型式番号:MSM-10
通称:ゾック
パイロット:ボラスキニフ曹長
登場作品:初代ガンダム
印象的なセリフ:「見掛け倒しでなければ良いがな」byシャア


まず初めに。
今回の絵がえらくなげやりなのは
他の絵を描くときになんとなくやった落書きをそのまんま使ってるからです。
ついでだからゾックについって考察してみるか〜、という普段とは違うパターンです。

さて、ゾックです。
左右対称のMSは意外と少ないんですが、ゾックはそれどころか前後対称です。
他に例を見ないデザインです。
どんな必要があってこんなデザインになったのかを考えてみましょうか。

やはりここはゾックがどんな役割を担当する兵器なのかを考えるべきでしょう。
まず武装に注目してみます。
水陸両用のMSでありながら、魚雷のような実体弾火器をまったく持ちません。
水中でビーム兵器を使うとどーなるかを現実的に考えると
ビーム兵器が熱兵器であることを考えるともう、水が一気に気体になり、
体積が急激に増えることで水蒸気爆発が発生しまくることが予想できます。
これはもう、えらいことです、ハイ。
敵を攻撃どころの話じゃなくなりますね。
ビームサーベルなんて使うともう、とんでもないことになります…
が、しかし、ガンダムの世界観ではまあ、熱の拡散によって威力が減少するくらいです。
でもそれだけでも十分不利だよね。
せっかくメガ粒子砲を8門も装備してるのに、水中で使えないなら大問題ですな。
頭のテッペンにあるフォノン・メーザー砲とやらもどーもビーム兵器なんで、
やっぱ水中じゃあ絶望的でしょう。
となってくるとゾックがその火力を発揮できる場所は水の外、陸上であると言えます。

「水陸両用」と言えば水中でも陸上でもその能力を存分に発揮できないといけない気もしますが…
ゾックの場合、その用途が非常に限定されます。
水の中を隠れるように進み、敵前で浮上、上陸。
正面(?)に4本のビーム砲が発射可能という圧倒的な火力を活かして
敵を制圧する、という使い方です。

水陸両用MSは、水際にいる敵に強襲をかけるのに有効な兵器です。
しかし敵も水辺への警戒は怠りません。
機雷、パトロール艇、哨戒機等、さまざまな手段で海や川からの攻撃に備えます。
上陸し、敵に打撃を与えるにはこれらの防御網を無力化、突破しなければなりません。
機雷を無力化するゴッグのフリージーヤード、敵艦の喫水線下に致命傷を与える
ズゴックやゴッグの強力なツメ、哨戒機などの航空機を攻撃できるズゴックの頭部ミサイル等。
一般的な水陸両用MSは、上陸するまでに水中から攻撃できるような武装を持ちます。
しかしゾックは水中でははっきり言って役立たずです。
見掛け倒し〜。
しかし、上陸地点に強固な防御陣地があった場合。
援護射撃が必要になりますね。そんなときに頼りになるのがゾックのメガ粒子砲!!
その圧倒的な火力で敵を粉砕、が無理でもゾックの援護射撃のもと
他のMSが標的に接近し、死角から攻撃をかける、と。
強襲上陸作戦の切り札ですな。
ジャブローの地下入り口を発見したときのセンサー性能からも、
敵防御陣地を特定するための能力が高いと考えれます。

センサーがどーの、ということは置いといて、
上陸作戦で上陸後の火力支援に使えるけど、上陸前は役立たず。
そんな兵器有るんか?とも思えますが、そんな兵器、実在します。
しかもけっこー役に立ちました。
それは「DD」と呼ばれた戦車です。
時は1944年、第二次世界大戦真っ最中のヨーロッパ。
フランス、ノルマンディー海岸への英米を中心とした連合軍による上陸作戦、
大陸反抗「オーバーロード作戦」において登場しました。
「DD」とはDouble Driveの略…?Dualu Driveだったかな?
資料見ると…あ、違った、Duplex Driveだ。
ま、とにかく「複式の動力」という意味です。
どーゆーことかと言うと、水上も陸上も走れるってことです。
戦車の外側に布製のスクリーンを張って浮力を得て、車外に取付けたスクリューでゆっくり水上を進み、
上陸後スクリーンを下ろしてキャタピラで走行、戦闘開始です。
ちなみに水上ではスクリーンが邪魔で射撃は無理です。ただのマトです。がんばって陸地を目指すわけです。
ノルマンディー上陸作戦の際は、アメリカ製のシャーマン戦車を利用したシャーマンDDが
イギリス軍でも使われ、イギリス軍の上陸地点、暗号名ゴールド海岸でとくに活躍してます。
おかげでイギリス軍の被害は少な目でした。
ところがアメリカ軍の一部が上陸した暗号名「オマハ海岸」ではDD戦車は沖で沈んでしまい、
アメリカ軍第一歩兵師団の被害拡大の一因となりました。
映画「プライベート・ライアン」の冒頭シーンがオマハ海岸です。
他にもドイツ軍がロシア戦線で使用した潜水戦車、戦後にソ連軍やNATO軍で
実戦配備された戦車の潜水システム等がありますが、
こいつらはみんな水中や水上では射撃不能です。
でも上陸作戦で最も危険な地点、海岸線(遮蔽物が無い)において
歩兵にとってスクリーンを下ろしたDD戦車は、すごく心強い存在だったわけです。

