Update 平成24年5月22日(火)
多和田葉子
雲をつかむ話 講談社 ★★★★★
本当に雲をつかむような話だ。この作家の作品は、感覚的にわかるので、好きなんだけど、ストーリーとかは、あるようでないようであって、一応、あるらしい。現実なのか、夢なのか、自分なのか、他人なのか、今なのか、過去なのか、ドイツのどこにいるのか・・・。そんな感覚が好きだ。
(引用)
目の前に男の顔がある。肌の色はくすんでいるが、瞳の中では滝に打たれる石のように飛沫が激しく動いている。わたしと目が合うと、幼友達でも見つけたようにその表情がパッと開いた。初対面である。誰かに似た顔。思い出せない。乾いて紅色に燃える唇が開いて、息といっしょに、ぼっぼっと音節をぶつけてくる。口のまわり、目尻、額の皺たちの活動も活発で、小刻みに小さな波が岸に打ち寄せてはまた引いていく。(引用終わり)
スティーグ・ラーソン
ミレニアム1 (ドラゴン・タトゥーの女・上・下) 訳ヘレンハルメ美穂、岩澤雅利 早川書房 ★★★★☆
文庫本2冊で約900ページのミステリー。内容は薄気味悪い題材もおおいけれど、主人公のミカエルとリスベットも魅力的だ。面白い!続編は、この二人も出るのかな?登場人物は、多いけれど、おさえるべき人は数人。主人公は、「ミレニアム」の責任者。主な登場人物は、途中から、彼の相棒になるドラゴン・タトゥーの女リスベット。ヴァンゲルグループの前会長ヘンリック。ミカエルの仲のいい共同経営者のエリカ等。あとは、ネタバレになるので・・・。
吉本隆明
吉本隆明初期詩集 講談社文芸文庫 ★★★☆☆
T初期
U固有詩との対話
V転位のための十篇
解説 吉本隆明
作家案内 川上春雄
著書目録 月村敏行
宗教的、観念的、哲学的で、感覚的に分かりにくい詩も多い。「エリアンと手記と詩」は長編詩、なんか西洋かぶれのような・・・。しかし、いい詩もいくつかある。
「地の繋約」
何といふことであらうか
わたしたちは地の果てまできていたのである
にんげんが牧畜のやうにうたひ 群れをなして眠り
ついに目覚めることのない風景のなかにきていたのである
国境ひに柵をうち立て
雑草や穀類を喰ひ飼はれていたのである
溝をめぐらし海溝や地峡をつくり飼はれていたのである
星はまたたき
十字架は鎖のかはりに首のまはりにかけられ
わたしたちはそれを取はずすために反逆と罪障の刻印をうけねばならなかつたのである
またすべての在りうる文明と系体(スイステム)を拒否しなければならなかつたのである
しだいに逃亡し
敗残の身となり
無数の学者や牧師たちから永遠のデマゴーグを授けられ
ついに生まれ来ざりし方よかりしものをと記されねばならなかつたのである
(以下略)
清岡卓行
清岡卓行詩集 現代詩文庫 思潮社 ★★★★★
吉本隆明の「詩の力」にあった、「氷った焔」に収録されている「愉快なシネカメラ」の全部を読みたいと思い、古本で購入した。
未完詩篇から
詩集「氷った焔」から
詩集「日常」から
詩集「四季のスケッチ」から
詩論 指の先の角砂糖(抄)→萩原朔太郎の散文詩集「宿命」の「この手に限るよ」についての詩論。
詩論 奇妙な幕間の告白→自分を暴こうと思う。
自伝 自伝に中の一章 ーー阿藤伯海先生の思い出ーー→漢文の先生の話
作品論 清岡さんの「羞恥」について=吉野弘 →「詩集→卒業→就職→結婚」という戦争中の愚かな高校生が描いたと清岡氏は語っているが、実は、結婚し、就職し、卒業し、詩集を出した。
詩人論 清岡卓行氏について=那珂太郎→愛妻家
清岡卓行 1922年大連で生まれる。東大仏文卒。
詩集に「氷った焔」(1959年)、「日常」(1962年)、「四季のスケッチ」(1966年)、清岡卓行詩集(1970年)、「ひとつの愛」(1970年)。
評論集に「手の変幻」(1966年)、「抒情の前線」(1970年)。
小説に「アカシアの大連」(1970年)、「フルートとオーボエ」(1971年)、「海の瞳」(1971年)。
詩集「氷った焔」から
「愉快なシネカメラ」(引用)
かれは眼をとじて地図にピストルをぶっぱなし
穴のあいた都会の穴の中で暮す
かれは朝のレストランで自分の食事を忘れ
近くの席の ひとり悲しんでいる女の
口の中へ入れられたビフテキを追跡する
かれは町が半世紀ぶりで洪水になると
水面からやっと顔を突き出している屋根の上の
吠える犬のそのまた尻尾のさきを写す
しかし かれは日頃の動物園で気ばらしができない
檻からは遠い とある倉庫の闇の奥で
剥製の猛獣たちに優しく面会するのだ
だからかれは わざわざ戦争の廃墟の真昼間
その上を飛ぶ生き物のような最新の兵器を仰ぐ
かれは競技場で 黒人ティームが
白人のティームに勝つバスケット・ボールの試合を
またそれを眺める黄色人の観客を感嘆して眺める
そして彼は 濁った河に浮かんでいる
恋人たちの清らかな包容を間近に覗き込む
かれは夕暮の場末で親を探し求める子供が
群衆の中にまぎれこんでしまうのを茫然と見送る
かれにはゆっくりとしゃべる閑がない
かれは夜 友人のベッドで眠ってから
寝言でストーリーをつくる
永井愛
中年まっさかり 光文社文庫 ★★★★☆
「ら抜きの殺意」で有名な人だけど、演劇というと劇団四季くらいしか見たことがない。このエッセイでは、劇団の苦労から、おばさん・おじさん論?まで繰り広げられる。面白い。この人の劇、一度、見てみたい。かつては、女優でもあったらしい。
バーナード・マラマッド
喋る馬(バーナード・マラマッド短編集) 柴田元幸翻訳叢書 スイッチ・パブリッシング ★★★★☆
以下の短篇。いづれも貧乏な人たちのお話。最後のモヒカン族がいいな。彼の作品は「レンブラントの帽子」を読みましたが、この短篇集の方が、味があり、面白いですね。
最初の七年 | The First Seven Years
靴屋のフェルドの娘ミリアム、靴屋の使用人ソーベルは、ミリアムにぞっこんだが、フェルドは、学生のマックスをミリアムと結婚させようと考える。ソーベルは靴屋をやめるし、ミリアムはマックスとうまくいかない・・・。
金の無心 | The Loan
パン屋のリーブの元に、古い友人のコボツキーがお金を借りようとやってくる。リーブの後妻ベッシーは、リーブも病気で、人に貸す金はないと言う・・・。
ユダヤ鳥 | The Jewbird
ハリー・コーエンのアパートに嘴の長い黒い鳥がやってくる。妻のイーディと息子とモーリー。その鳥はユダヤ語で話しかける・・・。
手紙
| The Letter
門の前でテディが宛名なしの手紙を持って立っている。ニューマンは、父親の見舞いに毎週日曜日に病院へやって来る。帰るところにテディとその父親のラルフがいて、ニューマンに宛名のない手紙を渡そうとする・・・。
ドイツ難民 | The German Refugee
貧乏学生の僕は、難民相手に英語を教えている。教養あるドイツ人オスカーは、ユダヤ人なので、奥さんと別れて、ドイツから逃げてきた。講演をするために英語を学ぼうとするが・・・。
夏の読書
|A Summer's Reading
ジョージ・ストヨノヴィッチは、生まれ育った界隈に住んでいる。父親は貧乏で、23歳の姉ソフィーも給料が安かったが、ジョージは高校を中退して、定職にもついていなかった。そして、いつも散歩をしていた。途中、ミスター・カタンザーラと会い、ジョージは100冊の本を読むと豪語してしまう。小さな町で、皆はジョージを尊敬の眼差しでみるが、実は、ジョージは読書をしていない・・・。
悼む人たち | The Mourners
元卵選別士ケスラーは、老朽化したアパートに住んでいたが、管理人のイグナスと折り合いが悪い。ゴミの捨て方で二人が言い争いになったことで、管理人のイグナスは大家のグルーバーと相談して、ケスラーを追い出すことに決める。しかし、ケスラーは居座ることに決めると、執行官がやってきて・・・。
天使レヴィーン | Angel Levine
仕立て屋のマニシェヴィッツは、良き妻ファニーがいるが、息子が戦死し、娘はろくでない男と結�・し、姿を消した。妻も病弱で、彼も腰痛に悩まされている。ある日、家の中に、知らない黒人がいる。彼は、自分で天使だと名乗るが、マニシェヴィッツは信じない。しばらくして、好転しない自分の生活を思い、ひょっとしたら、彼は本物の天使かと、ハーレムに探しに出かける・・・。
喋る馬
| Talking Horse
私は馬のなかにいる人間なのか、人間みたいに喋る馬なのか?彼の名はアブラモウィッツ。聾唖の主人ゴールドバーグと、一緒に、Q&Aのショーをやっている。しかし、アブラモウィッツは、中途半端な存在が嫌であった。馬になるか、人間になるかどちらかを希望していた。・・・しかし、・・・。
最後のモヒカン族 | The Last Mohican
画家落伍者のファイデルマンは、ジョットの研究をするために、姉から借金をして、1年間、イタリアのローマとフィレンツェで暮らす予定であった。しかし、ローマで初めて声を掛けられたのが、シモン・ススキンドというユダヤ難民であった。そして、ススキンドは、ファイデルマンにいるところに顔を出し、スーツを欲しいとせがむのであった。ファイデルマンは、ホテルを変え、ススキンドから逃れるが、ある日、泥棒に入られ、ジョッドの第一章を書いた草稿の入った書類鞄だけが盗まれた。彼は、犯人は、冷たくしたススキンドではないかと、今度は、ファイデルマンがススキンドを探すが、見つからない・・・。
白痴が先 | Idiots First
年老いたメンデルは、息子の白痴のアイザックをカリフォルニアのレオ伯父さんのところへ連れていくために、質屋でお金を貰うが、まだまだ足らない。キンズバーグという悪党に会わないように用心している。お金持ちのミスター・フィッシュバインの家に無心に行くが、断られる。シナゴーグを見つけ、シャイロックというラビから外套を貰うが、シャイロックの妻ヤーシャはそれを取り返そうとする。そして、駅でアイザックの切符を買ったところに、キンズバーグがやってくる、「お前は12時に死ぬはずだったんだ。昨日そう言ったはずだ。ここまでが精一杯だよ」・・・。
訳者あとがき
ブレヒト
三文オペラ、戯曲 岩淵達治訳 岩波文庫 ★★★★☆
これは、愉快!音楽が聞こえてきそう
ベルトルト・ブレヒト(1898年〜1956年)の戯曲に、クルト・ヴァイル(1900年〜1950年)の音楽。初演は、1928年8月31日。
表紙から一部引用すると、「俗臭に満ちた登場人物たちが繰り広げる一大茶番劇。悪党が恩赦によって処刑寸前で唐突に救われるという皮肉たっぷりの結末は、いかにも『叙事的演劇』をとなえたブレヒトらしい。・・・」
登場人物
ジョナサン・ジェレマイア・ピーチャム(乞食の集団のボス)
ピーチャム夫人(その妻)
ポリー・ピーチャム(その娘)
メッキース(盗賊団一味のボス)
ブラウン(ロンドンの警視総監)
ルーシー(その娘)
ジェニー
フィルチ
他
娼婦たち
乞食たち
警官たち
平岩弓枝
風よ、ヴェトナム 新潮文庫 ★★★☆☆
初めて読む作家です。実家の本棚にありました。時々、ヴェトナム料理を食べに行くので、題名が気になり、読んでみました。ヴェトナムは戦争の歴史で、この小説にも、そうした歴史的背景が出てきますが、詳しくはないので、解説を読んで、多少、ヴェトナムと外国の関係を頭に入れて、読んだ方が良かったかもしれません。小説は、とても読みやすく、軽やかです。妻に先立たれた舞台照明家の男が、母がヴェトナム人の女性と、祖母がヴェトナム人の女性に、それぞれ惹かれながら、ヴェトナムのことを少しずつ学んでいきます。
登場人物
大友健(舞台照明家、父は舞台美術家)
大友洋子(娘)
大友等(父)
大友八重(母)
影山明子(健の姉で、ヴェトナムに住む)
影山章一(明子の夫で、建設会社勤務、ヴェトナムに住む)
影山協(息子、イギリス留学)
坂上(プロデューサー)
梅本千尋(ヴェトナムで料理店を経営)
梅本安雄(千尋の父、芦屋に住む)
ヒロ・聖子=広田聖子(ファッションデザイナー)
高館信三(演出家)
吉本隆明
詩の力 構成 大井浩一・重里徹也 新潮文庫 ★★★★☆
この中で、いいなと思った作家(清岡卓行)の詩「愉快なシネカメラ」↓
かれは眼をとじて地図にピストルをぶっぱなし
穴のあいた都会の穴の中で暮す
かれは朝のレストランで自分の食事を忘れ
近くの席の ひとり悲しんでいる女の
口の中へ入れられたビフテキを追跡する
かれは町が半世紀ぶりで洪水になると
水面からやっと顔を突き出している屋根の上の
吠える犬のそのまた尻尾のさきを写す
しかし かれは日頃の動物園で気ばらしができない
檻からは遠い とある倉庫の闇の奥で
剥製の猛獣たちに優しく面会するのだ
下記の戦後の作家の、詩、歌、俳句、歌詞などを吉本隆明さんが短い解釈をしたもの。文庫本193頁。
谷川俊太郎
田村隆一
塚本邦雄
岡井隆
夏石番矢
吉増剛造
西條八十
中島みゆき
松任谷由実
宇多田ヒカル
俵万智
佐佐木幸綱
寺山修司
角川春樹
野村喜和夫
城戸朱理
鮎川信夫
近藤芳美
西東三鬼
吉岡実
谷川雁
入沢康夫
天沢退二郎
茨木のり子
永瀬清子
清岡卓行
大岡信
飯島耕一
平岩弓枝
風よ、ヴェトナム 新潮文庫 ★★★☆☆
初めて読む作家です。時々、ヴェトナム料理を食べに行くので、題名が気になり、読んでみました。ヴェトナムは戦争の歴史で、この小説にも、そうした歴史的背景が出てきますが、詳しくはないので、解説を読んで、多少、ヴェトナムと外国の関係を頭に入れて、読んだ方が良かったかもしれません。小説は、とても読みやすく、軽やかです。妻に先立たれた舞台照明家の男が、母がヴェトナム人の女性と、祖母がヴェトナム人の女性に、それぞれ惹かれながら、ヴェトナムのことを少しずつ学んでいきます。
登場人物
大友健(舞台照明家、父は舞台美術家)
大友洋子(娘)
大友等(父)
大友八重(母)
影山明子(健の姉で、ヴェトナムに住む)
影山章一(明子の夫で、建設会社勤務、ヴェトナムに住む)
影山協(息子、イギリス留学)
坂上(プロデューサー)
梅本千尋(ヴェトナムで料理店を経営)
梅本安雄(千尋の父、芦屋に住む)
ヒロ・聖子=広田聖子(ファッションデザイナー)
高館信三(演出家)
澤田瞳子
満つる月の如し 仏師 定朝 徳間書店 ★★★★★
新聞の書評で★★★★★。縄田一男さんが、現時点における今年のベストの作品とあったので、読んでみました。悲しい、とてもいい小説です。
主人公は、仏師・定朝と比叡山の隆範。藤原道長の時代で、京都は、病人や盗賊で溢れている。貧しい人たちは、貧困と病気で倒れ、貴族たちは、権謀術数、男女の恋であふれている。定朝が、こうした荒れた世の中、地獄に仏はいないと思うが、帝になれなかった敦明親王の狼藉と、それを愛ゆえに止めようとする中務(宥子)の顔に、慈悲の面を見つける。
この小説を読むには多少、歴史をおさえておいた方がいいかもしれないが、知らなくても、小説としてはたのしめます。
<人間模様>
藤原道長(外戚)は、第一夫人の源倫子との間に、彰子(しょうし)、妍子(けんし)、威子(いし)、嬉子(きし)、頼通(よりみち/摂政)、教通(のりみち/権大納言・左近衛大将)を、第二夫人の源明子(めいし/高松殿)との間に、頼宗(権中納言)、顕信(あきのぶ)、能信(よしのぶ/権中納言)、寛子(かんし/小一乗院殿・敦明親王の妻)、隆子をもうけた。能信の妻は址子(しし)。
明子は、醍醐帝第十皇子源高明の娘であるが、東三条院・藤原詮子(せんし)のもとで育つ。
三条帝(67)の皇后は妍子(皇太后)、一条帝(66)の皇后(二人目)は彰子(大皇太后)、一条帝と彰子の子、敦成(あつひら)親王は後の後一条帝(68)でその皇后は、威子(中宮)。隆範(内供奉・ないぐぶ/比叡山院源座主の愛弟子)はその敦成親王のお気に入り。隆範の父は、高階成忠(たかしななりただ)で、一条帝の東宮学士(学者貴族)。
一条帝の一人目の皇后は、定子(ていし/中宮)で、道長の兄道隆の娘。一条帝と定子の子供は、脩子(しゅうし)内親王と敦康(あつやす)親王。
道隆と高階貴子(名族・紀氏)の子は、定子と伊周(これちか)、隆家、原子他。伊周は道長と戦いに破れる。伊周の子は、道雅(松君/左子近衛中将/中将さま・荒三位どの)と二人の娘。
三条帝の第一皇子は小一乗院・敦明親王(後、天舜)で、皇太子を辞退(させられた)。妻は寛子。幼なじみは中務(宥子)。三条帝の外孫の敦良(あつなが)親王(後朱雀天皇/69)。嬉子は皇太弟敦良の妃。
主な登場人物。隆範、定朝、敦明親王、中務(宥子)、小式部内侍(母の和泉式部は夫がありながら、冷泉帝皇子為尊親王やその弟敦道親王と関係。その血を引く。槙子)、道雅、栄暹(えいせん)、小諾、康尚(定朝の父)、平時通(検非違使大尉・近衛府)、甘楽丸(かんらまる)、面伏(悪党)など。
<小説に出て来る歌>
むらさきの 雲路に渡る鐘の音に こころの月を託してもがな 少女(小諾/こなぎ、定朝の仏像を見て)
※→極楽の紫雲まで響く鐘の音に、自分の内なる信心を託したいものです・・・
今ぞこれ 雲間を行かんかりがねの 直ぐなる道を照らす影かな 隆範(返歌の予定だが)
※→帰雁が雲間の月へ帰るかの如く、空を翔けてゆく。そのような御仏に向かおうとする真直ぐなわが心を、月の光が照らしてくれることよ
大江山 いくのの道の遠ければ まだふみもみず天橋立 小式部 (→右大弁藤原定頼)
わが心 如何にせよとて 天駆ける黛(まゆずみ)覆ふ 有明の松 道雅(幼名は松君)
香塗れる 塔にな寄りそ 川隈(くま)の 屎鮒(くそぶな)食(は)める いたき女奴(めやっこ) 万葉集
白妙の 光にまがふ色みてや ひもとく花をかねて知るらむ 小諾 (→定朝)
池水に やどれる月はそれながら ながむる人のかげぞ変れる 敦明親王→中務(宥子)
知らざりつ 袖のみぬれてあやめ草 かかる闇路におひんものとは 敦明親王→中務(宥子)
→今まで知らずにいたことだ、泥の中に生える菖蒲を抜く際に袖が濡れるように、闇に迷う心に涙がこぼれ、このような暗い道に迷いこむとは・・・
かすめては 嘆く心を知るとてや 西にかたぶく有明の月 中務→敦明親王
とどめおきて 誰をあはれと思うらむ 子はまさるらむ子はまさりけり 和泉式部→小式部
<気になった文章>
(引用)
「親王さま・・・・」
中務の頬を光るものが伝い、月影を浴びて白く輝いた。
(中略)
中務は濡れた頬を月光にさらしたまま、敦明親王を見つめている。憂いのあまり表情の欠落したその顔のなんと美しく、澄明であることか。
彼女のその横顔を見た瞬間、定朝の胸で何かが弾けた。罪業数知れぬ人間を深い慈悲の心で見守る阿弥陀仏の姿が、華奢な彼女の姿と重なってすぐに消えた。
(引用終)
(引用)
なぜ、中務はあれほど敦明を信じられるのであろう。(中略)そうだ、親王が狂気とも取れる振る舞いを見せたとき、彼女はどうするのだろう。絶望するのか、それともなおそれでも彼を信じ、手を差し伸べるのか。
彼女の顔にそのとき浮かぶのは、あの如来のそれと見まごう慈悲相か、あるいは裏切られた慈悲相か、羅刹相か。
見たいーー。もし中務が彼に踏みつけにされてもなお、あの深い憂いに満ちた慈悲の相を消さぬのであれば。自分はひょっとしたらそこに、円満具足なること満つる月の如き、御仏の姿を見出せるかもしれない。(引用終)
(引用)
吸い込まれそうなほど深い慈しみを湛えた眼差し、微風に翻るかと見まごう軽やかな衲衣。
彼らが始めて見る新しい御仏が、そこにはあった。
「まるで、満つる月が如き尊容でございますな」
長い沈黙の末、覚すけが吐息をもらしながら呟いたのに、小仏師たちがいっせいにうなずいた。
(隆範さま、やりましたぞーー)
不思議に充足感はなかった。ただ長年胸に溜め込んでいたものを出し切った深い空虚感に、定朝は身をひたしていた。
(引用終)
チェーザレ・パウェーゼ
祭の夜 河島英昭 訳 岩波文庫 ★★★★☆
チェーザレ・パウェーゼ(1908年〜50年、イタリアの詩人、小説家、マルクス主義者)。解説は、訳者の河島英昭氏。とても、いい解説です。短編集で、それぞれ、洗練された小説。読み応えありました。
以下の( )は引用
流刑地
(仕事の奇妙ないきがかりから、まさみイタリアの南の果てにとばされ、孤独に苛まれていたので、あの薄汚れた寒村を、ひとつには処罰のようにーーそれは、少なくとも生涯に一度、誰の身にも降りかかってくるーーひとつにはまた腰を据えて風変わりな体験ができる恰好な隠れ家のように、ぼくは思いこんでいた)
新婚旅行
(いまになって、悔恨の痛みとともに、思い知らせている。妄想ゆえに現実を拒否したり、差し出すべきものが何もないときに受け取ろうと主張することが、いかに愚かしいかを)
侵入者
(ぼくの監房の仲間が連綿と繰り返す話し声はひとつの呟きとなって四方の壁を出なかった)
三人の娘
(あたしは呆れている、クラーラやルチェッタが、それに小娘でもないのにウゴリーナ夫人までもが、男なんてみないやらしい、男なんて軽蔑している、手のつけようがない、とあんなにむきになって繰り返すことに)
祭の夜
(踏み固められた涼しげな地面の上で、見習い少年たちが裸足をひきずりながら、小枝の箒を繰っては、最後に残った麦打ち場の一角を掃いていた。横目で、神父(パードレ)が樽のなかに首を突っこむ瞬間をとらえるや、二人の少年は相手の耳もとへ小枝を打ちおろした)
友だち
(チェレスティーノはその腕を押し返した。こぼれた酒がテーブルに飛び散った。「気をつけろよ」�`ェレスティーノが不平を言った。「あ、汚れるのが、きみは嫌いなのか?」)
ならずもの
(拘置されていた三人の誰ひとりにも波の音が聞こえなかったから、その日の海は油を流したような凪ぎであったにちがいない)
自殺
(カルロッタを知ったとき、ぼくは命の危機に瀕しながら波瀾を潜り抜けつつあった。それゆえ、自分を愛してくれる者のもとから逃げ出して、人気のない街路を帰って来るたびに、ほろ苦い喜びを味わっていた)
丘の中の別荘
(「ジーニアはとても変わった女です」彼女はつづけた。「いつまでも若々しくて、並みはずれた生き方の持ち主ですわ。・・・あなたのことも、嬉しそうに話しますわ。久しぶりにお会いになって、いかがですか?」
麦畑
(レーモは草原に腰をおろしたまま、低い声で言った。「ここへおいで、ばかだなあ、夜だよ」「いや、いやよ」アマーリアは胸をつまらせて言った。「あたしたちは犬しゃないのだから」)
解説 河島英昭
アンブローズ・ビアス
ビアス短篇集 大津栄一郎 編訳 岩波文庫 ★★★☆☆
あの「悪魔の辞典」のビアスの短篇集。芥川龍之介は、ビアスの「月明かりの道」から着想を得て「薮の中」を書いた。芥川は絶賛している。確かに、面白いのだが、少々、説明的すぎて、くどいか。グロテスクではないが、人殺しの話が多い。
T
月明かりの道
板張りの窓
死骸の見張り番
環境が肝心
男と蛇
U
アウル・クリーク鉄橋での出来事
チカモーガの戦場で
宙を飛ぶ騎兵隊
哲学者パーカー・アダソン
行方不明者のひとり
とどめのひと突き
V
ぼくの快心の殺人
猫の船荷
不完全燃焼
犬油
底なしの墓
解説
アンブローズ・ビアス(1842〜1914年?)小説家、ジャーナリスト
オハイオ州メグズ郡で生まれる。
神林長平
いま集合的無意識を、 ハヤカワ文庫 ★★★☆☆
新聞の書評で小谷真理が★★★★★と最高得点だったので、読みました。個人的な感想としては、ちょっと、誉めすぎかと・・・。なんか、B級SF映画に出てきそうな設定だが、どうでしょうか?
ローデンバック
死都ブリュージュ 窪田般彌訳 岩波文庫 ★★★★☆
1988年が初版。2012年版ではあるが、活字は古く、文字も小さい感じがする。しかし、岩波文庫の読みにくさは、あまりないように思う。「死都ブリュージュ」は、1976年に同氏の翻訳本(冥草社)がある。この他の訳者では、江間敏雄訳で、春陽堂から1933年、黒田憲治・多田道太郎共訳で、思索社から1949年に出版されている。さらに、1984年に田辺保訳で図書刊行会からも出版されている。ローデンバックとなっているが、かつては、ローデンバッハと呼ばれていたようだ。
あらすじ
愛する妻を失ったユーグ・ヴィアーヌが、悲嘆にくれて、死都ブリュージュに移り住んだが、そこで、亡くなった妻と瓜二つの女性ジャーヌに出会う。そして、踊り子であった彼女に、借家に住まわせ、ユーグは、彼女の元へ通う。しかし、街では、その噂が広がるが、何も知らなかったユーグの敬虔なお手伝いのバルブは、親戚の尼僧ロザリからその噂を聞き、驚く。
ユーグは、ますます、ジャーヌに溺れるが、次第に、亡くなった妻との違いに苛立つようになるが、ジャーヌの魅力からも抜け出せなくなる。しかし、ジャーヌは、ユーグの財産目当てに行動するようになり、ついに、無理やり、ジャーヌは、ユーグの自宅へ行くことを企む。そして、・・・。
(引用)
だからこそユーグはこの町に身をかくし、彼に残された最後の活力をそれと感じないほどにかすかに感じつつ、この永遠の微細な埃の下に確実にうずもれ、埋没しようと思ったのだ。その埃こそは彼の魂を、この町の色である灰色に染めてくれるにちがいない!
(引用)
とくに、つねに視野のはてにそびえたつノートル・ダムとサン・ソヴール聖堂の高い鐘楼から、さとすように落ちてくる信仰と苦行の勧告。彼は避難所を探し求めるかのように、本能的に眼を鐘楼のほうにあげた。しかし、その塔たちは彼の惨めな恋を嘲笑していた。いずれの塔もこう言っているように見えた。「われわれを見るがよい!われらにあるものは信仰のみだ!われわれは明るくはしゃがず、彫刻の微笑ももちあわせていなけれど、大空の砦さながらの姿で神のほうへとのぼっていく。われわれは戦士の鐘楼なのだ。われわれに対しては、悪魔もその矢を使いはたしてしまった!」
挿絵ならぬ、古いモノクロ写真が多数掲載されている。ほとんどが、景色・建物。
レーモン・クノー
地下鉄のザジ 生田耕作 訳 中公文庫 ★★★★☆
レーモン・クノー(1903年〜1976年)フランス北西部のル・アーヴルに生まれ、パ�椛蜉wで哲学を学ぶ。詩人。シュルレアリスムに参加後、離脱。言語表現の新しい小説形式を探求。「ル・シャンダン」、「厳しい冬」、「わが友ピエロ」、「聖グラングラン祭」などの小説。「柏と犬」などの詩集。
1974年が初版のものなので、訳文は相当古い感じは否めないが、面白いお話。シュルレアリスムの作家というよりは、この小説を読むかぎり、むしろ、庶民的な感じを受けるが、解説によると、「抵抗文学の似非ヒロイズムと実存主義のお説教調で慣性憂鬱病におとしいれられていた当時の読書界が、『地下鉄のザジ』のドタバタ喜劇調と、女主人公ザジが連発する〈ケツくらえ〉の名セリフに久方ぶるに腹の皮をよじらされ、つきものが落ちたような爽快感を味わった・・・・」とある。
登場人物は個性的だ。ザジ(「ケツくらえ」が口癖の子供)、叔父のガブリエル(フィオールのバルブーズの香水をつける/踊り子)、妻のマルスリーヌ、友人のテュ�宴塔hー(飲み屋の店主)、シャルル(タクシードライバー)、小足のマド(テュランドーの店のウエイトレス)、グリドゥー(靴磨き)、フェドール・バラノヴィッチ(海外旅行者向けガイド)、ジャンヌ・ラロシェール(ザジの母)、ペドロ/トルースカイヨン(行商人?、警官?)、ムアック未亡人、テュランドーの鳥<緑>(「喋れ、喋れ、それだけが取り柄さ」)
挿絵も楽しい!
新訳が水声社から「レーモン・クノー・コレクション」として出ているが、未読。
1960年に映画化、2009年に完全修復ニュープリント版で上映された。
アルトゥール・シュニッツラー
夢小説・闇への逃走他一篇 池内紀・武村知子訳 岩波文庫 ★★★★☆
アルトゥール・シュニッツラー(1862年〜1931年)ウィーン生まれの医師であり作家。戯曲には「アナトール」、「恋愛三昧」、怪奇劇「緑のおうむ」、「輪舞」がある。小説では、「死」、「グストゥル少尉」、「フロイライン・エルザ」、「夢がたり」がある。
「死んだガブリエル」
ガブリエルが死んでまだ1ヶ月なのに、イレーネですらもう白い服を着ている。善良なガブリエルはしたたかなヴィルヘルミーネに恋していた。きっと棄てられるだろうとフェルディナンド・ノイマンはそう思った。
「夢小説」
フリドリンは、妻アルベルティーネがありながらウィーンの夜の町を徘徊する。仮面舞踏会は閉鎖された世界、そこへ闖入すると死が待っている。
「闇への逃走」
ローベルトは狂人なのか?兄オットーは正気なのか・・・。
いずれも面白い話。幻想的。
夢がたり シュニッツラー作品集 尾崎宏次 訳 早川書房 ハヤカワ文庫 ★★★☆☆
「夢がたり」
「夢小説」と同じで訳者が違う。
(岩波訳) 「このとき小さな娘のまぶたがふっと一つに合わさった。親は微笑をかわしあった。フリドリンが腰をかがめて娘のブロンドの髪にキスをしながら、片づけのすまない食卓の上の本をパタリと閉じたとき、娘がはっとしたように顔を上げた」
(早川訳) 「そこで急に瞼が重くなった。両親はほほえみながら顔を見合わせた。父親のフリドリンはかがみこんで娘のブロンドの髪にキスをしてから、本を閉じてやった。本はあと片づけもしていないテーブルの上にあった。娘はいたずらをみつかっ�スかのようにハッとして顔をあげた」
「ある別れ」
�@男は、夫ある女性を好きになり、家で待つが、来ない。様子を伺いに使いのものに様子を見させると、彼女は病気であった。
「花嫁」
仮装舞踏会で知り合った女性は知的であり、上流階級の出身であった。若い頃に婚約したが、男性遍歴を重ねたくなって・・・。
「散歩」
ハンス、マックス、ステファン、フリッツたちがウィーンの話をする。
(冒頭)
ゆっくりと消えていく六月の太陽。市の境界からずっと離れたあたりに、高くて単調な家並みが長くつらなっていた。家の色は、汚なく、白や黄色に光ってみえた。たいていの窓はあけ放しで、シャツ一枚の男たちが景色をながめていた。うつろな眼で、ベルを鳴らしながら走る市街電車を追っ�トいた。だぶだぶのブラウスをだらしなく着た女たちは空をながめていた。(中略�j「不思議だな!」ハンスが言った。
「フロイライン・エリゼ」
エリゼのぼやき小説。延々とぼやくが、いつのまにか、睡眠薬でのラリった状態に・・・。被害妄想的・夢想的・薬物中毒型ぼやき?
鈴木いづみ
鈴木いづみコレクション1 長編小説 ハートに火をつけて!
だれが消す 文遊社 ★★★★☆
全然、知らなかった・・・。余りに、繊細すぎ�驕A図太すぎる・・・。こんな鋭い感覚というか、鋭敏だと、辛い。薬、煙草、お酒、音楽、セックス、恋愛・・・。そして、自分で悩んで、狂いそうになって、また、悩んだ人、病んだ人と付き合って、自分を追い込む。しかし、こうした、感覚は、読んでいて、こちらも、鋭敏になって、研ぎすまされて、いいように創造的になったりする。この本、小説自体が薬のようだ。
鈴木いづみコレクション2 短編小説集 あたしは天使じゃない 文遊社 ★☆☆☆☆
これは、いかにも暴力的で読む気がしない。あの繊細さは消えたのか?
鈴木いづみコレクション3 SF集T 恋のサイケデリック! 文遊社 ★�噤凵凵�
第一部
明るい篇
なんと、恋のサイケデリック!
