総合学習−ウェビングを考える
1 自らの学びをふり返り,成長を実感し,新たな課題を発見する「ウェビング」
新教育課程の全面実施により,それぞれの学校では,子どもたちの実態や地域の特色を生かしながら,「総合的な学習の時間」に取り組んでいます。学年の系統性を考慮した単元設定をどうするか,一人一人が主体的に学習に取り組むにはどのような事前準備や人的な配置が必要か,活動の時間や場所をどう確保するか,様々な悩みを抱えながら実践を進めています。
そのような悩みの中でも,とりわけ「どのように課題設定をさせていくのか」ということで,先生方が悩んでいます。
試行錯誤の中で,多くの小・中学校が「ウェビング」を活用した課題設定に取り組んでいますので,「ウェビング」について少し考えてみたいと思います。
(1) まず,教師の課題設定能力を高める努力をしよう
子どもたちの課題設定能力を問う前に,まず【教師の課題設定能力を問うこと】から始めなければなりません。
21世紀も3年目を迎えますが,子どもたちにとってはもちろんのこと,教師にとっても,環境や福祉・健康,国際理解,少子高齢化社会,地域の自然や史跡,風俗習慣,文化,農業や漁業など,さまざまなことがらに自らかかわりを求め,理解を深めていくことが今後ますます求められてきます。
私たちは,新聞やテレビ番組,インターネットなど,多くのメディアを利用して,上に述べたような今日的な課題について,多種多様な情報を得ることができます。しかし,それらの情報に基づいた理解は「頭の中」での理解に過ぎません。「頭の中」での理解は,どうしても一面的で表面的な理解にとどまってしまいます。
そのような限界を乗り越えていくキーワードは直接体験ではないかと思います。
教師自身がいろいろなことに興味をもち,積極的に直接体験の機会を持つことが大切だと思います。頭で考えることの他に,手や足,目,耳,鼻などの五感を働かせて考え,感じ取っていく姿勢を持ちたいものです。
実際に現場に入って体験することによって,事実に即してものごとを見る目が鍛えられ,子どもたちに具体的にアドバイスしたり,子どもたちの学びをリードしていく力が身に付いていくのです。
また,自分が実際に体験することによって味わった感動を,子どもたちに伝えたいという意欲も強くなってきます。自らの中に「子どもたちに伝えたい何か」を常に持つ努力を続けることは,教師としてのもっとも基本的な資質ではないかと思います。
まず,教師自身が直接体験のもつ意味をしっかり確認したうえで,ウェビングについての考えを進めていきましょう。
(2) まず教師がテーマに基づいて,ウェビング→「総合的な学習の時間」にチャレンジしよう
ウェビングの手法は,「総合的な学習の時間」の課題設定の段階で広く取り入れられていますが,その特長や留意すべき点についての理解はあまり深まっていないように思います。私自身も確かな理解と言うにはほど遠い段階にあります。
「望ましい課題設定の在り方やウェビングの効果的な活用法」を知りたいという気持ちは,多くの方が持っていると思います。
あれこれ文献にあたるのも結構ですが,「ウェビングってどんなものかやってみよう」ということで,教師自身が体験することから始めてはいかがでしょうか。
子どもたちにウェビングを行わせる前に,まず,教師が単元のテーマに基づいて課題発見−課題設定のためのウェビングを行うことをお勧めします。
その時に留意したいことは,
@ 頭で考えたことを記入することを極力避けること
A 子どもたちが身近に見たり,聞いたり,触れたりしている,具体的なことがらを記入していくこと
の2点です。
このようなことに留意しながら,これから取り組もうとするテーマを中心に据えて,教師自身が「かかわりのくもの巣」を広げていくのです。そして,実際に課題を設定し,子どもたちが学習を展開する同じフィールドで課題追究を行うのです。
「総合的な学習の時間」を実際に体験してみることによって,「地域の人や自然,もの・こととの出会いの喜び」「設定した課題や追究方法の良し悪し」「新たな気付きや発見」「追究することの難しさや面白さ」などを,実感を伴って理解することができるはずです。そして,それらすべてが,その後の指導に生きてくるはずです。
教師の側にこのような「総合的な学習」の体験があれば,インターネットや図書などの二次情報に頼り過ぎることなく,「自分の足で調べ,目や耳で直接確かめ,心で感じたこと」を基にして子どもたちの「学び」がかたちづくられていく「生きた総合学習」が生み出されてくるのではないかと期待しています。
(3) 学年スタッフでウェビングを行い,単元指導計画を作成する
学年のスタッフなどの複数の教師によるウェビングで,単元指導計画を立案することも価値ある取組です。
これまでも学年部での話合いの中で,ブレーンストーミングを行ったり,KJ法を行ったり,あるいはそれに近い方法を用いたりして,アイデアを出しあい単元指導計画を作成してきていると思います。
複数の教師でウェビングを行うことで,発想に広がりが生まれるとともに,共通理解が深まり,指導の筋道がはっきりしてきます。
また,発展性のある課題は何か,課題設定にあたって子どもたちにどのような支援をすべきか,など,予め予想することが可能となるため,子どもたちの学びをより豊かなものへと導くことが可能となります。
さらには,ウェビングそのものの進め方についても,「これはうまくいかない」「このことに気を付けるとうまく課題を焦点化することができる」などの経験が蓄積され,より適切な支援が可能となります。
2 メタ認知能力を育てるウェビング
一般にウェビングは「課題設定」のための方法と考えられがちです。しかし,実はまとめの段階でこそ,ウェビングの威力が発揮されます。子どもたちがウェビングに取り組む場合は,まとめの場面でも是非ウェビングを作成させたいものです。
【学習の始めの段階で作成したウェビング】と【まとめの段階で学習の成果を十分に生かして作成したウェビング】を比較することによって,子どもたちは自分の成長をはっきり実感することができます。
【まとめの段階で作成したウェビング】は,くもの巣の網の目が,一層細かく張りめぐらされているだけでなく,外への広がりも一段と増しているため,【課題設定の際に作成したウェビング】と較べたときに,自分の学びの深まりと広まりが一目瞭然となるからです。
教師や友だちの評価で「学び」の深まりを実感することも大切ですが,自分の目で自分の成長をしっかりとらえることができることは,さらに重要です。
自分の学びについて,的確な自己評価を行い,新たな課題を発見していく,そのような力がつけば「総合的な学習の時間」のねらいはほぼ達成されたといって差し支えないと思います。
自分の学びの意味を見つめる客観的な目,つまり「メタ認知能力」を育てる有効な手法としても,ウェビングを大いに活用したいものです。
3 興味・関心を組織する「ウェビング」
上智大学文学部教授の加藤幸次先生が『社会科教育』1996・12月号に寄せている論文「諸外国における総合学習の歴史」の中に,ウェビングが生まれた経緯とその特長について触れられた項があるので参照されたい。