日本で治験中が進んでいる抗てんかん薬・海外で使われている抗てんかん薬

 

 田中正樹

はじめに

 日本では、ゾニサマイドが1989年に、クロバザムが2000年に、ガバペンチンが2006年に承認されて販売されました。海外では、このほかにもビガバトリン、オクスカルバゼピン、ラモトリジン、フェルバメート、トピラメート、タイアガビン、レベチラセタム、プレガバリンなどがすでに臨床で使われています。トピラメート、ラモトリジン、レベチラセタムについては日本でも治験および申請準備が進んでいます。

 ここでは、欧米ではすでに使われている抗てんかん薬の中で、I. 日本で治験および申請準備が進められている抗てんかん剤、トピラメート、ラモトリジン、レベチラセタムについて、II.日本での治験は進んでいない抗てんかん薬、オクスカルバゼピン、フェルバメート、タイアガビン、プレガバリンについて III.日本での治験が中止になった薬ビガバトリンについて説明したいと思います。

機ヽこ阿脳鞠Аθ稜笋気貽本で治験中あるいは承認申請中の薬

1  トピラメート

トピラメートは米国で創製された抗てんかん剤です。1995年7月にイギリスで承認されて以来、20051月現在、英国や米国を含め世界79カ国で承認あるいは発売されています。日本では1991年から協和発酵工業株式会社が開発を始め、第三相臨床治験を終了して承認申請がすすめられています。

Rosenfeldらが行った治験では、成人の難治部分てんかん167症例に対し投与量を最大1000mg/dayまで漸増して効果をみています。その結果、症例の6%で発作が完全に抑制され、症例の25%で発作が75%以上減少、症例の52%で発作が50%以上減少しました。このほかの成人の難治部分てんかんを対象とした報告でも、発作が50%以上減少した症例は31%から51%でplacebo群に比較して有意に発作が減少していました。投与量については、200mg/dayの投与群ではplacebo群と有意な差がなく400mg/day以上の投与群では有意差がみられました。小児の難治部分てんかんに対する効果は、6mg/kg/day(成人では270mg/dayに相当)が投与された治験では50%以上発作が減少した症例が39%であったのに対して、9mg/kg/dayまで投与量を増加できた症例では、症例の64%において発作が50%以上減少しました。

Bitonは若年性ミオクロニーてんかんの症例の73%で、50%以上強直間代発作が減少したと報告しています。レンノックスガストー症候群の転倒する発作に対して有効であったとする報告や、レンノックスガストー症候群の患者や患者家族の53%が発作に対して有効性を認めたとする報告もあります。これらの報告をもとに考えると、難治に経過している部分てんかんのや全般てんかんの患者さんの治療に使えそうです。

副作用は中枢神経系に関するものが多く、頭痛、集中力の低下、傾眠、食欲不振、倦怠感、めまいなどが30%の症例でみられ、体重減少が25%の症例でみられています。出現頻度は少ないですが腎結石の報告もあります。

 

2 ラモトリジン

ラモトリジンは、英国ウエルカム社(現、英国GlaxoSmithKline社)で開発された抗てんかん剤で、すでに成人てんかんに対する治療剤として100カ国以上で承認されているほか、小児てんかんに対する治療剤としても68カ国以上で承認されています。日本では現在、日本グラクソスミスクライン社が治験および申請準備をしています。

Jawadが行った成人24例難治の部分発作を対象とした検討(投与量は75mg400mg/day)では21例が治験を終了し、部分発作ならびに二次性全般化発作はplacebo群と比較し有意に減少していました。発作頻度が50%以上減少した症例は12例(57%)でした。このほかの報告では、部分発作の頻度が50%以上減少した症例の割合が19%から71%で報告によってばらつきがありました。本剤は部分発作のみならず全般発作に有効だといわれています。Schapelらは難治の小児てんかん症例に本剤を投与した結果、全般てんかんの症例の68%で発作頻度が50%以上減少したと報告しています。
 副作用として頻度が高いのは中枢神経系に関するもので、めまい、複視、失調、傾眠、無力症が多く、このほかに斑状丘疹が5%程度の症例で服用後4週間以内に出現すると報告されています。この皮膚症状にはリンパ節腫脹、全身倦怠感、発熱、好酸球増加を伴うこともありますが、入院してステロイド投与が必要となる症例は少ないと言われています。

 ラモトリジンはフェニトインやカルバマゼピンやフェノバルビタールやプリミドンと併用するとラモトリジンの半減期は短縮され本剤の血中濃度は低下し、バルプロ酸と併用すると本剤の血中濃度は高くなります。バルプロ酸を服用している症例では、ゆっくりと投与量を増やす注意が必要です。

3 レベチラセタム

本剤は1980年代にベルギーのUCB S.A.社で開発された。200511月現在すでに70ヶ国で承認または販売されている(図3)。日本ではユーシービージャパン株式会社が第三相臨床治験を進めています。

Cereghinoらがおこなった成人の難治の部分てんかんの対する二重盲検試験では、50%以上発作が減少した症例は1000mg/day投与群では33.0%3000mg/day投与群では39.8%でいずれもplacebo群よりも有意に発作が減少していました。このほかの成人の部分てんかんに対する治験でもほぼ同様の発作抑制効果が見られています。小児(6-12歳)23例のオープン試験(20-40 mg/kg/day投与)の結果では、52%の症例で発作が50%以上抑制されたとの報告があります。また本剤は光過敏性を示す症例の脳波上の光過敏反応を抑制したとの報告があります。また特発性全般てんかんの難治例に対して有効との報告があります。