なぜか、アップ・サイド・ダウン
ラブ・オブ・スピード
第二部
暗い篇
契約
ペパーミント・ラブ・ストーリィ
鈴木いづみ
著書
1949年〜1986年(36歳)
�@愛するあなた 現代評論社 1973
あたしは天使じゃない ブロンズ社 1973
残酷メルヘン 青娥書房 1975
女と女の世の中 早川文庫 1978
いつだってティータイム 白夜書房 1978
感触 広済堂出版 1980 「タッチ」改題、文遊社
恋のサイケデリック! 早川文庫 1982
ハートに火をつけ�ト! だれが消す 三一書房 1983
私小説 荒木経惟共著 白夜書房 1986.9
声のない日々 鈴木いづみ短編集 文遊社 1993
鈴木いづみコレクション 1-8 文遊社 1996-98
いづみの残酷メルヘン 文遊社 1998
いづみ語録 鈴木あづさ,文遊社編集部編 文遊社 2001
鈴木いづみセカンド・コレクション 1-4 文遊社 2004
鈴木いづみプレミアム・コレクション 文遊社 2006
映画
書を捨てよ町へ出よう
他
三上延
ビブリア古書堂の事件手帖 メディアワークス文庫 ★★★☆☆
とても、読みやすくて、謎解きがあるので、気楽に読めます。コミック感覚です。
プロローグ
第一話 夏目漱石「漱石全集・新書版」(岩波書店)
第二話 小山清「落穂拾い・聖アンデルセン」(新潮文庫)
第三話 ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」(青木文庫)
第四話 太宰治「晩年」(砂子屋書房)
エピローグ
ビブリア古書堂の事件手帖 2 メディアワークス文庫 ★★★☆☆
続編です。これも、謎解きがあるので、コミック感覚で読めます。
プロローグ 坂口三千代「クラクラ日記」T(文芸春秋) = 坂口安吾の妻
第一話 アントニイ・バージェス「時計じかけの�Iレンジ」完全版(ハヤカワ文庫NV)
第二話 福田定一「名言随筆 サラリーマン」(六月社)= 司馬遼太郎
第三話 足塚不二雄「UTOPIA 最後の世界大戦」(鶴書房)= 藤子不二雄
エピローグ 坂口三千代「クラクラ日記」U(文芸春秋)
レベッカ・ブラウン
私たちがやったこと 訳 柴田元幸 マガジンハウス ★★★☆☆
目次
結婚の悦び
私たちがやったこと
アニー
愛の詩
ナポレオンの死
よき友
悲しみ
訳者あとがき
「結婚の悦び」
たまにはあなただって休むはずだ。私はそういうときのあなたを、いつの日かつかまえたいと思っている。(引用)
「私たちがやったこと」
安全のために、私たちはあなたの目をつぶして私の耳の中を焼くことに合意した。(引用)
「アニー�v
だがアニーには、大草原の方がホテル暮らしより好ましい。口笛を吹けばカウガールに届くところで寝る方がいいのだ。「前はこんなじゃなかったんだよねえ」と彼女は私に言う。(引用)
「愛の詩」
それは芸術に似ている。作り、壊す。あなたはいびつな塊に惹かれる。それらいびつな塊を鑿で削って美しいものに仕立て、そういうことが自分にできるんだという事実をみずから示すことをあなたは好む。(引用)
「ナポレオンの死」
「ナポレオンじゃないよ、君が殺そうとしているのは。現実の人間さ。君は現実の人間を殺そうとしているんだ」とあなたは言い、私は「そんなふうに考えたことはなかったわ」と言う。本当になかったのだ。(引用)
「よき友」
バレンタインデーの『ゲイ・ニューズ』にジムは「いまだ回復期にある神経症のレズビアン、短期の濃密な肉体的出会いを求む。異性愛者不可」と広告を出した。(引用)
「悲しみ」
あの音は、あなたが私たちにさよならを言うことができる前の、あなたの最後のあえぎ。(引用)
遠藤周作
白い人 黄色い人 講談社文芸文庫 ★★★★☆
以下の中篇、短篇。
白い人
黄色い人
アデンまで
学生
遠藤周作の初期の作品(31歳〜32歳)
「白い人」
フランスのリヨン、ナチスドイツがフランスを占領しようとしている時代。白い人同士が戦う。
(以下引用)
マルキ・ド・サド)はうまいことを言っている。
・・・かくて人間の血は赤くそまり
その目は拷問の快楽に赫き・・・
私のつむった眼の奥で、あの老犬を組みし�「た女中のイボンヌの弾力のある腿の白さがハッキリとうかぶ。私はそれを人間が、他者にたいする真実の姿勢だと思う。(引用)
(主な登場人物)
私(斜視→ナチの手先に)
ジャック・モンジュ(醜い神学生)
マリー・テレーズ(ジャックの従姉)
モニック(テレーズの友人)
女中イボンヌ
中尉
アンドレ・キャバンヌ(ナチの拷問者/仏蘭西人)
アレクサンドル・ルーヴィッヒ(ナチの拷問者・チェコスロバキア人)
「黄色い人」
日本の阪神・仁川、第二次大戦中。B29の攻撃が続く。教会。
(以下引用)
あの人がそのため貴方たちの神から、今、裁きをうけているか、それとも、裁きも罰もない黄いろい世界、疲れて目をつむるように、ただ、うつろな眠りに溶けこんだのか、しりません。だが、同じ白い人でもデュランさんのことならまだ、ぼく等には理解できるような気がします。しかし、貴方のように純白な世界ほどぼく等、黄色い者たちから隔たったものはない。(引用)
(主な登場人物)
医学部の学生のぼく・千葉
糸子(佐伯�Nの許嫁だが、ぼくと不倫)
デュラン(破門神父)
キミコ(デュランの妻)
ブロウ神父
「アデンまで」
俺はヨーロッパを去る。マルセイユから船で。女が送ってきた。
(以下引用)
あさが来ると
お前は、出て行った
太陽は街を照らしたが・・・
戸口のところで彼女の手を握った。その手は白く、乾いている。俺がこの国で握る最後の掌だった。
「これから、どうする」と俺は言った。
「どうだって」女の顔はゆがみ、烈しく震えた。「どうだって生きていくわよ」(引用)
(主な登場人物)
僕
マギイ(女)
黒人の女(ネグレス)
船員
修道女
船医
ジム、モーリス、アレクサンドル(学生たち)
赤毛の仏蘭西女
ギギイ(黒人の淫売婦)
(以下引用)
墓より死者のたち上がる時
大いなる死と大いなる自然とは
呼びさまされん
修道女の読むそれらの白人の祈祷、俺がヨーロッパでたえまなく聞きつづけた人間の慟哭と祈りとは、もはや俺の耳には乾いた意味のない音としか聞こえなかった。今の俺は死んだ黒人の女がそれれ白い世界とはもう無縁であること、死の後にも裁きも悦びも苦しみもないこの大いなる砂漠と海との一点となることを知っていた。(引用)
「学生」
ゲシュタポとマキ(抗独運動)。その連絡員(レポ)。白い手をしたインテリ学生。ヒモじい悲惨な俺・党員。リュル爺さん。裏切り者やナチ協力者は、私的裁判。残酷な拷問、死刑。
(以下引用)
拷問がこれほど人間の顔と躰とを変えるとは知らなかった。彼の顔は洞穴のようにくぼんで、うつろな影を彫りこんでいた。鳥のようにみひらいた眼の下に蒼黒いくまどりができていた。それは、もう、はじめて会った時の白い、ふちなしの眼鏡をかけた若者の顔では�ネかった。
「手をみろよ。この手をみろよ」彼は嗄れた声で言いながら、俺の眼の前に十本の指をひろげてみせた。「ナチはこうしやがった。生づめのなかに焼いた銅線を・・・」(引用)
(登場人物)
ブロウ(党員)
ジャン(白い手学生)
リュル爺さん
ヴィユヴィユ
赤毛のモーリス
※作家、遠藤周作は、これ以降、白にも非ず黒にも非ず世界を自問しつづける。
藤田令伊
フェルメール 静けさの謎を解く 集英社新書 ★★★☆☆
著者は、アートライターで、「フェルメール美術館」のサイトを主宰。
目次
はじめに
第一章 フェルメールブルー
第二章 構図と素材の秘密
第三章 女たちの姿態
第四章 剥奪される意味
第五章 穏やかな光、霞む空気
第六章 静けさを描くこ�ニの理由
第七章 静かでないフェルメール
あとがき
良書ではあるが、真新しさは余りないように思う。
寺山修二
寺山修二少女詩集 角川文庫 ★★★☆☆
目次
海
ぼくの作ったマザーグース
猫
ぼくが男の子だった頃
悪魔の童謡
人形あそび
愛する
花詩集
時には母のない子のように
「猫」から「少年時代」という詩。
少年時代
長靴をはいた猫と
ぼくとが
はじめて出会っ�スのは
書物の森のなかだった
長靴をはいた猫は
ぼくに煙草をおしえてくれた
ちょっといじわるで
いいやつだった
長靴をはいた猫と
わかれたのは
木の葉散る
秋という名のカフェ
その日
ぼくは
はじめて恋を知った
人生のはじまる前と
人生のはじまったあと
そのあいだのドアを
すばやく駆けぬけようとした
ぼくの
長靴をはいた猫は
いまどこにいるのか?
「愛する」から「かなしみ」という詩
かなしみ
私の書く詩のなかには
いつも家がある
だが私は
ほんとうは家なき子
私の書く詩のなかには
いつも女がいる
だが私は
ほんとうはひとりぼっち
私の書く詩のなかには
小鳥が数羽
だが私は
ほんとうは思い出がきらいなのだ
一篇の詩の
内と外とにしめ出されて
私は
だまって海を見ている
野上弥生子
大石良雄(よしとも)・笛 岩波文庫 ★★★★☆
野上弥生子作の短編が二本。大石良雄と笛。全く、違った雰囲気の短編。
「大石良雄」は、播州赤穂の城主浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり)が、殿中にて上野介義央(こうずけのすけよしひさ)に刃傷に及んだため、内匠頭が即日切腹し、5万石の封地は没収、後嗣(こうし)の弟の大学は、閉門させられた事件の、仇討ちするかどうかで、浅野家の城�繪ニ老を勤める大石内蔵之助良雄(くらのすけよしとも)がなかなか優柔不断で動かない物語。
「笛」は、戦争中の苦労した母親の話。つねの娘きみは、工場勤務の無口な新作と結婚し、両親の住んでいる家に住むことになる。父親の良造は、フリュート好きであったが、病気で亡くなっていた。新作は、つねにどうもよそよそしい。つねは、息子の清太が、三光デパートで働く芳枝と結婚したいと考えていることを知る。そして、ある時、工場からは電車で一時間はかかるが、牛込の田丸家の大きな一軒家の管理を頼まれて、つねは、その家で、清太と芳枝と三人で暮らそうと考え、その話を受けることにする。しかし、清太たちは、結婚して、しばらくは、アパートで住むことにするとつねに伝える。つねは、絶望して・・・。
桜庭一樹
傷痕 講談社 ★★☆☆☆
最新作で長編。桜庭さんのは、色々と読んだが、これは、今一かも。突然去ったスーパースターが、マイケルジャクソンがモデルであろうが、それを和製ポップスターにして、仕上げた。イエローペーパーの記者と出版社の女性とのくだりなんか、仕事がら得意範囲の描写。全体的に、想像力が足らないように思うし、最後も面白みに欠ける。読まれた方はいかがでしょうか?
プロローグ 偉大なるポップスターが死んだ。十一歳の子供が残された。娘の名前は傷跡。それがわたしです。
一章 終末時計 仮面を被り「楽園」で暮らす傷跡の語り
二章 孤島 富裕層の青年の語り(キングオブポップのファンの少女との出会いから)
三章 胡蝶 イエロージャーナリスト滋田の語り(別れた妻と息子、新人編集者)
四章 風の歌 少女復讐(ペンデッタ)の語り(キングオブポップのファンで両親が彼を訴え、巨額の慰謝料をもらうが)
五章 魔法 キングオブポップの姉・孔雀の語り
六章 世界地図 孔雀の運転手、セキュリティスタッフ、三十を過ぎた女性、傷跡、の語り
エピローグ 傷跡が「楽園」を抜け出した。
伏 贋作・里見八犬伝 文芸春秋 ★★★★☆
一年以上も前に購入していたが、あまりに分厚い本(単行本で470頁ほど)なので、通勤時にも読みづらいので、やっと、読み始めました。入り込むと、意外と早いのだな。まあ、面白い部類に入るでしょうね、最後が少し迫力不足かな。でも、桜庭さんは、うまいな。
田舎から猟師の少女浜路が、おじいさんが亡くなったので、兄・道節を頼って、江戸にやってきた。江戸では、魔物の伏(ふせ・人と犬から生まれた)が人間を襲っていた。御触書が出て、伏退治に賞金がかけられていた。道節は、猟師の浜路と一緒になって伏退治をして、賞金を稼ごうと思っていた。
ある日、吉原の街を二人で歩いていると、浜路が動物の臭いを感じ�ス。花魁道中の凍鶴大夫とその禿の葉と花がそうだった。浜路は、凍鶴たちを追いかけて、葉と花は退治して、凍鶴を追い込んだが、彼女が「私はもう寿命だ」と言い、「親兵衛にこれを届けてくれ」と小判を渡された。凍鶴は、その遊郭の窓が身を投げ、自殺した。
そうした二人の活躍が、翌日、早速、瓦版「冥土新聞」で報道された。そして、この瓦版の編集者は、滝沢冥土だった。彼の父は、曲亭馬琴で、「里見八犬伝」を28年間も書きつづけているであった。
そして、冥土もまた、伏に関心を持ち、自分で色々と調べ、「贋作・里見八犬伝」を書いているのだった。
その話によると、安房の国の里見家の城主里見義実は名主であり、その娘が産まれた時に、銀の歯の森からきた占い師が、その娘は星回りが悪くて、傾城となると警告した。そのため、義実は、その占師を村雨丸という名刀で斬り殺した。そして、彼は、娘の名を「伏」とつけた。しばらくして、弟の鈍色が産まれた。ふたりの性格は全く反対であった。伏が男に生まれていれば、良かったと城や国のものは思った。世は戦国時代に入り、戦争が起こり、いよいよ、危ないというときだった。以前、鈍色が狸が育てていた白い異国の眼をした犬・八房を拾い育てていた。姉の伏姫がそれを取ろうとしたら、天守閣から飛び降りたら、姉に八房を渡すと言われ、伏姫がそれをおこ�ネい、伏姫の犬になっていた。義実が、その犬に、「おまえが敵将の景連の首を取ってきたら、伏姫を嫁にやろう」と言ったところ、八房はその首を取ってきたのであった。
そうして、伏姫と八房は、銀の歯の森に向かって、出て行った・・・。
久世光彦
桃 中公文庫 ★★★★☆
短編集です。桃色、むらさきの、囁きの猫、尼港(ニコライエフスク)の桃、同行二人、いけない指、響きあう子ら、桃—お葉の匂い。とにかく不思議なお話で、幻影的、時代的、桃色的な物語。お勧めです。
今まで読んだのは、「聖なる春」、「触れもせで・向田邦子との20年」、「陛下」、「怖い絵」、「1934年冬-乱歩」、「早く昔になればいい」
(桃色から引用)
姉が肘で私を小突く。激しく小突く。�oが顎で指す先に、喪服の女がいた。−−そこは寺の本堂を出た石段の辺りで、女は焼香を待つ人たちの陰に隠れるように、軽く数珠の手を合わせている。三十ちょっと過ぎだろうか。喪服の下の白い襦袢の襟が、九月の残照に薄赤く染まっている。
(むらさきのから引用)
そんな奇妙な桃の食べ方を、雅はそれからの永い歳月の間にも、知らない。祖父は女中たちにうるさく言って、ほどよく熟れた桃を氷の冷蔵庫で十分に冷やし、それを一センチ四方の賽の目に刻み、おなじように細かく砕いた氷片で満たした水色のガラスの容器に盛って、縁側に運ばせた。
(囁きの猫から引用)
美々は人間の歳で言えば三十ちょっと前だろうと漆職人は言う。母が男と逃げた歳である。それまでも母は、二晩、三晩家を空けることはめずらしくなかった。母がいない夜にかぎって雨が降った。愛宕神社の杉林が風に鳴るのを聴きながら、私は雨が母をどこかへ連れていくのだと思った。眠れないので縁側に出て、父のいる別棟の仕�柾黷Jに透かして見る。六十ワットの裸電球がぼんやりと揺れ、その下で父の影が緩慢に動いていた。父は小さな印刷工場を一人でやっていた。
(尼港の桃から引用)
そして私たち家族にとっての長い戦争が終わった。私たちは北陸の市で、青い空を眺めながら父の帰りを待った。あの年の夏から秋にかけては、ほんとうに空が青かった。薄赤い胴体の蜻蛉の番いが、ゆるやかな川の面から空に舞い上がると、赤い蜻蛉が青い蜻蛉になった。その蜻蛉たちが空いっぱいに群れ飛ぶ初秋のある日、俯いた父が帰ってきた。父は黙っていた。今日は、そういう日なのだ。明日になれば、父は笑うだろう。その次の日は、声を上げて笑うだろう。——けれど父は笑わなかった。笑わないまま、ほとんど口を利かないまま、私たちと真っすぐに目を合わさないまま−−蝉時雨の中を汚れた病院に運ばれ、寂しい雨を聴きながら、死んだ。
(同行二人から引用)
雨はいつの間にか止んでいた。−−こんな煙なら閑なものだが、九月一日の東京の煙は凄かった。黄色い煙に赤い煙—それが北へ流れたと思ったら、忘れ物を思い出したみたいに急に取って返して南へ走り、その煙の切れ目から見えた本所か�逅[川辺りは、屋根瓦や工場の煙突が、炎に映えて眩しいくらいに光っていた。何度も何度も揺り戻しがきた。その度に悲鳴が上がる。
(いけない指から引用)
−−名前はもう忘れたけど、そう言えば、そんな人たちがいた。誰だって、それはいい。私は雪の中を遠ざかっていく号外の鈴の音を聞いていた。私にはそれが、九十九折りの山道をいく行者たちが鳴らす、冴え冴えと澄んだ鈴の音のように思えてならなかった。
(響きあう子ら引用)
紅子も桃子も、それを倣うしかなかった。桃子は藍に染まった指先を眺めながら、この家の女がおかしくなるのは、藍の色と、その色をよく出すために藍甕に入れる酢の匂いのせいではないかと、ふと思った。
(桃—お葉の匂いから引用)
妙な晩である。こんどは真ん中の家の方角から、女の悲鳴が聞こえた。粘りつくように尾を曵く、色に譬えれば桃色がかった悲鳴である。
曠吉の恋(昭和人情馬鹿物語) 角川文庫 ★★★☆☆
川口松太郎さんへのオマージュ。
昭和初期の下町育ちの曠吉の恋遍歴。大正7年生まれの曠吉が、15歳になってから18歳までの恋物語である。惚れやすく、熱しやすく、男気いっぱいの曠吉が、彼の幼なじみのサブとお玉夫妻、妹の夕子、兄貴の桃介と妻の小春に助けられながら、色々と悩みながらも春を満喫する。
そして、曠吉の一番の助っ人は、元、父親の女?か三味線の師匠のお涼。彼女は、探偵さながら、よく、曠吉の起こすトラブルの因果を調べて来る。そして、素晴らしいアシストをする。
登場人物
曠吉
お涼(三味線の師匠で、曠吉の相談役。40歳前後)
夕子(曠吉の妹)
桃介(曠吉の兄)
小春(兄嫁)
桜子(兄夫婦の子ども)
サブ(曠吉の幼なじみで、機関車サブ。お玉と所帯を持つ)
お玉(曠吉の幼なじみで、自転車お玉、居酒屋「みよしや」)
川端有造(父親・川端工業所という水道屋の社長)
川端おヨシ(母親)
お妻(父の元女・元芸者・糸魚川出身)
千代春(常磐津の師匠でお妻の住まい)
山田の紋屋主人と池袋で染物屋をやる倅
桂木(一高生、詐欺師の美人局)
菜穂(桂木の女)
村上(阿佐ヶ谷のアパートの家主)
藤子(隣人でヤクザの女・19歳)
八重子(バーに勤める村上の娘・19歳)
きよ美とよし子(日本橋の春廼屋の店員)
千恋(姉様人形をつくるお涼の隠し子・チレン)
兄貴、ヨシ坊たちのチンピラ三人組
涙子(るいこ・夕子の習字の先生・21歳)
都々逸(どどいつ)がいっぱい出てきます。
あまりしたいので、墓場でしたら
仏ばかりで 神がない
嬉しまぎれに つい惚れすぎて
後で吐き出す 苦い水〜
たんと売�黷トも 売れない日でも
おなじ機嫌の 風車〜
劇団ひとり
陰日向に咲く 幻冬舎文庫 ★☆☆☆☆
正月明けで、軽い本がないかと、BOOK・OFFで何冊か購入した本の一冊。
目次
道草
拝啓、僕のアイドル様
ピンボケな私
Overrun
鳴き砂を歩く犬
解説は父親。
映画はテレビだったか、WOWOWだったかで、見ました。
ポー�求Eオースター
幻影の書 柴田元幸 訳 新潮社 ★★★★☆
面白い小説です。
飛行機事故で妻と子供を亡くした大学教授のディヴィッド・ジンマーは、11年前にサイレント時代の喜劇俳優ヘクター・マンの映画の研究書「ヘクター・マンの音なき世界」を出版していた。ヘクター・マンは、ある時、失踪し、60年消息�ェ絶えていた。
ある時、フリーダ・スペリングというヘクター・マン夫人から、「ヘクターがあなたにお会いしたいと申しております」という手紙がきた。返事は書いたものの何かの悪戯かと思っていたが、ある夜、自宅に戻るとアルマ・グルンドという美しい女性がフリーダ・スペリングの使いだと言って待ち構えて�「た。
そして、彼女はピストルも所持し、彼とトラブルになるが、結局、彼は彼女に折れて、ヘクターに会いにいくことになる・・・。ここから、ヘクターの波瀾万丈な生きざまや物語を知ることになるが・・・。ジンマーとアルマもいつのまにか、愛しあう仲となるが・・・。
吉田直紀
宇宙で最初の星はどうやって生まれたか 宝島新書 ★★★★★
ポール・ゴーギャンの絵に「D'o?
venons-nous? Que sommes-nous? O? allons-nous? (われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか)」というものがある。
なぜ、自分がここにいるのか?いったい、我々は、どこから来たのであろう。どうして存在するのであろう?こうした問いかけは、文学や生物や哲学やあらゆる人たちが疑問に思い、考えているが、答えは出ていない。
「宇宙で最初の星はどうやって生まれたか」(宝島社新書・著 吉田直紀)は、そういう意味でも面白い本である。どうやら、人間は星の子供・・・
少し、�pしてみると、 「宇宙が誕生したときに存在した元素は水素とヘリウムだけでした。ところが、人間をはじめとする生命を構成している元素は、酸素や炭素、鉄などです。それらの元素は、宇宙に星が生まれ、その星が輝くために核融合をおこすようになって初めて誕生した。だから、人間は間接的には星の子供と言えます。(69〜70頁)」と、人間は間接的に星の子供だそうだ。
この本の最初をざっと要約してみると、 「私たちが暮らしているこの宇宙は、137億年前にビッグバンという出来事によって誕生した。ビッグバンの前は、二つの考え方がある。ひとつは、宇宙が始まる前、ビッグバンが起こる前は、何もなかったというもの。もうひとつは、ビッグバンに”前”というものが存在しているという説で、それは二つあり、ひとつは、宇宙はビッグバンと終わり�Jり返しているという説。もうひとつは、どこかに親宇宙があり、それが次から次への宇宙を生み出しているという考え方。最初の、何もないところから宇宙が生まれるという理論を裏付けるのは、量子力学。これは、原子や電子という小さなものの動きを研究する学問で、すべてのことが確率で起こるという�烽フ。ですから、ビッグバンの前に『ある確率がゆらゆらしているような状態』が、あるときグラッと『揺れて』、たまたま宇宙がポンと生まれたというのが、宇宙創世の基本的な考え方です」
偶然や確率というのは意外と重要だということか。
そういえば、「シュルレアリスムとは何か」(作者 巌谷 国士 筑摩書房)を読んだことがあって、シュルレアリスムの説明で、超現実と現実は繋がっているという話を思い出した。ここでいう超は「超える」ではなく、超スピードの超の意味にとるのだけれど、「現実」と「超現実」との間は、度合いや段階の差しかなく、連続しているといい、それは「連続性」の中にある。そして、超現実もその連続の中で、偶然やってくる。
以下、同本から引用です。
「いつも見なれたおなじ町を歩いていて、ふだんは気がついていないんだけれども、あるときその町がちがうふうに見えてくる、なんていうことはよくあります。(中略)道ばたをふと見ると石がおちていて、それが不思議な形をしていて、思わず拾ってきたくなる。鳥なら鳥の形をした石があって、つぎの瞬間にまた別の出来事がおこり、そこへ鳥がとんできて何か奇妙な動きをするとか、そんなようなことは案外よくあるんじゃないか。そこらへんから『超現実』を出発させたっていいわけです」
なるほど、ここにも偶然が生み出す何かがある。
で、結構、都合の悪い部分は、偶然という考え方でうまく説明ができる場合がある。では、宇宙は有限?でも、これは、宇宙の向こう側を考えなくてはならなくなるので、都合が悪い。宇宙は生まれた直後に、つまり「インフレーション」(宇宙誕生直後の急膨張のこと)の時期に、事実上無限大に膨張したと考え、0から∞に一瞬でなったとするのである。そして、宇宙誕生から10マイナス34乗秒後にインフレー�Vョンは収まるのだが、インフレーションが起きた後、宇宙を膨張させたエネルギーから、物質のもととなる様々な素粒子が爆発的に誕生したと考えると都合がよく、電子やクォークやダークマターなどが生まれるのだ。そうやって、宇宙を満たした素粒子が激しく動いて、灼熱状態になり、いわゆる「ビッグバン」になるようだ。
中谷美紀
インド旅行記 1 北インド編 幻冬舎文庫 ★★☆☆☆
中谷美紀さんが、映画「嫌われ松子の一生」終了後�ノインドへ行った旅行記。ヨガの興味のある方は楽しいと思います。本当に、こんなところへ行きたかったのかぁ・・・。いつも、消毒液を持参していたようですが、果たして、無事、インドを旅する事ができるのだろうか?
ガイドブックみたいな記述も多いが、時々、彼女らしさも垣間見える。
しかし、これを読んで、インドに行きたいと思わないな。汚い、盗難、買い物強要、物乞いの多さ・・・。特に、清潔さの感覚が違い過ぎるように思うが・・・。こんなものなのかな
インド旅行記 3 東・西インド編 幻冬舎文庫 ★★★☆☆
中谷美紀さんのインド旅行記第3弾。
1では、インド旅行する中谷さんが、消毒薬を片手に行動したりしていたが、ここになると、慣れたもの。物乞い、物売り、何でも来いかな?
中谷さん、曰く、「インドの印象は、二度と行きたくないというものと、死ぬほど好きという二極に分かれると聞いたけれど、私はそのどちらでも�ネい。インドは確かに面白いし、いつか再び訪れたいとは思うけれど、死ぬほど好きかと問われれば、そこまで好きではない。インドへ行くと必ず人生観が変わるというのも、少し大袈裟ない気がする。聖なるガンジス河の淋浴風景を見ても、映画の撮影で疲れ果てて無感動になっていた私には感動できなかったし、修行という名目で怠けているだけのようなサドゥーを否定もしない代わりに崇高だとも思えない。バックパッカーのように、気ままに旅をして、安宿に泊まり歩くのも素敵なことではあるけれど、わがままな私には熱いシャワーと清潔な寝床が必要なようだ」と正直な方である。
インドには素敵なものがいっぱいあるけれど、日本で身につけたいいものは捨てら�黷ネいのだと思う。
旅行記を読むと、普通はそこへ行きたくなるのだけれど、インドについては、行きたいと思わないのは、どうも、この中谷さんの旅行記のせいではあるまい・・・。
重松清
とんび 角川文庫 ★★★☆☆
普通にとてもいいお話です。もともと、腕白のガキ大将が大人になって、結婚して、子供が生まれたら、家族思いのいい父親になった・・・。
そこから、ドラマが始まります。
登場人物
ヤス(市川安男)さん、美佐子(ヤスさんの奥さん)、アキラ・旭(ヤスさんの息子)
由美(アキラの奥さん)、健介(由美の連れ子)
たえ子さん(「夕なぎ」の女将で、ヤスさんの姉さん役)
泰子(たえ子さんの生き別れた娘)
照雲(ヤスさんの幼なじみで薬師院の坊主)、幸恵(照雲の奥さん)、海雲和尚(照雲の父親)
島野昭之(ヤスさんの生き別れた父親の再婚相手の連れ子)
尾藤社長(カナエ水産の社長)、葛原(瀬戸内通運)、萩本課長(営業課長から常務へ)、広沢(ヤスさんの同僚)、トクさん(ヤスさんの同僚)
月刊シティ・ビートの編集長。
J・M・クッツェー
マイケル・K 訳 くぼた のぞみ ちくま文庫 ★★★★★
ノーベル文学賞作家クッツェーの著書は「恥辱(訳 鴻巣友季子 早川書房)」、「夷狄(いてき)を待ちながら」を読みましたが、「夷狄(いてき)を待ちながら」が気に入って、「恥辱」を読んで、小説として面白さに欠け、その後、読もうと思わなかった。たまたま、「マイケル・K」をブックオフで見つけました。これは、すごい小説かも・・・。
冒頭。
「マイケル・Kは口唇裂だった。母親の体内からこの世界に送り出すのを手伝った産婆が、最初に気づいたのはそのことだった。(中略)母親にはあんたは幸せものだ、これは一家に幸運をもたらすからねと産婆は言った。だが、アンナ・Kは最初から、閉じない口も、剝き出しになる生々しいピンクの肉も好きになれなかった(本文からの引用)」
と母親にもあまり歓迎されない「身体的障害に加えて頭の回転が遅い(引用)」子供が生まれた。この子供は生まれなか�チた方が良かったのかもしれない。
しかし、彼は、自分の生まれてきた理由を悟る。
「マイケル・Kは、長い夜、狭い部屋のなかで二人の身体が否応なく近づくことが好きではなかった。母親のむくんだ脚を見ると気持ちが揺れるので、ベッドから母親を助け起こさなければならないときは目をそらした。(中略)くり返し考えさせられた難題、なぜ自分がこの世に生まれてきたかという難題にはすでに答えが出ていた。母親の面倒を見るために生まれてき�スのだ(引用)」
南アフリカの内戦の中では、食べるものもないが、生き抜いて行く。その様子は、いかにも非人間的なものである。母親が死に、彼女の故郷へ遺灰を大地に撒きに行こうとするが・・・。
「また昆虫を食べるようになった。時が終わりのない流れになって降り注ぐので、午前中いっぱい、腹這いになって蟻の巣をのぞき込みながら、幼虫を草の茎で一匹ずつ摘んで口に入れながら過ごした。あるいは、枯れた木の幹を剝がして甲虫の幼虫を探したり、飛んでいるバッタを上着ではたき落とし、頭と脚と羽をもぎ、胴体をどろどろに潰して陽に干した(引用)」
そして、なんとか生き延びて行く。
2章では、反逆者に味方している罪(冤罪なのだが)で、キャンプの病院に収容される。ここでも、ほとんど食事を受け付けない。そして、そこの若き医者は、マイケルに異常な関心を示す。マイケルズ(マイケル)に何度も食事を食べさせようとしたり、話かける。
マイケルズは口を開く。「俺の母親は一生涯働きつづけた。他人の家の床を磨き、他人のために料理をし、皿を洗った。彼らの汚れた服を洗濯した。彼らが入った風呂を磨いた。這いつくばってトイレも掃除した。ところが年老い�ト病気になったら、彼らは母親のことを忘れた。見えないところへ追い払った。母親が死んだら火のなかに放り込んだ。遺灰の入った古ぼけた箱をくれて俺にこう言った。『ほら母親だ、持っていけ、もう用はない』(�p)」
作者は南アフリカのケープタウン生まれで、父親は弁護士、母親は小学校の教師で、両親はオランダ系植民地者アフリカーナ。この主人公も黒人ではあるのであろうが、はっきりとは描いていない。しかし、アパルトヘイトの時代なので、黒人問題が背景にあるだろう。
そして、この若き医者はマイケルズに語る。「・・・きみはもっと若いころに自分の母親から逃げ出すべきだったな、話を聞くかぎり、彼女こそ本物の殺人者のように聞こえるよ。母親からできるだけ遠い茂みへ行き、自立した人生を始めるべきだった。・・・(引用)」
そして、3章へ。
著者略歴。
74年処女作「ダスクランド」。83年「マイケル・K」、2000年「恥辱」で�xブッカ-賞を受賞。03年ノーベル文学賞を受賞。
ウォルター・アイザック
ステーブ・ジョブズ@A 講談社 ★★★☆☆
@で、ジョブズの嫌な部分を充分学んで、Aを読めば、その嫌なところが、完全な製品作りに生かしているのが凄い!
しかし、周りの人たちは大変だな ジョブズが好きだった本。
「ビー・ヒア・ナウ」、「あるヨギの自叙伝」、「無粘液食餌療法」、「禅へのいざない」、「宇宙意識」、「タントラへの道―精神の物質主義を断ち切って」、「リア王」、「白鯨」。
ジョブズの性格を指して、「現実歪曲フィールド(reality distortion field)」、「共感欠損症候群」、「自己愛性人格障害」など。
Aになると、スティーブ・ジョブズのもの作りのこだわり、激しさがよくわかります。例えば、以下、要約ですが、
ジョブズが宝物としているCDにビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」の修正を繰り返す10余りのセッションの海賊版がある。�゙の哲学である「完璧な製品の作り方」のもととなったもの。
「これは複雑な歌で(中略)、これを聴くとビートルズも単なる人間だったんだって思うよ。(中略)でも、彼らはここで止まらない。みんな完璧主義者でとにかく何度も何度もやり直すんだ」
「正しくやれるチャンスは1回しかないんだ。良くない部分があったとき、それを無視し、あとで直せばいいというのはダメだ」(←これは@かな)
野上弥生子
森 新潮文庫 ★★★★☆
作者は、1885�N生まれの野上弥生子さん。100歳近くまで生きておられた。未完の遺作。文庫本で約580ページ。とにかく長い小説。読んだ方はいらっしゃるだろうか?
