NPOテクノロジー犯罪被害ネットワーク
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『マインドゲーム』


出典:ワシントン・ポスト2007年1月14日記事
筆者:シャロン・ワインバーガー
翻訳:NPOテクノロジー犯罪被害ネットワーク会員

インターネットの新しい動き。政府が心に音声を送信していると信じる人々のコミュニティ。彼らは狂っているのかもしれない、しかしペンタゴンはそれを可能にする兵器を追求している。


ハーラン・ジラールはおかしいと言われているが、外見ではそうは見えない。彼は連絡どおりに、フィラデルフィア駅の第二次世界大戦の記念碑の下で待っていた。記念碑は一人の墜落する戦闘員を羽のある天使が抱き、天国に導くかのように空に向かってそびえ立つ像だった。ジラールはアイロンのかかったカーキ色のパンツに、皺のないブルーのボタンダウンシャツを身に付け、高価そうに見える革のローファーを履いていた。見た目にはカジュアルフライデーの服装の地方のビジネスマンのようで、意地悪く地味なユーモアのセンスを持った地方のビジネスマンといったところだった。「死んだ兵士を犯している天使」の下あたりを探してくれと、指定されたときの感想である。70歳の彼は頑強で健康そうに見えた。服装の乱れや、普通とは違うところは微塵も見られなかった。鞄を持っていた。

ジラールは事務的に自己紹介をしたが、鞄の中味を説明し始めると態度が変わった。それは政府が自分の心のコントロールを試みていることを証明する、と彼が信じるところの書類だった。その雨風にさらされた黒い鞄を、どこに行くときにも持ち歩いていた。「外出するときはいつも持ち歩いている。帰宅したときに、すべてが持ち去られているのではないかと心配で」と言って。

鞄を横に置いたジラールは、知的で理路整然とした印象を与えた。駅構内のダンキンドーナッツの店先にあるテーブルで、ジラールは鞄を開け、分厚い書類の束を取り出した。書類は黄色の付箋紙で丁寧にラベルが貼られ、分類されていた。付箋紙にはブロック体の文字がきちんとタイプされていた。新しく入手した情報、軍事ジャーナル紙から抜粋した記事、さらには、非機密的な国家安全関連の文書が混ざった信憑性があるように見える書類で、実際に、米国政府が人の頭に音声を送信する兵器の開発を試みていることを証明しているような体裁をとっていた。

ジラールは言う「このような技術が存在するのは否定できないが、警察に行って『声が聞こえる』と訴えたとしたら、その場で拘束され精神鑑定に送られるだろう。」

彼の鞄の中に欠けているもの(それがないために、彼が狂っていないことを証明するのに骨を折るのだが)、それは政府が多くの米国市民をターゲットに、マインドコントロールテクノロジーを試みているという、信じ難い発想を裏付ける書類である。それが一つも存在しなかった。ジラールも認めているが、それを直接証明できるのは、彼自身を含めた犠牲者と言われている人々なのである。

そして、実際にそのような人々は多く存在する。

午後9:01。土曜日のコンファレンスコールで、最初の参加者が切り出した。

彼女は、誰かが参加しているかも知れないと思い、「集団ストーカーかV2Kの被害者ですか?」と、誰とも構わずに最初の質問を投げかけた。

短く気まずい沈黙があった。

「V2K(の被害者です)。本当にひどいものです、四六時中ですよ」男が答えた。

「集団ストーカーです」別の女性が言った。

「では、クラブに参加してください」と別の男。

この告白「クラブ」のメンバーは、普通の犠牲者とは違う。これはアルコール依存症や、薬物中毒者、あるいは幼児虐待の生き残りのグループではない。このコンファレンスコールに接続している人々は、自称マインドコントロールの犠牲者、すなわち心を探りコントロールするテクノロジーを使って、人々を24時間監視し続ける政府の秘密計画のターゲットにされていると信じる人々である。

話者は事あるごとに自らをTI(Targeted Individuals: ターゲットにされた個人)と呼び、V2Kを話題にする。この「voice to skull: 脳内音声」を意味する軍の公式略語は、頭に声や音を送信する兵器を意味している。彼らの難解な語彙では、「集団ストーキング」とは、隣人、見知らぬ人、あるいは同僚に後を付けられ、嫌がらせをされていると信じることになる。

さらに数回「あいさつ」が交わされたところで、最後の着信を知らせるビープ音が発信された。コロンビア州のビル、フィラデルフィア州のバーバラ、カリフォルニア州のジム、その他10数名である。

このコンファレンスコールの進行役、デレク・ロビンソンが開会を告げた。

「9時5分になりました」と告げるロビンソンの声は、深夜ラジオのDJのような快く理知的な響きがあった。「そろそろ始めましょうか。」

心に侵入できる兵器のターゲットにされていると信じる人々のグループ、という発想は、カルチャージョークになってしまい、目に見えないマインドビームを跳ね返すためにアルミ箔の帽子を被る孤独な精神異常者というイメージで簡潔に表現される。ウィキベディアによると、「アルミ箔の帽子」は、「一般的な固定概念、物笑いの種となっている。この語句はパラノイアの代名詞として使われ、陰謀説を唱える人に結び付けられる。」

2005年、MITの学生グループがアルミ箔と無線信号を使って、正式な調査を行った。調査結果は意外だった。アルミ箔の帽子は実際には無線周波数を増幅する場合があるというのだ。技術系の学生は、当然冗談のつもりで調査を行ったのだが。

しかし、土曜日のコンファレンスコールでは、アルミホイルの帽子の話題は恐ろしく真剣に取り上げられていた。MITの調査は改めて論議を呼び起こした。調査が自分たちをダシにしたジョークであることに気付いたTIが数名いたが、なぜアルミ箔の帽子で音声を遮断することができないか、その調査結果によって説明されるのではないかと見るITもいた。アルミ素材を支持するものもいた。

