7−2.大気大循環

 前節で説明したとおり、地球上の熱の不均衡を解消するために、様々な熱輸送が行われています。以下ではその中でも大気による熱輸送に焦点を当てたいと思います。

 暖かい空気は密度が小さい分だけ上昇しやすく、冷たい空気は逆に密度が大きい分だけ下降しやすいという性質を持っています。今、赤道付近の空気が太陽放射によって特に暖められたとすると、この空気は上昇します。しかし、上昇した空気はどこかで下降しなくてはなりません。ある程度の緯度まで達すると、この空気は下降することになります。このような仕組みにより、南北方向に一種の循環が生じることになります。これを子午面循環といいます。地球には仮想的には北半球・南半球それぞれに次の3つの子午面循環が存在します。

  • ハドレー循環:最も低緯度に存在する循環。低緯度側で上昇し、高緯度側で下降する直接循環
  • フェレル循環:中緯度に存在する循環。高緯度側で上昇し、低緯度側で下降する間接循環。南北にある直接循環によって、見かけ上あるように見える循環。
  • 極循環:高緯度に存在する循環。低緯度側で上昇し、高緯度側で下降する直接循環。

 この3種類のうち、ハドレー循環を除いては現実にその循環がはっきりと現れることはありません。大気の流れを平均的に見たときに、初めて循環が存在することがわかります。実際の大気の流れは、この単純なモデルとは違って、もっと複雑なのです。

 しかし、このモデルは熱を始めとした物理量の南北方向の輸送を考える上でたいへん便利です。例えば、水蒸気の輸送を考えることができます。

 子午面循環において、空気が上昇しているところでは地上付近でまわりから空気が収束することになるため、水蒸気が大量に運ばれてきます。この水蒸気が上昇して雨を降らせるため、こうした地域では水蒸気の蒸発量よりも降雨量の方が多くなります。赤道付近にある熱帯収束帯がその例です。

 逆に、子午面循環において空気が下降しているところでは、地上付近で空気が発散しているため、水蒸気が外へ運ばれていくことになります。こうした地域では降雨量よりも蒸発量の方が多くなります。中緯度の乾燥地帯がその例です。

 このモデルで考えられた水蒸気の収支は、実際に観測されている量とほぼ一致します。大気大循環のモデルがいかに有効であるかがわかると思います。