読み応え充分。少女小説なのだが、ほの甘さは少なく、一本、筋�ェ通った感じ。明治33年の頃の東京の女学校の話。主人公は、大分県から一人単身で上京し、森の学校・日本女学院(キリスト教の学校)に通う事になる15歳の菊地加根。
森有礼、福沢諭吉、勝海舟(妻は正婦人・侍女はのぶ)、西郷隆盛、内村鑑三、森鴎外、樋口一葉(お夏)など�フ時代。
登場人物だけでも、たくさん出てきて、さあ大変。再度、ページを繰りながら登場人物をチェックしだし�スら、意外と大変でした。
気になった言葉というか、知りませんでした。
「古い家の梁棟(うつばり)ほど、内緒ごとがへばりついている」(諺らしいが)
「狭斜(きょうしゃ)のちまた」(遊里)
菊地加根
菊地慶助(加根の父)
山下蕭雨(毎日新聞記者)
岡野直己(校長)
平三(慶助の末弟)
お里(平三の妻・赤坂に元芸者)
S氏(代議士・毎日新聞も社長)
おせき(加根の叔母・平三の姉・出戻り)
黒木亮(英語の担任・秋田弁英語)
玉井品江(英語担任・卒業生)
おたかさん(加根の実家近くの薬屋の二番娘)
島津よしえ(同級生・盛岡出身)
香月とき
久米たみ(音楽科へ進学する)
赤沢まつ(先輩・伊庭先生崇拝)
伊庭想太郎(剣道の先生・星亨を刺客)
小杉登起子(薙刀女流師範)
勝安芳(学校の後援者)
ばあやのお梅と爺やの留吉(加根の下宿先である平三の家の留守番)
長兄(隠れ飲み)
千代香(お里の姉さん格)
矢野みつ(玉井先生に珈琲をご馳走になる普通科の三年の学生・詩人河本香村が義兄)
立松操子(ペンネーム・岡野の妻・佐緒)
篠原健(画学生)
園部はるみ(ソプラノ・第十一章からの主人公)高等科へ(園部秀太郎と女中の子供)
生田ちか(アルト・青森へ帰る)この2人はデュエットという渾名
嘉治とみ代(作法と習字の先生・舎監)
池田薫(篠原の恩人)
池田真(薫の夫)
牧雄二(篠原の村塾)
鈴木保(国文学先生)
久保良三(英語先生)
津田仙(学農社・岡野の先生)
中村正直(同人社・岡野の先生)
田村哲(岡野の洗礼をする・神学者・河村香村の先生・岡野を勝海舟へ紹介)
田村澄子(日本女学館の実質的な創設者)
みか(岡野の末娘)
みつ(岡野の妻の妹・みかの叔母)
K牧師(小田原の教会)
富田ひさ(篠原にソローの「森林生活」を勧める)
おつる(加根の父のすぐ下の妹・おせきの姉)
吉兵衛(加根の実家の酒屋の老杜氏)
山崎英蔵(十八史略などの先生)
初(岡野の娘)
義夫(岡野の息子)
とく(初の叔母)
橋本よね(卒業生�フ一人で資産家・岡野一家と家族での付き合い)
常一(加根の兄)
ひさ(加根の母・お母っつぁん・常一の育ての親)
勇作(慶助の次弟・味噌醤油)
たね(勇作の妻・佐藤家)
こま(加根の従姉)290
おせん(お里の母)
林(元株屋・詐欺師)
嘉治博士(病院の院長・嘉治先生の弟)
村井先生(大塚の道場)「竜や、麒麟や、鳳凰には、馬車は曵けない」
ユンケル先生(ヴァイオリンの教授・ドイツ人)
ケーベル博士(帝大の哲学教授)
加部圭助(医�w生)
鳴海(日本女子大学校長)
白須信二(黒木の先輩・兄は眼科の病院長)
河本香村(詩人)
矢野美子(河本香村の妻)
青木駿一(詩人で自殺)
園部秀太郎(園部はるみの実父)
園部良二(秀太郎の弟・はるみの養父)
園部さち(良二の妻)
渡辺基(医者・良二の同級生)
渡辺登美(基の妻・自由結婚)
園部かつ枝(本家の女主人)
船田重兵衛(かつ枝の里方の老主人・山持ち資産家)
尾上さん(重兵衛の看護婦)
一郎、武、重三(秀太郎の息子)
船田朝雄(重兵衛の破産した弟の息子・農学校出身)
日野恭助(洋画家・加部圭助と同じアパート)
森有礼、福沢諭吉、勝海舟(妻は正婦人・侍女はのぶ�j、西郷隆盛、内村鑑三、森鴎外、樋口一葉(お夏)、伊藤博文、大友宗麟。
M氏(もしくはMI)
梅�テ(代議士)
後半は、加部圭介と園�狽ヘるみの恋愛小説に。
その他、抜けている登場人物がありましたら、教えてください。
川上未映子
すべて真夜中の恋人たち 講談社 ★★★★☆
静かなとてもいい小説です。人と接することが苦手な女性が、タイプの違う同い年の女性や年の離れた壮年の男性と付き合うことで、自分を見つめ直す。
今までの川上の小説とガラッと雰囲気が違うように思う。以前のスピード感は影を潜め、ゆったりと時間が流れる。光についての話や心理と風景の描写は美しい。
地味な小説のように感じもするが、川上が詩人になった。
主人公は、自宅で校閲の仕事をする人間関係が苦手な入江冬子。彼女に仕事を持って�ュる石川聖、彼女は出版社に勤めるが、性格がハッキリとしていて、言いたいことをズバリと指摘し、周りから疎まれている。入江がカルチャースクールで知り合ったのが、高校の物理の先生という中年の三束。入江は、三束に惹かれていく。三束の関係は余りにスローだ。しかし、少しは�i展するが・・・�B
滝田明日香
晴れ、ときどきサバンナ 私のアフリカ一人歩き 幻冬舎文庫 ★★☆☆☆
BOOK・OFFで見つけた本。著者が大学生時代の頃の自分探しの記録でもあるのだが、アフリカでの旅と仕事を若さで、甘いところもあるのだけれど、幸運にも乗り越えていく。
1975年神奈川県藤沢市生まれ。両親の仕事の関係で、6歳からほとんどが海外で生活した。2000年にナイロビ大学獣医学部に入学。現在、獣医として活躍中。
松尾スズキ
老人賭博 文藝春秋 ★★★☆☆
実�ヘ・・・、ブックサーカスで、ビニールでピチッと梱包されていたので、
漫画だと思って購入しました。
奥付けの紹介によると著者は、作家、演出家、俳優、映画監督、脚本家と多才。2008年、映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」の脚本で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。
舞台は北九州の白崎(これって黒崎かな)。
整形手術をしてかっこよくなったマッサージ師金子堅三(先生)は、お客さんのコメディ俳優海馬五郎(センセイ)と知り合い師弟関係になる。
北九州の白崎での映画の撮影に同行する。そこで、78歳にして映画初主役生方老人役の小関泰司、グラビアアイドル出身の新人いしかわ海らが出演する、「黄昏の町でいつか」のロケに参加する。
そこで、知り合った、制作の森川、プロデューサーの井沢良太郎、俳優の阿木、波田、三股たちとセンセイが、小関老人のセリフのトチり回数で、賭けをやったり、麻雀屋でチンピラにからまられたり、とドタバタ劇を繰り返す。
センセイは、金子に、小関老人のスパイスガールズの歌を一発で歌えるかどうかの賭けに参加しろと、「賭けねば、へたれだ」と脅迫的に誘う。とこんな調子の小説です
石田ゆうすけ
いちばんの危険なトイレといちばんの星空(自転車旅行記) 世界9万5000km 自転車ひとり旅U 実業之日本社 ★★★☆☆
自転車で世�E一周、7年半、9万5000km。
T.世界一スリリングな場所
さて、どこでしょう?
U.世界一すごいモノ
トイレ、宿、お札など。
V.世界一の景�マ
渓谷、滝、遺跡、星空はどこが・・・?
W.世界一の食べもの
メシはどこがうまい、まずい?
X.世界一驚かせてくれる人たち
世界一の美人はどこ?
世界一頭にくるポリスは?
Y.世界一すごいところ 美しい町、孤独な場所、苦手な国・・・?
→トイレの話を少し、ネタバレなので、気になる方は飛ばして下さい。
ブルキナファソでの出来事。地面に日干しレンガを積んだ四方を囲ったトイレ!?地面だけ?何も穴もない?
目があった、誰と?
ブタ・・・!
松山巌
乱歩と東京 PARCO出版 ★★★★☆
筆者が、乱歩を通して1920年代の東京の文化・街について検証した。乱歩や奇妙な建築・建物には興味深い。満員電車で読むと少し戸惑うところあり。
章 感覚の分化と変質
探偵の目
目と舌と鼻、そして指
章 大衆社会の快楽と窮乏
高等遊民の恐怖
貧乏書生の快楽
章 性の解放、抑圧の性
姦通
スワッピング
章 追跡する私、逃走する私
追跡する写真
逃走する実験
章 路地から大道へ
もう一つの実験室
大道芸人たち
章 老人と少年(30年代から60年代)
埋葬
少年誘拐
夏川草介
神様のカルテ 小学館文庫 ★★★☆☆
宮崎あおい主演の映画の原作。何となく森見登美彦さんの文体に似ているような・・・。主人公、栗原一止(いちと・西国生まれ)は「草枕」を愛する、信州大学卒業5年目の「24時間開業本庄病院」の勤務医(ドクトル)。妻ハル(片島榛名)は、美人なカメラマン。登場人物は、ユニークだ。御嶽荘(築50年二階建て幽霊屋敷)に、栗原夫妻と住む学士殿、男爵(スコッチとキャンバスが恋人)。一止との同窓生の砂山次郎。次郎の彼女の水無陽子(新米看護師)。少し気が強いが優しい東西(28歳主任看護師)。病院の大狸先生、古き常先生。患者さんの安曇清子さんとお見舞いにくる老人。大学病院の医局長の雲之上先生。満天の星、門出の桜、月下の雪の三話からなる。
V.S.ナイポール
ミゲル・ストリート 岩波書店 ★★★�噤�
初めて読む作家で�キ。とても、面白い!カリブ海の元英国領トリニダードの首都ポート・オブ・スペインにある下町のミゲル・ストリートが舞台。とにかく、変わった人たちがどんどん主人公として登場してくる。まあ、本当の主人公は、語り手の僕ではあるけれど。
ボガート
名前のないモノ
ジョージとピンクの家
彼の天職
マン・マン
B・ワーズワース
腰抜け
花火技術者(ピロテクニスト)
タイタス・ホイット、教養学士
母性本能
青いゴミ収集カート
ラヴ、ラヴ、ラヴ、アローン
機械いじりの天才
念には念を
兵士たちがやって来るまで
ハット
僕がミゲル・ストリートを去ったいきさつ
短編のような構成だが、一つの長編小説。ノーベル賞作家のV.S.ナイポールの処女作。最初に発行されたのは「神秘な指圧師」だが、執筆はミゲル・ストリートが先とのこと。ナイポール(1932年トリニダード生まれ、西インド諸島からの移住してきたインド人)
松山巌
くるーりくるくる 幻戯書房 ★★★☆☆
謎の人物だな?全く知らなかった。川上弘美が絶賛していた。 エッセイみたいな小説みたいな思い出話。特別、凄いとかやるなとか�ハ白いとかはないのだけれど、作者の深さみたいなものを感じる。
猫さんも登場します。
(猫の事情、人の都合の本文から)
うわわぁぁ。
うわわぁぁぁ。
うっ、なんなんだぁ。鳴いているのか。ああ、なんだ、猫かよ。隣りの家の方か。うなってやがる。朝っぱらから、うるせえな。目が醒めちまったじゃあねえか。ふーう、なにか夢を見てたはずが、あれ、なんだっけな。
うわぁぁぁ
うわわぁぁぁ。
要チェックな作家。
リディア・ディヴィス
ほとんど記憶のない女 訳 岸本佐知子 白水Uブックス ★★★☆☆
短編集です。�メの岸本佐知子さんは、「ねにもつタイプ」の著者です。
その訳者が大絶賛で、「読みおわる頃には自分を取り巻く世界が前と少し違って見えた」と訳者あとがきにあります。
白水Uブックスで読みましたが、単行本も出ていたので、結構、読まれたのでしょう。短編集ではありますが、表題の「ほとんど記憶のない女」に期待して、購入したら、肩透かし請け合いです。たった3ページの短編です。この短編集は、短編集と思うとこれまた肩透かし!数行の超短編もあるのです。この本を面白いと思う人は少ないと思います。眠くなるものもあり、何かしら?屁理屈?と思うものもいくつもあります。
しかし、これらの短編の中に、あれれと思うものがあれば、何となくこの短編集の仕掛けがわかったように感じられるかも〓しれません。1,100円(税別)は高いかどうかは、立読みしてからでもいいかも。
51短編で200ページほどです。
「裏のアパート」が面白かった。
川上未映子
夏の入り口、模様の出口 新潮社 ★★★☆☆
歌手・女優・作家と多才な川上未映子のエッセイ。彼女の独特な感覚は、なんと!近視だった・・・。というのは、冗談ですが、「ゆるりもぴーんも、おこのみで」を読むと、
(抜粋引用)
レーシック手術がとても気にはなるのだけれどいまいち踏み切れないところもあって・・・
コンタクトレンズ装置時には小さいものがあまり見えない。
物から迫力だけがごっそり抜け落ちてしまうのだった。たとえばわたしは縮れた1本の髪の毛の肌理(きめ)や毛穴といったなんの役に立たないものをただじっと見るのがどうにも好きなのですが、裸眼で見ると近くのもの、小さなそれらが目に流れこんでくるかのようによく見える。それらはある独特の立体をもって立ち上がり、うねりだし、毛の世界にわたしは誘われ、それは物語の発生を見てとれるほどにオモシロマンティック・・・・・・であるのだけれど、(以上)
発想の原点だなあ。裸眼が一番�B
その他、ピッコン!、燃やして手紙、お金の話はしません世界、あなた編集者?、消します?それとも残します!(確かにPCに残っている自分のものは死ぬとどうなる?)など、楽しいエッセイです。
吉行理恵
記憶のなかに 講談社文庫 ★★★☆☆ カバー装画 南桂子
実家の本棚を漁っていたら、見つけた文庫なんだが、カバー装画が南桂子。その理由で持ち出したので、吉行理恵って?でした。お兄さんは作家の吉行淳之介、妹は女優の吉行和子。〓〓〓む!なかなかの兄弟姉妹!読んでみました。
いわゆる少女小説なのかな。猫とのまつわる話も多い。前後関係に全く脈略がないような展開もあるのだけれど、小説としては面白くはない、ただ、ところどころ、心に引っ掛かるところがある不思議な感じ。昭和56年でも文庫(180ページ)は260円したのか。
浜なつ子
アジア的生活 講談社文庫 ★★☆☆☆
アジア的生活と�「う言葉の魅力に釣られました。著者の言葉を借りれば、「取材の合間に拾ったわたしのアジア物語」だそうだ。日本もアジアだが、インドネシアやフィリピン、マレーシア、タイ、ラオスでの体験談。暑い夏〓、日本を飛び出してアジアへ行った気分になろうっと。
(本文から)
ピナトゥボ火山の噴火で破壊されたプーンバトゥ村に住んでいる二十歳の青年は、「街には樹がないから暑いんだ。村なら木陰があって涼しいんだ」と命かけで生きている。
著者が言うには、「スラムは混沌という名の"楽園"であり、生命力溢れる根源的な場所である」とのことで、「最も俗なるところが聖に通じ、最も醜いものが清らかなものに近く、最も単純なものが真実に迫るという逆接を痛感できる、哲学的な場所なのだ」そうだ。
(本文から)
タイのイーサン(東北部)は悲惨だなんて誰が言ったのか。ラオスにいると国境を接したタイのイーサンには立派な家々が建ち並び、農地が広がる豊かな土地に見えてくる。貧困という概念は実に相対的なものだ、ということを知らされる。ラオスの人々はタイ国をひどく金持ちだと憧れており、タイバーツをあがめ奉っているのである。そして、「タイのイーサンでは子供を売る。貧しい農村だから。しかしラオスでは子供を売らない。もっと貧しいので現金がいらないからだ」
タイ人一行が日本に視察に来たときのお話。
(本文から)
昼食に幕の内弁当�ェ出た。するとタイ人たちは全員がひどく憤慨し、「日本人はずい分と失礼だ」と言ったそうである。なぜか?幕の内弁�魔フ料理は冷たいからである。タイ人にとって冷えた料理を出すなどもっての他、おもてなしの心に欠ける、もっといえば料理の心に欠ける、ということになるらしい。屋台のアツアツ料理は、タイの料理の心を素朴に示している。
文庫本は、2000年8月が第1刷なので、内容自体はもっと古いので、現在は、随分と変わっているように思います。
寺田寅彦
柿の種 岩波文庫 ★★★★☆
寺田寅彦(1878年〜1935年・昭和10年・科学者)が大正から昭和初期に書いた短文集。面白いし、なるほどと感心させられるものも�スい。
短章その一
(本文から)
(略)
全体が実物らしく見えるように描くには、「部分」を実物とはちがうように描かなければいけないということになる。
印象派の起こったわけが、やっと少しわかって来たような気がする。
思ったことを如実に言い現わすためには、思ったとおりを言わないことが必要だという場合もあるかもしれない。(大正十年七月、渋柿)
(本文から)
「ダンテはいつまでも大詩人として尊敬されるだろう。・・・だれも読む人がいないから」と意地の悪いヴォルテーアが言った。
ゴーホやゴーガンもいつまでも崇拝されるだろう。・・・
だれにも彼らの絵がわかるはずはないからである。(大正十年五月、渋柿)
(本文から)
(前略)
このごろ石油ランプを探し歩いている。(中略)東京という所は存外不便な所である。
東京市民がみんな石油ランプを要求するような時期が、いつかはまためぐって来そうに思われてしかたがない。(大正十二年七月、渋柿)
*九月に関東大震災。
(本文から)
震災後、久しぶりで銀座を歩いてみた。
いつのまにかバラックが軒を並べて、歳暮の店飾りをしている。
歩きながら、店々に並べられた商品だけに注目して見ていると、地震前と同じ銀座のような気もする。
往来の人を見てもそうである。
してみると、銀座というものの「内容」は、つまりただ商品と往来の人とだけであって、ほかには何もなかったということになる。(後略)(大正十三年二月、渋柿)
三毛(みけ)に交際を求めて来る数匹の男猫を見て、一句。
(本文から)
淡雪や通ひ路細き猫の恋
(昭和五年三月、渋柿)
短章その二
選挙ポスターの「原野九郎」、「小菅雷三」、「不破伊勢次」と、商売のポスターの「よせ鍋はま鍋」、「蒲焼三十銭」、「○○大特売大安売り」とを比較して。
(本文から)
建て札が同型であるという事実の裏にはその建て札の内容にも若�アの共通点があるという事を暗示するのではないかという気がした。
どちらも「売り物」である。そうしてどちらにも用心しないと喰わせ物があるかもしれない。
浅井�G純
アフリカ大陸一周ツアー 大型トラックバスで26ヵ国を行く 幻冬舎新書 ★★★★☆
アフリカ物を読むのは三作目。「黒檀」(カプシチンスキ・河出書房新社)、「インパラの朝」(中村安希・集英社)。
黒檀は、ジャーナリストの視点。インパラは、ツーリストとして、見方。そして、これは、ツアーバスでの、チームプレーが必要な旅行者としての立場。こういう大型トラックバスで一周するツアーがあるのも、驚き!乗務員は2名が運転と添乗をするが、300日、24名の乗客の共同生活も大変だ。料理当番もやらなくてはならない。
旅のスタートは、モロッコ。西アフリカから陸路で南アフリカを通り、東アフリカを北上し、エジプトへ。走行距離は4万731キロで、地球一周と同じ距離。
凄いツアーの始まりです!
ナイジェリアは、人口1億5000万人。私設検問も多く、金の要求も多い。コンゴ民主共和国は、とにかく危険。カメラ撮影も禁止。かつてのコンゴ王国は、コンゴ共和国(元フランス領)、コンゴ民主共和国(元ベルギー領)、アンゴラ(元ポルトガル領)に分かれた。
「ホテル・ルワンダ」の映画で、ツチ族と�tツ族の壮烈な戦いがあったルワンダ。マウンテンゴリラの入園料金は、なんと一人5万円!高すぎない?マウンテンゴリラは、人間に最も近い霊長類。面白い本だった。し�ゥし、強烈なツアーだな(゜゜;)\(--;)
湯本香樹実
ポプラの秋 新潮文庫 ★★★☆☆
いいお話です。作者は、「夏の庭」(確か、子供と年寄りと花の話だったか)で、日本児童文学者協会新人賞を受賞していますが、同小説も、そう�オた分類に入るものと思います。
以下、あらすじです。気になる方は、とばして下さい。お父さんを亡くした千秋とお母さんは、ある駅で降りて、ポプラの木のあるアパートを見つける。そこの大家さんは、夫に先立たれて一人で生活している少し変わったお婆さんであった。空き部屋があるというので、早速、住むことになる。そこには、佐々木さん、西岡さんとが住んでいた。
千秋たちが住んで、しばらくして、西岡さんの息子のオサム君が母親が再婚したので、母親から離れてしばらく同居することになる。千秋は兄のようにオサム君を慕う。しかし、オサム君は、母親の看病のため、新しい父親の元に住むことになってしまう。
千秋は、お父さんを亡くしてから、「何か悪いことが起こる」という不安に苛まれているが、病気ににり、入院を勧められるが、お婆さんの家で面倒をみてもらうことになる。最初、千秋は馴染めなかったお婆さんだが、段々と話をするようになり、お婆さんの秘密を知ることになる。その秘密とは、お婆さんが亡くなるときに、お婆さんは、知人たちの亡くなった人達に手紙を届けるということだった。その条件は?
千秋もお婆さんに死んだお父さんへの手紙を預けることにする。十数年後、お婆さんが亡くなったが、果たして、お婆さんは手紙を届けてくれたのだろか・・・。
林 洋子
�。田嗣治 本のしごと 集英社新書 ヴィジュアル版 ★★★★☆
藤田の手掛けた本の挿絵などを紹介したもの。「藤田嗣治 �閧オごとの家」の著者。二冊ともとても良い本。藤田好きだけではなく、楽しめます。本物かどうかわかりません、藤田がエクアドルで入手した「人皮製の珍書」の話しもあります。写真もあります。本屋さんで覗いて見て下さい。各章の扉絵は、「小さな職人たち」から、ポーラ美術館にあるもの。
1930年刊行の「猫の本」、「ユキの回想」の特装版などの絵を掲載。
マヌエル・リバス
蝶の舌(短編集) 訳
野谷文昭、熊倉靖子 BOOK PLUS(角川書店) ★★★☆☆
スペイン映画「蝶の舌」の原作ですが・・・。
訳者あとがきによると、原題は、「愛よ、僕にどうしろと?」であるそうで、映画の上映にあわせて、変えたとのこと。13の短編を読めば、映画をご覧になった方は、わかると思います。
最初から3つ目までの短編をミックスして、一つの映画にしたものです
蝶の舌
霧の中のサックス
カルミーニャ
愛よ、僕にどうしろと?
コンガ、コンガ
アニメーション
スパッツをはいた娘
モノたち
コウモリのために咲く白い花
幸福の占い
時がもたらす知恵
そこに独りで
牛乳を注ぐ女
ミスターとアイアン・メイデン
ハバナの大墓地
ヨーコの光
映画化された三篇は面白い。他はいくつかいいものもあるが、よくわからないのもありました。ガルシア・マルケスが大絶賛したと帯にありました。スペインの地理的・�ッ族?的な要素を学ぶ必要があるかなと思います。
ル・クレジオ
飢えのリトルネロ 訳 村野美優 原書房 ★★★☆☆
久しぶりのル・クレジオの新刊。「調書」や「逃亡の書」のように、難解な小説ではない。「偶然 Hasard 帆船アザールの冒険」は、読みやすい小説だけど、それよりは、小説らしい。
(冒頭・本文から)
ぼくは飢えを知っている、それを身に沁みて感じたことがある。子どものぼくは、戦争の終わりに、アメリカ軍のトラックの横を走る人々と一緒に、兵士たちが投げてよこすチューインガムや、チョコレートや、パンの袋を取ろうとして両手をのばしている。(以下略)
このように、語るのは少年である。そう語り手は、少年。
主人公のエテルは、母方の大叔父ソリマン氏に偏愛され、彼の遺産をすべて遺贈される。アレクサンドル・ブラン(父親)は、毎月、親戚や友達や商売仲間を自宅に集め、戦争、ドイツ、ファッシズム、色々な政治問題について、話している。エテルにとっては、こうした議論は虚しく思える。父はそうした仲間にうまく騙されても、マイペースに生きていた。母ジュスティーヌも不平を言う性格ではないが、アレクサンドルの行動には、やや戸惑っていた。エテルは、父親のお客さんはみんな好きになれなかったが、イギリス人のローラン・フェルドだけは好きだった。彼女は、ロシアから亡命してきた貴族のクセニアと、友達になった。このクセニ�Aは貧困生活を強いられていた。そ�オて、フランスも戦争に巻き込まれていくのであった。
(本文から)
戦争、それはこの憂鬱のことであり、前の日と同じような���フことだといってもおかしくはなかったが、しかし、日に日にその細部は−冬への緩慢な歩みのように−抜け落ちてゆくのであった。(以下略)
時代は悪い方向に向かっていく。
この「飢え」は、いったい何なんだろう。戦争から逃れられないこと?それとも、不毛の議論が生み出すもの?精神の充足はどうなっていくのだろうか?チョコレートが「飢え」を癒してくれるのだろか。
梨木香歩
からくりからくさ 新潮文庫 ★★★★☆
彼女の小説を読むのは3冊目です。「西の魔女が死んだ」は、そうでもなかったけれど、「家守綺譚」を読んだときは、こここれは面白い!と感じました。
数年後、また、読みたくなり、文庫を入手し、再読しました。やはり、いいなあ…。先週、有隣堂で、ふと手に取ったのが、この文庫本だったのです。
「からくりからくさ」
手の込んだ小説です。�梶X、説明しすぎかな、冗長すぎるかな、なんか発表会みたいだなあ、と感じるところもありましたが、うまい!
「からくりからくさ」という題名からか、からくりがあるな。人形の存在感がジワッとくるし、結界も感じる人がいたり、染料の材料の草(よく調べたな� )が生えていたり、まあ、面白い。文庫本400ページ少しあるけど、もう少し、短くしたら、�ヌうなるのかな。
以下ネタバレもありますので、気になる方は、とばして下さい。
主人公は、祖母が遺した古い家に住む蓉子さん( 父親は画廊の経営者)で、彼女は植物染料を学んでいる。幼い頃から、人形の、りかちゃん(実は市松人形で、人形師は澄月)を大切に�オている。
彼女は、祖母の家の管理人として、部屋を貸すことになった。
そこに集まってきたのは、鍼灸の勉強にアメリカから来たマーガレット(母親はポーランド系ユダヤ人、祖母はルーマニアの山岳地帯出身)、機(はた)を織る内山紀久、佐伯与希子(平織りの織物であるキリムを研究・蛇嫌い)の三人で、女性四人とりかち�痰l形との五人の生活が始まる。
紀久(蛾嫌い)の元彼の神崎は、外国の染織技法を勉強していて、紀久に、出版社を紹介して、地方独特の紬の本を書くように勧める。与希子の好きな竹田は着物と能につい�ト勉強している。
蓉子たちと彼女らの家族や親戚、神崎や竹田を巻き込んで、人形師澄月、赤光の秘密や「竜女」の面にまつわる秘話が解明されていく。
河野多惠子
臍の緒は妙薬(へそのおはみょうやく) 新潮文庫 ★★★☆☆
名前は良く見るのですが、読むのは初めてな作家だと思います。大正15年(1926年)大阪生まれ。1963年に「蟹」で芥川賞を受賞。主な著書に、「不意の声」、「みいら採り猟奇譚」、「後日の話」、「秘事」などがある。
「臍の緒は妙薬」の文庫本には、4短編がおさめられている。「月光の曲」、「星辰(せいしん)」、「魔」、「臍の緒は妙薬」である。
昭和初期〜の話。それぞれ、素材は日常的なことなのだが、作り方がうまい。「魔」のモノがどこかへ置き忘れるような話や「臍の緒は妙薬」なんかも、桐の箱に臍の緒を入れて保存されているが、人間誰しも一生で大病は三回するが、その時に�くかもしれないのが、臍の緒で・・・。など。そんなに古く感じないけれど、結構、昔のお話。
クラフト・エウ゛ィング商會
クラウド・コレクター(手帖版) 雲をつかむような話 ★★★★☆
よくわからない話である。クラフト・エウ゛ィング商會とあるので、何かヨーロッパの作家の翻訳と思い、買ってきたのだが。
頁をめくると。
雲、賣ります
クラフト・エウ゛ィング商會
の雑誌広告の切り抜きがある。クラフト・エウ゛ィング商會とは?その広告は、どうやら、昭和9年の科学雑誌に、作者(吉田浩美・商會三代目店主)の祖父が掲載したものだそう。
クラフト・エウ゛ィング商會の倉庫に祖父の旅行鞄を見つけ、隠しポケットから数冊の古い手帖と一枚のパスポートを発見するのだが。
手帖は、日記形式で、遠國「アゾット」への旅行記です。1943年3月から5月までの長旅で、アゾット全体が21のエリアに分かれており、それぞれのエリアに、ムーン・シャイナーと呼ばれる不思議な蒸留酒を造っているのです。登場するタロットのような絵版も独特です。
さて、どうゆう旅になるのやら。
上條さなえ
10歳の放浪記 講談社文庫 ★★★☆☆
帯に「10歳のわたしはホームレスだった」という、コピーと古い女の子二人の写真に惹かれて、買っちゃいました。
小説かと思っていたら、自叙伝なんですね。昭和35年�フ秋から翌年の秋までの一年間、作者とお父さんはホームレスだったそうです。その前後の椎名町、大塚、狭山貯水池、鮫洲、滝野川、高尾山、九十九里村、根津八重垣町、池袋、秋津、房総が登場します。
お父さんは、酒を飲むとお母さんに暴力を振るうので、お母さんは、連れ子の亜矢子と、早苗(なこちゃん・作者)とで生活することもあったが、結局、お父さんが早苗を引き取り、どや街で生活していた。幼い早苗が、拾ったパチンコ玉で、パチンコをし、ヤクザに助けてもらって、稼いだり、お金がないのに�A映画館にうまく潜り込み、ただで観たりと、なかなか、逞しく生きていく姿は驚きだ。
貧しいながらも、それぞれの人たちに、感謝しながら、生きていく早苗は、泣きたいこともいっぱいあったんだろうな。早苗の友達のかおりが言う。彼女もまたお婆さんに育てられ、月に一度しか母に会えない。
「子どもって、かなしいよね。大人に決められたら逆らえないし、どんなにいやなことだって、がまんしなくちゃならないんだもん」
(マイッタナァ)・・・早苗の口癖・・・。
作者は、1950年東京都生まれ。小学校教員を経て、1987年、児童文�w作家としてデビュー。著者に「さんまマーチ」、「コロッケ天使」、「キャラメルの木」などがある。
コーマック・マッカーシー
ザ・ロード 黒原敏行�B★★★☆☆
映画化されているので、ご存知な方も多いでしょう。映画は見ていないので、こういうひたすら子どもと父親が、難を逃れていく物語をどう映画として、仕上げていくんだろうと興味深く思う。
小説としては、詩的・哲学的な部分を除けば、そんなに面白いとは思わない。とにかく、同じような葛藤、親子の対話、情景描写を読み続けなくてはならない。
確かに、何かが起こって、地球、あるいは、彼らが住んでいる国が破壊され、焼け野はらにされ、ほんの一握りの人間しか生き残らずに、食べ物もないときに、人はどういう行動を取るかという究極、いや、極限状態の行動学のような小説だ。
登場人物も極めて少なく、主人公の親子の名すらない。
親は現実を見つめ、いかに二人が生き残れるかを考える。少年は、善い者でありたいと願う。時に二人の思いが違え、少年は無口になる。
(本文から)
どうしようもなかったんだ。
少年は返事をしなかった。
あ�フ人はもうすぐ死ぬ。なにか分けてあげたらこっちも死ぬ。
わかってる。
だったらいつになったらまた口をきいてくれるんだ?
いま口をきいてる。
じゃあもういいんだな?
うん。
れならいい。
うん。
(本文から)
ぼくたちは善い者だから。
そう。
火を運んでいるから。
火を運んでいるから。そうだ。
わかった。
死人たちがいっはいいる町で。
(本文から)
こういうのは見ないほうがいい。
頭に入れたものはずっとそこに残るから?
ああ。
でもいいんだパパ。
いいって?
もう頭の中にあるもの。
お前には見てほしくないんだ。
それでももうずっと残ってるよ。
この二人は、いったい、生き延びることができるのだろうか?
コーマック・マッカーシー(1933年〜)、ロードアイランド州生まれ。「ブラッド・メリディアン」、「平原の町」、「血と�\力の国」などが主な作品。
バオ・ニン
戦争の悲しみ The Sorrow of War 井川 一久訳 めるまーく ★★★★★
ヴェトナム戦争を語った「戦争の悲しみ(The Sorrow of War)」、バオ・ニン作、井川一久
訳。
ヴェトナムの南北との戦いにアメリカ対共産圏との争いが悲劇を生む。ヴェトナム戦争の悲劇と悲恋の物語。考えさせられる�B少し、長くなりますが、本文から引用してみたいと思います。とても学ぶべきところの多い小説だと思います。
(本文から)
1975年雨季、ヴェトナム中部高原の旧B3戦域。ヴェトナム人民軍の戦時行方不明者(MIA)捜索隊は、戦域の北側斜面を流れるパコ川の岸辺で乾季を待っていた。
とこの小説は始まる。主人公キエンは、元優秀な兵士で、終戦後、捜索隊で仕事をしている。
(本文から)
彼自身がジャングルで救いを待つ幽霊みたいな存在だった。日常性への復帰の道をふさがれて、戦�緕ミ会の外側をあてどなく彷徨しつづける哀れな存在だった。
(本文から)
だがキエンは、やがて現実を理解した。彼も同行者たちも、仲間の死や失踪をいちいち気に病んではいられぬ悲劇の時代に生きていた。いや、生きること自体が悲劇だった。その悲劇のスクリーンには、天使性と悪魔性を合わせ持つ人間という生き物の矛盾に満ちた姿が、この上なく露骨に映し出されていた。(中略) しばしば同一人物が天使と悪魔を本気で演じ分けた。ほかに生きるすべがなかった。土も水も血に染まった60年代末、キエンの同胞すべてはそういうトータルで極限的な悲劇の舞台に立たされていたのだった。
(中略)
歴史は人間にこういう悲劇を真に求めているのか、これからも求めつづけるのか。
(本文から)
正義は勝った。が、狂気と死と冷血の暴力もまた勝ったのだ。
(中略)
物的損害は�C復できる。肉体の傷はいずれ癒される。だが、戦争が人々の心に刻んだ傷痕はいつまで残るだろう。
主人公キエン=筆者なのかと思っていると、キ�Gンが書いて、聾唖の少女に預けていたものを、筆者がその原稿を編纂したような体裁になっている。
その編纂した筆者も、キエンと似た経験をしており、また、キエンのことを知っているとこの�ャ説に書いている。
いつまで戦争を続けるのかと心から悲しく思います。
中村安希
インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日 集英社 ★★★☆☆
読みやすい。内容的には、旅行者日記の域�oないかと思って読んでいたが、後半はアフリカの援助などに対する問題意識が大いに語られる。どれくらい旅慣れた著者かはわかりませんが、ハードな旅だったと思います。47カ国、2年という、ある意味では、欲張り、表面的ですが、「援助」とは何かなどの問題意識を提示してくれます。
(本文から)
「一般的に『貧困』は、農村地帯にあるものではなく、都市に存在するのです」(ウガンダの孤児院兼学校経営者の夫人)
ハエがいるのが日常となり、手で食べることが普通になった。野菜も肉も揚げた魚もご飯に混ぜて手で食べてきた。切り分けられたスイカの種は、よく見ると無数のハエだった。(タンザニア漁村で)
ある晩、別の旅行者が世界旅についてこう言った。
「私たちがしていることは、先進国の金持ちの道楽以外の何ものでもない」
私は、しばらく考えた。私は、自分自身のことを金持ちだと思ったことはなかった。私にとってこの旅は�A金持ちの道楽と呼べるほど楽な道でもない。予算180万円で二年間世界を彷徨うことを、それまで私は感覚的に「貧乏旅行」と呼んできた。それは一部真実であり、しかし、別の見方をすれば全く見当ハズレだった。(ジンバブエで友人4人と歩いている時に5人の暴漢に襲われ闘った時)
「ここの地元の連中は、外国人の財布の中には、お金が自然に湧いてくるって思い込んでいるからね。・・・お金は無限にあるわけではない。使った分だけ減っていくんだ」(ニジェールで会ったビジネスマンの言葉)
アフリカは教える場所ではなくて、教えてくれる場所だった。(著者)
著者は、1979年京都生まれ。アメリカの大学を卒業後、日米で3年間社会人をして、06年からユーラシア・アフリカ大陸へ旅行し、08年に帰国した。
普通、旅行記は、写真がつきものですが、一枚もないのが不思議です。ネットにはあるのかもしれませんね。
三浦しをん
まほろ駅前多田便利軒 文春文庫 ★★★☆☆
三浦しをんの短篇を読みましたが、彼女の作品の登場人物はなかなかユニークですので、短篇では勿体ないと思い、このまほろ駅前を読みました。文庫本で350頁の中篇だと登場人物が、さらにイキイキしているように思う。
多田便利軒は、ラーメン屋ではありません。多田さんが一人でやっている何でも屋、便利屋です。主人の実家に行くからと女からチワワを預かったが、取りにこなかったり、家の前のバス停で間引き運転をしていないか調査させられたり、入院している曽根田さんのお婆さんを息子になりすまして見舞いさせられたり、子供の塾の送り迎えをやったりと大繁盛。
まあ、そんな多田便利軒に、高校時代同級生だったが、変人で口も聞いたことがなかった行天と出会い、なぜか、彼は多田便利軒でお手伝いをすることになる。この行天は、多�c以上に、世間をなめているというか、どこか人生に覚めているというか、まあ、度胸もそれなりにあり、喧嘩も強い!なので、多田の仕事の手助けよりも、トラブルを拡げてしまう。やくざの星に追いかけられたり、その�ー病な手下に刺されたりしながらも、星とやりあい、う�ワく付き合っていくなどなかなかのもの!駅裏の自称コロンビア人娼婦のルルやハイシー と多田や行天が仕事を通して友人になっていくのも面白い。
読んでいて、神奈川県の人間には、まほろ駅前は、町田駅とすぐわかるので、何となく、イメージも具体化されます。
三浦しをん。1976年東京都生まれ。この小説で第135回直木賞を受賞�オた。
きみはポラリス 新潮社 ★★☆☆☆
三浦しをんは面白いと聞いたので、ブックオフで購入。短篇集でした。まあ、少し変わったカップルのお話かな。特別、凄いと思った短篇は、残念ながら、なかったが、ストーリーは楽しめる。「骨片」がいい。
目次
永遠に完成しない二通の手紙
裏切らないこと
私たちがしたこと
夜にあふれるもの
骨片
ペーパークラフト
森を歩く
優雅な生活
春太の毎日
冬の一等星
永遠につづく手紙の最初の一文
どうやら、短篇より中編の方が、面白いらしいので、読んでみよう。
梨木香歩
この庭に 黒いミンクの話 絵 須藤由希子 理論社 ★★★★☆
梨木さんの作品は、「西の魔女が死んだ」、「家守綺譚」の二作を読みましたが、「家守綺譚」はとても不思議なお話で面白く、主人公が死者と掛軸の墨絵を通して会話するというところなど、感性に凄さを感じました。
このお話も、最終部分を描かないでも、�z像できると思いましたが、絵と合わせて、分かりやすくしたのかもしれません。
○あらすじ
雪の深い北国に越してきたミケルは、庭のある一軒家で、酒とサーディンで暮らしている(アルコール中毒?)が、窓の外を見るといつも女の子が覗いている。ある時、ミケルは女の子に声を掛け、話をすると、女の子は、ミンクがこの庭にいると言う。家の中に入り、女の子からもらったミルク�温めながら二人で飲み、少しお話をするが、ミンク用にミルクを置いて、女の子は帰ってしまう。
ミケルは、酒を飲み、うつらうつ�轤オたところ、黒いミンクがやってくる・・・。
夢か現実か錯乱か夢想か、ある中か?過去か現実か未来か?不思議な感覚で、酒のつまみで食べたサーディンは雪の庭で空中に渦巻き、また、自分の身体に帰�チてくる。
皆川博子
少女外道 文芸春秋 ★★★☆☆
以前から気になっていた作家で、ブックオフで見つけました。短篇が七本。戦前から戦後の緊張感がやんわりと伝わりつつも、少女のある種の大人の男性への気持ちが綴られたものなど、文章も静かで、心地よい。
どういう作家だろうと奥付けを見ると、1930年生まれ!児童小説でデビューし、「アルカディアの夏」で小説現代新人賞他、直木賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞を受賞。ミステリー、幻想小説、時代小説と幅広い!人です。
少女外道
巻鶴トサ�Jの一週間
隠り沼の(こもりぬの)
有翼日輪
標本箱
アンティゴネ
祝祭
少女外道、巻鶴トサカの一�T間、有翼日輪、標本箱が特に良かった。
長野まゆみ
東京少年 毎日新聞社 ★★★☆☆
帯には、
十四歳。
ぼくは「家族」について
未だ何も知らない
とあるので、何か暗い部分を想像して、読みましたが・・・。
主人公は中学生の祝常緑(ことぶき・ときわ)で、父はプラント・ハンターという植物を追って世界を旅する仕事を持つ朔朗(さくろう)。父は、仕事がら、常緑とは住めないの�ナ、叔父の祝季彦に預けている。母は、黒椿という幻の品種を代々伝えている家の人だが、会った事はない。ただ、黒椿の一枚の写真を持っているだけで、その写真の裏には(Tsunomegawa)とあるが、名前なのか、地名なのか分からない。
常緑は、父親が間借りしている河惣フルーツの二階には、よく遊びに行くが、そこには、家族ぐるみの付き合いをしている河村光(こう)さんがいる。その他は、墨花亭(ぼっかてい)の主の連玄菊(むらじ・はるあき)や彼の弟で、喫茶店「六道」のマスター連玄藤(はるひさ)。彼らが、主人公常緑を取り囲みながらも、彼の母親探し、黒椿探しが始�ワる。
この小説のもうひとつの軸は、「花の譜」という雑誌の編集部気付けで、主人公と(Katori)様との情報�換があることだ。
とやや作り過ぎたきらいがある小説で、黒椿を探すのか母を探すのかも何となく、こんなものなのかなと共鳴少なし。もっと、主人公の背景や育ちを書きこんだ方がいいのか?