コンファレンスコールの参加者の1人は「アルミ箔は非常に有効です」と報告している。そして衣服の下にアルミ箔を巻き付けていると説明した。

「どこに(アルミ箔を)巻くのですか?」とある男性が尋ねた。

「あらゆる場所、すべてです。帽子の中にも巻いています。」

オンライン上のあるマインドコントロールフォーラムのTIは、(電磁周波数内の)「Block EMF(EMFをブロック)」と呼ばれるWebサイトを勧めている。このサイトでは、あらゆる種類の衣服が広告されている。この中のアルミ線の入ったボクサーショーツは、「電力線、コンピュータの電界、マイクロウェーブ、レーダー、TVからの放射物を遮蔽するために、普段の下着の上に重ね履きする、薄手の履きやすい下着」という説明書きがある。同様に、通常の野球帽に似せたアルミ箔の帽子は、「おしゃれで繊細」である。

あれだけ冷笑されているにも拘わらず、犠牲者、あるいは犠牲者と信じている人々の仲間は堂々と発言している。その夜を通じて、コンファレンスに参加した人々だけでも40人に上っていたが、このオンラインフォーラムは、それよりさらに多くの数の143名の会員を擁していた。ジャーナリストによる関心を伝える書き込みにより、電子メールで200を超える反響があった。

つい最近まで、政府が頭に音声を送信していると信じる人々が抱える様々な苦痛に、社会的孤立が加えられていたが、今は多くが、世界中に自分と似たような人が数100人、おそらくは数1000人もいることに気付いている。電子機器による嫌がらせや集団ストーキングを扱ったWebサイトは、インド、中国、日本、韓国、英国、ロシアなどで出現している。犠牲者はワシントンを含む大都市で、サポート会議を主催し始めた。会議で多く取り上げられる議題には、シールドの構築方法(あの有名なアルミ箔の帽子)、メディアへのPRの方法などがあげられ、マインドコントロールを非合法化するための法的な対策も含まれる。

TIの最大のハードルは、人々に真面目に取り合ってもらうことである。2001年にデニス・クシニッチ下院議員(オハイオ州民主党)が「psychotronic(精神科学)兵器」(マインドコントロールテクノロジーのもう一つの一般的呼び方)を禁止する提案を行っており、大きな第一歩としてTIに歓迎された。しかし、この議案は多くのブロガーやコラムニストから冷笑され、まもなく却下された。

クシニッチの広報担当者ダグ・ゴードンは、提議は宇宙での兵器を非合法化する幅広い法案の一環であると述べただけで、マインドコントロールについては触れなかった。この議案は後に再度提出されたが、マインドコントロールの箇所は削除された。同ゴードン氏は「(マインドコントロールは)法案の中心ではない、だから内容の簡潔さのために書き換えられた」と述べたにすぎない。

TIは自分たちが選んだ代表から積極的な支持を得られなかったため、独自にPRキャンペーンを開始した。そのような経緯で、この春の土曜日のコンファレンスコールでは、ワシントンでの集会に話題が集中した。2005年にも集会を試みているが、数10名しか集まらず、最終的に中止になった。TIは再度集会を開くことを決定した。Tシャツのデザイン、議員との面会の手配、資金集め、新しいWebサイトの開設、スローガンの定形化をめぐって会話が続けられた。焦点を集団ストーキングにすべきかマインドコントロールにすべきかについてのディベートが続けられた後で、「秘密裏の監視と電子的嫌がらせからの解放」と両者を取り上げた妥協的なスローガンに行き着いた。

コンファレンスコールの進行役ロビンソンは(彼自身の集団ストーキングは1980年代に国家安全保障局NSAで働いていたときに始まったと述べている)、同グループの見通しを評して、おそらく今回の集会はそれほどの圧力にはならないが、最初のステップになると見ている。そしてこう述べている。「一歩前進したと考えています。当会ではいつでも入会を歓迎しています。」

ハーラン・ジラールによると、彼の問題が始まったのは1983年だった。当時はロサンゼルスで不動産ディベロッパーをやっていた。当初の嫌がらせは些細なものだった。ある日1人の女が車を止め、彼の前で人差し指を立てて振り、その後、急いで立ち去ったり、夜中に自宅の窓の下で複数の人々が走っていくのを目撃したり、気が付くと隣人が彼を見ていたり、夜中にアパートの下の狭い空き地で誰かが動く物音を聞いたり、その程度だった。

ジラールは、臨床精神科医でもある当時のガールフレンド(名前を明かすことは拒否された)にアドバイスを求めた。彼女からは「40代後半で精神病になる人なんていないわ」と言われたそうだ。彼女によると、他に精神病的行動の症状は見られなかったそうだ。身なりは整っているし自分で支払いができる。被害妄想のように聞こえる出来事の報告以外に、彼の振る舞いに異常はなかった。振り返ると「精神異常者は社会的に孤立している」と彼女は言っていたそうだ。

数ヵ月後、嫌がらせは突然収まったそうだ。しかし休止期間は長く続かなかった。1984年には、事態は十分に深刻化していた。彼は不動産業から足を洗い、ペンシルバニア大学に復学し、景観設計の修士号を目指して勉強していた。彼は公園や公共スペースを設計するという夢を長年抱いていた。そのときだった、声が聞こえ始めたのは。ジラールは複数の男の声を聞き分けることができた。呼びかけが行われる状況が頭の中で完全なイメージできたのだ。それはレコーディングスタジオで、「4人のだらしない男が、ビールを飲みながら、カードテーブルの周囲に座っている」という状況だった。

粗野な声だったが、「ミスタージラール」と呼びかけるなど妙に丁寧だった。

彼らはジラールをあざけった。自分をまともな男だと思うかと尋ね、そのうち頭がおかしくなると仄めかした。彼らは彼のクラスメートを侮辱した。校外学習のとき太った女学生が白いコートを着て現れたら、「ジラール、冷蔵庫に見えないか?」などと言って。

