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昔々あるところに

2004-05-04

昔々あるところに [昔々あるところに]

昔々ある村に,その村をホームタウンとする3つのスポーツ・チームがありました。これらのチームは,それぞれ異なる(しかし,実際にプレイした経験のない人から見ると似ている)球技をプレイしておりました。

なかでも球技Aチームはなかなかの強豪で,全国大会でも常に好成績をおさめ,国際大会でも活躍できる実力を持っていました。実際,球技Aチームは,この国のスポーツ省の強化指定を受けておりました。球技Bチームは,国内の大会でもこれといった成績をあげたことはありませんし,ましてや国際大会での活躍は望めません。球技Cは,特殊なルールを採用した競技で,この国以外でこの球技をプレイしている人々はほとんどおりません。ですから,国際大会もありませんし,最近は国内の競技人口は減少する一方です。
つづく

2004-05-05

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これら3つのチームのオーナーは同一人物でした。もっとも,実際にチームのマネジメントを行っているのは,その目的のためにオーナーが設立した会社組織です。あるときオーナーは,この3チームを使って「もっと儲かる方法」はないか調べるよう,この会社の社長に命じました。実は,この社長,スポーツのことにはあまり詳しくありません。あちこち尋ねてまわったところ,社長は,一般村民向けの「球技Bスクール」を開校して儲けようとすることが最近流行っているらしいという話を耳にしました。

そこで社長は,これからは球技「Bスクール」をメインにして,「競うスポーツ」ではなく「教えるスポーツ」をこの会社の事業にしてはどうかと考えました。球技Bチームの選手たちは,自分たちの組織の存続が保証されるこの案を大歓迎しました。球技Cチームの選手たちも賛同しました。そして,彼らも球技Bをこの「Bスクール」で教えることになりました。一般村民にとっては,球技C選手といえども十分上手な球技B選手に見えるはずですから,まったく問題ありません。

2004-05-06

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しかし,球技Aチームの選手たちだけは抵抗しました。球技「Bスクール」を手伝うこと自体まったく気が進みませんでしたが,何より球技Aチームの選手たちは,インストラクタではなくアスリートでありたいのです。(そして,それなりの結果を残しているのです。) でも,社長は,これからは「一般村民に教える」ことをメインの活動にするのだとい言いはります。そればかりか,経費節約のために球技Aチームの人員を削減すると言い出しました。

注) 確かに,球技Aチームを持っていて も「金儲け」はできませんが,この会社が同時期に作ったレーシング・チー ム(どうもこれは会社の顧問の趣味だったようです)に比べれば,維持費な どはたかが知れているはずなのですが。とくに,スポーツ省から支払われ る球技Aチーム強化費を考慮すれば。

球技Bチームのキャプテンは,3チーム合同選手会の席上で,「正義は必ず負ける」と言ってAチームに妥協をすすめました。後にB・Cチーム合同選手会長を務めることになる Cチームのある選手などは,「相手は "ヤクザ"である。"ヤクザ" には従わねばならない」と言い張ります。Aチームの選手たちは,「では,あなたもヤクザになるんですね」と軽蔑の眼差しを向けて冷笑するだけでした。球技BチームやCチームの選手たちとは違い,Aチームの選手たちにとっては,チームを存続させて現在のポジションを守ること自体には何の価値もありません。各人がアスリートとして世界から認められる結果を残すことこそが重要でなのです。

つづく

2004-05-07

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結局,球技Aチームの選手たちのほとんどが,他の会社のチームに引き抜かれていきました。(一部のスポーツにおける移籍金制度のようなものはありませんから,簡単に移籍できます。ただし,2-3名の選手だけが,他の選手にはよく理解できない理由でこの会社に留まることになりました。) 移籍した球技A選手たちはみんな,それぞれの移籍先から是非にとこわれて移って行ったのです。元の会社が「ここにいたければインストラクタを本業にしろ」などという態度だったのとは大違いです。個人で引き抜かれたケースも,何人かでまとまって引き抜かれたケースもあったようです。


もちろん,選手たちがこれからずっとその移籍先にとどまるかどうかはわかりません。あくまで条件次第,他チームからのオファー次第です。そしてそれは,アスリートとしての市場の評価によって決まります。しかし,とりあえずは,引き続きアスリートでいることができてハッピーでありました。めでたしめでたし。

つづく

2004-05-08

昔々あるところに [昔々あるところに]

さて,この物語には,語り伝えられていない謎が残っています。主なものを紹介しておきましょう。

実力主義のアスリートの移籍市場のことを知らなかった社長は,上の結末を予想できませんでした。球技Aチームが今後ずっとなくなってしまうと,自分の失敗が誰の目にも見える形で残ってしまいますから,何とか球技Aチームを形だけでも復活させたいと思ったようです。その後,球技Aチームに選手は集まったのでしょうか。集まったとしたら,どんな選手だったのでしょう。

球技「Bスクール」はどうなったのでしょうか。実は,この会社だけでなく,他の会社もこの村内にたくさんの球技「Bスクール」を作っていたのでした。したがって,それらの相手と受講生の奪い合いをしなければなりませんでした。球技「Bスクール」は(そして,顧問の道楽で作ったレーシング・チームは)果たしてやっていけたのでしょうか。


この騒動の時点では,村人たちには何が起こっているのかよくわかりませんでしたので,あまり関心を示す人々もありませんでした。しばらく後に事の顛末がすべて明らかになったとき,球技Aチームの選手たちを他チームにみすみす譲り渡してしまったことを聞いて,ホームタウンの村人たちはどう感じたのでしょうか。

おわり


本稿は,客観的な事実を寓話の形で示したものである。

(追記) 参考資料:


2004-07-03

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[2004-05-07]

- 結局,球技Aチームの選手たちは,全員が他の会社のチームに引き抜かれていきました。

+ 結局,球技Aチームの選手たちのほとんどが,他の会社のチームに引き抜かれていきました。

2004-10-29

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[2004-05-06]

+ 球技Bチームのキャプテンは,3チーム合同選手会の席上で,「正義は必ず負ける」と言ってAチームに妥協をすすめました。Cチームのある選手などは,「相手は "ヤクザ" である。"ヤクザ" には従わねばならない」と言い張ります。Aチームの選手たちは,「では,あなたもヤクザになるんですね」と軽蔑の眼差しを向けて冷笑するだけでした。

2005-01-12

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[2004-05-06]

- Cチームのある選手などは,「相手は "ヤクザ" である。"ヤクザ" には従わねばならない」と言い張ります。

+ 後にB・Cチーム合同選手会長を務めることになる Cチームのある選手などは,「相手は "ヤクザ"である。"ヤクザ" には従わねばならない」と言い張ります。

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