小川未明
赤いろうそくと人魚 新潮文庫 ★★★☆☆
小川未明(1882年〜1961年)童話集。新潮文庫、243頁で、短編25本入っています。
「赤いろうそくと人魚」から。
人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいたので� ります。北方の海の色は、青うございました。あるとき、岩の上に、女の人魚�ェあがって、あたりの景色をながめながら休んでいました。(以下、略)
楽しくて少し恐い童話集です。
遠藤周作
父親(上・下) 集英社文庫 ★★★☆☆
少し前、神奈川県立近代文学館で遠藤周作展を見てきたので、「父親(上・下)」を読んでみました。「沈黙」以来です。
以下、ネタバレもあります。気になる方は読まないで下さい。
昔気質の父親石井菊次は、ケジメをとても大切に�キる人である。彼の勤める化粧品会社においても、売れれば良いという考えが蔓延るが、彼は信念を通し、事業の責任を取り、やめてしまう。娘純子は、妻子ある人(宗)と付き合い、また、息子公一は学生運動に関わりだす。菊次は大学時代の友人大橋と恋した山内節子とばったり再会する。そして、娘が付き合う宗が、節子の娘の夫と知り、さらに、苦悩する。
みんな、自分の事しか考えない人間ばかりになり、彼はどうもしっくりしない。そういう社会と家庭の中、菊次は、苦悶する。
「善魔」という言葉は、初めて知りました。自分が正しいと思う余り、それ以外の意見を認めず、他人を無視してしまう�アとを言う。
次の言葉にこの小説の言いたいことが凝縮されている。遠藤周作と彼の父親との三つの約束。
@
気の毒なからだの人、弱い人を馬鹿にするような子供になるな。
A
学校で先生にいい子だと思われるため、友だちを裏切るような子になるな。
B
自分の弱さをごまかすため先生や親にウソをつくな。
吉田修一
パーク・ライフ 文藝春秋 ★★★☆☆
「パーク・ライフ」と「flowers」の中篇が2本。パーク�Eライフは、芥川賞受賞作。
主人公は、地下鉄の中で会社の先輩がまだ後ろにいると思い、大きな声で話しかけたら、知らない女性であった。しかし、彼女は彼の話しをあわせてくれた。電車の中で、主人公が恥をかかずに済んだというところから出会いが始まる。
しばらくして、日比谷公園で再会する二人ではあるが、実は、彼女は�ネ前から彼の事を日�苒J公園で見ていた。
全体的になんとなく気だるさがある小説で、登場人物もそれなりに魅力はあり、話しに引き込まれていくが、エンディングに物足りなさを感じる。何か起こりそうで起こらないことに意味を見いだすのかもしれないが、もう少し先まで描いても良かったのではないかと思う。少し魅力を感じてきた主人公と彼女が、このエンディングだと、もったいない。
井上 荒野
ベーコン 集英社文庫 ★★☆☆☆
短編集です。食べ物と人間、それも変わった形のカップルや不倫のカップルを何か食べることを描くことで語る。
ほうとう
クリスマスのミートパイ
アイリッシュ・シチュー
大人のカツサンド
煮こごり
ゆで卵のキーマカレー
トナカイ�Tラミ
父の水餃子
目玉焼き、トーストにのっけて
ベーコン
文章はとてもうまい。余韻というか、うま�ュ結果を先に残すような短編集。ただ、日常的な話がメインなので、話に共感できないと、つまらなく思うもの(目玉焼き)やどこかで聞いたような話(煮こごり)もある。�ツ人的には、緊迫感みたいなものが、どこかにあると、もう少し魅力的になるようにも思う。直木賞受賞作の「切羽へ」(08年)も読んでみたい。
アゴタ・クリストフ
第三の嘘 堀 茂樹 訳 ハヤカワepi文庫 ★★★☆☆
「悪童日記」→「ふたりの証拠」から続く三作目。「悪童日記」は、文体・ストーリーも面白く、時代背景の影響もあるが、双子の兄弟の行動も風変わり。「ふたりの証拠」の兄弟は、名前が与えられるが、「悪童日記」の双子の主人公と同一�l物のようで、同じではない。と言い切れないところもあるし、リュカとクラウスも、同一人物のような感じでもあった。
そして、三つの嘘である「第三�フ嘘」は、第一部は、リュカ、第二部はクラウスが主人公となっている。ただ、どうも違和感があるのは、「悪童日記」、「ふたりの証拠」の主人公と微妙に違っているし、あるいは、家族設定も全く違っている。ぺテールも全く別人である。
リュカ(LUCAS)は、亡命して、クラウス(CLAUS)だと嘘をつき、クラウスになっているし、クラウスはクラウス(KLAUS)と名乗っている。彼はリュカを兄弟と認めない!
真相は?
第二部には、こんな描写がある。
私たちは、いつも四人揃って食卓についたものだった。父、母、そして、ぼくら二人。(本文から引用)
そして、この後に悲劇が起こる。お父さん(ジャーナリスト)がアントニ�Aという女性と浮気し、子供を作ったことに腹をたて、お母さんがお父さんを射殺してしまうが、流れ弾がリュカにあたり、リュカは死んだように思われる。クラウスはアントニアに引き取られ、彼女の子供サラ(腹違い)と一緒に住むことになる。
ストーリーの具体的な因果関係みたいなものは、余り、意味がないのかもしれない。リュカがリュカでないのが、こうした戦時では当たり前かもしれない。また、過去とも今はそこに何も繋がるものがないかもしれない!
もっと、本質的な部分を理解して、読むのが良いと思います。また、「悪童日記」を読み直すといいのかな?
ふたりの証拠 堀 茂樹訳 早川書房 ★★★★★
面白い。ただ、面白いというのでは、ありません。生きるということは、ある意味で残酷さを克服していくこと。だから、面白いというと不謹慎かもしれない。登場人物の誰ひとりも悩まないものもいないし、幸福になっていくものはいない。失望、絶望の物語が、淡々と進んでいく。
作者アゴタ・クリストフはハンガリーのオーストリア国境の近くの村で、1935年に生まれた。ハンガリーは第二次世界大戦の戦場となり、やがて、終戦となるが、ソ連の傀儡政権のもと、全体主義の蔓延る不便な不自由な社会となる。この小説はこうした背景で書かれたものだ。
「悪童日記」と小説の形式は違うし、「悪童日記」では主人公はぼくらであった。
しかし、「ふたりの証拠」の主人公には名前が与えられている。この国に残った方は、リュカ(LUCAS)で、西側に去った兄弟はクラウス(CLAUS)という、いわゆるアナグラムの関係の名前が与えられている。このあたりも二人の存在感が曖昧である。
主人公はリュカ。彼の家に住みつき、近親相姦で生まれた子供(マティアス)をおいて出ていったヤスミーヌ。リュカと頭脳はいいが醜�「マティアスは、お互い、本当の親子になりかけては、離れていく。リュカを応援してくれる党幹部のぺテール(�zモかな)、アルコール中毒�フ本屋で、困っているリュカにぺテールを紹介したヴィクトール、彼は、本屋をリュカに譲り、田舎の姉の家に帰り、執筆活動もどきの生活に入るが事件をおこしてしまう。
本屋の前に住む不眠症の男ミカエルと孤児院の院長ジュディス。リュカの愛するクララは、夫トマを体制当局に無実の罪で処刑された図書館司書で、トマのことが忘れられない。
年老いた司祭・神父。時々、リュカの代わりに神父の食事の世話をするのは年老いたレオニー叔母さん。と登場人物は全て幸福ではない。
昔、司祭からのリュカへお使いを美しいアニュス(兄はジモン、弟はサミュエル、レオニーの姪)くらいか、不幸を感じさせないのは?
○その他登場人物。
リュカの世話をするジョゼフ。
伍長、兵士。
ヤスミーヌの死んだ父と母、ヤスミーヌの育ての親の叔母さん。
クララの愛人の医者。
警視。
*祖父のファーストネームは、クラウス=リュカ。
三作目の「第三の嘘」も購入しました。ハヤカワepi文庫。
「悪童日記」、「ふたりの証拠」ともにお勧めです。母国語でないフランス語で書かれたので、文章が簡潔なのかもしれません。
川上未映子
へヴン 講談社 ★★★★☆
芥川賞受賞作家、川上未映子さんの「ヘヴン」。芥川賞受賞後の初の小説。
斜視でロンパリと呼ばれる僕は、学校でいじめにあっている。ある時に、机の中に手紙が・・・。これは新たないじめ?
「わたしたちは仲間です」と書かれてあった。いったい誰?それはおなじクラスのコジマという女子生徒からだった。彼女は、女子生徒たちから、臭いと言われいじめにあっていた。
この小説は、対立構図で成り立っている。
苛める側(二ノ宮、百瀬、取り巻き)の世界←→苛められる側(僕、コジマ)。強い←→弱い。美(百瀬の美人の妹)←→醜(斜視や臭い格好)。
また、シンボルとしてのしるしが苛められる側の仲間にある。僕は、斜視で弱い。コジマは、弱い父親との絆を求めて、汚い格好をして、あえて苛められる側にいる。コジマは僕の斜視の目が好きだと言う。斜視→人と違う→苛め←汚い格好・臭い。苛めが僕とコジマの絆に。コジマは苛められること、抵抗しないことが、苛める側に入らない、苛める側の仲間にならないことだとの意識・信念をもつ。
僕は、いつの間にか、コジマを女として意識しだしてくる。
僕は、斜視を治す手術が意外と安くて簡単だと知り、コジマに相談するが・・・?
角田光代
八日目の蝉 中公文庫 ★★☆☆☆
「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした。」
角田光代さんの「八日目の蝉」・中公文庫を読みました。ううう?文章はうまいが、こうした気持ちは、女性にはわかりやすいのかな?ストーリー的には(ネタバレ気になる方はお読みにならないで下さい)
不倫関係にある男(秋山丈博)と奥さん(恵津子)の赤ちゃんを誘拐し、逃亡した野々宮希和子(宮田京子という偽名あり)が、数年間、その子を育てるという話。
小豆島に逃げている頃に、アマチュアカメラマンが撮った写真が賞を取り、全国紙に掲載され、そこに希和子と子供が写っていたことから、彼女は逮捕され、子供(薫=恵理菜)は秋山夫妻に引き取られる。
ある意味では、ここからが、子供恵理菜(薫)の自分探しのスタートとなる。彼女も、育ての親と同じように岸田という男と不倫関係になり、彼に黙って子供を孕むが、かつて彼女が育ての母と住んだ(隠れた)エンジェルホームに一緒にいたライターの千草と旅に出る。
井形慶子
戸建て願望 新潮文庫 ★★★★☆
家を建てることに興味はないのだけれど、ビフォー・アフターのような個性的な家造りを見るのは大好きだ。この本もそうした家造りのドキュメントとしてとても興味深い。
作者の家造りに対する情熱は凄い!仕事の合間にとにかく現場に通い、自分が造りたい「イギリスの家」を営業マンや監督、職人さんに伝えていく。今の家造りは�Aどちらかというと、一見、色々な物が作れそうだけど、組み合わせにしか過ぎないので手作り感はあっても、本当の手作りではない。
作者のような具体的イメージを、いかにして、現在の家造りのメーカーの人たちに伝えて、動いてもらうかだ。やはり、彼女の並々ならぬ情熱と勉強の賜物、そうした気持ちが、職人気質の人たちを動かし、「イギリスの家」を作ることが出来たのだ。
万城目学
ホルモー六景 角川書店 ★★★☆☆
ホルモーなんて知らないので、何かホルモンにまつわる物語、焼肉屋さんでの物語って、勝手に思っていました。六話が互いに絡まっています。まあまあ、楽しめます。以下は、登場人物と関係する物を記していますが、ネタバレになる場合もありますので、気になる方はお読みにならないで下さい。
第一景〜第六景
○プロローグ
登場人物
俺=安倍=京大青�ウ会=ホルモー
高村くん=チョンマゲ
楠木嬢
三好兄弟
芦屋
早良さん
京都大学青龍会
立命館大学白虎隊
京都産業大学院玄武組
龍谷大学フェニックス
@鴨川(小)ホルモー
登場人物
二人静(京都産業大学玄武組)=定子&彰子(しょうこ)=京都産業大学
清森平=京都産業大学玄武組会長
菅原真=京大青竜会会長
一条くん=定子のバイト先の同志社大学学生
葵祭
メゾンオキタ
オニ
鬼語
鴨川の等間隔カップル、足先の冷え、男ごころ。居酒屋「焼酎納言」=定子のバイト先
Aローマ風の休日
登場人物
僕=少年=高校生
楠木ふみ=理学部数学科
店長=在原
伊勢=店長の彼女
二条=店長の彼女
北白川イタリア料理「ann's cafe」
一筆書
六道珍皇寺=閻魔大王の冥土につながる井戸
トポロジー
Bもっちゃん
○登場人物
俺=安倍
もっちゃん=大阪出身=京都で6年の大学後東大文学部に=基次郎
同女(どうじょ=同志社女学校)の彼女
立命館の和泉
葵祭
ジョン・キーツ
レモン=檸檬=梶井基次郎
八瀬ホルモー
和菓子屋沙狗利=告げ人の主人
「羅生門」
○登場人物
俺=安倍
高村
楠木ふみさん
時計=2年前菅原さん所有三好兄弟
細川さん=立命館大学白虎隊第五百代会長
丸善
C同志社大学黄竜陣
登場人物
桂大五郎先生=英文学科教授=翻訳家
山吹巴(ともえ)=同志社大学に一浪して入学
元彼氏=京大=芦屋満
キョーコ=満の彼女
ウー君=シンガポールからの留学生
チョンマゲ
新島襄=同�u社大学創設者クラーク
水色の傘の女の子と赤い傘の女の子
Horumo
明治維�V
薩摩藩
ホルモー黄龍陣、復活ニ関スル三条件
イエロー・ドラゴン
薩長同盟
上御霊神社
京産大の―
D丸の内サミット
登場人物
井伊嬢=直子=大手アパレル会社勤務=京都の大学=アウトドア・サ�[クル
酒ちん=お茶の水女子大=大手アパレル会社勤務=酒井=美人=本多と同じサークル
忠やん=本多=一橋大学=商社
榊原康=商社=イベント・サークル=京都産業大学玄武組
京都産業大学玄武組四百九十八代会長=榊原
龍谷大学朱雀団四百九十八代会長=井伊
京極ホルモー
龍谷大学朱雀団四百九十九代会長=立花美伽→龍大フェニックスに名称変更
居酒屋「べろべろばあ」
黒い「何か」
旧跡 将門塚
青竜お茶の水
白虎一橋
E長持の恋
登場人物
細川珠実=立命館大学白虎隊=狐のはでバイト=おたま=五百代会長
黒田=立命館大学白虎隊
狐のは女将
チョンマゲ=京大=高村
な�ラ丸=柏原なべ丸=柏原大鍋(弟・柏原小鍋)
自動車教習所のお姉�ウん
芦屋=鴨川十七条ホルモーで大活躍した京大青龍会
狐のは=伏見稲荷の料理旅館
長持=織田信長?
居酒屋「べろべろばあ」
建勲神社=織田信長
喫茶店「無限洞」
「ホルモオオオォォォーッ」
天正十年
織田木瓜=織田家の家紋
チョンマゲ高村がなべ丸の生まれ変わりと認めて、「ありがとう、私を見つけてくれて」というおたまのセリフはいいなあ(^ω^)
鹿男あをによし 幻冬舎 ★★★★☆
随分以前ですが、テレビドラマで放映されました。少しばかりですが、ストーリーは知っていました。森見さんと比較される万城目さんの小説を初めて読みました。舞台は奈良。鹿と人間の1800年も続く共同作業。大学の研究室を追い出された「おれ�vが、女子高の臨時教師に。ある時、鹿に声かけられて、物語が始まる。
○登場人物
主人公=おれ=先生=物理
母=鹿島神宮大明神通
研究室の教授
助手
堀田イト=女子高生=教え子
福原=下宿先のばあさん
重さん=ばあさんの孫で美術教師
大塚=私立高校の経営者=教授の大学�フ同級生=校長
学年主任=生活指導
小治田(おはりだ)教頭=リチャード=元歴史の教師
藤原先生=藤原君=かりん糖好き
剣道部主将
マドンナ=京都女学館の剣道部顧問=長岡先生
マドンナ父親=道場
南場先生=大阪女学館の剣道部顧問
雌鹿(実は雄)=くそじじ
狐=伏見稲荷の狐
鼠=くそばば
狐の使い番(女)
鹿の運び番=先生
鹿の使い番(女)
鼠の使い番
○参考
眷属(けんぞく)=神に仕える一族
目
サンカク
三角縁三神三獣鏡
芭蕉。「びいと啼く 尻聲悲し 夜乃鹿」
*伊豆の地震、おお鯰が暴れると地震が起こるような話もありますので、その点、時節柄、お読みにならない方がいい場合もあります。特に地震の表現で不適切と思われる箇所はないと�vいますが、気になる方はお読みにならないで下さい。
Pray for Japan 2011/03/11
多和田葉子
雪の練習生 新潮社 ★★★★☆
「祖母の退化論」、「死の接吻」、「北極を想う日」の三代の熊の物語。この物語の主人公は、基本的に熊(人間の能力のある)なので、熊の気持ちになって読む?ことも必要かもしれませんが、人間と熊の感覚を行き来しているうちに、今、どちらにいるのか、迷子になりそうです。
「祖母の退化論」の主人公は、人間の能力を持つ女の白熊=わたし。サーカスでの育ての親はイワン。サーカス引退後は、作家としてデビュー。彼女のかつてのファンで出版社「北極星」(モスクワ)の文芸誌の編集長のオットセイ(外見はセイウチ)に原稿「涙の喝采」を渡す。西ベルリンのアイスベルグというロシア文学研��ニがドイツ語に翻訳されたが、サーカスで動物を使うことは人権侵害?になるという運動の証拠として使われた。それから、東ベルリン経由で西ベルリンに亡命し、ウ゛ォルフガングを紹介され、また、執筆を依頼される。
その他の登場人物。本屋のフリードリッヒ。人権問題を考える会のアンネマリー。作家をオレンジ栽培に参加させない会の新しいリーダーのイェーガー氏。
(本文から)
感覚の中では嗅覚が一番頼りになる。それは今も変わらない。耳に聞こえる声は、蓄音機やラジオなどの機械から出てくる嘘の声�ナあることが多い。目に見えるものも嘘が多い。カモメの剥製、熊の着ぐるみを着た人間。みんな見かけだけだ。
誰とも話をしないでいると耳の中に黴が生えてくる。路面電車のきしむ音しか聞こえてこないと鼓膜が錆びてしまいそうだった。
目の前に満面の微笑がひろがっているが、脇の下から嘘がぷんぷんにおってくる。微笑みは人間が顔にのせる表情のうちで最も信用できないものの一つだということが分かってきた。人は自分の寛大さを売りつけ、相手を安心させて操作するために微笑む。
「今せっかくドイツ語で書くつもりになったのに、今度は英語を勉強しないとならないのか」
「いろんな言葉がごちゃごちゃになって頭が混乱しそうだ」
「これからどん�ネことが起こっても言葉ができないからそれを記述することができない」
(以上、本文から)
言葉の意味が問われているのか?言語?
「死の接吻」は、ホッキョクグマのトスカを操る158cmのわたし(ウルズラ)が主人公。(途中から、熊のトスカがわたしに。トスカがウルズラの物語の語り手に)。その他の登場人物は、夫のマンフレッド、サーカス団監督のパンコフ。若手の演出家ホーニッヒベルグ。(ホーニッヒベルグが言うには、トスカの母親はソ連で生まれ育ち、西ドイツに亡命し、カナダで結婚し、トスカを出産し、デンマーク生まれの夫と東ドイツに移り住んだ)。綱渡りの女性コネリア。電報局のアンダースさん。ウルズラの母親。ヤンというピエロ。猛獣使いの「マイスター」、空中ブランコの女。いいにおいのする少年ホルスト。ベーゼル教授。プラテーロというロバ。カルルという青年。フリードリッヒという犬。トスカの恋仲ラルス。その子供クヌート。
(本文から)
人間は目の発達した動物で、まず相手の体つきや洋服や顔を見る。でもロバにとっては何より味覚が大切なので、にんじんをやって、自分はにんじんの味のする者だということを印象づけるといいのだと教授が教えてくれた。
「北極を想う日」の主人公は熊のクヌート。育ての親は、マティアス。医者のクリスティアン。メイク係のローザ。ヤンというホッキョクグマを育てたスザンナ。園長。アフリカから来た鳥たち。狼。マレーグマ�Bアザラシ。ミヒャエル。モーリス。
森見登美彦
有頂天家族 幻冬舎文庫 ★★★★☆
有頂天家族、主人公は狸の矢三郎。狸界の頭領父総一郎の死の後、跡目争いが下鴨家と夷川家で起こる。天狗や人間が絡み、ドタバタ劇が始まる。森見ワールド初めての人は、少し、慣れるまでは時間がかかるかもしれませんが、だんだん、狸の間抜けさ、人間のづるさ、天狗の適当な立派さになれてくると楽しめる。人間から天狗になった弁天様は、「歩けよ乙女」の黒髪の彼女を更にパワ�[アップして、とてもいいキャラ?を出しています。母狸の優しさ、狸兄弟のそれぞれの個性、読み終わるのが寂しくなります。どうぞ、楽しんでくださいね。
登場人物
私=狸=下鴨矢三郎
赤玉先生=引退した天狗=私の恩師=如意ヶ嶽薬師坊
弁天様=人間の女の子=鈴木聡美
岩屋山金光坊=天狗
愛宕山=天狗
下鴨総一郎=私の亡くなった父=偽右衛門=狸界の頭領
母=私の母=黒服の王子
下鴨矢一郎=私の兄さん
下鴨矢二郎=次兄=蛙
下鴨矢四郎=私の末の弟
祖母=性悪クソばばあ
夷川海星(えびすがわかいせい)=元私の許嫁=実は私の兄が・・・
下鴨家の流れを組む夷川一族だが下鴨家の敵
夷川早雲=私の憎むべき叔父
夷川金閣
夷川銀閣
夷川親衛隊
南禅寺家の頭領
扇屋の源右衛門
弁天親衛隊=鞍馬山僧正坊配下の鞍馬天狗
ヨドガワチョウタロウ=母の命の恩人
布袋=大学教授=狸好き=農学博士淀川長�セ郎
大黒=千歳屋主人
毘沙門=暁雲閣社長
恵比寿=某銀行のエライ人
寿老人=高利貸し=金曜倶楽部の最長老
福禄寿=?坊主頭
スズキ君=淀川教授の研究室の学生
八坂平太郎=大狸=父の後のまとめ役
コーポ桝形=引退した天狗=赤玉先生の住まい
金曜倶楽部
赤玉ポートワイン
偽電気ブラン
朱硝子(あけがらす)=酒場糺ノ森
六道珍皇寺
五山送り火
納涼船
薬師坊の奥座敷=天狗たちの乗り物
風神雷神の扇
「くたばれッ」
達磨
「阿呆の血のしからしむるところ」
西崎源右衛門商店=扇屋
下鴨神社
紫雲山頂法寺六角堂
要石=へそ石=偽へそ石=狸が化けた石
洛天会ビル=京都在住天狗たちのビル
仙酔楼=長老様の会議
一乗寺の骨董屋
出町商店街
竹林亭=古い蕎麦屋
偽叡山電車
千歳屋=金曜倶楽部の会場
岡本太郎・岡本敏子
愛する言葉 イースト・プレス ★★☆☆☆
岡本太郎生誕100周年。「愛する言葉」。芸術は爆発だと発言した人です。岡本太郎記念館館長の平野暁臣さんが叔父と叔母さんの言葉を綴ったもの。180頁程の小型単行本だが、1頁あたりデカ文字で数行なので、さっと読むと、数十分で読める。
目次から、
つらぬく
はぐぐむ
ひきあう
かさなる
ぶつか��
青い文字は太郎さん、赤い文字は奥さん。冒頭は薄紫色で、好きな人がいたら、真っ直ぐに見つめること、とあります。
二三気になった言葉から、
(つらぬく)
太郎 自分を大事にして、傷つきたくない、そう思うから不安になるんだよ。
(はぐぐむ)
敏子 自由である、ということが男の魅力の前提条件だ。
(ひきあう)
太郎 美ってものは、見方次第なんだよ。
敏子 男は力がなければならない。(中略)静かで、ふだんはおとなしくても、存在感がある、という男に女は弱い。
(かさなる)
敏子 女にとって、組織や役割なんて、いつでも脱ぎ捨てられるガウンのようなもの。
(ぶつかる)
太郎 ほんとうに素晴らしい女性というのは、目ではなく、心にふれてくるものなんだ。
岡本太郎展もやるみたいなので、時間取れれば見たいと思っています。
森見登美彦
美女と竹林 光文社文庫 ★★☆☆☆
この本は、森見ワールドの初心者向けではありません。森見ワールドを理解する、あるいは理解しようとする、あるいは全く理解しようとしないけど笑える人向けである。はっきり言って、自己満足の世界です。はっきり言って、孟宗竹(妄想だ�ッ)です。それでも、いいかたは、レッツ�Sー。エッセイ風小説?小説風エッセイ?
まあ、登場人物は本当ぽいので、エッセイとしましょう。
登場人物
森見登美彦=T君
鍵屋さん(桂に住み竹林を所有)=職場の先輩=お姉さま
明石氏=司法試験
鍵屋さんのご母堂=猛虎=阪神ファン
鍵屋さんの御尊父
鍵屋さんの弟氏
編集者の大口氏、鱸(すずき)氏、海苔本(のりもと)氏、和田邊(わたなべ)氏、真津下(まつした)さん
恩田さん(阪神ファン=農学部)と結婚する桃木さん(巨人ファン)
綿撫(わたなで)さん=編集者
大学院の先生
同じ文化人類学演習の女性
本上まなみさん
柳生竹左右衛門
富士井氏=中学校以来の友人
西河氏=友人
武内さん=富士井さんの知り合いの女性
西藤さん、佐倉井さん
河崎氏と相棒の女性
秘書
◯参考
「きつねのはなし」に天城という男が住む鷺森神社の古い屋敷の裏に竹林。
「竹と人生」=上田弘一郎
「夜は短し歩けよ乙女」には三階建ての電車の屋上に古池があり、かたわらに竹林がある。
桂駅の「阪急そば」
「竹林に学ぶ七つの習慣」
茶筅の歴史
ステーキハウス=竹刈りの後に行くレストラン
MBC(モリミ・バンブー・カンパニー)
きつねのはなし 新潮文庫 ★★★★☆
短編が4本。きつねのはなし、果実の中の龍、魔、水神。この4篇では、最初の「きつねのはなし」は奇怪な雰囲気がとてもよく一番のお勧めです。二番目の「果実の中の龍」も落ちに意外性があるが、まあまあ。「魔」はよくある話だが、京都の路地という設定がいい。「水神」は、どうだろう、好き嫌いで分かれるかもしれない。題名から想像できるが、この4本の短編に繋がるイキモノの正体は同じものかどうかは不明?
以下、登場人物と主要な物をピックアップしました。ネタバレになるかもしれませんので、気になる方はお読みにならないで下さい。
「きつねのはなし」
私=武藤=芳蓮堂店番のバイト
ナツメさん=芳蓮堂主人
ナツメさんのお母さん
天城さん=?
須永さん
奈緒子=私の彼女
鷺森神社
一乗寺
芳蓮堂=古道具屋
狐の面
伏見稲荷大社
蘭鋳(らんちゅう)
酒粕
木彫りの布袋
吉田神社
節分祭
幻灯機
黒い盆
「果実の中の龍�v
私
先輩=妙な人=法学部?=本当は?
先輩の父
先輩の兄=天満屋=大道芸人
先輩の祖父
結城瑞穂さん=先輩の彼女=芳蓮堂で店番のバイト
ナツメさん=芳蓮堂の店番
骨董を買いあさる米国人
読書家�フ菓子屋
同人誌の寺の息子=先輩の友人
映画サークルに所属している人間
剣道が強い中学生の女の子
一乗寺
叡山電鉄
ツヴァイクのバルザック伝
緑雨堂=古本屋
短夜の狐たばしる畷かな剣道
鼬のようなケモノ
芳蓮堂
狐面
琵琶湖疎水
根付=彫刻
龍の根付
からくり幻灯
酒粕
木彫りの布袋
「魔」
私=家庭教師(先生)
西田酒店の親父、奥さん西田酒店の直也(兄)、修二(弟)
夏尾美佳(武道具店)
秋月晃純=寺の息子
武田先生=清風館道場
煙草屋の女性と母
消防団
西田酒店
夏尾堂
清風館道場
狐に似たケモノ、胴がいやに長い
魔
煙草屋
荒神橋
祇園祭宵山
「水神」
私=大阪の大学生
父=茂雄
祖父=曾祖父の一人息子=技術将校=満州からの引き揚げ=家業を代行
花江さん=祖父の二番目の妻=二年後に奇怪な死
弘一郎伯父
美里さん=弘一郎伯父の娘
孝二郎伯父
矢野医師=祖父の主治医=祖父の旧制高校時代の友人
久谷老人
和子さん=父や伯父の子供の頃の家事を仕切っていた人
高祖父=樋口直次郎=樋口家の開祖=琵琶湖疎水の掘削事業の技師=二人の息子(次男が曾祖父)と一人の娘(の孫が和子)
曾祖父=大宴会
芳蓮堂�フ女性
京都鹿ケ谷の屋敷
浄土寺
琵琶湖疎水
家宝
天狗や狐の面をつけた男たち
芳蓮堂
剥製
酔い覚めの水
百年前の琵琶湖の水
やっぱり、4本の短編に共通項が多い。
太陽の塔 新潮文庫 ★★★☆☆
森見登美彦のデビュー作で日本ファンタジーノベル大賞受賞。「太陽の塔」は新潮文庫で200頁少し。「夜は短し歩けよ乙女」→「四畳半神話大系」→「太陽の塔」と読みましたが、やはり、一番てく�トく感があったのは、「夜は短し・・・」かな。制作順とは逆に読んだことになります。「太陽の塔」の主人公は大学5年生という設定ですが、基本的には京大周辺での話は「夜は短し…」「四畳半・・・」と同じですが、この主人公は失恋した自棄になった男の設定なので、やや、リズム感が違うと感じました。爽快感がない!まあ、女性に縁のない学生たちの知的頽廃的生活をやや軽やかに描いた小説だからでしょう。なお、解説は本上まなみさんで、主人公の愛用する自転車はまなみ号です。
太陽の塔の制作者は岡本太郎で、生誕100年で話題の人です。大阪の万博公園にありましたが、今もあるのかな!?