声が聞こえ始めてから6ヵ月後、「ジラール、おいジラール、まだ死んでないのか?」とまた問いかけてきた。最初のうち、呼びかけは1日に2、3回に過ぎなかったが、次第にエスカレートして、途切れることなく聞こえる耳障りな音になり、同時に全身の鋭い痛みを伴うことが多くなった。これは不可視ビームを照射できる指向性エネルギー兵器による攻撃だったと、ジラールは現在考えている。

呼びかけの声は、彼に起こっていることを、どうやれば解明できるかということまで教えてくれた。電気工学部に行き、学部の学生に「自分はSFを執筆中で、物理的な事実に矛盾することは書きたくない、と言うのだ。そこで自分に何が起こったか学生に正確に説明しろ」と指示されたそうだ。

ジラールは実際に電気工学部に行き、自分に起こっていることを説明し、それをテクノロジーでどのように解明できるか、わかりやすく説明してもらった。

「やはり、本当のことを言おう。真実が知りたいのだ。実は今述べたことは私に起こっていることだ。SFではない」と告白したそうだ。これを聞いた学生の間で笑いが起こった。

彼の友人も同じ反応を見せたらしい。「私の頭がおかしいと考えたようだ。屈辱的だった。」

声や痛みをなぜ医者に相談しなかったのかと尋ねると、「世間の評判を気にして、他人に話す気になれなかった。特別に扱われたくなかった。その後フィラデルフィアに移った。相変わらず事態は変わらなかったが、知り合いの医者もいなかった。わかっていたのは、誰かが自分に何かをしていることだけ。」

卒業には苦労したらしいが、何としてでも卒業するつもりだった。そしてついに目標を達成し、1988年、修士号を取得した。その年に父親が亡くなった。彼には働かずとも生活できるだけの遺産が遺された。

そこでジラールは景観建築家にならずに、自分に何が起こっているかの調査を徹底的に行うことにした。時には、マインドコントロールに関する政府の文書を調べにワシントンまで赴いた。また雑誌に、自分以外の犠牲者を探す広告を掲載した。

連絡があったのは数名のみだった。しかし年を経て、自分と同じような被害に遭っている人と面会するうちに、彼が「電子強制収容所」と呼ぶところのターゲットにされていると、ますます確信するようになった。

調査旅行で見出した結果も、彼の信念を確固たるものにした。ジラールは、1950年代に、CIAがMK-ULTRAと呼ばれるマインドコントロールの実験の一環として、何も知らされていない人々をLSD中毒にさせた事実を知った。また彼は、CIAが電磁界で心に影響を与えようと試みている内容の参考文献に行き当たった。その後、ウォーターリード陸軍研究所の軍事研究員が1970年代に行った研究に関する参考文献を、学術研究書籍で見つけた。これはパルスマイクロ波を使って言葉を送信し、被験者の頭に聞かせるという研究だった。その他に、電磁エネルギーや音波、マイクロ波ビームを使って人体に非殺傷性の痛みを生じさせる実験の参考文献も見つけた。彼が体験したすべての症状について、その原因となる兵器の参考文献が見つかったと確信した。

ジラールが説明した調査のどこまでが事実と判明しているか?

マイクロ波とマインドコントロールに関する問題は1960年代まで遡り、当時、米国政府は、モスクワの米国大使館が低レベル電磁放射で攻撃されているのに気付いた。1965年、非機密扱的な国防省文書によると、ホワイトハウスからの強い要請を受けて、ペンタゴンはプロジェクト「パンドラ計画」を立ち上げた。低レベルマイクロ波の行動上および生物学上の影響を研究するトップシークレット調査である。約4年間にわたり、ペンタゴンはサルの強打、認識していない水兵へのマイクロ波放射の照射、その他の数多くの異常な実験など、秘密の研究を実施した(プロジェクト「パンドラ計画」のサブプロジェクトは、プロジェクト「ビザーレ」のタイトルが付けられた)。結果はごちゃまぜにされ、計画は担当者の意見の不一致や学術上の小競り合いに悩まされた。当時「モスクワ信号」と呼ばれていたものは、最終的にマインドコントロールではなく盗聴によるものとされ、パンドラ計画は1970年に終了した。同時に、いわゆるノンサーマルマイクロ波の影響に関する軍部の調査も消滅したかのように見えた、少なくとも機密扱いではない分野においては。

しかし研究が続いているという兆しがある。1990年代に空軍向けに書かれた学術論文では、音波を使用して人の頭に言葉を送信する兵器のアイデアに触れられている。「信号は差し迫った破滅を敵に警告したり、敵に降伏を促したりできる『神からのメッセージ』になり得る」と著者は結んでいる。

2002年、空軍研究所はこのテクノロジー、すなわちマイクロ波を使って他人の頭に言葉を送信するテクノロジーを、そのままの形で特許取得した。その内容はマインドコントロールのWebサイトでも頻繁に引用されている。同研究所の指向性エネルギー局のスポークスマン、リッチ・ガルシアは、マイクロ波研究に関するコメントは行わないという研究所の方針を引き合いに出して、当該の特許あるいは同分野における現在の研究や関連研究について論ずるのを拒絶している。

この記事のために情報自由法を要求したのだが、空軍はその回答として件の2002年の特許にまつわる非機密的文書を公開した。これは1994年10月に空軍研究所で行われた人体実験に基づく特許であることを示す記録だった。この実験では、研究員が被験者の頭部に語句を送信することに成功している。ただし、送信された語句はあまり明確に理解されなかったようだ。研究は少なくとも2002年末までは続けられたようだった。その後、この研究がどこで継続されているかは不明である。同研究所は機密を理由に、研究についての言明や他の資料の開示を拒絶した。

米国空軍では、ノンサーマルマイクロ波の影響はないと、公式の見解を表明している。しかし、NASAラングレー研究センターの主任研究員、デニス・ブッシュネルは、2001年の「将来の戦略的問題」に関する米国国防産業協会におけるプレゼンテーションの結びで、将来の先頭の一環としての人間の脳へのマイクロ波攻撃について言及している。

