彼はとても律儀な性格らしく、
別れ際にタバコを交換してくれた‥。

ヘビースモーカーの僕でもこのタバコには手を出せない。






スペインの旅でグラナダと言う街での思い出‥。

大阪の海辺で生まれ育った僕にとっても
我慢が出来ない位のうだるような湿ったい夜の事。

あまりの蒸し暑さに女房をベットに残し、
僕は深夜の街を一人散歩する事にした。

その時の服装は何故かインドの民族衣装。
髪はヒッピーみたいなボサボサのロンゲ‥。

夜の街でたまに擦れ違う白人たちは
まるで「気持ちの悪いもの」を観るような目で僕を避けて通って行く。

今思えばビッグサイズなアジア人が、
そんな格好で歩いてたら確かに怖いわな。
毎日、文化を観るので必死だったから汚かったしね。

そして暗闇の向こうから「HEY!」‥と声がした。
しばらく歩いていくと、
石畳に座って手招きをする同じ年頃の男性の姿。
彼はどうやら浮浪者らしい。
持ち物は壊れかけのスケボーとズタズタのリュックのみ。

なにより驚いたのは顔の半分が
ケロイドの様な‥怪我のような‥剥がれているのだった‥‥。

でも、とても澄んだ蒼い瞳の男だった。

彼の名は「ジョー・カルロス」。
どうやら僕を同じ浮浪者と思ったらしく、
彼はその日のどこかで手に入れたカチカチのピザを僕にご馳走してくれた。
そしてリュックにあった大切なビールまでご馳走してくれた。

正直、不慣れな英語での会話は8年たった今よく憶えていない。
だけど夜明けまで語り合った。

その浮浪者と謎のアジア人を、
たまに通りすぎる白人カップルたちが白い目で見てゆく‥。

初めてのヨーロッパの旅でアジア人というだけで、
少なからずとも差別を経験した僕は、
我慢できなくなり中指を立て奴らに「 FUCK!! 」と叫んでいた。

しばらくして、突然カルロスが泣き出した‥。

「俺は犬なんだ‥。こんな顔をしてるし浮浪者だからもちろん仕事も無い。
 これからもスケボーで人の隙間をぬって走って行くだけの犬なんだ‥。」

この言葉だけは良く憶えている。

彼の人生にどんな事があったのか知らないが、
スペインのどこかの町に家族は居るらしい‥。
そして浮浪者となった今、家族に会うにはためらいがあるらしい。

僕はただ彼の手を握りしめる事しかできなかった‥。

色々とご馳走になってばかりでは申し訳ないので、
マイルドセブンをプレゼントした。
こんな時はどうすれば良いのだろう?
ポケットの中にお金はあるけどそれは何故か渡せない。

同じ世代で、住む世界の違う二人の違い‥。
彼は、今日も冷たい石畳の上で寝る。
僕は、今日も後ろの角を曲がった所にあるホテルのベットで寝る。

それに気付いた時、とても切なかった‥。
創作徒然

28.  グラナダのジョー・カルロス   (2006.04.06)

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