登場人物
私=主人公
水尾さん(私を袖にした元彼女)
飾磨(私の友人)
飾磨の妹
植村嬢=邪眼(じゃがん)
湯島(自己嫌悪に陥る学生)
海老塚先輩(体育会・勘違いの男の美学の持ち主)
三田村さん(ケンタッキーでバイト)
有田さん(中央食堂のレジ)
仁川先生(バプテスト眼科)
井戸浩平(すぐ凹む私の友人)
高薮智尚(クラブ時代の友人・下鴨幽水荘住人)
遠藤(水尾さんを好きな学生)
京大生狩り=ハンター
宅配寿司屋の店長と奥さん
小さな珈琲豆屋の美人
登場物や言葉
太陽の塔=万博公園=岡本太郎
主人公愛用の自転車まなみ号
夢玉
猫ラーメン
糺(ただす)の森
叡山電車
クリスマスファシズム
ええじゃないか
「夜は短し歩けよ乙女」の森見ワールドはどこまで続くのかな?村田喜代子の「八つの小鍋」を読んでいたが、森見ワールドに戻りたくなり、「きつねのはなし」を思わず買ってしまいました。
四畳半神話大系 角川文庫 ★★★☆☆
「夜は短し歩けよ乙女」の主人公「私」と「黒髪の乙女」がとても面白かったので、「四畳半神話大系」も買ってみました。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞。世界は基本的に「夜は短し」と同じと思っていいでしょう。四話構成になっていますが、二話目を読んで、途中、混乱してしまいました。うむ?デジャブ?
時間軸がおかしいのです。それで気付いたのです。四話(最終話は少し違いますが)とも、同じ時間の繰り返しなのです。この部分を押さえて読んだ方がいいと思います。そうです、主人公の私が大学に入った時に、どのサークルを選ぶとどう生き方が変わるか(変わらないか)という話の繰り返しなのです。映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関「福猫飯店」のどれを選ぶかで話が展開します。そういう訳なので、同じ文章が出てきて、少し、飽きがくることもありますが、そういうところは斜め読みしましょう。
第一話 四畳半恋ノ邪魔者
第二話 四畳半自虐的代�搗纓攝�
第三話 四畳半の甘い生活
最終話 八十日間四畳半一周
◯冒頭
大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。
◯笑っちゃいました。神様と初めて会う場面。
ひょっとすると十年前に生き別れた兄か�ニ考えたが、兄とは生き別れていないし、そもそも私に兄はいない
◯登場人物
私
明石さん=黒髪乙女
小津
神様=師匠=樋口=樋口清太郎
羽貫さん=歯科衛生士=窪塚歯科医院
城ケ崎さん
相島さん
香織さん=ラブドール
占い師
樋口景子さん?
小日向さん
◯主要登場物・用語
下鴨幽水荘
印刷所
図書館警察
英会話学校
海底二万海里=ジュール・ヴェルヌ
峨媚書房
猫ラーメン
蛾
鴨川デルタ
コロッセオ
亀の子束子
闇鍋
カステラ
ということでデビュー作「太陽の塔」も読みたくなりました。
桜庭一樹
本に埋もれて暮らしたい 桜庭一樹読書日記 東京創元社 ★★★★☆
桜庭一樹さんの読書日記は四冊目!全部持っているのだ(桜庭風)
@ 少年になり、本を買うのだ。2007年7月31日初版。2006年3月〜2007年2月。
A 書店はタイムマシーン 2008年9月30日初版。2007年4月〜2008年3月。
B お好みの本、入荷しました 2009年12月25日初版。2008年5月〜2009年6月。サイン入り。
C 本に埋もれて暮らしたい 2011年1月28日初版。2009年7月〜2010年7月。サイン入り。
○
桜庭一樹日記 平成18年3月25日初版。
こうしてみると、全部、初版本。4作目になると、同じネタが出てくるが、この経験感(造語)が、さらに、親しみを感じて、いいかも。純粋に、面白そうな本を探すにもいいかもしれません。毎日毎日(毎晩毎晩が正しいのだ!) 読めるなと思います。
今回の本で読みたいなと思ったのは、
@
インパラの朝・中村安希→古本で購入。
A
黒死館殺人事件・小栗虫太郎→丸善で見たが、太刀打ちできそうもない(@_@)ので、しばらく、諦め。三大奇書の一冊。夢野久作のドグラ・マグラ、中井英夫の虚無への供物
B
八つの小鍋・村田喜代子→短編集を購入。
C
突飛なるものの歴史・ロミ→注文済み。
最後の女子会のトワイライト研究所より。は笑える。桜庭作品で積ん読本は、伏
贋作里見八犬伝、製鉄天使、赤朽葉家の伝説、ファミリーポートレイト。その他、積ん読本が少し増えて来ました。
安野光雅(画家)
「即興詩人」の旅 講談社+α文庫 ★★★☆
安野光雅 1926年島根県津和野生まれ。1968年、「ふしぎなえ」で絵本作家としてデビュー。森鴎外訳のアンデルセンの「即興詩人」に触発され、その即興詩人の登場人物アントニオの歩んだ道を探し、追いかけた旅絵日記。現実の風景に空想や想像で絵を描き、即興詩人を現代に甦らせる、解説絵本。文語体が出て来るので読みづらいが、頭の中でその文語体の響きとスケッチを鑑賞するのもいい。ちなみに、文語体は、こんな感じです。
「恋せよ、汝の心のなほ少く(わかく)、汝の血のなほ熱き間に」→いのち短し恋せよ乙女(ゴンドラの唄として知られる吉井勇の詞と同じだそうだ)
「我はかつてダンテの詩をもて天下に比(たぐい)なきものとなしき。さるを今アヌンチヤタ(好きになった歌姫)が芸を見る�ノ及びて、その我心に入ること神曲よりも深く、その我胸に迫ること神曲よりも切なるを覚えたり」と文語体が所々出てきます。
絵の中で特にいいなと思ったのは、「ピアッツア・バルベリーニ」で古い写真や絵を合成して描いたもの。アントニオが遊んだと思われるよき時代の広場。謝肉祭の競馬。オーロラ。フォロ・トライアーノなどでした。
森鴎外の即興詩人は文語体(雅文体と呼ばれた)で訳されているので、難しい。安野光雅さんの口語訳が出版されて、平積みされていました。ちなみに、「即興詩人」の旅の目次をみても、読みが大変難しいのが多い。ルビがなければ読めません。例えば、
○美小鬟
○山寨
○嚢家
○瞽女
○梟首
○颶風
です。いかがですか?
黒 百年文庫 ポプラ社 ★★★☆☆
百年文庫というのがポプラ社から発売された。試しに読んでみようと、ハタと考えた。テーマ別でそのテーマが漢字一文字しかない。
憧、絆、畳、秋、音、心、闇、罪、夜、季、穴、釣、響、本、庭、妖、異、森、里、掟、命、涯、鍵、川、雪、窓、店、岸、湖、影、灯、黒、月、恋、灰、賭、駅、日、幻、瞳、女、夢、家、汝、地、宵、群、涙、膳、都。それぞれのテーマに3人の作家と3作品。
黒は以下の通りです。
ホーソーン『牧師の黒のベール』
司祭フーパーは、黒ベールで顔を覆って説教壇に立つ。村は騒然となり非難と噂が飛びかうが、司祭はどんな時もベールを外さない。
ホーソーン(1804-1864)アメリカ。ピューリタンの古い家柄の出身。人間存在の罪をテーマにした作品が多く、短篇作家として知られている。代表作に『緋文字』『七破風の家』など。
夢野久作『けむりを�fかぬ煙突』
醜聞で私服を肥やす新聞記者が、妖気漂う未亡人の館を訪れる。煙突は何のためにある。
夢野久作(1889-1936)福岡県生まれ。新聞記者として、関東大震災などの取材で活躍した後、1926年に雑誌「新青年」で作家デビュー。『押絵の奇蹟』、『ドグラ・マグラ』など怪奇と幻想の作品は人気がある。
サド『ファクスランジュ』
ファクスランジュ嬢は幼なじみの恋人を捨て莫大な資産を持つという「男爵」と結婚するが、実は、連れて行かれたのは山賊の城だった。
マルキド・サド(1740-1814)。フランス。名前が「サディズム」の語源になっている。何度も投獄され、獄中で多くの小説を執筆。作品は禁書扱いされていたが、現在では高く評価されている。代表作に『悪徳の栄え』『恋の罪』�ネど。
3本とも強烈な印象は受けなかったが、この3本では、サドが一番かな?
森見登美彦
夜は短し、歩けよ乙女 角川文庫 ★★★★☆
なんでしょう。この独特なリズム、独特なおとぼけ、独特なくだらなさ。で、面白い!てくてく感もいい!
主人公は、空想・想像力豊かな先輩と彼が好きな黒髪の乙女。また、彼らを取り囲む友人たちも個性豊かである。黒髪の乙女を追いかけて、彼女と奇遇を繰り返す先輩。彼の友人は学園祭を取り仕切る事務局長。先輩と乙女は、それぞれの共通の先輩(赤川康夫・東堂奈緒子)の結婚式に出席し、二次会も出ずに帰る乙女を先輩がこっそりと追いかけることから物語は始まる。漫画的な乙女は、酒も強いが心も優しいというとても魅力的だ。舞台は、京都、京都大学構内。
第一章 夜は短し歩けよ乙女
第二章 深海魚たち
第三章 御都合主義者かく語りき
第四章 魔風邪恋風邪
ちなみに解説は漫画で羽海野チカ。
登場人物
私=先輩
彼女=黒髪の乙女
新郎新婦=赤川康夫&東堂奈緒子
東堂さん→黒髪の乙女と飲み友達になるおじさん李白=偽電気ブランという幻の酒を持つ金貸し
羽貫さん&浴衣男の樋口さん(酒飲みの女と男)
高坂先輩(英国に留学するが、ナオコさんに失恋)・詭弁論部
古本屋=東堂の友人
閨房調査団
内田さん=医者
赤川さん=染色会社社長
古本市の子供=自称古本市の神
峨眉書房
京福電鉄研究会のジュラルミンケースの男
老学者
閨房調査団代表の千歳屋
事務局長
韋駄天コタツは?
ゲリラ演劇偏屈王
プリンセス・ダルマ
パンツ総番長〓象の尻を作った紀子さん(林檎の雨で知り合った二人)
ごはん原理主義VSパン食連合
小道具係りの女性
レポーター
潤肺露という風邪薬を作るのは?あの子供でした。李白さん曰く、「夜は短し、歩けよ乙女」
長嶋 有
夕子ちゃんの近道 講談社文庫 ★★★☆☆
第一回大江健三郎賞受賞作。フラココ屋という古道具屋の二階に居候する主人公の僕とそれを取り囲むほのぼのしてはいるが、少し変わった人達の物語。僕に親切な瑞枝さん。大家さんの孫娘(二女?)の夕子ちゃんの恋人は高校の先生。大家さんの芸大に行く孫娘の朝子さん。古道具屋の店長の幹夫さん。幹夫さんお前カノのフランス人のフランソワーズは相撲ファン。
目次から
瑞枝さんの原付
夕子ちゃんの近道
幹夫さんの前カレ
朝子さんの箱
フランソワーズのフランス
僕の顔
パリの全員
宮沢 章夫
牛への道 新潮文庫 ★★★★☆
エッセイというのか、日常的な事が書かれているのだが、視点が面白い。零度の嘘→騙された人間に、「だからなんだ?」と思わず口にさせる嘘→悪�モも何もない�ィ傷つかない嘘。という存在を知った作者がこの視点で物を書く。昼御飯は何を食べたの?→カツ丼です(本当はラーメン)→無意味な嘘。そうした何となくナンセンスな事ってありますね。文庫本の2〜3ページで一つのお話があるので、ちょっとした合間に読むのにピッタリかも
目次の一部を紹介します。
「犬見る人生」ノート
ここに海の男はいない
わざわざ書く
*例えばこんな話です。→道路に面した家に洗濯機が無造作に置いてあり、「使っています」と張り紙があるが、どうも使用中ではなさそう?そうです、ゴミと間違えられないように書いてあるのです。
ここで二三張り紙の例を。
「走るな」→小学校の廊下。
「蓋を開けずに振って下さい」→塩の容器、�H堂。
「便座に立たないで下さい」→鳥取県松江のホテル。
「危ない」(赤の塗料で)静岡県の峠の道の標識。
「窓から頭や手を・・・」→出すやつがいるのだろう。
中国の説得力
気さくな先生
無職と言われる筋合いはない
恐るべし修理の人
崖下のイラク人
出張ダンサー(聞き違いの話)
蟹の不幸
力士の安全性
まだまだ、ありますが、これくらいに。意外と面白い本です
朝吹 真理子
きことわ 新潮社 ★★★☆☆
第144回芥川賞受�ワ作品。聞きなれない言葉の不思議な音感の題名�ノ惹かれました。きこ・とわ?しかし、答えはいきなりありました。どうぞ、書店で立ち読みして下さい。
舞台は神奈川県の逗子と葉山。葉山にある別荘に通っていた家族(母親・春子と娘・貴子と母親の兄・和雄)と別荘の管理を頼まれていた女性・淑子の娘・永遠子との話。その話が過去と現在とが溶けるように往き来する。また、貴子と永遠子は8歳と15歳で出会った。この二人も時には一体化した奇妙な感覚の中で物語は始まる。
大竹 伸朗
カスバの男 モロッコ旅日記 集英社文庫 ★★★★��
大竹伸朗(おおたけ・しんろう)。1955年東京都生まれ。画家。絵画、コラージュ、写真、音、エッセイなどで活躍。同本は、1994年に求龍堂から刊行されたものを文庫化。文庫化にあたり、銅版画を収録した。解説は角田光代さんで、彼女は、この本を読んで(見て)、モロッコに行っちゃた人。旅日記で、スケッチとエッセイで楽しめます。カラーが少ないのが残念。
ロンドン→(スペイン)マラガ→�^リファ→アルへシラス→(モロッコ)タンジール、アシラ、タンジール→フェズ→マラケシュ→ロンドン。
強烈な光と影、音と匂いの旅日記。
アルベール・カミュ
カリギュラ ハヤカワ演劇文庫 岩切 正一郎 訳 ★★★★★
唸りました。アルベール・カミュ作の「カリギュラ」を読んで、これは是非とも劇場で見てみたいと思いました。早川書房から出版された新訳。
私は、まず、戯曲を読んで、訳者あとがき、解説、また、戯曲という感じで読みましたが、あとがき、解説、戯曲の順で読んだ方が読みや�キいと思いました。カリギュラ(ローマ皇帝ガイウス・カエサルのあだ名)を取り巻く四人の主要登場人物は押さえてから、読みたいと思います。シピオン(詩)、セゾニア(無償の愛)、エリコン(忠誠)、ケレア(論理)は、それぞれが、カリギュラの演技を見抜き、彼に話す勇気を持っている。少し戯曲を紹介してみましょう。
カリギュラ)ただ急に、なにか不可能なものが欲しい、と感じたまでさ。(*→月が欲しいと言い出す)
略
シピオン)セゾニア、あの人(カリギュラ)を救わなくてはいけません。
セゾニア)あの人が好きなのね?
略
カリギュラ)まさにそれだ!あり得ないこと、問題はそれだ。あるいはむしろ、あり得ないものを可能にすること。
シピオン)でもそれは際限のない戯れです。狂人の気休めです。
カリギュラ)いや、シピオン、皇帝の美徳だ。
略
セゾニア)あなたは神々と肩を並べたいの。狂気の沙汰だわ。
カリギュラ)や�チぱりおまえも、おれを狂人�セと思っている。だかな、肩を並べたいと思わせる神とはいったい何だ。おれの望みは、今でも神々を越えている。おれは、不可能が王である王国を引き受けるんだ。
セゾニア)空が空でなくなり、美しい顔が醜くなり、人の心が何も感じなくなる、あなたにそんなことはできません。
カリギュラ)(次第に興奮して)おれは空と海を混ぜ合わせたい、美と醜さをとけあわせ、苦しみから笑いをほとばしらせたい。
略
ケレア)狂った暴君なら、それがどんなものかわれわれも知っている。ただ彼の場合、充分に気が狂っていない。
略
カリギュラ)�セ日から飢饉だ。
財務長官)しかし民衆が騒ぎます。
カリギュラ)(強くきっぱりと)きこえないのか、明日から飢饉だ。飢饉とは何だ、みんな知っている。それは禍だ。明日から禍がある・・・。気が向いたときに、わたしがそれを止める。
略
エリコン)シピオン、またアナーキストを気取ったな!
シピオン)(カリギュラに)カイユス、あなたは冒涜した。
エリコン)そりゃいったいどういう意味だ。
シピオン)あなたは大地を血に染めたあと、天をけがした。
エリコン)この若造は、おおげさなことばが好きだな。
略
ケレア)どうしてかといえば、生きたいからです。幸福でありたいからです。不条理をありとあらゆる結末へ押し進めるのでは、人は生きることもできず、幸福にもなり得ません。
略
カリギュラ)愛する者が一日で死ぬから人は苦しむ、と、そう人は思っているが、人間の本当の苦しみはそんな軽薄なものじゃない。本当の苦しみは、苦悩もまた永続しない、という事実に気づくことだ。苦悩ですら、意味を奪われている。
引用が長くなりました。なかなか考えさせられる戯曲だと思います。
尾辻 克彦
父が消えた 河出文庫 ★★★☆☆
「東京ミキサー計画」などの美術活動をしていた赤瀬川原平で知りました。最近では、写真集「散歩の収穫」を出しています。画家で、作家で、写真家。「父が消えた」で、1981年に芥川賞。本書には、「父が消えた」、「星に触わる」、「猫が近づく」、「自宅の蠢き」、「お湯の音」の短篇を収録。読んでいて、おお凄いと思うところと、うーん、なんだろうと思う部分を極端に感じる。
宮下規久朗 井上隆史
三島由紀夫の愛した美術 退廃・幻想・陶酔 新潮社
とんぼの本 ★★★★☆
やっぱり、変わった人だ。偏愛的、偏執的な美術眼。極めて、ギリギリの手前に美を感じる人が、三島由紀夫。彼の愛する絵は、聖セバスティアヌス。「仮面の告白」にも登場するが、弓矢が刺さって、少し、見上げて恍惚としている。(クイド・レーニ・1615-16年頃)
まあ、この絵は別にして、三島の自宅も悪趣味のヴィクトリア朝様式。そう、彼も自らこう語る。
「私ごとき極東の田舎者の目には、それがuglyに映らなかった」
三島はデカダンス特集で4枚の絵を選んでいる。
@ビアズリーの「僧正」
A竹久夢二の「長崎十二景」から「阿片窟」
B大蘇(たいそ)芳年の「英名二十八衆句」から「笠森於仙」
Cモンス・デジデリオの「火災」
対談でも宮下さんが、「夢二は三島的世界とはあまり合わ�ネいんじゃないか」と言っているように、他の絵には退廃的で緊張感があるが、夢二の絵には、ダラリとしていて、緊張感に欠ける絵だ。夢二はビアズレーの影響を受けているからか。
こうして見てくると三島の美術に対する審美眼は、一般的なものではなく、極めて彼の文学的な
目線と同じ事がわかる。
「ギリシャ人は美の不死を信じた。かれらは完全な人体の美を石に刻んだ」
「(オリンピアの)廃墟は、偶然にも、ギリシャ人の考えたような不死の美を、ギリシャ人自身のこのいましめから解放したのだ」
また、三島は青年像を選んでいる。
@闘志 円盤投げ
A勝利 デルフォイの馭者
B苦悩 瀕死の奴隷
C理智 手袋を持つ男(油絵)
D悲壮 聖セバスティアヌス(油絵)
E安逸 バッカスの勝利(油絵)
F英雄 ナポレオン・ボナパルトの肖像(油絵)
G憂鬱 若者と死(油絵・モロー)
これらのテーマが三島文学を解きあかすキーワードだと言えると思う。
赤瀬川原平
東京ミキサー計画 ハイレッド・センター直接行動の記録 ちくま文庫(1994年) ★★★★★
赤瀬川原平(1937年横浜生まれ・画家・作家�E写真家)。1981年「父が消えた」(尾辻克彦)で第84回芥川賞受賞。
美術検定の過去問を勉強していたら、ハイレッド・センターが出題されており、赤瀬川原平の名前を記憶していて、たまたま、ブックサーカスで見つけて購入した。しばらく、読まずにおいてあった。
先日、赤瀬川原平写真展を見る前に、探し出して読みました。芥川賞作家とは知らず、読みましたが、当時の前衛芸術の一端を覗けます。著者は模型千円札事件で芸術論争を裁判で闘いましたが、執行猶予付きの有罪となりました。それは別として、包む、投げる、挟むなど多彩な前衛芸術はとても興味深い話題です。
以下が章。
山手線の卵
国立の生唾
早稲田の赤い勉強
上野のゴールド・ラッシュ
上野の長い紐
新宿のテープカット
新橋の洗濯バサミ
新橋のスペース・シャトル
帝国ホテルの肉体
パリの前立腺
宇宙の缶詰
お茶の水のドロップ
銀座のゾーキン
霞ヶ関の千円札
座談会・高松次郎・赤瀬川原平・中西夏之
「高」「赤」「中」でハイレッド・センター、ですから、笑っちゃいます。尾辻克彦の小説は読んだことはないな。また、読んでみよう。
座談会での、「色を洗い落として原理を探る」で、中西と赤瀬川が、言うには、「黒白っていうと、観�O的で、操作しやすい。また、色を塗るというより、色を洗い落として、何か原理みたいなものを探っており、色って酔うもので、(黒白は)冷えているっていうか、醒めている」という指摘は、その通りだと思う。
柴崎友香
次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? 河出文庫 ★★☆☆☆
柴崎友香(作家)。1973年大阪府生まれ。
初めて読む作家です。居眠りしながらでも、読めます、というと、変ないい方ですが、中編が2本あり、「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」、「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」があり、後のお話は眠狂四郎ならぬ眠り工藤さんが主人公。少し時間があれば、一気に読めます。
「次の町まで・・・」の登場人物は、4人で、何でもできるがわがままな小林望、彼の親友西野恵太と彼女のルリちゃん。そして、少し不器用な友人のコロ助。
恵太とルリちゃんはディズニーラ�塔hを目的に、コロ助は一方的に想う清水さんに会いに、望はその提案者として、四人がマーチに乗って、大阪から東京へ行く
車内、道中の四人の心理的、心のやり取りがなかなか微妙で面白い。大阪弁が乱発されます�B
高野秀行
アヘン王国潜入記 集英社文庫 ★★★★☆
探検家の高野秀行氏が、ビルマの麻薬生産拠点の危険地帯に潜入する「アヘン王国潜入記」。準備に4年もかけて、ワ軍の総司令官タ・パンの許可を取って、潜入する。ビルマ(ミャンマー)は多民族国家で、いわゆる、ゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯・タイ、ラオス、ビルマの国境が接する辺り)が、�ヶカ産地帯。ビルマの東北部にあたるこの地帯は、シャン州(シャン人はタイの民族と同一)、ワ州(ワ語と中国�黶jとある。ビルマの少数民族のワ州に滞在した外国人は、ほとんどいなかった。また、1993年以降は短期滞在した者もいない地区で、彼は、ワ州のムイレ村に滞在し、農民と一緒にケシの栽培をする。
1995年10月5日〜1996年5月(約7カ月間)。ワ州は全世界の4割前後のアヘンの生産地。
平野啓一郎
一月(いちげつ)物語 新潮社 ★★★★☆
古典かと思いました。三島由紀夫的なセンスを感じます。主人公は美男子、こういう表現では良くないのですが、いわゆる、病弱の青年の真拆(まさき)が、毒蛇に噛まれて、山寺に逗留し、そこで、夢か現か、いつも美しい美人と会い、恋をするが。。。
(本文から)
奈良県は十津��コの往仙岳山中に、孤り立ち尽くす青年の姿があった。白薩摩に小倉の袴、流石に高下駄は草鞋に穿き替えているが、短くさっぱりと刈られた頭と云い、少し憔悴した面持と云い、宛ら(さながら)東京の三田辺りでもふらついていそうな、当り前の書生風である。
容(かんばせ)は頗る美しい。が、その深い眼窩には、赭み(あかみ)がかった銅版に、鋭利な針で幾重にも線を刻んだような翳が差している。瞬きは素早く、瞼は必ず二三度続け様に往復する。懼らくは、開化以前には終ぞ見られなかったであろう、舶来の所謂黒胆汁質の表情である。
幻の夜は、何時しか現の夜と溶け合って、同じ一つの夜となった。真拆は目覚めた覚えもないままに、小屋の傍らに立っていた。そして、不意に、帯を解く衣擦の音(ね)が、背(せな)より耳朶に触れたのを感じた。
打顫えて、後ろを顧た。
その幽かな音が、あらゆる不思議を一斉(いちどき)に呑んで、衣と俱に解いてしまった。
疑うべくもない。果たして彼方の月下に輝くのは、幾夜をも重ねて見続けた、夢の女の裸体であった。
苦痛にも似た狂おしい歓喜の奔流が、堰を切ったように肉体を駆け巡った。真拆は、何か別の痛みを以てそれを分かたねば耐え得ぬかの如く、右手で激しく胸の内を絞った。鼓動が高まる。顎(あざと)を突き出して、喘ぐように息をする。露になった白�の頸領は、月華に映えて、雪花石膏の彫像のように浮かび上がっている。
リシャルト・カプシチンスキ
「黒檀」 訳 工藤幸雄・阿部優子・武井摩利 世界文学全集 V−02 河出書房新書 ★★★★★
アフリカについて、特に興味があって読んだわけではないが、これは凄い本だ!世界文学全集に入っているが、小説ではない。死と常に隣り合わせのアフリカを歩き回ったルポルタージュだ。アフリカは一言では言い表せな�「多面性(民族・氏族・自然環境他)を持っているが、現地の人と話し、交流する事でアフリカの深く知ろうとした記録。欧州の植民地政策の後、ダイヤモンドや石油の資源利権争い、また、部族・氏族間の争いなどのアフリカの不幸・悲劇をどれだけ理解しているのだろうか。
(以下は、本文からの抜粋の要約です)
「バスはいつ出るの?」「出るのはいつだって?満員になったらに決まっている」。23頁
しかし、オコチャの青空市場など少しは夢も感じる。地元のタイピストはポーランド語も分からないのに、文章を打ち間違い一つない。「文章を打電するのではなく、記号を一字ずつ打つだけです」
タンガニイカでは、いたずらする子どもを叱りつけるときに、スワヒリ語で「おとなしくしないと、ムズン�O(白人)に食われちゃうよ」。
ワルシャワの小さな坊やが質問した、「人食い人種はたくさん見ましたか?」。88頁
ウガンダのアミン カクワ族。ホームレスの都市住民をバヤイェという。166頁
ルワンダは単一民族だが、3つの階層に分かれている。�ニ畜を保有するツチ人(人��フ14%)、農民カーストがフツ人(85%)、肉体労働者と使用人がトワ人(1%)。「ムワミ」という君主でツチ出身。ツチ対フツの図式の上に。フツの革命→体制側対反体制側かが加わる。195頁。
※映画「ホテル・ルワンダ」(脚本:ケア・ピアソン、テリー・ジョージ ・監督:テリー・ジョージ)を思い出した。
彼らは明確な目標を持って都市に来るわけではなく、村に戻る動機もない。なにも植えず、なにも飼育せず、なにも生産しない。通うべき学舎もない。住所も、お金も、身分証明書もない。みな家を失い、多くは家族を失った。321頁。
トゥアレグ族(永遠の放浪の民・内なる植民地主義者・ベルベル人の系列)のいる地域に潜入できなくはないが、それには1週間を要するという。残りはマリ航空の小型機に便乗する手だが、フライトは不定期、偶然の気紛れに頼るほかなく、週に一便か、下手すると月に一度の頻度である。アフリカでは、時間はなんの目盛ももたず、基準点がなく、形もなく、テンポもない。336頁。
村に一本しかない木、マンゴーの木の話。朝は木の下は教室になる。昼は、入りきるだけの人がみな身を寄せる。午後は、大人の男が会合を開く。伝統的に全会一致で、誰かが違う意見なら、延々と説得する。村で言い争いがあると、木の下が法廷になるが、真実に辿り着くものではなく、どちらが正しいか決めるものではなく、どちらにも理があることを認め、和解させる。日がくれると、��リり上げ、三々五々家路につく。暗闇では言い争いはできない。議論とは、話し手の顔が見えること、その人の口から出る言葉と目の語ることが同じであるかがわかることが必要。入れ替わり、木の下には、女たち、老人たち、子どもたちが、集まり、老人たちからの口承が始まる。歴史とは、人々の記憶にあるものがすべて。�リがなくなると、集まるところがなくなり、彼らの歴史が語られなくなる。知識は消え、バラバラになる。「人間は自分の影より永くは生きられない」。影と水。368頁。
ガーナ、タンガニイカ、ウガンダ、ケニア、サンジバル、ナイジェリア、モーリタニア、エチオピア、ルワンダ、スーダン、ソマリア、セネガル、リベリア、カメルーン、マリ、エリトリア。
宮嶋茂樹
不肖・宮嶋のネェちゃん撮らせんかい! 文春文庫PLUS ★★★★☆
相当、発言などには、問題あるとは思いますが、なかなか、普通の神経ではここまでの行動はできな�「タフさをいただきました。旧ユーゴスラビアの紛争地区で、綺麗な女性の写真を撮るという、不謹慎極まりないと激怒されそうですが、しかし、紛争地区のそれぞれの国民性に触れながら、また、危険な目に遭いながら、女性を追いかける姿はすごいと思いました。また、そうかと言って、決して、現実を見ていないわけではありません。表現は不適切なものもあると思いますが、そ�フあたりは、読む人の許容範囲の問題かもしれませ�B良書とは言えませんが、こうした本を読むことで、この地区の理解の一助になるかもしれません。
クロアチアのザグレブ、スプリト。ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボへはイグマン山越え!!セルビアのベオグラードへはロシアのシュレメチュボ空港から。
※
新ユーゴ(セルビア)と対立していたUNPROFOR(国連防護軍)明石特別代表は、アメリカのボスニア介入で辞任(このあたりの事実関係には諸論あり)。
※
1995年11月ボスニア武装三勢力停戦交渉の頃からの話。
馬場正尊
「新しい郊外」の家 大田出版 ★★☆☆☆
リノベーションや建築に少し興味のある方には、気分転換用に軽く読めます。価格は少し高いかな。1480円+税。著者は建築家で、東京R不動産を運営。
房総に広い土地を買って、小さな三つの個室を備えたフラットでガラス張りの家を作る話であるが、その窓には量産できる一番大きいサイズのアルミサッシを使った�閨A床もPタイルをうまく使ったりする事で経費をリーズナブルにしている。
住宅機器をサンワカンパニーのカタログ(安さとシンプルなデザイン)から注文するなどの工夫によるところが大きいようだ。
(本文から)
「僕の設計手法には、頭より先に、まず身体を優先して空間を捉えようとする、この姿勢がフィットすることに気がついた」
「房総で仕事をしながら気づかされることがある。都心の建物を設計ばかりしていると、つい忘れそうになる感覚を呼び戻してくれるのだ。それは身体や気持ちに素直になれる、という感覚」
こうした気持ちと哲学を持って作られた家がここにできる。
バーナード・マラマッド
「レンブラントの帽子」 訳 小島信夫・浜本武雄・井上謙治 夏葉社 ★★★☆☆
Amazonでたまたま見つけた本。1975年に集英社から刊行された「レンブラントの帽子」は8篇の短篇集ですが、この本(2010年5月発行)は、次の3篇からなります。
「レンブラントの帽子」
「引き出しの中の人間」
「わが子に、殺される」
と注解。
巻末に荒川洋治さんのエッセイ。「レンブラントの帽子」について。
今回、掲載されなかったのは、次の5篇。
「銀の冠」
「手紙」
「引退してみると」
「パーティでレディのくれた�闔�v
「もの言う馬」
桜庭一樹
荒野 文芸春秋 ★★★☆☆
こういう少女小説を書かせると、やはり、桜庭さんはうまい!直木賞受賞後に、05〜06年にファミ通文庫から出された「荒野の恋 第一部、第二部」を加筆修正したものに、第三部を書き下ろしたもの。時代は違うが、少女小説と言えば、吉屋信子(大正)。金井美恵子、桜庭一樹と、文体・雰囲気は全く異なるが、少女小説を書かせるとうまい。金井美恵子は違うよと突っ込まれそうですが。。。
舞台は鎌倉。鎌倉の築○○年の古い家に住む恋愛小説家の山野内正慶(しょうけい)と娘の荒野(こうや)、そしてお手伝いさんお奈々子(タバコの似合う・本当は愛人)。荒野は、中学生の入学式に向かう�。須賀線の中で大失態。それを見ていた少年に救われて、なんとか学校へ行くが、なんと、同じクラスにその少年・神無月悠也もいた。彼の愛読書は「青年は荒野をめざす」。
しかし、しばらくすると、山野内家に驚くことが。悠也の母、蓉子と荒野の父、正慶が結婚することに。そして、奈々子さんは出ていき、神無月母子が、荒野たちと住むことに。。。(蓉子さんは、出産し、鐘誕生!)荒野は、田中江里華(美人)、湯川麻美(陸上部)と仲良くなり、中学から高校へと物語は進む。さてさて、いったいどうなることやら。
父、正慶の恋愛小説「涙橋」が、賞を取る場面は、おそらく、桜庭さんが見たり、感じたりした直木賞受賞の様子であろう。
その他、登場人物や話に出る人。編集長(編集局長)、睫毛が印象的な女編集者・矢野眞子(父の元愛人)とその彼(評論家)、麻美の母、江里華の家族(母、弟たち)、阿木慶太と姉、悠也のアメリカ時代のガールフレンド・ルイ、水玉のネクタイをした若い編集者(蓉子と駈落ち?)、三つ編みの小柄な女の子(江里華の彼女)、麻美の彼、その後の大学生の彼。
度々出てくる表現。鹿威し(ししおどし)。浅葱色(あさぎいろ)
ダニイル・ハルムス
ハルムスの世界 増本 浩子、ヴァレリー・グレチュコ訳 モンキーブックス ★★★★☆
NHKのブックレビューで紹介された「ハルムスの世界」をざっと読んでみました。ダニイル・ハルムス(1905年〜1942年)。ロシア人。
スターリン政権下で弾圧を受け、刑務所で死去。彼の作品は発禁で、1970年代になって、はじめてアメリカとドイツで発見された。あらゆる理解は誤解である不条理文学。世界にはそもそも「意味」などないかもしれない。人間は世界とも他人とも理解する言葉では話せない存在で、ひとりきりで�「界を相手にしなくてはならない。