「あの研究は非常に微妙な内容である」から、非機密的文書で報告されることはないだろう、と彼は言っている。

一方、苦痛を与えるために電磁放射を使用する兵器を軍が使用していることは、この兵器の制限も含めてよく知られている。2001年、ペンタゴンはこの研究の1つの項目の機密扱いを解除した。電磁放射により皮膚を加熱し、極度に焼け付く感覚を引き起こす兵器、対人放射型電子レンジ(Active Denial System)である。やはり、痛みを伴う不可視光線を人間に照射するためのテクノロジーは存在しているのだ。しかしこの兵器だけでは、TIの症状の多くを説明するのに不十分であるようだ。その正確な有効範囲は機密扱いだが、指向性エネルギー兵器の専門家、ダグ・ビースンは約700メートルと推定している。またビーム光線はアルミニウムなどの、いくつかの素材を透過できないとのことである。大きさはパラボラアンテナに似た本格的な兵器と同じ程度であり、その操作限界を考えてみても、通行中の人々や、家庭内にいる人、また車や飛行機で移動中の人々を含む何100人もの人々に、政府や誰かがビーム光線を照射できるようになることは、起こり得ないことではない。

しかし、アメリカの秘密研究の歴史から、防衛体制でマインドコントロールあるいは長距離光線兵器の開発が可能であれば、ほとんど開発していると見て間違いないだろう。また開発された後は、罪のない一般市民で試験を行う可能性をきっぱりと否定することはできない。

ジラールとしては、このような兵器が開発されているのはもちろん、20年以上も前から彼に対して試験が行われていると信じている。

政府は彼を苦しめて、何が得られるのだろうか?繰り返すが、ジラールは証拠として使えると信じるもの、少なくとも前例と確信しているものを発見していた。冷戦時代、政府は事実を知らされていない多数の人々に対して放射実験を行い、実際に人々をモルモットとして用いた。ジラールは、彼自身も動く実験台だったと信じるに至った。

ジラールは自分が全く無作為に選ばれたと思っているわけではない。彼がターゲットにされたのは、1980年代初頭に共和党の資金調達者に対して、ジョージH.W.ブッシュに関する中傷的な発言を行ったことが原因と見ている。その後、呼びかけにより彼の疑いは確実なものになった。

「ある晩、寝ようとしていた。相変わらず、たわ言が聞こえていた。その声は延々と続いていた。丁度ベッドに入ろうとしていたとき、『ミスタージラール、スタジオに誰がいると思う?アメリカ合衆国副大統領ジョージ・ブッシュさ』と言うんだ。」

ジラールの話は奇妙だが、世界中のTIが報告している内容を伝えていた。政府当局あるいは役人との偶然の接触と、それに続く監視と集団ストーキング、その後は多くの場合、声や電気ショックに似た痛みの被害。コミュニティには、できるだけ多くの事例を文書化する作業を引き受ける人もいた。カリフォルニア州のあるTIは、約50回の面談を行い、症状をいくつかの代表的な事例に絞り込んだ。「耳鳴り」「身体の一部の操作」「声による呼びかけ」「皮膚への刺激」「鼻の病気」「性的攻撃」など。実際に「性器が触られているような感覚を、多くのTIが報告しています」と前記のTIは言っている。

TIは性別を問わず、生殖器への様々な「攻撃」を報告している。ジラールも「股間がヒリヒリ痛んで、ほとんど歩けなかった」と初期の頃の経験を振り返っている。しかし、指向性エネルギー兵器による絶え間ない性的刺激を受けて、神学校から退学したと訴えるTIを含めて、性的刺激の形による攻撃を報告するものもいた。サンディエゴのTI、スーザン・セイラーは、TIの多くの女性が性器への攻撃を受けているが、多くの場合、外部の人間に話すことがためらわれていると話している。

彼女は次のように言っている。「突発的なのです。いつ起こるかわからないのです。多くの女性がベッドに入るとすぐに攻撃を受けると言っています。そんな時は最悪です。私は、運転中にも時々起こりました。」

彼女は単なる想像ではなく、なぜ電子的攻撃と考えたのだろうか?「男性への性的な関心がないときに、攻撃を受けていました。そこがおかしいのです。筋肉の痙攣などの感じではありませんでした。だから電子攻撃だと考えました。」

グロリア・ネイラーは著名なアフリカ系アメリカ人の作家であるが、マインドコントロールを信じる被害者の固定観念の多くは、受け入れられないという様子だ。全米図書賞(National Book Award)の受賞歴を持つネイラーは、小説「The Women of Brewster Place」で絶賛され広く知られている。同書は都会の貧しい地域に住む女性グループを描いたもので、後にオプラ・ウィンフリーでミニシリーズ化されている。

2005年、あまり知られていないが、ネイラーはTIとしての経験を描いた半自伝的小説「1996」を発行した。「この話は伝えたくなかったの。勇気が必要よ、多分持てる以上の勇気が。でも本を書く以外になかった。」ネイラーは冒頭で次のように記している。「私は自分の心のために闘っている。今闘うのを止めたら、彼らが勝利し、私は自分を見失ってしまうだろう。」信じ難いが、この本の内容は首尾一貫している。特にユダヤ系アメリカ人のエージェントが、どのようにネイラーの監視を受け持っていたかを説明した、妨害の一節は注目に値する。「多くの車が家の前の道路を行き来し、その多くはユダヤ人が運転していた」と同書の中で書いている。最近のインタビューでその一節について尋ねられたとき、論理的に答えた。彼女によれば、ニューヨーク出身なら、ユダヤ人の見分けはつくらしい。

ネイラーはブルックリンの静かな通りにある荘重な富裕層の住宅に、文学での功績を伺わせる、手の込んだウッドワークや趣味のよい装飾品のインテリアに囲まれて暮らしている。彼女は当時の状況を静かに話した。そして時折、身に降りかかった窮状や、当初は精神的な病と考えていたものとの闘いを一笑に付した。「自分を観察しました。会話が聞こえている間横たわり、これが統合失調症かしらと自問してみました」と説明した。