投与中に眠気、めまい、無力感、頭痛、頭痛、感染、鼻炎などが20%の症例で報告されているます。レベチラセタムは既存の抗てんかん剤の血中濃度に対する影響はほとんどありません。

 

II 海外で発売されているが日本では治験が進められていない抗てんかん薬

1.オクスカルバゼピン

オクスカルバゼピンはカルバマゼピンの類似体で50カ国以上において承認され、ヨーッロパでは10年以上前から,アメリカでは2000年に販売され使われています。本剤は、体内で10monohydroxy metabaolite(MHD)に代謝されこれが抗てんかん作用を示すといわれています。

新規に診断された部分てんかんに対して、既存の抗てんかん薬であるフェニトインあカルバマゼピンとほぼ同等の効果があるとの報告があります。また難治の部分てんかんの症例に対する追加投与試験でもプラセボ群よりも効果があったようです。

副作用がカルバマゼピンに比較して少ないといわれています。カルバマゼピンに対して過敏性を示す症例(薬疹が出現した症例)に対しても使用できます。用量依存性の副作用としては、カルバマゼピンと同様に倦怠感、頭痛、めまい、失調などがあります。

 

2.フェルバメート

 フェルバメートは1993年アメリカで部分発作てんかんに対する治療薬として承認され、ヨーッロパでも使われてきました。発売後に、再生不良性貧血や肝不全の発現頻度が高いことが指摘されました。このため現在では、レンノックスガストー症候群と診断がついた症例で、他の抗てんかん薬に抵抗性を示す症例に限定的に使用されています。

3.タイアガビン

 タイアガビンは1997年にアメリカで部分てんかんに対する治療薬として承認されました。 成人の部分てんかんに対する追加投与では、50%以上の発作減少があったのはタイアガビン服用群の23%、プラセボ群の9%でした。副作用としては、中枢神経系のものとして、めまい、無力感、不安、振戦、抑うつ、感情不安定などが、消化器系のものとして下痢がプラセボ群よりも高かったと報告されています。またタイアガビン作用機序はビガバトリンと同様に、シナプス間隙のGABA濃度を増加すると考えられるために視野障害の出現が懸念されています。

 有効性はあるものの、発売後の間もないこと、これまでの報告では副作用の発現が高いことなどから、服用するときには、少量ずつの増量を行うことや、てんかん重積の症例や、行動障害や抑うつの既往がある症例には慎重に投与する必要がありそうです。

 

4.プレガバリン

プレガバリンは現在海外で第三相臨床治験が行われており、2004年にアメリカで承認されました。難治の部分てんかんに対する追加治験が行われ、プレガバリンを一日150mg300mg600mgを投与した結果で用量依存性に発作が抑制されました。プレガバリン一日600mg投与によって、50%以上発作が減った症例はほぼ50%でした。副作用については、めまい、眠気、失調、複視、振戦、集中困難などの出現がプラセボ群よりも有意に高かったようです。

III 日本での治験が中止された抗てんかん薬

ビガバトリン

ビガバトリンは、中枢神経系の主たる抑制物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)を増強する抗てんかん剤として開発されました。1989年にイギリスでてんかんに対する臨床使用が認可され、現在は60ヶ国以上の国で市販されています。

日本では1990年からビガバトリンの臨床治験が始まり、200人前後の難治てんかん患者がこれに参加しました。しかし不幸なことに、1996年にビガバトリンによる視野狭窄が報告されたことを契機に日本での治験は中止されました。

 しかし点頭てんかんに対してビガバトリンが高い有効性を示すという報告があります。Aicardi250例を対象とした後方視的研究では、ビガバトリンを投与された68%の症例でが抑制されていた。また点頭てんかんの中でも特に難治とされる生後3ヶ月以前に発病した症例の90%、結節性硬化症を合併する症例の96%で有効であったといわれています。結節性硬化症に合併した点頭発作に対する効果は、Ciron92%、Aicardi96%、Etermann92%と報告しています。Luxらの前方視的研究では、治療開始後12?14カ月後の発作抑制率はビガバトリンとACTH療法では同等であったものの、どちらの群でも無効例や再発例にもう一方の治療法を試みると、75%で反応したと報告しています。

 以上をまとめると、海外ではビガバトリンは点頭てんかんに対しACTHと同等の効果を示し、基礎疾患として結節性硬化症をもつ症例ではACTHよりも有効性が高いと考えられます。また、ACTH療法に反応しない症例や再発例でもビガバトリンが有効な例が多く、難治例ではACTH療法とビガバトリンの両方の選択肢があることにより、全体の発作抑制率が向上すると考えられます。日本でも対象を限定したビガバトリンの使用についての検討が期待されるところです。

新しい化合物について

 次世代の抗てんかん薬として、現在市販されている抗てんかん薬の類似物質や、まったく新しい化合物が候補として上がっています。レベチラセタムの類似体であるブリバセタム と セレトラセタム、バルプロ酸の類似体の バルロセマイドやバルノクタマイド, フェルバメート 類似体のフルロフェルバメートや、オクスカルバゼピン類似体のリカルバゼピン, およびその前駆体のアセテートBIA 2-093などがあります。これまでの抗てんかん薬とは構造がことなるものとしてはラコサマイドや カリウムチャネル開口剤であるレチアガビン、メカニズムは不明ですがルフィナマイドなどがあります。

 

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