「ハルムスの世界」
そんな不条理な世界をパロディや、ユーモアに満ちた語り口で話す。ハルムスは、ベケットやイヨネスコの�諡�メ的存在。
例えば、「ペトロフとカマロフ」
ペトロフ「おい、カ(蚊)マロフよ
一緒に 蚊(カ)をつかまえよう」
カマロフ「いや、まだ 準備はできないよ それより 猫を つかまえよう」> <本文から>
こんな感じです。よくわかりませんが、何となく、感じます。軽い文章だけど、当時のソ連の現実を痛切に皮肉っているようです。
多和田葉子
尼僧とキューピッドの弓 講談社 ★★★★★
若干、甘めの評価と言われるかもしれませんが、あくまでも、個人的な★ということでお許しください。
以下、ネタばれありますので、気になさる方はお読みにならないでください。
第一部 遠方からの客
主人公のわたしは、研究のため、ドイツの修道院の尼僧院長の許可をもらい、修道院に行く。しかし、尼僧院長は、不在であり、その代理尼僧院長から、数人の尼僧と接し、色々な考えを聞きだす。「わたし」は、尼僧たちの名前を、�ワるで、名前などは本来記号でしか過ぎないかのように次から次へと、自分でつけてしまう。
<登場尼僧>
老老尼僧院長には老桃。おつきの尼僧を貴岸さん(村の教会行きに誘われる)。
老尼僧院長を火瀬さん(独裁者・初の平民出の元院長)。
�纓搏m院長は透明美さん(現代文学好き・修士・啓蒙主義者)。
見習い尼僧は河高(火瀬の推薦・映画好き)と友人の弁護士出身の尼僧を若理さん(自転車を部屋の前に置く規則違反)。
放射線治療を受ける尼僧を陰休。
聡明な少女のような尼僧(85歳)は流壺(文学好き・モーツァルト好き)。
杖をついた尼僧には鹿森(河高批判・透明美と親友だが溝)。彼女が言うには、弓道をしていた前尼僧院長は、恋人とができ1年でやめた。「弓道と言いますが実際はキューピッドの矢ですよ」(本文から)
修道院の尼僧は、聖人君子のような振舞かと思うが、派閥争いはある、男性との恋愛はあるなどのお年寄りもなかなか元気である。たとえば、古い、修道院の体質を変えたいという改革派には透明美、河高、若理、陰休、尼僧院長候補者�Hがいたり�A火瀬は息子が時々くるが、息子かわりに庭師の面倒をみたり、貴岸は老桃さんに奉仕しながら、若い女牧場に憧れる。
わたしは、色々な尼僧の話を聞きながら、「他の人たちと話しが通じたと思えたこともみんな誤解だと�「うことがだんだん分かっていって、最後にはたった一人で言葉を失って、この世から消えていくのだろうか」(本文から)と考えてしまう。
第二部 翼のない矢
主人公は、前尼僧院長(40代)で、彼女は学生時代は、哲学科に進み、住まい�ヘ学生たちとの共同生活。弓道を習いに行き、そこの先生のベルンハルトと恋人同士となる。
「わたしはその人たちの名前を覚えようとさえしなかった。(中略)弓を構えるとまわりの人間たちが消えて、道場の壁さえ消えて、町も、社会も国家も消えて、自分一人になる。」(本文から)
しかし、ベルンハルトとは同棲するが、色々と諍いが起こり、彼女は一人旅に出て思う。
「店の人もわたしの顔を覚えてくれない。(中略)中国の軽食屋はいつも込んでいて、働いている人の数も多く、三度入っても四度入っても誰も顔を覚えてくれない。」
(本文から)
スペインのコンポステーラに巡礼の旅にでようと思うが、ドイツのW市の修道院の存在を知り、尼僧院長として迎え入れられる。
言葉、名前、修道院、尼僧、それぞれ意味もあり、存在意義はあるが、名前があっても、それは名前にしかすぎず、それ自体では意味をなさない。自分とは何か、人とは何か、人と人との関�Wとは何かを問われているように思う。
東京R不動産 アスペクト ★★★☆☆
VILLAGE/VANGUARDで見つけた文庫本。小説でも何でもない。どうやって東京R不動産という会社ができたかということでもある�ェ、写真と間取りや色々なコンセプトの建物を見ていると楽しい。文庫なの�ナ、写真としては物足りないが、日本の不動産屋さんへの�竄「かけでもあるか。
個人的には、リノベーション、ビフォー・アフター、間取り図、老朽化という言葉やテーマの雑誌や本が好き。アジアン家具、北欧調古家具も、なんかも良い。
テレビは、サッカー以外は、ほとんど見ないが、ビフォー・アフターをやっているとついつい見てしまう。再利用し、古い物が生き返る仕事ができる匠を見ていると、知恵と工夫�ニ発想と技術力ではあるが、そこに芸術的な香りも感じてしまう。
ありふれたリフォームは、知恵と工夫と技術力を失っているように思う。
この本は不動産屋の宣伝ではあるが、一般的な不動産屋の発想ではない。そこが面白い。カラーも豊富であるが、文庫本なので、後は、自分の頭の中でイ�=[ジを膨らませて楽しむことだと思う。巻末のヴィンテージマンションについては、私も時々思っていたこともあり、長く使えるマンション、また、長く使えるように手入れをする事が、ものを大切にする気持ち、環境問題を考えても大切なことだと感じた。
少し前だが、「老朽マンションの奇跡」を読んだが、これはマンションの一住居を低予算でリフォームするが、知恵と努力と熱意の賜物であった。ちなみにこの本は古本で購入しました。
ヴァージニア・ウルフ
ダロウェイ夫人 富田 彬 訳�@角川文庫 ★★★☆☆
ヴァージニア・ウルフ(1882ー1941・ロンドン生まれ)の「ダロウェイ夫人」。最初�ヘ、有閑マダムの豪華な生活の話かと思ったが、しっかりとした登場人物の内面告白型小説のようだ。語り部は、コロコロと独白させる人物を�マえるので、うっかりしていると、違う人の話になっているので、要注意だ。下段の登場する人たちを見ると、圧倒される数の人たち。瞬間に登場する人も多いが、主要な登場人物に近い人も多いので、全く無視して読んでいると、読みづらくなる。(登場人物が固有名詞で出てくるが、まあ、余り関係ない人も多いが、時々、メモをしたほうがいいかもしれない)。題名はダロウェイ夫人だが、彼女を取り巻く人達の独白劇のようである。題名から割りと軽めかなと思ったが、意外や、きっちりと読みたい。当時の社交界に重要性とその反面性が描かれている。(ダロウェイ夫人に代表される人たち←→ピーターや若いころのサリー)
内面告白が、語り部の気まぐれで次から次へと変わっていく。たとえば、ダロウェイ夫人→ピーター→セプティマス→レチア→セプティマス→ブルートン令夫人→リチャード→ダロウェイ夫人→キルマン嬢→ダロウェイ夫人→キルマン嬢→エリザベス→キルマン嬢のように。。。
主要な登場人物
ダロウェイ夫人=クラリッサ・ダロウェイ(51歳)、
リチャード・ダロウェイ(夫・議員)
エリザベス(娘)、
ヒュー・ウィットブレッド(クラリッサの幼馴染)
イーヴリン・ウィットブレッド(幼馴染の妻)
ピーター・ウォルシュ(若き日の恋人・インド行きの船で知り合った女性と結婚)=ウォルシュ氏
サリー・シートン(クラリッサの女友達)=金持ちと結婚し、ロセッター夫人・マンチェスターの豪邸に住む
セプティマス・ウォレン・スミス(第一次大戦から帰還した青年・30歳・不安な男)=スミスさん
ルクレチア(妻・24歳・イタリア人)=レチア=スミス夫人
登場する人たち
ジャスティン・パリー(クラリッサの父)、シルヴィア(クラリッサの妹)の死、デイジー(ピーターの妻?)とオード大佐、ダニエルズ嬢(先生?)、
スクロープ・パーヴィス(ダロウェイを少ししか知らない)、フォックスクロフト(息子が死んだ)、ベックスバラー夫人(ジョーンが死んだ・浅黒い綺麗な肌と美しい眼)、
(思い出として)シルヴィア、クレッド、ウィリアム伯父、ミス・キルマン(エリザベスの家庭教師だが、ロシア人・オースト�潟A人のためなら)=ドリス・キルマン、
ミス・ピム(花屋・マルベリー)、エドガー・J・ウォットキス(鉛管に片腕通した)、ホームズ先生(フィルマー夫人のかかりつけの医者・スミスの医者でもあるが)、
老判事のジョーン・バックハース�g卿、花売り女モル・プラット、セアラー・ブレッチリー(赤ん坊を抱いた)、ブレッチリーおかみさん、
(メアリ王女・エドワード老王)
エミリー・コーテス(王室を心に描いた)、ボウリー氏(小柄)、亡きエヴァンズ(柵の後ろにいる・セプティマスの上官・おとなしい・戦死)、メイジー・ジョンスン(19歳)、
デンプスター夫人、キャリー・デンプスター、パーシー(呑み助)、ベントリー氏(飛行機を見ながら考えた)、ルーシー(ダロウェイ夫人のメイド)、
ミセス・ウォーカー(料理女・アイルランド生まれ)、
ブルートン夫人、�~リセント・ブルートン、マニング、キンロック・ジョ�[ンズ(の家?)、ヘリナ叔母さん、老家政婦エレン・アトキンズ、オールドミスのカミングス姉妹、
ジョーゼフ・ブライトコプフ=ジョーゼフ老人、イーリス・ミッチェル、
ウィリアム・ブラッドショー卿(医者・父は商人)、ブラッドショー令夫人
ミス・イサベ�求Eポール、べッティとバーティ、
ウィットブレッド家(石炭商人)、�Lンダースリー家、カニンガム家、キンロック・ジョーンズ家
侍女エディス、令嬢ヴァイオレット、ミス・ポール=イサベル・ポール嬢(シェイクスピアについての演説・セプティマスが恋)、キーツみたいな人、ブルーヴァー氏(商会の支配人)、
何とかアメリア、トムとかバーティ、フィルマーの奥さん=フィルマー夫人、フィルマー夫人の娘(赤ちゃんを産む)=ピーターズ、アグネス(メイド)、
ブルートン令夫人(リチャードに関心あり)=ミリセント・ブルートン(将軍のロデリック卿、息子はマイルズ卿、その息子はトルバット・ムーア卿の娘)
ブルートン令夫人の秘書役ブラッシュ嬢(ミリー)=ミリー・ブラッシュ(リチャードに関心あり)、パーキンズ(召使)、イーヴリン(召使)、モーティマーとトム(ブルートンの兄弟)、
ドゥボネット(宝石店)
エリー・ヘンダーソン(クラリッサがパーティーに招待しない)、マーシャム夫人(エリーを招待してと手紙)、ヒルベリー夫人、ドルビーさんの学校、
ウィティッカー師、(ポープ、アディソン)、大蔵省を退職したフレッチャー氏、王室顧問弁護士の未亡人ゴーラム夫人、ウィリアムズ夫人、新聞売りの子供、
年寄りのブライトコプフ、バージス夫人(ピーターの信用する)、チャールズ・モリス、チャールズ老人、エレーン嬢、モリスのおかみ、ウォー�Jーのおかみさん、
パーキンソン夫人(夜会係り)、バーネット夫人=年老いたエレン・バーネット、ラヴジョイ夫人、アリス嬢、ウィルキンズ氏(夜会係り)、
ジョーン・ニーダム卿と令夫人=ウェルド嬢、ウォルシュ氏、
エリー・ヘンダーソン(クラリッサの従妹・貧乏)→(イーディス)、
老レクサム卿、レクサム令夫人、ギャロッド大佐ご夫妻、ボウリー氏、ヒルバリー夫人、メアリ・マドックス令夫人、クィン氏、ラルフ・ライオン、
老ハリー卿、マウント夫人とシーリャ、ハーバート・エーンスティ、デーカーズ夫人、クララ・ヘイドン、ダラント夫人とクララ、トゥルーロック嬢とエリナ・ギブソン、
ウィリー・ティットコウムとハリー卿、ヒルバリー老夫人、ブライアリー教授(ミルトン論じる)、小柄なジム・ハットン、ゲイトン卿とナンシー・ブロー=ブロー嬢、
老嬢ヘリナ・パリー(80歳すぎ・70年代のビルマを知っている)、ミリー・ブラッシュ、サムプソン卿、エレン・アトキンズ(若かりしサリーを叱る)、
首相とブルートン令夫人、
ブアトン(地名)。
リルケ
マルテの手記 新潮文庫 ★★★★☆
意外と難解だなあ。一生涯で一作のリルケの小説。それも7年もかかって、書いた。文庫で300ページ少し。
<冒頭>
「人々は生きるためにこの都会へ集まって来るらしい。しかし、僕はむしろ、ここではみんなが死んでゆくとしか思えないのだ」
と冒頭から不吉だ。そして、パリの街を歩きながら「見る」ことから学んでいく。そして、私たちはいつのまにか、マルテの幼少時代の不�v議な世界へと連れ去られる。
木島俊介
女たちが変えたピカソ 中公文庫 ★★★★☆
ピカソの絵。まるで抽象画のようで、それとは一線を画していた。晩年になるほどわかりにくいが、女性という軸(すみません)で見ると、いかにわかりやすいかというピカソ論。ピカソをめぐる八人の女性。個性溢れる女性とピカソの関係から、戦争へと流れる世界を背景にピカソの絵の謎を解く。
プロローグ
第一章 瞑想 1904年。23歳のピカソ。フェルナンド・オリヴィエ。
第二章 人生(ラ・ヴィ) 1903年。1901年親友カサジェ�}スの自殺と恋するジェルメーヌ。
第三章 アヴィニョンの娘たち 1907年。
第四章 私の可愛い人(マ・ジヨリ) 1911年<ギターを持つ女「私の可愛い人」キュビスム> マルセル・アンベール(本名はエヴァ・グエ)26歳。ピカソ30歳。写実画も。
第五章 夜会服と踊り子 1917年<肘掛け椅子に座るオルガの肖像>オルガ・コクローヴァ27歳と結婚。ピカソ36歳。
第六章 �~ノタウロスと女(ミューズ) 1931年12月7日<彫刻家> マリー=テレーズ・ワルテル 17歳。ピカソ45歳。
第七章 泣く女 1937年10月26日<泣く女>=ドラ・マール(マルコヴィッチ・ユーゴスラヴィア人)と出会う(1936年)。1937年<ゲルニカ>
第八章 花の女 1953年12月29日<影> 画学生のフランソワーズ・ジロー(1943年)21歳、一番均衡のとれた女性で、一本の花の絵としてピカソ(61歳)は描いた。
第九章 喜劇と瞑想 1954年1月14日<画家とそのモデル> ジャクリーヌ・ロック(30歳半ば)と結婚。ピカソは79歳。
エピローグ
あとがき
高野秀行
ワセダ三畳青春記 集英社文庫 ★★★☆☆
暇つぶしには、もってこいの本。面白い。読みやすい。そして、三味線を学ぶあたりは、とても共感できる。「酒飲み書店員さんたちがおすすめ」との帯封。
UFO基地探検と入居から、人体実験で十五時間・意識不明、テレビが家にやってきた、だから結婚式はいやなんだ!、遅すぎた「初恋」。。。
図録
印象派とエコール・ド・パリ ポーラ美術館コレクション展 ★★★★☆
2010年7月2日〜9月4日 横浜美術館で開催された同展の図録。モネ、ルノワ�[ル、シスレー、ピサロ、ギヨマン、セザンヌ、ゴーガン、ゴッホ、スーラ、シニャック、クロス、プティジャン、シダネル、ルドン、ロートレック。ピカソ、ユトリロ、ローランサン、�hンゲン、パスキン、モディリアーニ、スーティン、キスリング、�tジタ、シャガール。25人の74点の絵画展図録。評�_として、「コレクター鈴木常司とポーラ美術館の西洋絵画コレクションの生成、セザンヌと詩人リルケ、ピカソとモディリアーニ、ピカソ(海辺の母子像)にそえる瞑想、正方形断想−モネの睡蓮を起点に、横浜で初めてのフランス絵画展」。
アーロン・エルキンズ
偽りの名画 秋津知子 訳 早川書房 ★★★★☆
久しぶりに推理小説を読みました。と言っても、推理小説のファンの方には少し物足りないかもしれません。絵画ファンとしては、話題が興味深いので、気にならなかったのかもしれません。主人公は美術館の学芸員のクリス・ノーグレン。主要な登場人物は、ヨーロッパ駐留米国大佐のマーク・ロビー。米国空軍大尉アン・グリーン。ハリー・グッチ少佐。そして、絵画の蒐集家のクラウディオ・ボールツァーノと息子のロレンツォ。掠奪名画展の管理運営担当エガッド、技術主任アール・フリットナー。そして殺されたピーター・ヴァン・コートラント(主任学芸員)。やはりこういう本は読みやすくて、登場人物もそれぞれ個性豊かで面白いです。
レイ・ブラッドベリ
永遠の夢 北山克彦 訳 晶文社 ★★★★☆
著者は1920年生まれのアメリカ人で、89歳で活躍中というのだからすごい人なのだろう!2007年にアメリカでは発売されているので、少し前ということになる。中篇二話となる。「どこかで楽隊(バンド)が奏でている」・・・ある時、黒い列車からカーディフ記者がアリゾナ州の小さな町(砂漠の草原)に降りるが、そこにある街の人たちには、子どもはいない、大人も年を取らないという不思議な人たちが住む町であった。
<本文から>
どこかで楽隊が奏でている
奏でているのはなんとも不思議な曲だ
ひまわりの種と水夫たちの歌
水夫らはなんとも不思議な月と潮(うしお)に浮かんでいる
どこかでドラマーが、見捨てられた時代に
思いをたぎらせ、震えながら
まだ生まれていない未来の
夏の日々を思い出す
「2099年の巨鯨(リヴァイアサン)」・・・訳者あとがきによると話は「白鯨(メルヴィル)」をなぞっているとのこと。白鯨を彗星に、捕鯨船ピークォド号を宇宙船シータス7号、語り手のイシュメイル、予言者イライジャ、宇宙船レイチェルの名前は同じ。
船長の言葉の「ヨブ(旧約聖書ヨブ記)のごときわしの忍耐を試すために」や「あそこにわれらの網を入れ、魚の奇跡を、ガリラヤでのイエスの奇跡をしのぐ」、あるいは、「想像を絶した大きさと力をもつ怪獣(ビヒモス)(ヨブ記にでるカバに似た巨獣)」、「新しく作られた金属の鯨�フ腹の中で旅するヨナ(旧約の預言者)たちよ、」は宗教観を、また、クエルが囁く、「わたしたちの友人ダウンズは、おそらく死へと送られ、狂気に破滅した王、リチャードとともに緑の平原に埋葬される。足元には投げ出された王冠と飛び散った血だ」(シェイクスピア・リチャード三世の連想)のようなセリフはシェイクスピアの悲劇を思わせる。
宇宙、死、生、破壊、時間、地獄。まさしく、偉大なる神と宇宙と生死を問いかける。
読みやすいので、意外とななめ読みになりがち。じっくりと読むほうがよかったかな。
ディヴィッド・ガーネット,
水夫の帰郷 (ガーネット傑作集)
池央 耿 訳 河出書房新社 ★★★☆☆
著者はディヴィッド・ガーネット(1892年〜1981・イギリス人)。時代設定は1858年なので、まだまだ黒人に対する偏見が強いイギリス。船乗りだったウィリアム・ターゲットはアフリカの王女のチューリップと結婚して、故郷のイギリスで居酒屋を経営することになった。息子はサンボ。居酒屋の名は「水夫の帰郷」。商売は成功するが、色々と偏見がある中で、彼らはたくましく生きていくが、最後はどうなるかは。。。古本で買いました。軽く読める本です。
ジェラルディン・ブルックス
古書の来歴 森嶋マリ 訳 武田ランダムハウスジャパン ★★★★★
こういうテーマが好きなので★がアップしました。「サラエボ・ハガダー」と聞いて、ピンとくる方は、興味のある方かな?宗教感は日本人にはわかりにくい。というか宗教に対して、私が無知なのか?寛容なのか?わからないが、世界では宗教の違いで、残念ながら、戦いは当たり前にさえなっている。
かつてのサラエボには、ネオ・ゴ�Vック様式の大聖堂があり、シナゴーグやモスクが並んでいる。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教が混在している街を中心とした物語で、500年前に作られた「サラエボ・ハガダー」を古書保存修復家のハンナが、1996年のサラエボを舞台を出発として、修復をするというストリーの中、読者は別の世界に誘われていく。
それが、古書の来歴を追う物語の始まりである。
ベルンハルト・�Vュリンク
逃げてゆく愛 Libesfluchten
Bernhard Schlink 松永美穂 訳 新潮文庫 ★★★★☆
映画「愛を読む人」(ステーヴン・ダルドリー監督)の原作「朗読者」の著者。ドイツ人。「もう一人の男、脱線、少女とトカゲ、甘豌豆、割礼、息子、ガソリンスタンドの女」の七つの短篇。いず�黷煬ヌ独な男の物語(結婚していたり、三人の女性と暮らしていたりと外面的には孤独ではないが)。以下、若干ネタばれありますので、気になる方は飛ばしてください。
「もう一人の男」・・・ヴァイオリニストの妻リーザが癌で亡くなったが、彼女宛てに男・ラルフから手紙が来る。リーザの夫は「彼女は死んだ」と手紙を書くが、それを勘違いしたラルフが何度も手紙を寄越し、彼は密かにラルフに会いに行くことに。
「脱線」・・・ベルリンの壁崩壊の東西ドイツでの話。東ドイツの友人夫妻のスヴェンとパウラと私はチェスの試合で知り合いになる。彼らの子供ユリア。私とその家族との話であるが、彼らは東ドイツの秘密警察のスパイでもあった。
「少女とトカゲ」・・・少年の父が大切にしていた「少女とトカゲ」の絵。母はその少女をユダヤ人と言う。・・・大学生になった少年は、ルネ・ダールマンという画家の絵に興味をもつようになる。そして、その絵の入手した経緯を知ることに。
「甘豌豆」・・・建築家として成功を収めたトーマスは、妻ユッタと子どもがいたが、彼はまた画家としても人�Cが出てきた。画家として有名にしてくれたのは、ハンブルクの画廊の女主人ヴェロニカであった。彼女とも一緒に暮らすようになり、彼女は娘を産�セ。すべてがやりきれなくなったトーマスは、大学時代の友人とフランスで山歩きをし、そこで歯科学生のヘルガと知り合いになる。・・・かれは僧服を着て旅にでるが、電車の扉に僧服が挟まれて大け�ェをする。その時、彼女たちは一緒になって。。。
「割礼」・・・ドイツ人とユダヤ人。ある意味、相当、困難なテーマを短篇で扱うのは極めて無謀なような気もしますが、なかなか、真理をついている個所も多くあります。ドイツ人のアンディとユダヤ人サラはニューヨークで知り合い、恋に落ちる。「彼は二人のいさかいについて考えた。言い合いをしたのは初めてだった。あとになると、その喧嘩は後の喧嘩の前触れだったように思われた。しかし、振り返ってみるときに前触れを見つけるのは容易なことだ。・・・」(本文から)
「息子」・・・「新潮クレス�g・ブックス 記憶に残っていること 堀江敏幸 編」の項�Q照してください。
「ガソリンスタンドの女」・・・彼は夢か現実かわからないが「ガソリンスタンドの女」を度々思い出す。彼には長年連れ添った医者で� り、大学教授の妻がいた。結婚生活はうまくいっていただ、それは儀式の連続であった。第二のハネムーンとして、アメリカ旅行に行き、高級自動車でドライブすると。。。
坂東眞砂子
ラ・ヴィタ・イタリアーナ 集英社文庫 ★★★★☆
イタリアに滞在したときの出来事を綴ったエッセー。免許を取るのも、電話を引くのも国、文化、民族が違えば考え方も違い、�ウあ大変。前半はとにかく面白い。後半はややネタ切れか。しかし。坂東さんはイタリア語できるなんてすごいな。お酒も強そう。(そういえば、多和田さんはドイツ語が堪能だ)。とにかく、イタリアのお国柄もよくわかる楽しい本です。
多和田葉子
旅をする裸の眼 講談社文庫 ★★★★★
この人の文章は好きです。主人公のベトナム人の「わたし」の行動は、え?どうしてこうなのかなと思うが、文体に引き込まれていく何か快い流れがあります。
「わたし」は人に聞かれても、すぐ、嘘の名前を教えてしまう。また、「わたし」は、フランス語もわからずに、何度もカトリーヌ・ドヌーブの映画を見る。言葉や言語や会話、そし�ト見える物の意味は何かと問われている気がする。
わたし(主人公)←→あなた(ドヌーブ)
<冒頭引用>
映された目、意識のなくなった身体にくっ付いている。何も見えていない。視る力はカメラに奪われてしまった。名前のないカメラの視線が、文法を失った探偵のように床を嘗めている。<中略> 何もない斜め上の空間をにらんでいる少女が映っている。その目を、どんどん大きく映し出していくと、ぼやけてきて、紙にできたシミのようになってしまう。後から見た人は、これが目だと思わないだろう。
小川洋子
沈黙博物館 ちくま文庫 ★★★☆☆
博物館に惹かれて購入したが、ストーリー的にはあまり私好みではなかったのと、やや推理小説風なところもあまり面白くなかったので★★★となりました。
さほど特徴のある村ではないが、博物館専門技師である“僕”は、形見を収集する“老婆”(100歳に近いか、独自の暦を信じる)に採用されて、博物館をつくることになった。僕の旅行鞄には、母のサインが入った「アンネの日記」、「博物館学」、顕微鏡などが入っている。僕=“技師”は、老婆の養女の“少女”に惹かれながら、仕事を着々と進めていく。
登場人物は、僕の仕事を助ける“庭師”と奥さん。“沈黙の伝道師”。“少女”が恋する“沈黙の伝道師見習い”。僕が手紙を何度も書くが返事が来ない“兄さん”(思い出として登場�j。“家政婦さん”。
村に残る唯一の工芸品は卵細工。さかんなスポーツは野球で、養鶏場連合対精密機械連合などの試合がある。
いったいこの村は現生なのかもわからない。名前もないし。。。
解説は堀江敏幸さん。
井形慶子
老朽マンションの奇跡 新潮社 ★★★☆☆
リフォームというか再生させる(古いものを活かす)というのに興味があるので、ビフォーアフターという番組が好きです。たまたま、アマゾンで見つけ、古本で購入。内容的には面白いのですが、もうすこし、写真を豊富にして、文章ももっと楽しそうに書いてくれると○。吉祥寺にある古いマンションを500万円で買って、200万のリフォーム代金(備品等は自分で用意したものもあるようです)でリフォームしていくお話。これも、自分の経営する会社に勤める優秀だが、なかなか、プライベートではうまくいかない社員の社宅兼仕事用スタジオとして、なかなかしゃれた部屋ができあがる。それにしても、リフォームを請けおった宇野社長はすごい。マンション価格の下落も。2009年11月発行。
イーユン・リー
千年の祈り 訳 篠森ゆりこ 新潮クレスト・ブックス ★★★★★
第一回フランク・オコナー国際短篇�ワ受賞。(第二回は村上春樹氏) 以下の短篇。深刻ではないが、色々と考えさせられ、また、面白い。
「あまりもの」 林(りん)ばあさんの小学生への恋物語
「黄昏」 蘇(スウ)夫妻と方(ファン)夫妻。蘇と方の男同士が証券会社の待合室で親友になる。
「不滅」 宦官。偉大なる・独裁者に似た顔を持つ男の運命は。
「ネブラスカの姫君」 伯深(ボーシェン)と薩沙(サーシャ)は偽装結婚してアメリカへ。京劇の俳優である陽(ヤン・男娼)を二人は愛するが。。。
「市場の約束」 女教師三三(サンサン)と婚約者だった土(トウ)は、旻(ミン)と結婚し、アメリカへ行くが、離婚する。三三の母は市場で屋台を引いている。。。★★★★★
「息子」 アメリカに帰化したハンは33歳、独身者のソフト開発者。中国では女性から結婚対象NO1。しかし、彼は。。。
「縁組」 炳(ビン)おじさんは、若蘭(ルオラン)の母親宅へよく遊びに来る。。。
「死を正しく語るには」 胡同(フートン)にある厖(パン)夫妻の家で過ごす一週�ヤの女の子のお話。★★★★★
「柿たち」 干ばつ。煙管を吹かしながら、干ばつと英雄の老大(ラオダー・殺人者だが)を噂する農民たち。
「千年の祈り」 結婚してアメリカに住む娘が離婚し、心配でアメリカに行き、娘と住むが。★★★★☆
中国語ではなく英語で書いた小説。中国社会の矛盾を抱えながら生きていく中国の人たち。アメリカへの憧れと不安、同性愛、不正、共産主義、好女人(ハオニューレン)などについて語る。
マリー・ンディアイ
ロジー・カルプ 訳 小野正嗣 早川書房 ★★★☆☆
帯封。「カリブ海の島に降り立った妊婦。ロジー・カルプ。赤子の父親が誰なのか、自分でさえ知らない女」。フェミナ賞受賞の作者はセネガル人の父とフランス人の母との間に1967年に生まれる。
以下、ネタばれ含みます。
登場人物はどうしようもない白人たち、ロジー・カルプ、その兄ラザール、そして兄の悪友で殺人まで犯すアベル。ロジーは職場の上司副支配人マックスの子ティティを産む。さらに、マックスの二回目の結婚パーティーの際、ロジーは酔っ払い、誰かの子供を孕んでしまう。
カルプ夫妻、また、カルプ婦人は若い彼と不倫し、子を孕む。どうしようもない白人たち。それに対して、しっかりとした黒人のラグラン。神的なルネ。ラグランの妹アニータの夫はラザールで、その子供はジャード。・・・どうも登場人物を一人とて好きになれない(*_*;
フランスの複雑な世相を反映しているように思う。どうしたラグ�宴唐ェラザールにかくも寛容なのか?ラザールがだめ白人だからか?なぜラグランがロジーを好きになるのか?そのあたりの、心の動きの描写がそれほどうまいと思わない。また、感情の起伏も、普通の感覚ではついていけない。こうしたことが、逆に、この小説の評価の高さなのだろうか。
※フォークナー「八月の光」がお手本とのこと。
エリザベス・ボウエン
あの薔薇を見てよ ボウエン・ミステリー短編集 訳 大田良子 ミネルヴァ書房 ★★★☆☆
ボウエン(1899〜1973)は、アイルランドのダブリンに生まれる。10編の長編小説と100編以上の短篇を執筆。文芸評論、旅行記、児童書、評論等も手掛ける。ダブリン大学、オックスフォード大学から名誉博士号を受ける。第一回目のブッカ―賞の候補となる。何篇か面白いものも� りますが、やや退屈。巻末の解説から読むのもいいでしょう。登場人物の名前をわざと似た名前にしたりしているので、しっかりと人物名を押さえて読みましょう。
コージーな表面の陰にあるもの(小池 滋) ―――エリザベス・ボウエンの花束
あの薔薇を見てよ
アン・リーの店
針箱
泪よ、むなしい泪よ
火喰い鳥
マリア
チャリティー
ザ・ジャングル
告げ口
割引き品
古い家の最後の夜
父がうたった歌
猫が跳ぶとき
死せるメイベル
少女の部屋
段取り
カミング・ホーム
手と手袋
林檎の木
幻のコー
解説(太田良子)
堀江敏幸 編
記憶に残っていること 新潮クレスト・ブックス 短篇小説コレクション ★★★★☆
作家でもあり、翻訳家でもある堀江敏幸さんが、これまで刊行した新潮�Nレスト・ブックスの短篇から選んだ10作。全体的に静かな、やや喪失感を漂わせている短篇ばかりです。これを読んで元気になることはないな。
デイヴィッド・ベズモーズギス マッサージ療法士ロマン・バーマン(「ナターシャ」より)
アンソニー・ドーア もつれた糸(「シェル・コレクター」より)
エリザベス・ギルバート エルクの言葉(「巡礼者たち」より)
アダム・�wイズリット 献身的な愛(「あなたはひとりぼっちじゃない」より)
ジュンパ・ラヒリ ピルザタさんが食事に来たころ(「停電の夜に」より) これは読みました。子供の視点から描いたパキスタン独立運動の頃のアメリカ。
イーユン・リー あまりもの(「千年の祈り」より)�ィクレスト・ブックス購入 ※中国系アメリカ人。★★★★★
アリステア・マクラウド 島�i「冬の�「」より) ※暗い話だが、★★★★★
アリス・マンロー 記憶に残っていること(「イラクサ」より)
ベルンハルト・シュリンク 息子(「逃げてゆく愛」より)→「朗読者」の作者。「逃げてゆく愛」は新潮文庫化、購入。
ウィリアム・トレヴァー 死者とともに(「密会」より) ※これも暗いなぁ。
ウラジーミル・ナボコフ
透明な対象 訳 若島正・中田晶子 図書刊行会 ★★★☆☆
恐らくわかる人にはわかる小説なのでしょう。衒学趣味といったらファンの方に叱られるでしょう。訳者の巻末のナボコフ「透明な対象」ノート、訳者あとがきを読んでから、本文の小説を読まれた方がわかりやすいかも知れません。決して、内容は難しいものではないのですが、視点が飛ぶのか、分かりにくいところが多々あります。翻訳には苦労されていると思いますが、日本語としてもっと魅力的な訳にして欲しいと思います。
青来有一(せいらいゆういち)
爆心 文藝春秋 ★★★★☆
長崎原爆がテーマの短篇が六作。全体的に重たい。長崎県の方言で語りかけてくる。釘、石、虫、蜜、貝、鳥がそれぞれの題名。以下、引用。
「釘」・・・息子が事件を起こしてから教会に通えんようになったのはほんとうに辛いことやったろうと思います。・・・
「石」・・・だんだん、からだが石になってしまいます。もう、なんにもしゃべりたくなくなる。息もしとうない。・・・
「虫」・・・青々としたウマオイが、血だらけのふくらはぎをゆっくりと這っています。・・・
「蜜」・・・あの子の眼にノースリーブの年上の女のからだがどんなふうに映っているのか、わたしにははっきりわかります。・・・
「貝」・・・今朝、枕元にころがっている貝殻を見つけた時、ぼくはこれでみんなにも信じてもらえるんじゃないかと、なによりもそのことを考えた。・�E・
「鳥」・・・厚いボール紙を力まかせに破るような「がさっがさっ」という音がひびい�ト、私は天井をあおぎました。・・・
何がしらハンディキャップを背負って生きている人たちが主人公で、長崎の原爆、あるいはキリスト教(隠れキリシタン)等の影を引きずっている。
谷崎潤一郎賞受賞、伊東整文学賞受賞。
小川洋子(編著)
小川洋子の偏愛短篇箱 河出書房新社 ★★★★☆
小川洋子さんが選んだこだわりの16作品。とそのコメント。
[奇]
内田百� 「件(くだん)」・・・件とは、からだが牛で顔が人間の化け物
江戸川乱歩 「押絵と旅する男」
尾崎翠 「こおろぎ嬢」
金井美恵子 「兎」・・・兎ばかり食べている父と娘は?