ジラールと同様、ネイラーも「大道芸」と呼んでいるもの、他人からは偶然の一致と片付けられてしまうが、ネイラー自身は仕組まれたと信じている出来事を説明している。人里離れた休暇用の家の近所でも、疑わしい車が走っているのを認めている。飛行機内では、他の乗客がストリートのパントマイムみたいに、彼女の一挙手一挙動を真似ていた。

ジラールのケースに似た声も聞こえるようになった。人をあざけるような声が彼女を追いまわし、おまえは愚かだ、執筆できないと呼びかけてきた。彼女の頭は罵りの言葉で一杯になった。ネイラーは精神科医に助けを求め、抗精神病薬の処方箋を書いてもらった。しかし治療によっても声が止むことがなく、嫌がらせが現実のものという確信がますます強くなっただけだった。

ネイラーによると約4年間のあいだ、声のために執筆できなかった。マインドコントロールフォーラムを知るようになった2000年ごろから、声が止み、監視が次第に減ってきた。「カタルシス(浄化)」として「1996」の執筆を始めたのは、その頃だった。

同業者は評判を落とすことになると言って、この本の出版をやめるように勧めた。しかし小さな出版社からであったが、敢えて出版した。この本は全般的に批評家から無視されたが、TIには受け入れられた。

このような個人攻撃を著したのは、ネイラーが最初ではない。20世紀の偉大な小説家の1人であるイブリン・ウォーは、「ギルバート・ピンフォールドの試練」の中で、同様の経験を詳細に記している。1957年に出版されたウォーのこの小説は、ネイラーの本と異常なほどよく似ている。

健康回復のための船旅に出たピンフィールドは、船内で声が聞こえ始める。彼は頭に放送を流すことができる無線システムの一種だと考えた。また工作員として活動する人物を、扇動者が同乗者から採用したと信じていた。乗客が彼に向けて演じる、他の人には無害な「パフォーマンス」と著している。

ウォーはこれに似た出来事から回復し、声やパラノイア(偏執症)が薬物性の幻覚によるものだったと認識してから数年後にこの本を書いた。

ネイラーは「1996」以降執筆を中断しているが、現在は以前から希望していた歴史小説の作業に取りかかっており、文壇の主流に戻る日も近いだろう。彼女は今も、マインドコントロールのターゲットにされたと信じている。マインドコントロールフォーラムで、自分の体験した試練が多くの人に起こっているのを知ると、狂っていたのではないと改めて断言できると話している。

彼女もフォーラムで見聞きしたことが、馬鹿げていると思うこともあった。「でも私にそう言う資格がある?私だって恐らく、他人にはおかしいと思われているわ。」

TIの中には、若い医師エド・ムーアのように、多少懐疑的に捉えている者もいる。彼は何の証拠もないのに政府の様々な機関や各種の団体を非難するTIを、「頭のいかれた主張」と呼んで批判している。「こんな事を仕掛けた人なら、確証となるデータを持っているだろうから、そちらの主張も聞かなければなりません。」

しかしムーアは、自分の頭に聞こえる声はマインドコントロールによるもので、最も疑わしい犯人は米国政府だと信じている。ムーアが声を聞くようになったのは2003年で、麻酔医としての臨床研修期間を終えたときだった。国家試験のために徹夜で勉強していたとき、近所から話しかけてくる声を聞いた。内容は彼自身のことや、彼の医者としての能力、彼の正常性についてである。最初は(ウォーの小説中の架空の分身が最初に考えたこととほとんど同じく)壁を通して会話が聞こえてくると考えていた。しかし声を聞いた人が誰もいなかったため、自分の頭の中の声だと気付いた。ムーアは2年間にわたり精神的な被害を受け、幻聴を伴う抑うつで入院したりもした。

彼は「自分にしか聞こえない声で、電子的な嫌がらせを受けていると友人や家族に相談した人は、やがて相談するのも止めます。誰も信じません。嘆かわしく気遣うような様子になります。声にヒステリックに呼び掛けられたときや、友人や家族に救いようのない、病んだ、精神バランスを崩して打ちひしがれた自分を見られたときに、余計に落ち込んでしまうのです」と電子メールに書いている。

彼は声を止めるための抗精神病薬の投与により、フラストレーションが増したと言っている。これは同薬物の処置の効果がなかったためであり、声が話しかけてくるという話に精神科医が興味を示さなかったためである。そこで他の方法を探し始めた。

「2005年3月、インターネットでサポートグループを探し始めました」とメールに書いている。「妻は私がこのようなサイトを閲覧し、まだ声が聞こえていることを知ると嘆くでしょう。しかし他にどうすることもできなかったのです。」2006年、3年間彼を支えてきた妻が離婚を申請した。

他のTIと同様にムーアは、妻には細かいことは話せなかった。友人や同僚には愚かに見られるのを恐れていたが、もしこの問題に注意を向けられたら、そのような危険性も結局は無駄にならないと言っている。

父親の財政的な援助により、ムーアは人々の頭に音声を送信する技術V2Kが実際に存在することを証明しようと、現在、サンディエゴのテキサス大学で電気工学の学位取得に向け勉強中だ。他の学生に混じって構内に居ると気が紛れるが、声の愚弄は止まないと書いている。

最近の彼の話では、声は「一生(邪魔する)のを止めない」と言っているそうだ。

ナショナルホールでのTI集会の1週間前、ハーラン・ジラールが個人的に頭の中の声と特定している1人、ジョン・アレクサンダーが、クリスタルシティのチリ料理レストランで、米国政府がなぜマインドコントロール兵器を必要としているかについて、Phillyチーズステーキとフライを食べながら説明した。