話をゾックに戻しましょう。
上陸後の援護用であり、それまでは役立たずって兵器で、
現実的にも兵器として「アリ」ってことは解っていただけたでしょーか。
では次に移動手段について。
前後にあるあの嘴状のパーツですが、コミック版では中に
ウォータージェットと思われる水中用の推進装置が入ってました。
脚部は陸上でのホバ―走行用のシステムです。
シャアの副官のマリガンが、キャリフォルニア工廠からのデータを読み上げる際、
「ジャンプ力はザクの数倍」って言ってましたね。
垂直ジャンプでザクの数倍ならものすごいジャンプ力ですが、
それじゃあロケット花火の打ち上げみたいなもんです。多分無理だと思うし。
おそらく水平ジャンプの距離だと思いますが、
ホバー走行なんだから浮きっぱななんだから、そりゃあ幅跳びは得意でしょ。
でもそれはジャンプじゃないしね。
多分開発技術者が、「ザクの数倍」って言った方が凄そう、と考えたんでしょう。
つまり自分たちの作った自信作のアピールです。
実際はすでにドム等で実用化されてるホバー走行でしかないんですが。
ま、とにかく嘴で水中を進み、脚で陸上を進むわけです。
そーゆー意味ではあの嘴はバックパックと同じ役割ですね。

さて、ホバー走行の利点は、ガンダムの世界観では
重量物を高速移動できる、という点になってます。
連邦のビッグトレーみたいに。
ただ、小回りは効かないでしょうねえ。直線運動には有利だけど。
ここにゾックが前後対称である最大の理由がある、と思います。
複数のメガ粒子砲を装備するにはどうしても機体が大型化し、当然重量もかなりのものに。
大重量物を機動兵器とするにはホバー走行が一番。
でも小回り効かないから、後ろに敵が現れたときに対応できない…
この問題を解決するために出された安直な、かつ大胆な結論、それが後ろにも撃てるように、
という前後対称案なわけです。無茶苦茶です。頭悪過ぎです。
そんなことしたら、余計に重量がかさんで、より大きな動力源が必要になって、
また重くなって…の繰り返しです。

もうひとつ考えられる理由は、断続的に敵に火力を集中するために、
前後のメガ粒子砲を機体を反転させることで冷却、充填しながら交互に使う、というものです。
でもあんな機体で180°反転が瞬時に行えるとは思えません。
よって、これは少々無理があるでしょう。

総括です。
ゾックは上陸作戦の、上陸海岸における強力な火力支援用MSである、と考えられます。
しかし支援用でありながら、単機で運用した場合の不利を考えられ、
杞憂とも言える後方の敵への備えが付加され、その結果非常に独特な姿となりました。
集団戦を戦う上で、特定の任務に特化された機体は、
汎用機体の援護のもと、その汎用機体を援護すればいいのです。
これは、連邦本部ジャブロー内部に侵入した際に味方とはぐれ、敵に遭遇した場合を
想定しているのかもしれませんが、そもそもゾックの火力が有効に活かせるのは
開けた地形、遮蔽物の無い地形です。
「ジャブロー地下」という特殊空間を、ジオン軍がどれだけ意識していたのかが伺えますね。
ゾックを有効な兵器にするには、二枚におろして
前面のみに4門のメガ粒子砲を装備し、下手に突入戦には使わない、というのが一番でしょう。
ま、面白味は無いですが…
上陸作戦の火力支援用として、異形のMSとして生まれたゾックは、
その任務に更に適した異形のMS、ジュアッグやガッシャを生み出すことになったのでしょう。
また、ザメル、ザクキャノン、そしてゾックがキャリフォルニア工廠で開発されたあたり、
地上戦における援護射撃の重要性に気がついたジオン地球方面軍の焦りが感じられます。

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