5−1.ガイダンス

 数値予報で得られる結果は、ただの数値です。これをおなじみの「天気」に直す作業が必要になります。こうした作業を支援する資料に、ガイダンスと呼ばれるものがあります。これは、数値予報の結果から統計的な手法を用いて、卓越天気・降水量・降水確率・最高気温・最低気温・大雨確率などを算出したものです。00UTCと12UTCを初期値とした数値予報の結果をもとに、1日2回作成されます。

 実際に発表される予報は、このガイダンスに加えて、初期値以降の新しい情報も考慮して発表されます。数値予報がそうであるように、ガイダンスもやはり量的な予報よりも現象の起こる確率の方が高い精度で予想できます。ガイダンスを作成する手法には、大きく次の3つがあります。

  1. MOS方式
  2.  数値予報の予測結果を予測因子とし、それに対応する予報したい各種の気象要素を被予測因子とします。この両者の間の関係を線形重回帰式によって表し、その関係からガイダンスを作成します。数値予報の予報値に含まれる系統的な誤差は取り除くことができます。ただし、擾乱自体の位相(擾乱を波動と見なした時の位相のこと)のずれは修正することができません。また、関係式を求めるためには、ある程度の期間のデータ(数値予報の結果と実際の気象要素の両方)を集めなければならないので、数値予報モデルが変更されるとその度にガイダンスを作り直すことになります。

  3. カルマンフィルタ(KLM)
  4.  実況と数値予報結果の間の関係を線形重回帰式で表します。ただし、MOS方式のように作りっぱなしというわけではなく、運用している間にも線形重回帰モデルのパラメータを変化させます。このため、数値予報モデルが変更されても、比較的柔軟に対応することができます。しかし、この手法でも擾乱の位相のずれは修正できません。降水量、降水確率、最高・最低気温などの予報で利用されています。

  5. ニューラルネット(NRN)
  6.  上に挙げた二つの手法とは異なり、実況と数値予報結果との関係を繰り返し学習させながら求めます。線形的な関係はもちろん、非線形の効果も取り入れることができます。数値予報モデルに変更があっても柔軟に対応できます。ただ、この手法も擾乱の位相のずれは修正できません。卓越天気、最小湿度、大雨確率などの予報で利用されています。

1996年まではMOS方式を用いていましたが、最近はカルマンフィルタやニューラルネットが主流になっています。いずれの手法も統計的な方法であって、気象学的な因果関係から求めているわけではありません。気象学的な立場から言えば、やや不満の残るところです。