ベトナム戦争に参戦した元グリーンベレー、アレクサンダーは、いくつかの国家安全保障の仕事に就き、著名な軍事指導者や政治指導者との交友があった。新型兵器への関心を以前から示していたことは知られていたが、1980年にArmy誌の「Military Review(軍事研究)」内で発表した記事「The New Mental Battlefield(新型精神戦場)」が、犠牲者と称する人々により、アレクサンダーがマインドコントロールに加担している証拠として引用されている。アレクサンダーは、現在政府の職を辞し、ラスベガスに住んでいるが、依然として軍事顧問の地位にある。集会当日には、公式会議のためにワシントン地区にいた。

白髪の縮れ毛の下にあるのは、自己流の軍事思索家の考えだった。アレクサンダーは、自らを防衛知的集団と見なす特定のペンタゴン顧問集団に所属していた。大局的な問題、将来の脅威、新しい能力を専門に扱っていた。アレクサンダーはその経歴により、敵をその場で食い止めるスティッキーフォームの研究から、現在も戦略上有効と擁護している、超常的な研究およびサイキクスの寄り合いに引き抜かれた。

以前電話で話したときは、アレクサンダーは1990年代CIAの状況説明に出席したときには、「マインドコントロールや向精神薬、精神変調技術、その類の兵器」についての内容は話されなかったと言っている。

同氏によると、軍および諜報機関は、あまり知られていないCIA計画MK-ULTRAの行き過ぎた行為をまだ恐れていた。この計画では、怪しまれていない犠牲者にLSDをそっと渡すようなことも行われていた。「最近まで、(マインドコントロール)と思われることは、極めて危険でした」なぜなら、議会が予算を取り上げるからです、と彼は言った。

アレクサンダーは「虐待が起こっていた」ことは認めているが、全体として「我々が細事にこだわり大事を逸していたという点については異論があります」と付け加えている。

しかし2001年9月11日、ワシントンの空気は変わった。国家安全保障の関係者から、再度マインドコントロールへの関心を表明する者が現れた。特にMK-ULTRAに携わっていなかった若い世代の役人の間において、そのような傾向があった。アレクサンダーによれば、「戻ってきたのです。」

アレクサンダーは、人々の心をコントロールする手の込んだ陰謀に何らかの形で加わっていたという発想を笑い飛ばしているが、潜在的な敵の頭脳に侵入する方法について、習得の支援を行っていたことは認めている。彼は一例として、機能的磁気共鳴画像fMRIを嘘発見器に使用できることを説明した。理論的には、fMRIによる「脳のマッピング」により、脳の特定の箇所の活動を観察することで、嘘を見破ることができる。彼が示唆するには、fMRIはテロリストを尋問する場合には重宝するが、この技術の用途を思いつく限り想像しても、TIが文句を言っているマインドリーディングの類にははるかに及ばない。

また同氏は、電子的な手段による行動の修正の可能性についても興味を持っている。テロリズムとの戦争のジレンマは、終わりがないことだと言及している。だからと言って、グアンタナモの敵など、どのように対処すればよいのか?永遠に放置しておいて良いのか?そんなことは非現実的である。だから行動の修正が選択肢になり得るのだ、と言う。

「恐らく、あなたも修正できますよ、つまり電子的に中性化するのです。社会に放しても安全なように、戻ってきて私を殺さないように」とアレクサンダーは述べている。テクノロジーにより、そんなシナリオが現実になるのは時間の問題だと言う。「それが可能な段階まで到達しているのです。」少し間を置いてから、サンドイッチを一口ほおばった。「問題は、倫理領域のどの辺りに該当するかです。実に手ごわい問題です。」

マインドコントロールの倫理性に関する質問など、答えを拒む質問を受けると、アレクサンダーは目に見えないものを両方の手で秤にかけるように、笑いながら手を胸の辺りに上げた。片方の手にはマインドコントロールと自由な思考の尊厳が、少し高くしたもう片方の手にはテロとの戦争である。

しかし、TIには関係のないことだと彼は言う。「秘密裏に行われていることなので、どうしても想像してしまうのでしょう。常識は通用しません。事実では考えられないほど論理が大きく飛躍していると指摘したとしても、彼らを説得することはできません。」

知性的な人でも、実体のない声が聞こえる経験を政府の兵器に結びつけるのはなぜか?

ハーバード大学の心理学者スーザン・クランシーは、著書「Abducted(なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか)」で、TIと似た印象を持つグループ、エイリアンにより誘拐されたと信じる人々について検証している。この類似性は説明のつかないことが多く、誘拐されたと述べる人々は奇妙な苦痛、監視されている、あるいはターゲットにされているという感情を説明している。また誘拐されていると疑われている人々には、一般に幻聴の症状がないが、考えがエイリアンによりコントロールされている、あるいは先端技術でインプラントされていると信じることがある。

(オンラインフォーラムでは、一部のTIはマインドコントロールよりもさらに超自然的なUFOを、一般市民が目撃しているではないかと言い、同じように見られることに対して異論を声高に唱えている。「我々をすべて社会の隅に追いやり、信用を傷つける主張だ」とあるTIは不満を述べている。)

クランシーは、エイリアンに誘拐されたと信じるのは、身体への痣(他人が単なる打撲と片付けてしまうような痣)や、(TIが説明するのと同じ)性器への刺激、あるいはパラノイアの感情など、自分の身に起こった奇妙な出来事を、説得力のある話で説明するのが主な原因と主張している。「個人的な問題を説明しているにすぎません。生活に意味を与えてくれるのです。」クランシーは述べている。

TIの場合、マインドコントロール兵器は頭の中で聞こえる声の説明になる。ソクラテスは声を聞き、悪魔だと考えた。ジャンヌ・ダルクは神の声を聞いた。あるTIが電子メールで記しているように、「この嫌がらせに遭っている人は、それぞれが問題の解答を探している。それぞれが独自の信念を通じて、問題を分析しています。科学的な考え方をする人であれば、そのような観点から状況を分析し、何らかの種類の電子機器による仕業と結論を下すでしょう。信仰の厚い人であれば、信じる宗教の原理間の闘争と見るでしょう。奇妙な人であれば、実際にエイリアンと考えるかもしれません。」

