったく新しい、習慣にはないような姿勢をとったりすることは、まず滅多にありえないのです。したがってその癖による動作や姿勢の悪循環を切るためには何かがなされなければならないのですが、人間の意志は十分強くなくて思考、感情、動作の内の一つをほんのわずかの間コントロールする力しかないのも事実です。
しかし、操体法による「般若身経」の動きでは、日常生活ではほとんど見られないような、一見、不自然に見えますが、本当は自然かつ反習慣的な仕方で身体を動かすことで、悪習慣を断ち切ることができます。一つ一つの動きにおいて、日常の身体表現の習慣と対立するわけであり、それによって新たな自由の可能性が生まれてくるのです。
この「般若身経」は、動きという行為の中にトータルでいることができる、まさにムーヴメントセラピーなのです。からだ・心・魂のすべてが動きの内で合調しており、その三つの層すべての間にひとつのハーモニーがあり、深いリズムが存在しているのです。これは操体法の「般若身経」における身体哲学の真理であり、そうしたとき心とからだの変容がはじまるのです。

◆サイコセラピー(精神療法)

リバーシングとは再誕生という意味です。アメリカの精神科医レオナード・オルによって発見された呼吸法です。
この呼吸法によって自分の誕生を想い出すことができ、再びその誕生を経験させてくれます。バース・トラウマという出産時に受ける精神的・肉体的ショックから解放されることによって、潜在意識の中にある誕生時の原初的な苦痛を快へと変質させられる呼吸による療法です。
リバーシングは、エナジーとは何かを知るのに一番手っ取り早い方法であるといえます。このリバーシングにより、身体が浄化されるので多くの病気の治癒を高めます。また、バース・トラウマにより形づくられた、自分の生活パターンを認識するのに役立ちます。

◆ヨーガセラピー

ヨーガの体位法や調息法等を行なえば、病気が治るというふうに誤解しないでください。もちろん、ヨーガを行うことで特定の症状や病気に確かに効果をもたらすものではありますが、ヨーガは対症療法的なものではありません。ヨーガを行うことによって病気が治り、心身が健康になるのは、さまざまな体位法や調息法等を万遍なく段階的に進めてゆくことで精神、神経、肉体が全身的レベルで次第に調和して統一され、人間に本来備わっている自然治癒力が高まる結果、病気がおのずと消え去るということです。
しかし、今、現在、症状や疾患のある人が治癒能力を高めてゆくには、その人の身体条件に合った無理のない快適なプログラムで、かつ病気等に特に効果が認められる体位法や調息法等が必要です。自分の病気に対応するような特定の体位法や調息法等を適宜組み入れることが重要なポイントとなります。その場合、病気の程度によっては、ヨーガ指導者と十分に相談した上でのプログラム作成が必要です。

◆呼吸セミナー

呼吸には肩で息を切る「肺尖呼吸」といって空気が一番短い通路を通って肺に入るので、冷たい空気が急に肺尖の方に進むことにより、肺尖カタルを起こしやすくなります。主に肺尖を使用するために、結核菌などが最も組織の弱い肺尖に付着する機会を多くしてしまうのです。また、肺病などになりやすいので最もいけない習慣的な呼吸です。次に胸で息をする「胸式呼吸」は息を吸うと胸が拡がって腹が低くなるような仕方の呼吸のことです。これは肺を横に拡げて、通路の長さを短くすることになるので完全な呼吸とは言えません。最後に息をすると腹が出るようにする「腹式呼吸」がありますが、この呼吸の仕方は横隔膜を動かして腹圧を高め、呼吸面をまんべんなく広くするので良い呼吸と言えます。しかし、本当に良い呼吸というのは「胸腹式呼吸」です。これは胸と腹が一緒に出て一緒に引っ込んでいく生理的な呼吸のことです。現代人の多くは胸式呼吸のみでまかなっているので、これに腹式呼吸を身につければ自然に「胸腹式呼吸」となります。
腹式呼吸といわれる呼吸運動について多くの本が書かれており、誰もが他人に教えようとしています。こういった本の著者や指導者は、酸素の流入が増えることのみの利点を掲げていますが大変危険な要素を含んでいるのです。特に本を読んだ知識でもって自己流で行なうのはやめるべきです。下腹部の腹圧を高めるのに上腹部にまで圧力をかけると、怒責作用によって胃炎をはじめとする心臓や気管、脳などに悪影響をもたらし、場合によっては心筋梗塞や脳卒中などを招くこともあります。腹式呼吸で下腹部にだけ腹圧を高めるというのは実際のところかなり難しいのです。呼吸法の練習は各個人にあった段階的な指導が求められるのです。