水路雑誌 in 1883



下記の写真は国立国会図書館所蔵『水路雑誌』の16号-25号と41号-49号の背表紙である。この『水路雑誌』では、江戸時代に松島と言われていた呼称が、現在の竹島に対してではなく鬱陵島に対して使われている。その鬱陵島(松島)記述が出てくるのが16号と41号であり、第16号は1879年に軍艦・天城が松嶋(欝陵島)の経緯度を確認し、第41号は1880年、軍艦・天城の再調査を記録、東海岸の地図に竹嶼を掲載した。そしてこれら水路雑誌は1883年に纏められた。











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松島
此島は洋中の一孤島にして、我隠岐国隠岐島より北東二分一、東一百三十四里、長門国角島より北二分一、東一百八十五里、釜山浦より北西四分三、北二百六十五里の処に在り。全島巖石より成るものの如く、而し樹木蔚然、周囲は絶壁多く唯南東面に少しく平坦なる処あり。我輩の此に到るや土人の小舎を構へ漁舟を造るを見たり。他の浜岸は小舟と雖も近つく可らさるか如し。東方に一小嶼あり。且奇石怪巖島を環らして星羅せり。我艦航走中此島頂の高度を測りて二千三百九十一尺を得たり。

六月廿九日、我艦隊の該島に赴くや、洋中に於て吉田中尉は正午、本艦所在を実測し、北緯三十七度四十八分を得、又、午前七時五十分に太陽高度を測りて本艦所在の東経一百三十度三十二分を得たるに據り、正午経度を推算せり。是より針路を東南二分一、南に變し水程儀を以って測るに、航走二十里、即ち松島を距る凡そ二里の處に達し、該島の中部を正南に望む。是時又太陽高度を測り本艦所在の経緯を算し、北緯三十七度三十二分四十五秒、東経一百三十度四十九分を得たり。 右の記事は明治十一年、海軍少佐・松村安種、天城艦を以って朝鮮海へ回航の際、其乗員海軍大尉・山澄直罅海




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軍少尉補・小林春三、同福地邦実験筆記する所に係る。今後此地を航する者は、宜しく此に一致する所の海図を参観し、綿密に其状勢を考察せんを要す。

明治十二年三月 海軍水路局



















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鬱陵島(一名松島)
該島は我隠岐を距る北西四分の三、西約一百四十里、朝鮮江原道海岸を距る約八十里、洋中に孤立し全島嵯峨たる円錐形の丘陵集合して、樹木之を蔽う。而して其中心北緯三十七度二十二分、東経一百三十度五十七分、露測に據る。 最高山は高さ四千尺、島の周囲十八里、其形ち殆んど半円に似て其径東微北より西、微南に六里四分




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の一、其の両端より海岸線は突然南方に屈折し、逐次に東西に曲り、島の南岬「セール」埼に至る。少しく岸線の出入あり。該岬を離れて一小岩あり。甚だ低し。沿岸は散布せる岩石夛敷ありと雖も、其北岸及び東岸にあるものは其の高さ或いは四百尺及至五百尺に達するあり、皆該島に以って陡岸なり、而して投鉛して以って其深浅を戒むに及ばず竹嶼(朝鮮人之を竹島と云う)を除くの外一岩嶼の岸より二鏈牟を出る者なし。竹嶼は此島の近海にて最大にして島の東海岸を距る。七鏈竹嶼の北方約五鏈に一嶼あり。北方に向て洞穴二個並列す。此嶼の北東に方り約二三鏈の地に礁石一坐あり。近く可かをす「ホール」厳は島の




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北岸にあり。大なる洞穴あり、又之に臨める陸岸には丘陵あり。滑面禿兀峻険にして其地形笋の如く又筆の如く之を見るに花崗岩ならん。其頂上に葛及苔を装す。其高さ八百尺。該島の辺海は陡岸にして英艦「アクテオン」号の端舟独り其の水深を探り得たり。又島の南方四里の地にて深さ四百尋、海底に達せす。又島の北方二里四分の一にて三百六十六尋海底に達せさりしと云う。沿岸には一の港湾なく、然れども好天気には竹嶼の南南西四分の一、西に方る小湾に假泊し、礫石の濱に上陸するを得るの地あり。蓋し北東風にては縦令ひ軽軟にても甚だ困難なり。該湾は海底峻険二十尋より直ちに十尋となり、岸に接しては六七尋、底質は皆な砂なり。其他此島の海岸八九は上陸を得るの地なり。該島には樹木多数、槻・桑・椿等あり。槻、最も多し。甚だ僅少の香木あり、又虎斑に類せる。




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※「如」は音読みで「ショ」「ジョ」、訓読みで「ごと」し
※「而」は音読みで「ジ」「ニ」、訓読みで「しか」して、「しか」も
※「雖」は音読みで「スイ」、訓読みで「いえど」も
※「據」は音読みで「キョ」「コ」、訓読みは「よ」る
※「變」は音読みで「ヘン」、訓読みで「か」わる
※「凡」は音読みで「ボン」「ハン」、訓読みで「すべ」て、「およ」そ
※「處」は音読みで「ショ」「ソ」、訓読みで「ところ」
※「蔽」は音読みで「ヘイ」「ヘ」、訓読みで「おお」う
※「埼」は音読みで「キ」「ギ」、訓読みで「さき」
※「夛」は音読みで「タ」、訓読みで「おお」い
※「戒」は音読みで「カイ」「ケ」、訓読みで「いまし」める
※「禿」は音読みで「トク」、訓読みで「はげ」「は」げる
※「笋」は音読みで「シュン」「ジュン」、訓読みで「たけのこ」
※「苔」は音読みで「タイ」「ダイ」、訓読みで「こけ」
※「陡」は音読みで「トウ」
※「蓋」は音読みで「ガイ」「カイ」、訓読みで「かさ」「ふた」
※「槻」は音読みで「キ」、訓読みで「つき」
※「斑」は音読みで「ハン」「ヘン」、訓読みで「まだら」「ふ」