[幻]
牧野信一 「風媒結婚」・・・のぞき見する理学士。
谷崎潤一郎 「化酸化マンガン水の夢」・・・さすがに谷崎になると古い。�ヌみにくいな。(冒頭)八月八日朝いでゆにて上京。予、家人、珠子さん、フジの四人なり。
川端康成 「花ある写真」・・・ぼくのいとこのお姉さんは美しい娘だったが、卵巣を取ってしまってからは。
横光利一 「春は馬車に乗って」・・・病気の妻と主人の話。
[凄]
森茉莉 「二人の天使」・・・森鴎外の長女。
武田百合子 「藪塚ヘビセンター」・・・武田泰淳の奥さん。
島尾伸三 「彼の父は私の父の父」・・・両親は作家の島尾敏雄、ミホ。
[彗]
向田邦子 「耳」・・・この人の文章は好きで�キ。(冒頭)耳の下で水枕がプカンプカンと音を立てている。氷は疾うに解けている。頭を動かすたびに、なまぬくい水がふなべりを叩く波のように鼓膜に伝わってくる。熱は下がったらしい。
三浦哲郎 「みのむし」・・・入院している婆さん・たけが一日退院して自宅の農家に帰ると、爺さんは・・・。
宮本輝 「力道山の弟」・・・面白い★★★★★
田辺聖子 「雪の降るまで」
吉田知子 「お供え」
金井美恵子
タマや 河出文庫文藝コレクション ★★★☆☆
目白四部作「文章教室」「タマや」「小春日和」「道化師の恋」(「彼女たちについて私の知っている二、三の事柄」を入れると五部作)の一つ。猫と人間の同じところを巧みに描くとともに、それぞれのインテリ度も垣間見せる。金井さんのだらだらとした文体も、三作読んだおかげか、ようやく慣れてきた。あまり、考えずに、文体について読んでいくと、時々、ふり返って、読み直さなくてはいけない。が、一気に読み進んだ方が、それぞれの理不尽さや身勝手さや我ままさが伝わってきて面白い。
アレクサンドル(元ポルノ男優でハーフ)がいきなり主人公夏彦のところにやってきて、妊娠した猫・タマを置いていく。また、アレクサンドルのお姉さんと言われる恒子さんは、人気者で、彼女が妊娠したということで、彼女をめぐる男たち(江古田の生け花の家元の江崎さん・青山のビルの持ち主の森田・藤堂冬之)の騒動も面白い。もちろん、桃子や彼女のおばさんの作家や花子も登場。
川上弘美
真鶴 文春文庫 ★★★☆☆
時々、背筋がぞっとします。一人暮らしの方は、夜中に読むのをやめましょう。冒頭。「歩いていると、つい�トくるものがあった」
京(けい)の夫、礼が消息を絶ったので、京は娘の百(もも)と母親の女三人で暮らしている。京は仕事仲間の青茲(せいじ)との関係もあるが、やはり失踪した礼のことが気になり、なぜか、「ついてくる女」に導かれて、真鶴に行く。夢なのか、死との境なのか。こうした憑き物等を感じやすい人には、よくわかる小説ですか?
しかし、文章はうまい!
「蛇を踏む」で芥川賞受賞。1996年。
堀江敏幸
雪沼とその周辺 新潮�カ庫 ★★★☆☆
七つの短編がそれぞれ少しは関連するが、ストーリーとしては繋がっていない。雪沼とその周辺という意味での関連か。「スタンス・ドット」、「イラクサの庭」、「河岸段丘」、「送り火」、「レンガを積む」、「ピラニア」、「暖斜面」。音、匂い、感覚・・・そういった何気ないものが所々にでてくる。読みやすい文章で、締めくくりに余韻を残す感じです。
谷崎潤一郎賞受賞。
スティーヴン・ミルハウザー
ナイフ投げ師 柴田元幸訳 白水社 ★★★★☆
12の短篇からなります。
「ナイフ投げ師」興行として、ナイフを投げる人のお話。極めて高度な仕事をする。また、ナイフによって、かすり傷を負うことが一つの栄誉に。
「ある訪問」9年ぶりに会う友達の結婚相手は、蛙?
「夜の姉妹団」夜な夜な集まる少女たちの噂。証言に食い違いが。
「出口」浮気現場に乗り込んできた夫、小男。早朝に人づてに呼び寄せられる。
「空飛ぶ絨毯」題名通りですね。
「新自動人形劇場」自動人形とはどうあるべきか?また、それを極めた職人は?
「月の光」なかなか情景描写の綺麗な短篇です�B「部屋中に月光が満ちてきていた。僕が焦がれた暗さ、かつて僕を包んでくれた闇はいまや隅に押しやられ、濃い、毛深いかたまりとなって転がっていた。僕は胸部に重みを、圧迫を感じた。僕は闇のなかに隠れたかった。必死の思いで目を閉じ、冬の夜の黒さ�vい描いた。静まり返った街が雪を覆い、玄関ポーチにはつららに光る黒い郵便箱の隣に氷割り棒が立てかけてあり、電信柱と金属の交通標識とが織りなす格子模様に沿って雪が何本も線を引いている――そしていつも、瞼を通して、夏の月光が闇を押し戻しているのが感じられた。(本文から)」
「協会の夢」協会が百貨店を買収して、究極の百貨店を作る。(地下19階�E地下4階だそうです。本文16�Sページ)。百貨店の描写もすごい。
「気球飛行、1870年」プロイセン軍に包囲されている我々二人は使命を持って、気球でプロイセン軍の背後に行こうとするが。
「パラダイス・パーク」究極の遊園地を造るサラビー氏。なかなかの遊園地論?
「カスパー・ハウザーは語る」17年間も地下牢に住んでいた少年の講演記録。
「私たちの町の地下室の下」究極の地下廊下を持つ街の住�lたち。
いずれも、究極を目指すお話です。少々、理屈っぽくて疲れるかな。着想は面白いと思います。
おんなの領分 文藝春秋編 文春文庫 ★★★★★
アンソロジー人間の情景2 古本で購入。1992年10月10日第一刷・「 」は冒頭の引用
T・かわいい女
美女 チェーホフ (原 卓也訳) 「今でもおぼえているが、まだ中学校の五年か六年だったころ、ドン州のバリシャヤ・クレープカヤ村から、・・・」
恥 太宰治 「菊子さん。恥をかいちゃったわよ。・・・」
モンテカルロの下着 久生十蘭 「巴里羅甸区は、その名もゆかしい紫丁香町という横町の細やかなホテルの三階に二人の日本のお嬢さんが住んでいた。」
U・あやうい時間
足にさわった女 澤田撫松 「かがめていた足を、少しばかり伸ばしたと思うと、足の先に、ふうわりと、柔らかい、温かい、肉体が触った。」
人妻 永井荷風 「住宅難の時節がら、桑田は出来ないことだとは知っていながら、引越す先があったなら、現在借りている二階を引払いと思って見たり。。。」
V・悲劇の予感
初代の女 飯沢 匡 「私と細君は、六年ほど前、いわゆる場ちがいの街に一年三カ月ばかり住んだことがある」
さかだち 柴田錬三郎 「作家というものは、どんな荒唐無稽な小説を書いても、程度の差こそあれ、必ずその中に自分の経験を織り込んでいるもののようである」
待ってい�髀浴@山川方夫 「寒い朝だった。その朝、彼は妻とちょっとした喧嘩をした。」
W・変幻自在
雨 北原武夫 「こんなに好きでいて、どうしてもっと愛せないんだろうと、時々私は考えるときがあった。春江が・・・」
黒髪 大岡昇平 「久子が南禅寺裏のその家に移ったのは、終戦後二年目の秋であった。」
X・女か蛇(じゃ)か
蛇 スタインベック 大久保康雄訳 「若いフィリップス博士が袋を肩にかけて鹹水池(かんすいいけ)を出たときは、ほとんど暗くなっていた。・・・」
二十九号の寝�艨@モーパッサン 青柳瑞穂訳 「エピヴァン大尉が往来を通ると、どんな女もふり返った。・・・」
Y・かかってきなさい
三人の肥った女 モーム 田中西二郎訳 「アンティーブに三人の仲のよい婦人が住んでいた。・・・」
晩菊 林芙美子 「夕方、五時頃うかがいますと云う電話があったので、きんは、一年ぶりにねえ�Aまア、そんなものですかと云った心待ちで、・・・」
みじかい話
三浦哲郎「じねんじょ」、十一谷義三郎「花束」、マクラオド「かなしき女王」、池田弥三郎「嫉妬について」「風変りな女」、長谷川�@是閑「髪結いのおとら」
解説 堀切直人
多和田葉子
犬婿入り 講談社文庫 ★★★★☆
初めて、読む作家です。93年にこの作品で芥川賞受賞。「ペルソナ」「犬婿入り」の2編。好きな文体です。「ペルソナ」は、ドイツに留学している道子(弟の和男と一緒に住んでいる)が、アジア人に対する偏見のようなものの中で、自分が日本人であることを見失う物語。「犬婿入り」は、小学生に人気の、「キタナラ塾」の先生北村みつこが、犬男の太郎さんが押し掛けてくる話。
笙野(しょうの)頼子
母の発達 河出文庫 文藝collection ★☆☆☆☆
母の縮小、母の発達、母の大回転音頭。解説によるとすっきりとするらしいが、男性にはわかりにくい?全然面白いとは思わなかった。笙野さんの他の小説を読んでみるか。
金井美恵子
彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄 朝日文庫 ★★★☆☆
とにかくセンテンスが長くて、なんか、愚痴を聞いているような気持ちになってくるので、しばらくは、我慢して読み進んでいこう!慣れてくると、そのセンテン�Xの長さが心地よい響きになって、登場人物の女性たちの生活感やものごとを見る視点の確かさにどきりとさせられる。主人公はアルバイトで塾の講師をしていて、紅梅荘というアパートに住む30歳独身の桃子。彼女の小説家のおばさん。親友の花子。そして隣人の岡崎さん。などなど。「小春日和」のその後。
デヴィッド・マドセン
フロイトの函 訳 池田真紀子 角川書店 ★★★★☆
2006年8月31日初版。どれが現実か夢か、また、夢の中の夢か。
表紙裏から「汽車ががたんと大きく揺れて停まった。その瞬間、ぼくは我に返り、そして自分がまったく記憶を失っていることに気づいた」
桜庭一樹
書店はタイムマシーン 桜��齊読書日記 東京創元社 ★★★★☆
2008年9月30日初版 読む順番が逆になりました。しかし、桜庭さんのこのシリーズは面白い。彼女の生活パターンも面白いが、やはり、軽いタッチの文章�ナ、活き活きと日常生活を伝えてくれる。そして、何より、すごい読書量。脱帽です。以下は、読んで�ンたいもの。
「月と六ペンス」(S.モーム)・・・画家ゴーギャンの生涯を描いた小説。
「楽園の道」(バルガス=リョサ)・・・ゴーギャンと祖母フローラを交互に描いた小説
「傘の死体とわたしの妻」(多和田葉子)・・・詩集
「爆心」(青来有一)・・・長崎の被爆地周辺で生きる人々を描いた短篇
「血族」(山口瞳)
「ポポイ」(倉橋由美子)
「氷」(アンナ・カヴァン)
豊崎由美
どれだけ読めば、気がすむの? アスペクト ★★★☆☆
341冊の書評。ひとつの章で三冊紹介。桜庭さんの軽いのりの本を読んだ後なので、短いながらもしっかりとした書評。基本的にお勧め本を紹介。したがって、以前、読んだ、対談での★評価がないので、少�オ、不満かな。というか、自分の判断で探せということ。
「直筆商の哀しみ」(ゼイディー・スミス)
「一階でも二階でもない夜―回送電車U」(堀江敏幸)
「驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記」(ディヴ・エガーズ)
「火山に恋して」(スーザン・ソンタグ)
「器用な痛み」(アンドリュー・ミラー)
「フロイトの函」(デヴィッド・マドセン)・・・購入
桜庭一樹
お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記 東京創元社 ★★★★☆
桜庭一樹さんの読書日記。2009年12月25日初版。彼女の読書日記は3冊目となります。これだけ、読んでいたら、面白い、好き嫌いが出てもいいと思うのですが、あまり、そうしたコメントはありません。あえて、書いていないのかも。まぁ、登場する編集者たちもよく読んでいる。最近、美術関係の本や図録ばかり読んでいたので、何か小説で面白いものはないかしらと思っていたら、桜庭さんのこの本が目にとまり、早速、購入。面白そうな小説がどんどんでてきますね。まぁ、彼女のように一日何冊も読める時間がないので、とうてい、追いつけませんが、いくつか面白そうなものがありました。
「白檀の刑」(モイエン)
「ドリアン・グレイの肖像」(オスカー・ワイルド)
「ユリイカ 別冊�@矢川澄子特集」(購入しました(�怐Oo^●)
「教科書に載った小説」
「第三の皮膚」(ジョン・ビンガム)絶版 創元推理文庫
「悪魔に喰われろ青尾蠅」(フランクリン・バーディン)
などなど。
桜庭さんと三村美衣さんの対談もいい。
何か読みたい本が見つからない、ときにこの本で探してみてください。
金井美恵�q
INDIAN SUMMER 小春日和 河出文庫 文藝コレクション ★★★★☆
なんとなくのんびりした時代のいわゆる少女小説。少女小説といえば、吉屋信子が第一人者と言われていますが、およそ、時代が違うので、そんな少女少女した小説ではありません。文庫は1999年が初版。読んだのは、2004年2版。1988年が単行版発行のようなので、20�N以上も前に書かれたもの。
時間はゆっくりと流れる。登場人物の桃子も作家になれそうな少女。また、その親友、通称、花子は少年のような風貌だが、なかなかの鋭さをもった少女。桃子が、作家であるおばの家に居候をさせてもらうところからはじまる。
構成は、この小説におばさんが書いた小説が2本と、エッセイ6本が挿入されています。小説自体の文体は平易ですが、おばさんの小説は結構難解かな。2002年にこの主人公たちの10年後を描いた「彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄」が発売されている。
大江健三郎
水死 講談社 ★★★★☆
難解といったら嘘になりますが、一連の大江氏の小説を読んでいる人と違う人では、随分、理解が違うのではないでしょうか。大江氏の初期の頃は少し読みましたが、「二百年の子供」以来、ご無沙汰です。夏目漱石の「こころ」も読んでおくといいでしょう。
主人公は小説家の長江古義人(こぎと・大江氏自身か)。若いころに書きかけた「水死」小説を書こうとする話。空想で何か行動をおこし水死する英雄化した父親の小説。古義人の妻千樫(ちかし)、妹のアサ、劇団「穴居人(ザ・ケイヴ・マン)・穴井マサオが主宰」の女優ウナイコ、その親友リッチャン。そうした女性は古義人には批判的である。古義人の息子アカリ(音楽愛好家で障害者)、その姉も、同様。国家や男に対抗する時代に担い手が彼女たち。
キーワード
赤革のトランク
死んだ犬を投げる
森の家
水死小説
晩年の仕事(レイト・ワーク)
鞘
メイスケ母
おんがくドリル問題集
マクベス問題
明治の精神
その他関連本
「みずから我が涙をぬぐいたまう日」 1972年
「セヴンティーン」第二部「政治少年死す」 1961年
「新しい人よ眼ざめよ」 1983年
「取り換え子(チェンジリング)」三部作
「臈(ろう)たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」
海底の潮の流れが
ささやきながらその骨を拾った。浮きつ沈みつ
齢(よわい)と若さのさまざまの段階を通り過ぎ
やがて渦巻にまき込まれた。
A current under sea
Picked his bones in whispers. As he rose and
fell
He passed the stage of his age and youth
Entering the whirlpool
T.S.エリオット 深瀬基寛 訳
高橋歩
FREEDOM FACTORY
A-WORKS ★★★★☆
正直、1400円払って、買って読もうか、立ち読みしようかと迷いました。写真と文章(短い!)なので、15分位で見て、読めるでしょう。「買った」と思ったのは、著者のサイン絵葉書がつい�トいたから。
と言うと怒られるかもしれませんがm(__)m
まぁ、たいしたことない言葉と思えばそうだし、わかりきっている言葉と思えば、そうでもある。でも、こういう言葉に耳を傾ける価値はあるのではないかと思ったのも事実である。
「よっしゃ!可能性がゼロじゃないなら、やってみるか」
ということかもしれません。行動こそ力なり。
立ち読みでもいいと思います(本屋さんごめんなさい)、ちょっと覗いてみたら?!
MARK ROTHKO 企画・監修 川村美術館 淡交社 ★★★★★
まだ本物の絵を見ていない。というか、マーク・ロスコの実物の絵を見たことがない。しかし、ある本でマーク・ロスコの絵を見たとき、ずっ�ニ、心の中で気になっていた。大型の絵で、普通の美術展では見られないので、早く、川村美術館で見てみたいと思っている。そうした初心者の私に打ってつけの図録+解説本でした。川村美術館のロスコ・ルームの写真、テート・モダン(英国最大の現代美術館)のロスコ展の写真といきなり、何かを語りかけ、吸い込まれそうな展示が掲載されている。2007年5月マーク・ロスコの絵は、オークションで、7,280万ドル(約87億円・当時のレート)で落札されたそうです。数色の絵具が塗られただけ�フ絵画にこれだけの値段が付けられたことは、今までなかったとのこと。驚く出来事です。
カラー図版としては30数枚ですが、展示風景やロスコの写真もあり、写真集としても楽しめます。評論・解説集としてもいいかと思います。
シーグラム壁画1958−1959
作品 1949−1969
・私にはロスコの声が聞こえる―ドリー・アシュトンとの対話 (林 寿美)
・光の影―マーク・ロスコ晩年のシリーズ (アヒム・ブルヒャルト=ヒューム)
・マーク・ロスコの生涯(村田 真)
・「対幻想」としてのカラー・フィールド(加治屋健司)
・保存修復から見たシーグラム壁画
・絵画と空間―ロスコ・チャペルの経験(林 道郎)
・資料編、ロスコの言葉、年譜、参考文献、キーワード、作品リスト。
ヴァージニア・ピッツ・レンバート 訳 小野寺玲子 二玄社 ★★★★☆
美の20世紀〈8〉モンドリアン
モンドリアンの画集を買うのは、初めてですが、以前から、なんとなく気になっていた画家でした。80ページと薄い冊子ではありますが、恐らく、モンドリアンがどんな画風の作家であるかは、すぐわかると思います。また、初期の頃の点描で描いたもの、あるいは、印象派�Iなもの、そして、キュビスム的な絵の紹介もあり、モンドリアンが自分の画風を確立していく様子も伝わってきます。図版は54枚ですが、写真やボルツマンの作品も含みますので、モンドリアンのものはもう少し少なくなります。モンドリアンがどういう人なのかと簡単に知りたい方には、解説も適切がと思いますが、詳しく彼のことを知りたい方には物足りなさはあると思います。入門書として見るのが一番だと思います。
ピート・モンドリアン(1872年〜1944年・オランダ生まれ)、新造形主義(ネオ・プラスティシズム)、芸術家グループ「デ・スティール」と関係。シリーズ物で税別で1600円。
ヘルター・ミュラー
狙われたキツネ 訳山本浩司 三修社 ★★★★☆
2009年ノーベル文学賞受賞。ドイツ系少数民族出身で、現在はベルリン在住。日本で読める彼女の作品はこれのみ。
ルーマニアのチャウシェスク独裁政治下の秘密警察監視下での物語。比較的に短い章から成り立つ小説。学校の先生のアディーナが主人公と言っていいであろうか?何人かの登場人物をしっかりと押さえて読んでいないと、やや、混乱するかもしれません。パウルとパヴェルはもちろん別人。アディーナの親友はクララ。クララの彼はパヴェル。アディーナの元彼はパウルで、今の彼氏はイリエ。その他は、あまり人格がないような、あるような人たちが登場します。特別、ハラハラドキドキする物語ではないが、読んでいるうちに、こういう時代に生きていなくて、良かったと感じます。1997年の新装版(再刊09年11月)。キツネは色々と�テ喩的に使われている。
美術手帖編
現代アート事典 美術出版社 ★★★★☆
アクション・ペインティング、抽象表現主義、戦後具象、アール・ブリュット、インターメディア・アート、反芸術、フルクサス、ポップ・アート、オプ・アート&フォト・リアリズム、
ミニマリズム/ポスト・ミニマリズム、ランド・アート、60’sレボリューション、コンセプチュアリズム、サウンド・アート、ボディ・アート&パフォーマンス、フェミニズム&ゲイ、
ポストモダン、ニュー・ペインティング、グラフィティ・アート、ニュー・スカルプチャー、ビデオ・アート、メディア・アート、ネオ・ポップ/シミュレーショニズム、YBA、
ネオ・コンセプチュアル・アート、インテリア・アート、フギュラティヴ/アブストラクト、未成年、ドイツ絵画・写真、90’sフォトグラフティ以降、多文化主義、中国パワー、
美術館×国際展×パブリックアート、スーパーフラット、J回帰、リアル・ファンタジー、ポリフォニー/9・11以降、マイクロポップ等
とてつもなく広い範囲の現代アートの説明。項目別に、谷川渥、藤原えりみ、保坂健二朗、平芳幸浩、小出由紀子、�s∫シ之、暮澤剛巳、楠見清、土�ョ誠一、市原研太郎、
畠中実、岡村恵子、松井みどり、伊東豊子、大森俊克、片岡真実、藤森愛美、飯沢耕太郎、難波祐子、福住廉、粟田大輔が解説している。文字も小さく、150ページ�ルどの本であるが、読み応え充分です。カタカナ表現が多く、また、いわゆる絵画と�ヘ大きくかけ離れている部分もあるので、理解しがたい反面、また、こういう分野もあるのかと面白くもあります。価格が2000円は当初高いと思い�ワしたが、読んでみると、これくらいはするかなと思います。カラー。なお、準備体操編として、谷川渥氏がモダンアートから現代アートについて、簡単に解説しています。
ジョン・トンプソン
西洋名画の読み方2 19世紀中期から20世紀の傑作180点 監修 神原正明、訳 内藤憲吾 創元社 ★★★★★
9月ももうすぐ終わろうとする頃に、「美術検定」というものを知り、受験締切の30日にぎりぎり申し込みました。公式テキストや過去問を読んでいると、どうも知らない画家が多くて、暗記するのもつまらない。そこで、以前、西洋名画の読み方@を買っていたのを思い出し、パラパラと読み始めた。そして、この本のAがあるのを知り、アマゾンの中古で購入。
写実主義のギュスターヴ・クールベから始まり、アンディ・ウォーホルで終わる、この本は、19世紀中ごろから約130年の主な画家を網羅しています。画家別ということではなく、筆者の目でほぼ年代順に書かれていて、とても面白い本です。
体系的に美術史を勉強したい方には向いていないかもしれませんが、画家がそれぞれ、どういう人たちとかかわり、どのように画風が変わっていったかなども、詳しく書かれています。
カラーも綺麗で、税別で3800円は高価ではありますが、お得感はあります。そして、何より、美術史のテキストの無味乾燥さが幾分か和らいだということです。
残念ながら、11月15日の受験当日に緊急な用事が入り、受験できなかったという後日談もありますが、@もあわせて、もう一度、読みたいと思います。
林 洋子
藤田嗣治 手しごとの家 集英社新書ヴィジュアル版 ★★★★☆
画家藤田嗣治の妻、君代さんの死後、藤田の遺品の一部が公開されたのを機に、画家藤田の生きた時代について、写真をふんだんに取り入れて書いたもの。ヴィジュアル文庫なので、ほんの数時間で読める本。藤田は、絵を描くだけではなく、皿の絵付けや、額や箱の制作、あるいは、家のコーディネートをするなど多才さを発揮している。一風、変わった画風の藤田だが、彼の絵を一度見た人は、乳白色の肌を覚えているだろう。また、空想の少女の絵は独特である。
藤田の研究者林洋子さんの著書。08年に出版した「藤田嗣治 作品をひらく 旅・手仕事・日本」はサントリー学芸賞他を受賞。内容的には、いいのだが、1100円の価格からすると、少し、物足りない。もっと、研究者らしい視点と内容があってもいいかなと思う。
キプリング
キプリング短篇集 橋本 槇矩 訳 岩波文庫 ★★★☆☆
「ジャングル・ブック」の著者と知られるキプリング(1865年〜1936年)の短篇集。「領分を越えて」、「モロウビー・ジュークスの不思議な旅」、「めぇー、めぇー、黒い羊さん」、「交通の妨害者」、「橋を造る者たち」、「ブラッシュウッド・ボーイ」、「ミセス・バサースト」、「メアリ・ポストゲイト」、「損なわれた青春」。9つの短篇では、個人的には、「領分を越えて」が一番、異国情緒もあり、面白かった。「モロウビー」も、当時のインドの社会階層のようなものも出てきて、考えさせられる。「めぇー、めぇー」も、黒い羊の意味が、厄介者といい意味で�A白人の子供を預かった家族が、その白人の子供をいじめる話。この最初の3篇は面白いが、他のものは、どうもぱっとしないので、★3つ。ただ、「橋を造る」は、インドの神さま出てくるので、その知識があるともう少し理解ができるでしょう。
<領分を越えて・本文冒頭から>
恋に身分の隔てなく、眠りに床の区別なし。恋をもとめて道冥(くら)し ヒンズーの諺
どんなことがあろうとも、人は自分の身分、人種、素性を越えるべきではない。白人は白人のもとへ、黒人は黒人のもとへ行くべきだ。そうすればどんな災難が降り懸ろうと、あわてふためく必要もなく、不意をつかれることもなく、やり過ごせるというものだ。
これからお話するのは、自ら承知で社会の常識の埒を越え、痛い目にあった男の物語である。
アーサー・ミラー
セールスマンの死 倉橋 健 訳 ハヤカワ演劇文庫 ★★★★☆
桜庭一樹さんが「こ、これはとても他人事(ひとごと)とは思えない」とある新聞に感想があったので、久しぶりに戯曲を読んでみました。舞台は、アメリカの地方都市の、セールスマン・ウイリーの話。頑張ればよい暮らしがと信じて働いている親父とその妻リンダ。そして、30過ぎになっても、自分探しを続ける不甲斐ない兄ビフとその弟ハッピー。そして、破滅。
1915年〜2005年。ニューヨーク生まれ。女優マリリン・モンローと結婚。同作(1949�N)は、トニー賞、ピュリッツァー賞を受賞。
<本文から>
ビフ お父さん!ぼくはね、ひと山十セントのつまらない人間なんだよ、あんただってそうだ!
ウイリー (もう感情を抑えることができなくなって、くってかかる)おれはひと山十セントなんかじゃない!おれはウイリー・ロマンだ、おまえはビフ・ローマンだ!
ビフはウイリーのほうへ行こうとするが、ハッピーにさえぎられる。激怒のあまり、ビフは今にも父親に襲いかかりそうな気配である。
ビフ おれは人の頭に立つような人間じゃないんだ、あんただってそうだ。足を棒にして歩く注文とりにすぎないんだ。とどのつまりは、ごみ箱にほうりこまれるのがおちさ!おれは一時間一ドルの人間だ! <中略> どだい、�ィほめにあずかるような物を持って帰れる人間じゃないんだ、そんなことを期待するのはやめることだな!
ウイリー (ビフに面と向かって)まだ執念深く、恨んでいやがるな!
バルザック
グランド・ブルテーシュ奇譚 宮下志郎 訳 光文社古典新訳文庫 ★★★★☆
バルザックは、「ゴプセック・毬打つ猫の店(岩波文庫�j」を読んだので、2冊目となります。短編4つと評論1つ。題名にもなっている、「グランド・ブルテーシュ奇譚」は�A古い屋敷で起った何とも恐ろしい話。ネタバレに�ネるので、書かないほうがいいと思いますが、妻の浮気が原因でおこる猟奇的事件。「ことづて」は、年上の女性を彼女にしている、初めて出会った二人の男性の話。これまた、面白い。「ファチーノ・カーネ」は、目の見えないクラリネッ�g奏者の話。「マダム・フィルミアーニ」は、風変りな作品で、フィル�~アーニ夫人について、パリの色々な人たちが語ることから始まる。「実証主義者」「遊歩者」「リセの生徒」「気どり屋」「上流人士」「反論人種」「羨ましがり�ョ」ほかが登場する。青年オクターヴが、遺産をつぎ込んで愛す人妻の正体をしろうとする話。評論は、「書籍業の現状について」。
バルザックの人柄は、解説や年譜が充実しているので、参考になる。小説家ではあるが、結構、何かに投資して、失敗し、借金取りに追われたり、パトロンに面倒を見てもらったりと、なかなか面白い人物のようだ。1799年〜1850年(51歳)。フランス。
G.ガルシア=マルケス
愛その他の悪霊について 旦 敬介 訳 新潮社 ★★★★★
一気に読んでしまいました。単行本で約180ページです。マルケスの中では、読みやすさという意味では、一番(かどうかはまだわかりませんが、私が読んだ中では)でした。
テーマも面白い。評価は分かれるかもしれませんが、面白い小説だと思います。値段がもう少し安ければいいのですが(*_*;
教会、修道院(サンタ・クララ)、悪霊、異端尋問、狂�「病。
司教(ドン・トリビオ・デ・カセレス・イ・ビルトゥーデス)、修道院長(ホセファ・ミランダ)。
サグンタ(インディア女)。
怪しい医者アブレヌンシオ。カサルドゥエロ(イグナシオ)伯爵とそのベルナダ夫人(商人の娘)、そしてその不思議な娘シエルバ・マリア(アフリカ名マリア・マンディンガ)。そしてカエターノ・デラウラ神父。
以下、ネタバレあり。気になる方は読まないでください。以下、本文から。
シエルバ・マリアの髪は独自の生命を得てメドゥーサの蛇のように逆立ち、口からは緑色の涎が、そして、邪教のことばの罵詈雑言が果てることなくあふれ出した。デラウラは十字架を振りかざして、彼女の顔に近づけ、恐怖のさなかで叫んだ―――
「そ�アから出ろ、何者なのか知らぬが、地獄のけだものよ、出ろ」。
予告された殺人の記録 野谷 文昭訳 新潮社 ★★★☆☆
とにかく、ラテン系やアラブ系の名前に慣れないと、読みづらいです。以下、登場人物をざっと整理しましたが、抜けている、間違っている場合もあります。
なぜ、殺人がという動機は、日本人の感覚ではまずわからないと思います。
登場人物。
サンティアゴ・ナサール(主人公21歳)、その母親プラシダ・リネロ、その父親イブラヒム・ナサール(死亡)、賄い婦ビクトリア・グスマン、その娘ディビナ・フローナ、
主人公の友人クリスト・べドヤ(医学生)、主人公の婚約者フローラ・ミゲル、その父親ナヒル・ミゲル、
わたし(語り・主人公の友人)、わたしの姉マルゴ、わたしの妹尼僧、わたしの弟ハイメ、わたしの母親ルイサ・サンティアガ(主人公の名付けの親・プーラ・ビカリオとは親類)、
父親、わたしの弟�泣Cス・エンリーケ�Aメルセデス・バルチャ(わたしが結婚を申込んだ女性)
アンへラ・ビカリオ(前日結婚し�スが、実家に戻される)、ふた子のパブロ・ビカリオ(兄)、ペドロ・ビカリオ(弟)、彼らの父親ポンシオ・ビカリオ(彫金師)、
彼らの母親プーラ・ビカリオ(わたしの母親と親類)、アンへラの母親プリシマ・デル・カルメン、プルデンシア・コテス(パブロ・ビカリオの許婚)
司教、カルメン・アマドール神父、ドン・ラサロ・アポンテ大佐(町�キ)、
バヤルド・サン・ロマン(30歳位・アンへラと結婚するが)、彼の父親ペトロニオ・サン・ロマン将軍、彼の母親アルベルタ・シモンズ(キュラソー島出身混血)、妹たち
マグダレナ・オリベル(同じ船に乗り合わせた女性)、バヤルド・サン・ロマンの独身者用下宿の女将、
シウス(彼に無理やり家を売らされた寡)、ヨランダ・デ・シウスの霊、ディオニシオ・イグアラン(医師・わたしの母の従兄)、マグダレナ・オリベル(下宿屋)
彼らが待ち構えている近くの牛乳屋の女主人クロティルデ・アルメンタ(店)、その夫ドン・ロヘリオ・デ・ラ・フロール(パブロに剃刀を貸す)、
マリア・アレハンドリーナ・セルバンテス(慈悲の店?経営)、ヤミル・シャイム(�X)
弁護人、ファウスティーノ・サントス(肉屋)、ビクトリア・グスマン(肉屋)、レアンドロ・ポルノイ(警官)、オルテンシア・バウチ(ビカリオ兄弟を見た女性)、
オリテンシス・バウテ、国境守備隊中尉(フローラと駆け落ち)、アウラ・ビリェロス(産婆)、プロスベラ・アランゴ(アンデス出身の女)、
ポンチョ・ラナノ(隣人)、その長女アルヘニダ・ラナノ
百年の孤独 鼓 直訳 新潮社 ★★★★★
実は、数年前に「百年の孤独」が丸善で平積みされていました。そして、その時にこの本を手に取って、購入しようかどうか迷って、あまりの分厚さと、家系図を見たときの、登場人物のややこしさに恐れをなして、購入を諦めました。数日後、手にしていたのは、「百年の誤読」という本でした。これは、百年の名作といわれているものを、批評家(豊崎さんと岡野さん)二人で★のつけっこをするというとても面白本でした。もちろん、ふたりとも「百年�フ孤独」は★5つでした。その時から、ずっと読みたいと思いつつ�焉A圧倒的な分量で迫ってくるこの本に恐れおののいて、読むことを躊躇っていました。南米、ラテンアメリカ文学のフリオ・コルタサルの短篇「悪魔の涎」を読んで、しばらく忘れていたガルシア・マルケスを思い出し、その短篇「落葉」を読み、この本を読むきっかけとなりました。
ホセ・アルカディオ(ブエンディア)とウルスラ(イグアラン)のいとこ同士の夫婦から始まるブエンディア一族の百年の栄枯盛衰史。ウルスラの伯母の一人とホセ・アルカディオ・ブエンディアの伯父の一人とが結婚して生まれたのは、軟骨のしっぽがある子(豚のしっぽ)であったので、この二人の結婚は一族から反対された。しかしながら、それを押し切って二人が結婚したことから、この二人の家族の百年の歴史が、まるで、メルキアデスの予言通りに事が進んでいくかのようにはじまる。
時間軸が前後したり、歴代の男性の名前が似ていたりするので、家系図を見ないと、時々、いったい彼は誰だったかと迷ってしまう。逆に、女性は、ウルスラ、レベーカ、フェルナンダ、サンタ・ソフィア、アマランタ・ウルスラ等�ニ、個性がはっきりとしている。時間軸を取り、家系図を無視すると、ある意味では、いつの時代も、繰り返し、同じ事をしていることになるのかもしれない。そして、兄弟同じ妾さんをもち、近親相姦を繰り返すの�焉A百年という長い時間の中では虚しく感じられる。
舞台の中心となる町、この一族が切り開いたマコンド(知名)は、南米のどこかの町であり、バナナ工場ができたり、戦争に巻き込まれたりしながら、結局は衰退の道をたどっていく。いったい主人公は?ホセ・アルカディオとウルスラの二男のアウレリャ�m(大佐)かと思っていたが、ウルスラとアウレリャノ(大佐)の妾のピラル・テルネラ(長男のホセ・アルカディオの妾でも� る。また、彼との子がアルカディオで一族をつないでいく)なのだろうか。単行本470ページの長編なので、夏休みにでも読めば良かったかな。
落葉 他12篇 高見栄一他訳 新潮社 ★★★☆☆
三度目の諦め、エバは猫の中に、死の向こう側、三人の夢遊病者の苦しみ、鏡の対話、青い犬の目、六時に来た女、天使を待たせた黒人・ナボ、誰かが薔薇を荒らす、イシチドリの夜、土曜日の次の日、落葉、マコンドに降る雨を見たイサベルの独白。
1927年、コロンビアの寒村アラカタタ生まれ。有名な著書は「百年の孤独」。
テーマは、死や孤独、そして恐怖。「落葉」以外は短編。死�ナ棺桶の中で生きている話。血管の中に虫が住み着いているように感じる美貌の女性。死ぬ&生きる兄弟の話。三人の夢遊病者。鏡の向こうの自分。夢の中で、「青い犬の目」と唱えて、会う二人。いつも6時に来る女が。。。馬に蹴られた黒人ナボ。イシチドリに目をやられた。鳥に襲われる町。
落葉は長編。前文に「アンチゴネ」から。「ポリュネイケスの亡骸については、市民は何人であれ、埋葬してはいけない、嘆き悲しんでもいけない、それどころか、涙もそそがずに野ざらしのままほっておけ。。。」
語り部が頻繁に変わるので、馴染むまで読みづらく、混乱する。同じ話を視点を変えて、話しているので、物語にスピード感はないが、立体感は増している。そんな小説です。
ファン・ルルフォ
燃える平原 杉山晃訳 叢書アンデスの風 水声社 ★★★☆☆
超短編。おれたちのもらった土地、コマドレス坂、おれたちは貧しいんだ、追われる男、明け方に、タルパ、マカリオ、燃える平原、殺さねえでくれ、ルビーナ、置いてきぼりにされた夜、北の渡し、覚えてねえか、犬の声は聞こえんか、大地震の日、マティルデ・アルカンヘルの息子、アナクレト・モローネス。
著者は1917年メキシコのハリスコ州サユーラに生まれる。小説は2作のみ。「ペドロ・パラモ」(1955年)。〜1986年死去。
中野京子
名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 光文社新書 ★★★★☆
著者の本は、「怖い絵」に続いて2冊目。残念ながら、怖い絵は思ったより、面白くなかった(ごめんなさい)ので、この本も迷ったが、世界史が苦手なので、これによって、少しくらいは、世界史も理解できるかと思い、購入。正直なところ、よけいに世界史がわからなくなった(;一_一)
しかしながら、ハプスブルク家の家系図を見ながら、読んでいくうちに、王家の血の濃さや残虐さ、あるいは、悲劇といったものが、少しずつ、理解できたのも事実かもしれない。
西洋史に興味をもつきっかけになることは、請け合いである。そうした意味では、★5つでもいいのですが、掲載されている絵画的魅力に個人的には今一なので、4つとしました。
10章のトーマス・ローレンス「ローマ王(ライヒシュタット公)」の幼少の絵画は、悲しげであるがとてもいい。ライヒシュタット公は、ナポレオン一世とマリー・ルイーズ(ハプスブルク家)の息子。
ロベルト・ボラーニョ
通話 松本健二訳 白水社 ★★★☆☆
大きく三つに分けて、�P.通話、2.刑事たち、3.アン・ムーアの人生。
「通話」の中に、短編が、センシニ、アンリ・シモン・ルプランス、エンリケ・マルティン、文学の冒険、通話。「刑事たち」には、芋虫、雪、ロシア語をもう一つ、ウィリアム・バーンズ、刑事たち。「アン・ムーアの人生」には、独房の同志、クララ、ジョアンナ・シルヴェストリ、アン・ムーアの人生。
著者は、チリのサンティアゴ生まれ。1953年〜2003年。1968年に一家でメキシコに移住。青年時代は、エルサルバドル、フランス、スペインなどを放浪。1984年小説家としてデビューし、1998年に「通話」でサンティアゴ市文学賞、1999年ロムロ・ガジェゴス賞を受賞。没後に遺作の「2666」の大長編が刊行。
ゴールズワージー
林檎の樹 渡辺万里訳 新潮文庫 ★★★★☆
青春時代の純愛悲劇?物。イギリスの上流階級が盛んな時代である。主人公の大学生アシャーストが、友人との旅の帰路に、足を痛めたために、立ち寄った農家の娘に恋をする物語であるが、とても、純粋ではあるが、時代背景である上流階級やイングランド、ウエー�泣Yといった民族問題を結局は越えられないという悲劇でもある。
ただ、翻訳の一部にあまりに古臭い、方言がありますが、いくら、英語の方言としても、無理とこんな風に訳さなくてもと思いますが、初版が昭和28年だから仕方ないかなとも思います。農家のナラコウム夫人が、アシャーストに、「果樹園の向こうにながれがありますだ、しゃがんだってかぶらないくらいですけんど!」話しますが(・・?
