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大会6日目 - 9月22日(水)ダイジェスト

 コラム
タンデムに賭けた2人〜大城竜之と丹沢秀樹の挑戦〜
スポーツナビ / 文=西澤洋之

最後まで全力で戦った大城竜之(右)と丹沢秀樹のコンビ【スポーツナビ】 写真を拡大する
最後まで全力で戦った大城竜之(右)と丹沢秀樹のコンビ
【スポーツナビ】
「アテネで金メダルをとる」
 現地に入る前の記者会見で、今大会初出場ながらきっぱりと言い切った自転車競技の大城竜之と丹沢秀樹の2人。この目標を達成するためにコンビを組み、3年以上の時間を費やして、支え合ってきた。「世界最高レベルにいる」と自負し、世界記録更新に向かって、自信を持って臨んだはずだったパラリンピック。初めて知る大舞台は、世界の壁は――。

■届かなかった0.385

 1周250メートル、最大傾斜43度、美しい板張りの高速バンクを4周し、純粋にタイムを競う1kmタイムトライアル(視覚障害)決勝。すでに1分5秒台の好タイムを3人がマークし、17番手でスタートラインについた2人の表情は硬く、気合か緊張かやや強ばっているように見えた。
「スタートが大事だと思います」
 レース前に大城自身が語ったように、2人のスタートダッシュがぴたりと決まるかがその後の加速に大きくかかわる。一発勝負なので失敗は許されない。そして、その加速をいかに4周の間、効率よく維持し続けられるか。筋力、持久力、そして2人のコンビネーションが勝敗を分けるはずだ。

 スタートはまずまずだった。丹沢の動きに連動して大城がペダルを全力でこぐ。1周目(250m)のラップは20秒496で全体の4位。加速もスムーズで750mのラップタイムは49秒706、全体3位でメダルが射程に入ったはずだった。しかし、最後の1周にややペースが落ち、最後は1分5秒915で4位という結果に終わった。
「最後の1周の力がありませんでした。また、硬くなってペダルに力が入らない部分もありました」(大城)
「こっちに来てから、今までの自分たちじゃないような感じだった。メダルをとるにはあと一歩何かが足りなかったのだと思います」(丹沢)

 タイムは自己ベストだった。
 しかし、わずか0.385秒、メダルには届かなかった。

■「あの大観衆の中で自分も走りたい」

 前のペダルを回すと同時に、後のペダルが連動して回る「2人乗り自転車」でスピードを競うタンデム種目。一人ひとりがバラバラにペダルをこぐことはできない分、2人の息が合ったときのスピード感は想像以上、トップ選手の最高時速は時速60kmを軽く超える。 今回優勝した豪州ペアのタイム(1分5秒141)は、五輪の男子1kmタイムトライアルの16位に相当し、五輪の優勝タイム(1分0秒711)の差は5秒弱。個人とタンデムの差はあるものの、スピード感は五輪競技に匹敵する。

 このタンデムはパラリンピックでは視覚に障害を持つアスリートの競技として採用されている。大城さんの眼は網膜色素変性症という病気で、暗くなると眼が見えにくくなり、視野が狭くなっていき、視力も落ちていく。現在も状態は徐々に進んでおり、人の顔を見ると顔は見えるが手元は見えない。スポーツをするには極めて危険な病気だが、パラリンピックのタンデムでは一般のアスリートがパイロットとして前の座席で、視覚に障害を持つアスリートが後部座席でペダルをこぐ。だから、パイロットととの信頼関係があれば「全然怖くない」。
 前回シドニー大会で同じ症状を持つ葭原滋男が1kmタイムトライアルで金メダルをとったシーンを見て「あれならできる。あの大観衆の中で自分も走りたい」と心は決まった。

■もう1人の挑戦者

 シドニーの同じシーンを見て感動し、パラリンピックを志した男がもう一人。この3年強、その大城選手の“目”となり競技を支えてきた丹沢秀樹だ。葭原滋男選手とパイロットの水澤耕一さんペアを見て「かっこいい」と思った彼は、東京大学の大学院で環境学、科学プラントで爆発事故が起きないようにするための研究をしているバリバリのエリートでもある。

 高校から自転車を始め、主にトラック種目をやっていたが、インターハイはもう少しのところで出場できず、その悔しさから、大学でも自転車部、現在も実業団に所属して競技を続けている。しかし、「まだ自分自身が納得できる成績を残していない」と彼は言う。シドニーで見た「水澤さんのようになりたい」という気持ち、そしてこの3年間は「パラリンピックの金メダルだったら納得できるんじゃないか」と思いながら、毎週3〜4日の合宿もいとわず、「金メダルをとること」に賭けてきた。

 また前回シドニー大会金メダリスト、葭原滋男選手の今大会のパイロットを務める大木卓也は、葭原より18歳年下で全日本実業団選手権ケイリンの部で2連覇したトップクラスのアスリート。パラリンピックは障害者だけの大会ではなく、そこに参加する人が、それぞれの思いを抱いて戦っている。

■たくさんの可能性と魅力

 レース後、大城は涙をこらえることができなかった。丹沢も目を真っ赤に腫らした。彼らは本気だった。本気で世界の頂点に挑み、惜しくも敗れた。

「(流れているのは)悔しさ(の涙)です」(大城)

 目標を達成できなかった悔しさ、自分たち本来の力を発揮できなかった悔しさ、きっとさまざまな思いが去来したのだろう。しかし、彼らにとっては本意ではないかもしれないが、彼らの涙は美しかった。「丹沢君がいなければここまでこられなかった」と大城は感謝する。お互いに支え、支えられ、頂点に挑む2人はまぶしかった。
 
 タンデムには、タイムトライアルだけではなく、先日葭原選手が銅メダルを獲得したスプリントなど相手のいるレースもあり、こちらもおもしろい。そして当然のことだが、タンデムは視覚に障害がなくてもできる。障害を持っていたとしても、同じ土俵で勝負できる。そこにかかわる人々の思いを含め、たくさんの可能性と魅力を持っている。


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