中和滴定の誤差の話


はじめに

 まず質問です。中和滴定ってなんだか判りますか?
 基礎の化学がわかっている人なら大抵判ると思いますが、この方面本当に嫌
いだったり苦手だったりする人もいるからね・・・笑

 簡単に言ってしまえば「酸」と「アルカリ」を混ぜて中性にするわけだけど、そ
のどっちかを滴定(ぽたぽたと入れるイメージかな?)します。

 もちろんそのまま混ぜてもどこで中性になった(中和したといいます)か判らな
いので、「指示薬」と呼ばれるものをちょっと入れて、例えば酸からアルカリに変
わった瞬間に色が変わってわかるようにします。

 そういう滴定を中和滴定といいます。

 んで、今回はその中和滴定で生じる誤差について検証してみたいと思いま
す。何でそんなことするかって?
 
 分析で生じる誤差って認識しておくことも結構大切なんですよ!

 では、知っている人にはすごく簡単だけど知らない人にはしんどいかもしれな
い誤差について検証します。

1.条件

 分析するには条件が必要です。まぁ、あたりまえのことですが・・・

 今回は以下の条件でやってみようと思います。

 ・検体  :1.000規定の塩酸(酸です)
 ・標準液 :1.000規定の水酸化ナトリウム(アルカリです)
 ・器具  :25mlホールピペット、ビュレット(目盛り0.1ml単位)
 ・指示薬 :今回はあまり関係ないので省略。適切なものをいれたとします。
 ・条件  :検体を25mlホールピペットで採取し(普通これぐらいだと100ml 
       の三角フラスコ〔判りますよね!〕に取ります。)、水酸化ナトリウム
       標準液(ビュレットに入れます)で滴定する。(滴定前に2〜3滴のフ
       ェノールフタレイン溶液を入れる)


 「規定」という言葉が出てきましたが、判らない方は、1N(以後、規定=Nと書
きます)の酸と1Nのアルカリをおんなじ量混ぜたら丁度中和する」と覚えておい
て下さい。

 ホールピペットとは液体の量を正確に測る器具です。どの程度の精度がある
かというと、昔学校の教授が行ってた言葉を借りれば、1ml単位だそうです。最
も、これは温度の影響も考えてのことでしょうし、そこがずれ込むような条件で
は分析とはいえなくなってしまうので、それは困りますよね(笑)(何をいってるか
判ります?判らない方は最後まで読んでみてもう一度戻ってみてくださいね)

 一般的には小数点以下一桁ぐらい・・・つまり、25mlのホールピペットだった
ら25.0mlは正確に取れていると考えていいと思います。(つまり、24.95ml
以上25.05ml未満で採取できていると)

 余談ですが、ホールピペットは器具の内面に残る量(ぬれている分)は入れず
に出した量を測り取れるようになっています。

 ビュレットは滴定のための器具です。たてに長いガラス管に目盛りが付いてい
て、そこに滴定液を入れます。そして、最初に目盛りを読んで記録してから、滴
滴・・・と液を垂らし、終わったところ(終点といいます)で止めまた目盛りを読み
ます。その差が滴定量ということになります。

 目盛りを読む場合は、最低の目盛りの10分の1まで目分量で読むのが原則
です。つまり、今回使うビュレットは0.1mlの目盛りまでついているので例えば
「20.25ml」のように小数点以下2桁まで読みます。

 では、ビュレットの目盛りの精度はどれぐらいあるのでしょうか?私も、そこの
一般論を知りませんが、これは滴定量によって当然違っていくるはずです。今回
は、ホールピペットのプラス1桁で、小数点以下2桁・・・つまり、今回の検証で
は誤差として考えないことにします。(なぜ考えなくて済むか判りますか?)

 では、続いて誤差の検証に移りたいと思います。

2.検証

 この検証では、同じサンプルを複数回測定したときに生じる可能性のある最
大の誤差(操作ミスは含まないので注意)について検証します。
 純粋に自然発生的に生じる誤差なのでそう理解してください。

@まず、検体(1.000N塩酸)をホールピペットで採取します。ここで生じる可
能性のある誤差は最大0.1mlです(約25.0ml±0.5mlなので最大から最
小を引く。以後この形で検証していきます。)

Aそれから、ビュレット中の1.000N水酸化ナトリウムの液面を読みます。ここ
で生じる可能性がある誤差は最大0.04ml(目分量で読むので、読み取り誤
差を±0.02mlと考えました)

B指示薬を入れ、滴定します。滴定量の誤差は最大0.08mlです。(誤差±
一滴と考えました。一滴は約0.04mlです。)

C滴定後に液面を読みます。読み取り誤差は最大0.04mlです。

 以上の前提により、計算してみます。
 1.000Nの塩酸と1.000Nの水酸化ナトリウムなので、理論上は滴定量は
25.00mlとなるはずです。(指示薬により多少変わります。それによる誤差は
今回検証の対象としません。)

 では、誤差が全て加算の方向に生じたとき、塩酸の規定度を計算したらいく
つになるか検証します。

 塩酸採取量:25.05ml(25.0499999・・・・・≒25.05→今後もこの考
え        方でいきます)
 滴定量   :25.05ml(理論量)+0.04ml+0.08ml+0.04ml
         =25.31ml
 滴定量から:塩酸の規定度を逆算
          1.000ml×25.31ml=25.0×塩酸規定度なので
          塩酸規定度=1.01N(有効桁数3桁を考慮)

 同様に誤差が全て減算の方向に生じたときの計算を行います。

 塩酸採取量:24.95ml
 滴定量   :24.69ml
 滴定量から塩酸の規定度を逆算
         塩酸規定度=0.988N(有効桁数3桁を考慮)

3.考察

 結果としては滴定誤差として約0.6ml規定度で約0.2N目安として2
〜2.5%程度の誤差が生じる可能性があることが判りました。
 これが多いか少ないかという問題になりますが、滴定誤差の0.6mlはかなり
大きな数字と感じました。

 まあ、今回はあくまで「最大」を考慮したわけで、ここまでずれることは普通無
いでしょうけど・・・もっとも分析に不慣れの人や、操作を誤った場合はもっとひ
どい場合もあるだろうと思いますよ!

 今回は中和滴定を題材にしましたが、同様の数字のマジックっていっぱいあ
ると思います。数字の検証はあえてやってみると驚く場合って多いんですよ!
 気が向いたらいろいろ試してみるのもいいかもしれません。



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