21世紀初頭に米国に住んでいるのであれば、NSA、CIA、FBIの増長する権力に怯えるかもしれない。

政府による監視の犠牲者というのは、精神異常よりましというのは間違いない。自分の悲痛な経験に基づくウォーの小説では、ピンフォールドが脳への侵入に隠された技術が使用されていると考えるに至ったとき、「その発見に感謝以外の感情が沸かなかった。」なぜか?「彼は評判が良くないかもしれない、馬鹿げているかもしれない、しかし狂っていなかった」から。

幻聴を研究するエール大学の心理学教授ラルフ・ホフマンは、声が政府の嫌がらせによるものと信じる人々に定期的に面接している(声の主が神や死んだ親戚、あるいは元のガールフレンドと信じる人々もいる)。感情が高揚しているときには声が一時的に聞こえることがあると指摘して、声を聞く人のすべてが統合失調症ではないと述べている。そのような声の正確な原因はまだ明らかになっていないが、1つだけ確実なことがある。外部の力により声が聞こえると考える人は、妄想的信念を改めることがほとんどないということ。「平凡な現実がありふれた物に思われるような、高い高揚感を持つ人の心をつかんで離さない説得力のある経験なのです。」

恐らく、この経験は非常に明快であるため、処置により改善した人々の中にも、投薬計画が政府の兵器による脳への攻撃を防いだと断言する場合すらあるのです、と述べている。

最近の幻聴研究の2事例に携わったペンシルバニア州立大学の教授、スコット・テンプルは、このような幻覚症状のある患者は、往々にして病気への見識に欠けていると指摘している。自分が病気と理解している患者の間でも、「そのような症状が見え隠れしています。」と述べる。「困惑した感情を抱くと、妄想的な解釈が戻ってきます。」

フィラデルフィア駅に話を戻すと、ジラールの興奮はさらに増したように見えた。先週の会議では、彼の「調教師」は短く話しかけただけだった。声が聞こえないことから、自分を攻撃する最適な場所にいなかったと、ジラールは推測している。今日は、彼の会話は放射性実験の犠牲者や、ジョージH.W.ブッシュへの憎しみ、MK-ULTRA、個人的な経験など話題は次から次への矢継ぎ早に飛んだ。

ペンシルバニア大学での研究について問いかけると、彼は読書の問題を述べた。「先ほども述べたが、書いている内容をすべて呼び掛けるんだ」と再び声について言及した。「読書しているときは、同じ内容を読んでくれる。目を遠くにやると、本の行に戻す。彼らはその行を読んでくれる。本を閉じると、読んだことを何一つとして思い出せない。彼らの仕業だ。」

先週ジラールは、疑わしい様子の一人の男を示した。本を読むアフリカ系アメリカ人の若い男だ。今度はさらに多くの声が聞こえ、駅に工作員が一杯いると信じているようだった。

しばらくして「場所を変えよう」とジラールは言った。「今日は40〜50人いるらしい。この間は監視を逃れたが、もう監視などさせない。」

マインドコントロールと、彼が陰謀に加担していると疑うペンシルバニア大学とのつながりを説明してくださいと言うと、フィラデルフィア校付近の防衛省の請負業者について話し出した。「General Electric社が駐車場の隣にある。General Electric Space Systems社は、隣の巨大な建物だ。その建物からは、自分がほとんどの時間、研究に打ち込んでいるスタジオを見下ろすことができる。あの建物では、どんな仕事をしているのか誰かに尋ねたことがあった。コンピュータに関係のある仕事に違いない。GE Space Systemsだから。この場所からミサイルの残骸を追跡しているようだった。失礼、どんな質問でしたか?」

ジラールの生活は、多くの点で、裕福な70歳の独身老人の面影を残しているように見える。彼は長い休暇にフランスへ頻繁に旅行し、フィラデルフィアではフランス文化の活動に参加している。クリーブランド芸術大学に通っていた亡くなった母親の名前を冠した旅行奨学金を同大学に設置し(彼は「個人的な理由」により27年前に姓を変えていた)、基金から奨学金を受ける学生との面接に同地を訪れていた。彼は多くの時間を研究とマインドコントロールに関する執筆に費やしていたが、他にも関心事があった。彼は政治に詳しく、友人や家族との散歩について説明した。彼らには、懐疑的に見られるのを恐れてマインドコントロールについて話していない。

ジラールは体験の一部は統合失調症の症状を映し出していることを認めているが、声が実際に精神的な病が原因ではないかと不安になったことがないかと尋ねられると、一言「ない」と答えた。

では、彼はどのようにして実際の声だとわかるのか?

「何かを知っていることは、どのようにしてわかるのか?」ジラールは答えた。「私が実在することを、どのようにして知るのですか?これはあと数分で覚める夢ではないと、どうやって知るのですか?それは夢を見ているのを認識しているという例えに最も近いでしょうね。全く明快な場合もありますが、それは夢だとわかっています。」

声が非常に「現実的である」ことが問題なのである。現実のものと認識しているものを、どうやって信じないようにできるか。エール大学の心理学者ホフマンが指摘しているのは、正にその点なのである。声は非常に明快であるため、被害者は教育レベルや自己認識とは無関係に、声が実際の声としか信じられないである。ホフマンは「彼らは実際の声のように感じている、ということだけは確かです」と述べている。

ワシントンの集会は、見たところほとんど小規模な政治集会だった。国会議事堂のリフレクティングプールの南西側のゲートにはポスターが飾り付けられ、出席者は出版物の資料を積んだテーブルを設定する間、ボランティアが拡声器をテストし、ミネラルウォーターを積めたクーラーを設置していた。太陽が昇り、天気は申し分なかった。マインドコントロールを阻止するために、全国の様々な集団が結集していた。

