千葉市美浜区と稲毛区を結ぶ高規格道路「新港横戸町線」建設の記録。

【コラム】新港横戸町線を造った新技術

新港横戸町線では最新の建設技術がふんだんに用いられ、工期の短縮や安全性・施工品質の向上に寄与している。本ページではその中から特徴的である3工区の京成千葉線下のトンネル建設に用いられた「HEP&JES工法」と3・4工区の下水道移設工事に用いられた「推進工法」の2つについて解説する。

■HEP&JES工法

HEP&JES工法(High Speed Element Pull & Jointed Element Structure)は営業中の鉄道路線の下に安全かつ迅速にトンネルを建設するためJR東日本が開発した工法である。手順は以下のとおり。



1、線路の両側に機械を設置するため盛土を切り取る。(平地の場合は立坑を掘削する。)
2、前面に掘削装置が付いた鋼製エレメントを発進側に設置し、線路下を貫通させたPC鋼より線(ワイヤ)を介して到達側のけん引装置と接続する。
3、けん引装置で鋼製エレメントを引き、発進側の排土装置で土砂を吸引しながら線路下を掘削する。(簡単に言うと「くり抜く」ということ)
4、鋼製エレメントは内部にコンクリートを充填してそのままトンネル躯体とする。(エレメント同士は継手で締結されているため、十分な強度がある。)
5、トンネル内に内装を施して完成

HEP&JES工法の利点は線路下を非開削で高速掘削できること、ワイヤでエレメントをけん引するため蛇行が少なく精度の良い施工が期待できること、掘削機をそのまま構造物として利用できることの3点である。特に列車本数が多く開削工事が困難な線路下を掘削する場合に威力を発揮しており、首都圏を中心に急速に施工例を増やしつつある。一方で、掘削面を人の目で確認することができないため、掘削時に土砂のバランスを崩して陥没を生じさせたり、コンクリート充填時に圧力を高めすぎて隆起を生じさせないよう細心の注意を払う必要がある。実際、2006(平成18)年の2月から4月にかけてこの工法で工事を行っていた山手線や青梅線で相次いで線路の陥没や隆起が発生し、列車が長時間運休する事態となっている。

参考:
第一建設工業株式会社/技術レポート:HEP&JES工法(リンク切れ)
京成建設株式会社:現在のプロジェクト「黒砂アンダーパス工事」
JR東日本:プレスリリース「線路下道路トンネル工事に伴う輸送トラブルの原因と再発防止対策について」(PDF)

■推進工法

推進工法は円形のトンネルを短区間・非開削で建設するための工法である。手順は以下のとおり。



1、掘削機の発進と到達のための立坑を掘削する。
2、発進立坑に掘削機をセットする。掘削機の前面には回転しながら土砂を削り取るカッターディスクが付いている。掘削開始時には立坑内にジャッキを設置して掘削機を地中に押し込んでいく。
3、掘削機が完全に地中に入ったらにトンネル本体となる推進管(ヒューム管など)を掘削機の後方にセットし、ジャッキで地中に押し込んでいく。
4、以後、推進管を継ぎ足しながら到達立坑まで掘り進んでいく。

推進工法は非開削でトンネルが設置できることから、交通規制を行いにくい市街地での水道管・下水管などの設置工事に使用されている。推進管を地中に押し込む際に発生する摩擦力の関係上、そのままでは立坑の間隔はあまり大きく取れない。このため、立坑を複数設けたり(完成後はマンホールに転用する)、トンネル内に中継のジャッキを追加して摩擦力に対抗する方法も利用されている。なお、この新港横戸町線ではトンネル内径が3.5mと推進工法では世界最大径となるため、全長362mのうち174mで世界初の上下2分割形の推進管を使用している。
ちなみに、推進工法とよく似たものとして地下鉄建設に用いられている「シールド工法」があるが、こちらは掘削機(シールドマシン)にジャッキを設け、トンネル本体(セグメント)を反力受けとして掘削機自身の力で地中を掘り進んでいく工法である。

参考:
奥村組|ニュースリリース|世界初の超大口径管推進を回収型掘進機「やどかり君」で施工
世界最大径の推進工法で進む千葉市の下水道工事|日経BP社 ケンプラッツ
株式会社オーゼットユー 施工事例/推進工事/大口径長距離推進工事