アルミ箔の帽子は見られなかった。ポスターと小道具だけが、普通とは違うことをほのめかしていた。あるポスターは「米国の電子的な嫌がらせを中止せよ」と要求するもの、「指向性エネルギーの攻撃」と書かれているものが見られた。墓石の形の小さい標識には、「RIP MKULTRA」と書かれていた。演壇のスピーカーの前面には、「ハイテク攻撃のサイコトロニック拷問の停止に支援を」と長いメッセージのメインディスプレイが立てられていた。

6月の集会には、約35名のTIと友人や家族が集まった。出席者は説明を交えながら、マインドコントロール技術の研究の証拠を示した。集会の見物人はほとんどが外国人の観光客だった。数人の見物客が野次を飛ばしながら標識を冷笑したが、ほとんどは戸惑っているか無関心だった。テーブル上のマインドコントロールに関する資料は、主要なニュース雑誌の記事であるが、誰も手を伸ばしていなかった。

「盗聴などのよく知られた領域に関心を持たない人々に、どのようにして、この問題に関心を持たせられると思いますか?」ある男が資料をパラパラめくるのをやめて、このように質問してきた。テーブルを担当していたメリー・アン・ストラットンは、肩をすくめて悲しそうに笑った。答えはなかった。集会の誰もが、困難な闘いであることを認めていた。

全般的に、TIの外見は良くなかった。多くが仕事、家、家族を失っていた。抑うつ症状が共通に見られた。しかし集会の多くの出席者には、マインドコントロールの犠牲者のコミュニティを体験することが救いのように見られた。頭の中の声により人生を転がり落ちるまでは、沿岸警備隊のレスキューだったあるTIは、別のTIに宛てた長い電子メールで、TI仲間の間に見られる安堵感を伝えていた。「犠牲者を救うことができるのは、同じ体験をした人々しかいないと考えています。他の人は信じないでしょう。巻き込まれる恐れがあるからです。」

最終的に、何も彼を救うことはできなかった。2006年8月、彼は自殺を図った。

しかし集会は、少なくとも当日は、TIの精神を高揚させた。いつもより活気に溢れていたジラールはマイクを握った。数名の観光客がその横に集まり、無関心に聞いていた。背後に国会議事堂がそびえ立つ位置で、彼はスピーチの最高潮に達し、聴衆に「同じコミュニティの一員である」という重要な事実を忘れないように奮い立たせた。

「『各自がばらばらの話しだから、目的を達成することはできない』と言っているようですが、我々は一致団結しています。」ジラールは景気づけた。「電子強制収容所に送り込む権力を持つ者を、知っているはずです。」

集会の数週間後、ジラールは荘重なワシントンのメイフラワーホテルでの、レポーターとの会談に姿を現した。そのホテルには、この20年間、マインドコントロールとの闘いで首都を訪れる際に頻繁に滞在していた。彼は火の点いたタバコをくわえながら入ってきた。ホテルの従業員にホテル内は禁煙ですと言われ、申し訳なさそうに火を消したが。30分の遅刻だったが、国会議事堂での会議のために遅れたと言っていた。モノグラム柄のドレスシャツとネクタイを身に付けた彼は、いつもと変わらず真面目な専門家という風に見えた。

ジラールは国会職員と述べただけで、国会議事堂で誰と会っていたか言及を避けた。考えられる原因は当惑だった。彼は学者から政治家まで面会した人はほとんど、彼の懇願を無視するか、彼を精神障害者としてあしらうことを認めた。

最近の彼の活動の中心はWebサイトで、四半世紀近い研究の成就をWebサイトに見出している。研究が完成すると、300ページ以上の文書になるらしい。その後の予定は何か?恐らくフランスに移るか(フランスにも犠牲者がいる)、最後には米国政府に殺されるか、どちらかだと言っている。

その一方で、政府が頭脳を解読していること示す、絶対的な証拠を常に探していた。彼の最近の関心はWired Newsで読んだLifeLogで、これはかつて国防総省が資金提供していたプロジェクトである。この記事では、次のように説明している。「初期段階のLifeLog計画は、個人が行う事を全て巨大なデータベースに放り込む。送受信したすべての電子メール、撮影したすべての写真、閲覧したすべてのWebページ、すべての電話、すべてのTV番組、すべての雑誌など。このような情報はすべて、恐らくはそれ以上が、各種の情報源、すなわち行き先をすべて記録するGPSトランスミッタや、見たり話したりした内容を捕捉する視聴覚センサー、個人の健康状態を追跡する生物医学的モニターなどから収集された情報と結合される。」

ジラールは政府が似たような技術を利用して、過去2年間の彼の生活を、見たこと聞いたことを「カタログ化」していると説明している(イブリン・ウォーは、マインドコントロールを扱った自著の中で、彼の加害者は彼の生活全体のファイルを作成していると、自分のキャラクターが似たような恐れを抱いていることを記している。)

ジラールは政府が自分の行動を管理し、思考を頭に注入し、昼夜痛みを起こさせることができると考えている。マインドコントロール犠牲者として死ぬだろうと信じている。

楽観的になれることは全くないのだろうか?

ジラールはためらった後、まわりくどく問いかけてきた。

「こんな状態なのに、同じ人間でいるのはなぜなんだ?なぜハーラン・ジラールのままなんだ?」

ジラールの苦悩はすべて、精神的な病の結果か、彼が頑固に主張するように政府のマインドコントロールの結果によるものかもしれないが、声は彼を他人に変えることには成功していない。それは彼の意識であり、知性、あるいは魂と呼ぶものである。

「奴らがまだ手にしていないのは、それなんだ」と彼は言う。22年経っても「まだ自分のままでいる。」

シャロン・ワインバーガー。ワシントン在住の作家、「架空の兵器: ペンタゴンの科学的闇の世界の旅」の著者。この記事についての質問や意見は、火曜日のwashingtonpost.com/liveonlineで受け付けている。

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