黄金なる林檎の樹。The apple-tree, the singing and the gold. マーレイの意訳によるギリシャ悲劇「ヒュポリュトス」の中で、悲恋の王妃フェードラが絶望の果てに自殺しようとして、退場する際に歌われるコーラスの一節。この小説のテーマかつシンボル。
作者は、1867年ロンドン郊外の裕福な家庭に生まれる。
『ラロックの聖母』研究会
ラロックの聖母―ダ・ヴィンチが残した幻の一枚か!? ザベストハウス123 幻冬舎 ★★★☆☆
新幹線に乗るので、暇つぶしに読む本がないかと駅の書店で見つけた本。写真と文字が大きいので、すぐ読めます。しかし、内容は、やはりテレビ用。面白いが、追及不足、結論なしのもの。以前、「PEN」でダ・ヴィンチの特集がありましたが、その本の方を読む方がいいと思います。立ち読み用といったら、怒られますが、1365円は少し高い感じ。
ただ、ラロックの聖母が、フランスの片田舎の古物屋で見つかり、3万円で購入し、それが、あるいは、ダ・ヴィンチの作品かというところは、スリリングであるし、まだ、可能性があるので、これからの話題になることは間違いない。
ラロックの絵は、汚れて見づらいが、確かに、ダ・ヴィンチの絵に似ている(●^o^●)
→ダ・ヴィンチの絵かも(・・?
フリオ・コルタサル
通りすがりの男(ラテンアメリカ文学選集) 木村榮一ほか訳 現代企画室 ★★★★★
初版第一刷は1992年。初版第二刷 2006年で500部だそうです。
光の加減、貿易風、二度目、あなたはお前のかたわらに横たわった、ボビー�フ名において、ソレンティーナ・アポカリプス、舟 あるいは新たなヴェネツィア観光、赤いクラブとの会合、メダル 一枚の裏表、通りすがりの男、マンテキーリャの夜。11の短篇からなる。「舟、あるいは新たなヴェネツィア観光」、「メダル 一枚の裏表」が特にいい。表題の「通りすがりの男」は、現実と夢がまた交錯す�髦bだが、どちらかいうと、先の2篇の方が、面白く、本の題にしてもいいかなと感じました。
愛しのグレンダ 野谷文昭訳 岩波書店 ★★★★★
T猫の視線、愛しのグレンダ、トリクイグモのいる話、Uノートの書付、二つの切り抜き、帰還のタンゴ、Vクローン、グラフィティ、自分に話す物語、メビウスの輪の10の短篇からなる。全体的に、読んでいるうちに、わからなくなる。迷路か、騙しか、迷いか。面倒がらずに、最初から読み直しみると、ああ、そうかそうかと思って、読んでいると、また、あれ?語り手や主人公や登場人物が、どうも、交錯してしまう。よく読まないと。
この中で、特に、面白いと思ったのは、「ノートの書付」、「グラフィティ」。「ノートの書付」は、地下鉄の中に住んでいる人たちがいるという物語で、語り手の勘違いかもしれないが、現実かもしれないという短篇。「グラフィティ」は、アルゼンチンの民主政府が倒されたという時代背景があるが、落書き(色チョ�[クを使った画)を描く主人公と、彼の落書きの横に描く彼女、その姿は見えないが、お互いメッセージの受け取りをするというもの。
「メビウスの輪」は、やや難解で、解説によると、女性像に対して、問題があるとの指摘もあるものだそうです。しかし、感覚的によむといいでしょう。
いずれも、何度か読み直すと、また、違った読み方ができると思います。少し、ざっと読みすぎたかな。
コルタサル短篇集�@悪魔の涎・追い求める男他八篇 木村榮一訳 岩波文庫 ★★★★★
続いている公園・パリにいる若い女性に宛てた手紙・占拠された屋敷・夜、あおむけにされて・悪魔の涎・追い求める男・南部高速道路・正午の島・ジョンハウエルへの指示・すべての火は火の短篇からなる。追い求める男と南部高速道路は短篇の中でも中篇に入るが、その他は、極めて短い短篇。現実の先に非現実、超現実がある。
<以下、ネタバレもあるので、気になる方は飛ばしてください>
続いている公園は、読んでいる小説が現実と繋がる。パリにいる若い女性に宛てた手紙の主人公は、口から兎を生む?占拠された屋敷のカップルは、存在しているのかいないのかわからないものに段々と屋敷を占拠され、出ていく。あおむけにされての主人公は、事故で入院するが、夢なのか、森林で逃げ隠れている。どちらが現実なのか。悪魔の涎は、少年と細身のブロンドの女、そして車に乗った男の写真を撮り、大きく現像した写真の世界と現実の世界が結びついてくる。南部高速道路は、高速道路での渋滞中に、前後左右でグループ化され、運命共同体のようになっていく、これも、�サ実にはありえないようで、起こりそうなお話。正午の島は、飛行機の男性乗組員が、飛行中に度々見える島に魅せらて、その島に住もうと思い出かけていくが。。。ジョンハウエルの指示は、観客のライスが、いきなり、劇場の人に連れて行かれ、エバの夫役をやらされるが。。。すべての火は火は、拳闘士が戦う闘技場(総督の妻イレーネが好�モを寄せるマルコが戦う)と、ローラン、ジャンヌとソニアの三角関係の話が、混線する。
追い求める男だけは、これらの短篇とやや違った、ある意味では、普通の小説に近いかもしれない。主人公は、サックス奏者のジョニー、そして彼の伝記を書いているブルーノとの関係で話が進む。
コルタサル(1914〜84)はベルギーのブリュッセル生まれだが、両親はアルゼンチン人。
1960年〜80年代にかけて、いわゆるラテンアメリカ文学ブームがおこったとのこと。ルイス・ボルヘス、アレホ・カルペンティエル、ガルシア・マルケス、ホセ・ドノソ、カルロス・フェンテス、リョサ、プイグなどが
辻 惟雄(のぶお)
奇想の系譜 又兵衛−国芳 ちくま学芸文庫 ★★★★☆
図版がカラーであれば、★★★★★だと思います。浮世絵の発生のまえぶれとなった(藤岡作太郎氏の見解)岩佐又兵衛(1578〜1650年)。学者肌(儒教グループとの交友あり)で、世俗から離れて絵に没頭する狩野山雪(1590〜1651年・寒山拾得図はグロテスク)。彩色�謔竦�n画で優れた伊藤若冲(1716〜1800年)。岩や建物や樹木をキュビスムもどきの幾何学図形に分解しようとする曽我蕭白(グロテスクな絵も多い・1730〜1781年)。大画面を縦横自在に使う線描の達人、「鳥獣戯画」や「将軍塚絵巻」以来の、線の芸術としての日本の絵画の伝統を上方の庶民的な世界に再現した長沢蘆雪(1754〜1799年)。マンガの発祥、近代マンガの歴史といわれる戯画シリーズ「荷宝蔵壁のむだ書」をかいた歌川国芳(くによし・1797〜1861年)。この6人の画家についての奇想の系譜を語る。
初版は、1970年3月に美術出版社から出版され、1988年にぺりかん社からも刊行された。
奇想の江戸挿絵 集英社新書 ヴィジュアル版 ★★★☆☆
上記の本が有名な画家ばかりとすれば、この本は、無名も含めておどろおどろしいものも紹介。結果としては、北斎が多く入ったと筆者の弁。気楽に江戸の、ちょっと恐い、気持悪い文化を楽しむには、いいかな。ただし、サロメのような版画もありま�キので、そうした絵の苦手な方は、読まない方がいいでしょう。図版は100だが、ほとんどが白黒。
速水 豊
シュルレアリスム絵画と日本 イメージの受容と創造 NHKBOOKS ★★★★☆
板橋区立美術館で開催していた「日本のシュルレアリスム」という企画展を見て、日本にこんなにシュルレアリスムの画家がいたのかと驚きました。
古賀春江、福沢一郎、三岸好太郎と飯田操朗の絵の分析を行い、それぞれ、シュルレアリスムの影響を検証している。古賀春江については、デ・キリコの影響を受けたも�フや、マックス・エルンストの影響を受けた「漁夫」、コラージュ(collage 糊付け)風、モンタージュ(montage つなぎあわせる)風に組み合わせた「海」や「鳥籠」(1929年)について詳しく分析している。「科学画報」という雑誌から航空船・潜水艦�フ写真、当時の写真雑誌から女性の写真等を組み合わせて、作品を作っているが、雑誌などの既成のものを、変えることなく、絵にする古賀の手法は、無個性であるが、それは古賀が目指したものでもあった。
「ここに作者が居ると思わせるものはまだ純粋ではない」(古賀)
福沢一郎についても、例えば、「無敵の力」(西洋人の男性三人が奇妙に重なり合�チて座っている横に屈みこんだ女性がいる絵)は、マックス・エルンストの百頭女の「すると水いらずのささやかな祝宴がはじまる」(1929年)から切り取って、絵にしたものである。エルンストのこの絵も、実は、科学雑誌の「ラ・ナチュール」の挿図「電気と平衡の法則」を使用したものであった。その他、多くの絵の分析をしている。
バルザック
ゴプセック・毬打つ猫の店 岩波文庫 赤530-10 訳 芳川 �ラ久 ★★★★★
教科書では知っていたが、読んだのは初めてのバルザックの小説。日本人が読みやすいように改行をうまく使った(バルザックの小説は改行が少ないらしい)新訳なので、とても読みやすかった。また、書かれた時代は、1830年と180年も昔のことなの�ナ、フランスの貴族社会の背景を理解したほうがいいかもしれない。そういう意味では、訳者の解説から読んだ方がよかったかもしれない。ゴプセックは、登場人物をしっかりと押さ�ヲて読んでいかないと、時々、混乱するかもしれません。
「ゴプセック」は、1829年から1830年のグランリュウ子爵夫人のサロンでの出来事から始まる。娘のカミーユが恋するレスト−伯爵の子息について、子爵夫人の代訴人デルヴィルさんが、高利貸しゴプセックの話題を中心に語る。
解説のよると、「ゴプセック(←パパ・ゴプセック←身の過ちの危険・タイトル変更)」→「ゴリオ爺さん」→「人間喜劇・娼婦の栄光と悲惨」と話が受け継がれていく。
ラシャ(ポルトガル語:raxa・毛織物の一種)を売る「毬うつ猫の店」の経営者ギョーム氏には二人の娘、ヴィルジニー(28歳)とオーギュス�`ーヌ(18歳・神が授けた子・両親がわからない)がいたが、画家のテオドール・ド・ソメルヴィユは、妹に恋をし、彼女の絵を描き、当時の官展(サロン)で大評判となったことから、オーギュスチーヌ嬢と結婚することになるが、その結末は。
車谷 長吉
飆風(ひょうふう) 文春文庫 ★★☆☆☆
桃の実一ヶ・密告(たれこみ)・飆風(ひょうふう)の三つの短編と「私の小説論」からなる。完全な私小説かな。特に飆風の主人公は潔癖症すぎるのが、読んでいて、疲れてしまいます。妻の詩も今一。。。
吉屋 信子
黒薔薇(くろしょうび) 河出書房新社 ★★★☆☆
中短編3本とエッセー?(若き魂の巣立ち)。久しぶりに読みましたが、相変わらず、綺麗な文章と文体です。女性よ、もっとしっかりしようという気持ち、叫びが、伝わってきます。当時(昭和初期?)としては、相当、進んでいる女性を描いているのでしょう。綺麗、美人が出てくるのもいつも通りです。黒薔薇(中編)、鉛筆、夏草(短編)の三篇からなる。静かなるも、激しい気持の起伏が伝わるいい小説だと思います。
長岡 弘樹
傍聞き(かたえぎき) 双葉社 ★★☆☆☆
短編4本。迷い箱・899・傍聞き・迷走。警察・消防ネタ。�ヌみやすいが、まあ、なんてこともないな。
朝倉 かすみ
田村はまだか 光文社 ★★☆☆☆
演劇か、あるいはテレビドラマ向けか?同窓生が二次会で、田村を待ちながら、昔話に花を咲かせる。テンポはいいが、少し、くどい。
田山 花袋
蒲団 新潮文庫 ★★★☆☆
やはり、「蒲団」も読んでおこうと購入。110ページ。すぐ、読めました。さすがに、蒲団の打ち直しを読んだ後なので、同じものを読んでいる気になりました。表記がすべて新仮名になっているので、とても読みやすい。この時代の服装の描写だけを変えたら、十分、現代小説としても成り立ちそうです。また、筋書きも、現代風かもしれません。
重五右衛門の最後 ★★☆☆☆
誰からか聞いた話を小説風にした感じ。学生時代に上京してきた友人を、数年後、信州に訪ね、そこで、悪党の重五右衛門とその妻?の最後を見るお話。新潮文庫の「蒲団」に掲載。
中島 京子
FUTON 講談社文庫 ★★★☆☆
知人から、中島京子が面白いと言われて、読みました。「蒲団」の著者、田山花袋を研究している、米の大学教授デイブ・マッコーリーが主人公。彼のことを、「FUTON」では描くのだが、劇中劇のように、彼が書いた「蒲団の打ち直し」という小説が同時並行して進行していく。この「蒲団の打ち直し」は、「蒲団」の焼き直しではあるが、主人公竹中時雄の妻美穂、彼女の姉千枝の視点で描かれたもの。時々、どっちの話だったか、わからなくなりそうだが、楽しく読めました。全体的には、いいできだと思いますが、最後に、エミ・クラカワ(デイブの元彼女・日系人)がデイブに自説をくどくどと話すのは、少し、奇異な感じを受けました。
宮下 規久朗
食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む 光文社新書 ★★★★☆
特別、真新しいことが指摘されているわけではないが、まずは、テーマがいい。食べる、食べ物について描いた絵画を色々と楽しむことができる。ただ、口絵以外は、白黒なので、インターネットで、カラーの画像を検索して�A読むと、一段と楽しめる。そういう意味で★4ツ。絵は全部で白黒100枚、カラー21枚。ただ、新書版なので、全体的に絵は小さいので、細部は全くわからないので、インターネットで確認したい。ただ、ネット検索でないものも、結構ありました。絵では、(図1)ラヴェンナ、サンタポリーナ・ヌオーヴォ聖堂(6世紀初頭)の<最後の晩餐>(モザイク)がとても、いいと思います。魚 二匹が絵の真ん中に大きく描かれ、その周りをキリスト?と12人の使徒が囲んでいる。背景は黄色。
※ギリシア語では、「イエス・キリスト・神の・子・救い主」の頭文字をとると、魚(イクテュス)。
※モザイク (mosaïque) は、小片を寄せあわせ埋め込んで、絵 (図像) や模様を表す装飾美術の手法。石、陶磁器
(タイル)、有色無色のガラス、貝殻、木などが使用され、建築物の床や壁面、あるいは工芸品の装飾のために施される。この装飾方法は古くから世界的に見られ、宗教画や幾何学模様など様々なものが描かれており、歴史上、カテド�宴�の内部空間やモスクの外壁などの装飾手法として特に有名である。なおモザイク (mosaïque) はフランス語で、英語ではモゼーイック (mosaic)。(ウィキペデイアから)
鹿島 茂
子供より古書が大事と思いたい 青土社 ★★★★☆
なんていうことのない本。しかし、共感できる。著書は19世紀のフランス小説と社会が専門の大学教授だが、古書コレクター。フランスの木口木版の挿絵等の稀覯本(きこうぼん)のコレクター。当時の本は、仮綴で出版され、蔵書家が各自の予算と好みで革や布で装幀されている。そうした本�tランスの古書店に行き、あるいは、オークションで購入するというお話。後半部分の著書の専門分野の話は余り面白くないが、古書コレクターとしての行動や心理の話はとてもいい。那覇行きの飛行機の中で読めました。
時々、難しい漢字、言葉が出てきます。
※ 膏肓(こうこう)→病膏肓に入る 医者から病気を見離された時�ノ使うようですが、最近は趣味没頭でどうしようもないことをさすらしい。「やまいこうこうにいる」 肓�ヘ盲ではありません。目ではなく月。
※ 肌理(きめ)、装幀(装丁・そうてい)、刮目(かつもく)、旱天の慈雨(かんてん・干天)、せどり市場(競取り・同乗者の中間に立って、品物を取り次ぎ、手数料を稼ぐ)
※ 革装本(なめし皮を使った本)の種類は、バザーヌ(羊のなめし皮)、シャグラン(ロバ・ヤギのなめし)、ヴォー(子牛のなめし)、マロカン(モロッコ革・雌ヤギ・高級)
須賀 敦子
ヴェネツィアの宿 文春文庫 ★★★☆☆
自伝小説。貧乏学生の割には、贅沢な生活です。この時代にしては、優雅な生活だと思います。それなりに楽しめます。
ル・クレジオ
偶然 Hasard 帆船アザールの冒険 菅野 明正訳 集英社 ★★★☆☆ 02年3月31日第一刷 定価 2300円+税 古本で購入(1400円)
主人公は、�Fの黒い少女ナシマと映画監督モゲル。彼の愛する船「�Aザール」に、ナシマが冒険心からか、現実逃避からか、忍び込み、海の旅にでる物語。クレジオの冒険小説だが、「調書」や「逃亡の書」を読んだ後だといかにも普通に感じてしまう。
調書 豊崎光一訳 新潮社 ★★★★☆�@絶版後、ノーベル賞受賞で再版 2008年11月30日 2940円 (初版は1966年)
これも、逃亡の書ほど読みづらくはないが、難解なところも多い。並外れて背の高い、猫背のアダム・ポロが主人公。アダムという名もまた意味深いが、彼は、「軍隊から出てきたのか、それとも精神病院なのかよくわかっていなかった男」である。翻訳の正確さはわからないが、どうも、こなれていないところも多い。頑張って読みましたって感じです。
「むかしむかしあるとき、暑さも盛りの頃、開いた窓の前に坐っている男がいた。(略)どこでも良いから太陽の光の落ちている場所を求め、何時間でも坐ったまま壁に身を寄せて、ほとんど身動きしないところなど、�Hそっくりだった。(略)日射しの黄色はまともに彼の顔面に照りつけていた。だが、反射せず、すぐに湿った肌に吸い取られ、煌めきもしなければ、かすかな照り返しも見せなかった。(略)」(本文から)
逃亡の書 望月 芳郎訳 新潮社 ★★★★☆ 2刷1973年6月10日 古本で購入(1400円)
読みにくい。入りづらい。なかなか進まない。ひょっとしたら、相当、退屈な小説かなと思いつつも、なんとか読みました。感動するとか、躍動感があるとかでなく、淡々と、情景が過ぎ去っていく物語。ある意味では、難解。最後まで読んで、何となく、西洋文明批判的感覚が伝わってくる。観念的�A描写的、分裂的で、物語の筋はあるのかないのか。長い長い、く�ヌい詩か。しかし、★★★★☆です。理解不能、意味不明のところも多いが、それはこちらの能力のなさからで、やはり、ところどころ凄いと感じる部分があります。
1967年にル・クレジオは一週間来日。その時の描写があります。194ページ。「大学の地下室では男たちが闘う。ゆったりとした衣服を着、革の道具を身につけている。見るため隙間がある鉄の面を頭からかぶっている。(中略)地平線までまっすぐ進む特別なレールの上を、ひかり号が空気の砦をつきこわしてゆく。時速210キロでそれは集落や河のような道路の上をすべってゆく。」(本文から)
「あらゆる道は石庭に通じているというのは真実だ。だがそれは叡智の庭ではありえない。狂気の庭だ。小宇宙、図式は人間の思考を解放しない。精魂をうち涸らすめまいの中で思考を空転させるだけだ。あまりに明白な塀によってそれを怯えさせてしまう。波のきちんとした砂の大洋に十五の島が泳�「でいる。塀が鏡となっている籠の中に閉じ込められた意識は空間の彷徨をやめない。意識が遭遇するのはその閉鎖、その人間の意志、その言語である。意識は外に出ようとする、無限の平原に逃れようとする。だが、それは不可能だ。組織は心を休ませない。それは他の組織、混沌の組織、蝟集の、憎悪の組織にたいする闘いである。(後略)」(本文から)
ちなみに主人公の名はジューヌ・オム・オーガン。
オークションにて1400円で購入。定価は1000円。35年前の古本なので、本文ページも焼けがあり、古本の臭さもありましたが、日干しや紙やすりで少しはきれいになりました。
ロンド その他の三面記事 佐藤領時・豊崎光一訳 白水社 ★★★☆☆ 1991年11月20日発行
短編集。ロンド・モロク・脱走者・アリアーヌ・オロール荘・アンヌの遊び・気ままな生活・越境手引人・泥棒よ、泥棒よ、お前の生活はどんなもの?・オルラモンド・ダヴィド。
少し風変わりなお話です。悪戯な少女のプースとプシィ(Christeleクリス�eルと Christelleクリステル)の「気ままな生活」が一番かな。
オークションにて1100円で購入。定価は2400円。状態はまあ良い。
立花 隆
解説「地獄の黙示録」 文春文庫 ★★★☆☆
同映画にオリジナル版、完全版があるとは知りませんでした。凄い映画だと思ってはいましたが、こういう解釈があるとは知りませんでした。奥が深いです。
九州大学公開講座8 現代の文学 九州大学出版会 ★★★★☆
ある方から読んでみたらと勧められて、読みました。昭和58年12月1日1600円(考えると当時の価格としては高価ですね)の発行ですが、57年度の九州大学公開講座の一部です。口語体ですので読みやすいのですが、難しい部分もおおくあります。しかし、なかなか面白く読めました。古本でも探したが、見つかりませんね。→九州大学出版会に在庫ありました。
○はじめに 上村弘雄
○遠藤周作と日本的精神風土 海老井栄次
カトリック教徒の遠藤周作が追及する「日本的精神風土」の問題を日本の近代化の歪曲性との関連で取り上げる。<現代>は20世紀、<近代>は中世に対して成立したもので、15世紀末から16世紀のルネッサンスを始点で<神>を中心としたものの考え方から<人間>中心に。<近代>とは人間中心主義が貫いている時代。<現代>とは、人間中心主義に限界が認められ、人間性への懐疑や、<近代>を支える<個我><個性><人間性>の委縮化が見られる、<全体性>の喪失、<神>の虚無化が進む混沌とした状況。
最初の小説「アデンまで」「白い人」「黄色い人」「留学」「宗教と文学」「海と毒薬」「沈黙」。
○イギリスの詩 ハーディ、イエイツ、エリオット 吉野昌昭
トーマス・�nーディ(1840〜1928)
「旅のあと」 なくなった妻エマを偲んで、コーンウォルを再訪問。73歳。
あのころの晴れやかな日の晴れやかな時刻には
滝の上で霧が虹色にかがやいていた
真下の岩穴からのうつろなひびきは
四十年も前からぼくに呼びかけているかのようだ
あのころの君は光にあふれ
いまぼくがはかなくも追う影のうすい幻ではなかった
(秋山徹夫訳)
ウィリアム・バトラー・イエイツ(1865〜1939・アイルランド生まれ)
「白孔雀」(大正9年・詩人西條八十訳詩集)にある「彷徨えるいんがすの唄」 いんがす(インガス)はアイルランドの神話の神の名。青春と美と詩の神。愛の神。
そを床の上(へ)に置きしとき
われは焔を吹かむとゆきぬ、
されど何ものか床の上にうちさわぎ
誰びとかわが名をよべり�B
そは黒髪に林檎の花をかざせる
きららかの少女(をとめ)となりぬ、
わが名をよびつ、はしり
輝けるみそらに失せぬ。
トマス・スターンズ・エリオット(1888〜1965)
処女詩集「プルーフロックとその他の観察(1917年)」 22歳
それでは行ってみようか�A君も僕も、
手術台(テーブル)にうへに乗せられて麻酔をかけられた患者のやうに
夕暮れが空いっぱいに這ひのびているころ。
(深瀬基寛訳)
「荒地(1922)」。
○パウル・ツェラーン ドイツ現代詩のクリスタル 田代祟人
ツェラーン(1920〜70・ユダヤ人)対ブレヒト(1898〜1956)
○アナトール・フランスと芥川龍之介 大塚幸男
二人はいずれも書巻の人であった
アナトール・フランスは追憶小品集「ピエール・ノジエール」の巻頭で
≪私が世界について得た最初の観念は(幼いころに手にした)私の古い版画の聖書から来た≫と述べている。
芥川龍之介も自叙伝的小説「大導寺信輔の半生」で
≪彼はあらゆるものを本の中に学んだ。少なくとも本に負ふ所の全然ないものは一つもなかった。実際かれは人生を知る為に街頭の行人を眺めなかった。寧ろ行人を眺める為に本の中の人生を知ろうとした。≫
○故国喪失者コンラッドの小説 吉田徹夫
ジョウゼフ・コンラッド(1857〜1924・ポーランド生まれ)は船乗りの後に作家に。キプリング(「ジャングル・ブック」で有名)と比較された。
処女作「オールメイヤーの阿呆宮」(1895年)。「闇の奥」はコッポラ監督の「地獄の黙示録」の原作。
○アラン・フルニエの世界 田中栄一
アラン・フルニエ(1886〜1914) 唯一の小説「さすらいの青春(Le Grand Meaulnes)・1913」
○『マルテの手記』とリルケの文学世界 上村弘雄
リルケは「マルテの手記」(1910年)について、「たまたま引出のなかに未整理のまましまいこまれた文書が発見されたようなもの」と知人に説明。
○フランツ・カフカの内なる「城」 中尾光延
チェコスロバキアのプラハ生まれのユダヤ人(ドイツ系)フランツ・カフカの「城」について。
主人公はK.。Kの訪れた城村の領主は「ヴェスト・ヴェスト伯爵」でwestは西なので、西の西というあらざる方位。城の役所の長官はクラム(Klamm=束縛・圧迫するような沈黙)の愛人はフリーダ(Frieden=平和)を思わせる。クラムの在村秘書モームスはギリシャ神話の名前。役所の長官の手紙をKに渡す使者はバルナバスの名も奇妙。(旧約聖書の十二使徒に近い地位の聖者の名に由来)
○アメリカの小説と「私」 野口健司
小説の語り手。作者自らが直接語り手、物語のなかの架空の人物の一人が語り手。後者について考察。「白鯨(ハーマン・メルヴィル・1851年)」、「ハックルベリ・フィン」、「トム・ソーヤの冒険」、「グレート・ギャツビー(フィッツジェラルド・1925年)」、「ライ麦畑の捕手(サリンジャー・1951年)」。
○メイエルホリトとソヴィエト二十年代の戯曲 青山太郎
ソヴィエト期のロシア劇文学。1920年代の劇作家マヤコフスキーとエルドマン、及びメイエルホリトという演出家。
○魔術としての演劇 アントナン・アルトーの世界 浜文敏
フランス現代演劇は1950年代にひとつの変革をとげた。イヨネスコ、ベケット、アダモフに代表される反演劇や不条理演劇。アントナン・アルトーの「演劇とその分身」という演劇論。
○ソルジェニーツィン文学の原点 『イワン・デニーソヴィッチの一日』の現代性 清水孝純
二十世紀の文学の特質のひとつは、限界状況が文学の重要な主題。出口なしの状況、サルトルの小説の題を借りれば<壁>の前に立たされた状態。人間が裸形の<死>を前にして、一挙に生存の意味というものに、正面から対峙せざるをえない地点に引き出される状況の持つ特殊性。
阿部公房
人間そっくり 新潮文庫 ★★★☆☆
1966年の9−11月にSFマガジンに掲載され、1967年に早川書房から出版されている。私は火星人であるというセールスマン(地球人?)が、主人公で火星のネタでラジオ番組を作っている先生の家にやってくる。同時に、電話がなり、その訪問者の妻だと名乗る人から「凶暴性があるので、30分以内に行くからうまく応対してください」頼まれる。最初は先生の奥さんが対応するが、そのうちに先生が応対し、火星人論議となっていく。人間そっくりなのが火星人なのか?地球人なのか?だれが証明できるのでしょうか?という問いかけです。いったい何が本当でなにが嘘なのか。何が本物で何が偽物なのか。あなたは証明できますか?
「そう、ぼくは、なんとしてでも知りたいのだ。いったい、この現実は、寓話が実話に負けたせいなのか。それとも、実話が寓話に負けたせいないのか。法廷の外にいるあなたに、お尋ねしたいのです。いまあなたが立っている、その場所は、はたして実話の世界なのでしょうか、それとも、寓話の世界なのでしょうか・・・・・」(本文から)
1924年(大正13年)東京生まれ、満洲育ち。1992年没(平成4年)。
代表作品
デンドロカカリヤ、壁、闖入者、東欧を行く、砂の女、他人の顔、燃えつきた地図、箱男�A密会、方舟さくら丸、カンガルー・ノート、飛ぶ男
終りし道の標に、けものたちは故郷をめざす、終りし道の標に(改)
ロジェ・グルニエ
編集室 須藤哲生訳 白水Uブックス ★★☆☆☆
短編集。冬の旅、ジゼルの靴、脱走兵たち、北京の南で、親愛なる奥様、厄払い、死者よさらば、もうひとつの人生へ、すこし色あせたブロンド女、冬季オリンピック。新聞社ネタが多いし、なんだか中途半端な話が多い。不幸をよぶ女性?がしばしば登場する。
1919年生まれ、1948年から15年間「フランス・ソワール紙」の記者。現代では貴重な短編作家と言われるが長編も多いですね。(下記参考・短編とないものは長編)
「怪物たち」1953年、「待ち伏せ」1958年、「ローマへの道」1960年、「ある戦争のまえ」1971年、「レ・フェーと広場の家」(短編集)1972年、「どこか似ている」1979年、「ラ・フォリア」1980年、「フラゴナールの許婚者(フイアンセ)」(短編集)1982年 みすず書房から邦訳、「なんじフィレンツェを去るべし」1985年、「黒いピエロ」1986年 みすず書房から邦訳、「オトゥイユの沼」(短編集)1988年、「パルティータ」1991年、「降る雪を見よ――チェーホフについての感想」(エッセー)1992年 みすず書房から邦訳「チェーホフの感じ」、「トルコ行進曲」(短編集)、「フィッツジェラルドの午前三時」(作家論)1995年 白水社から邦訳、「あの時代の誰か」(回想風エッセー)1998年 みすず書房から邦訳、「ユリシーズの涙」(回想風エッセー)1998年 みすず書房から邦訳、「夜警」2000年 みすず書房から邦訳「六月の長い一日」、「職務(ポスト)への忠実」(回想風エッセー)2001年。未記入は長編。
シャガール展 図録 ★★★★☆
2008年7月18日〜8月31日 熊本県立美術館 非常にいい絵がところ狭しと飾られている。もっと、ゆったりと展示できる広さが欲しい。環境は抜群。お城の中の美術館。同時に別料金で「夢とサーカスの世界」にもシャガールが展示。どうせなら、シャガール展を見た人は無料にして欲しかった。
ボストン美術館 浮世絵 名品展 図録 ★★★★★
2008年7月12日〜8月31日 福岡市美術館 版画・肉筆画。鈴木春信、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重の定番物から、鳥居清倍の漆絵他。圧巻です。図録も綺麗。古い建物ですが、なんとなく落着きがあります�Bお洒落なのはアジア美術館の方ですが。
ミレイ展 図録 ★★★★☆
2008年6月7日〜8月17日 北九州市立美術館 77点 高台にある美術館。展示場はあまり広いとは言えないが、喫茶店からみる景色もいい。
楊逸(ヤン・イー)
時が滲む�ゥ 文芸春秋2008年9月号 ★★★☆☆
北京オリンピック(2008年8月)開催時の芥川賞は中国人の楊逸さん(女性)が受賞した。日本は、女子ソフトボールが金メダル、なでしこが4位と女性が大活躍。芥川賞も女性続きで、女性パワーを強く感じます。さて、小説は、前回に比べると、内容も、文章力もいいと思います。天安門事件を扱�チているので、中国の近代化?の過程でのテーマとしては、やや陳腐な感じはありますが、問題の深さを考えると、こうした題材を取ることで、小説に深さを出しているように思います。全体的には、よくできているのですが、それぞれ、もう少し書き込んだ方がいいかなと思うところが何箇所かありました。場面が急展開というわけではないのですが、もう少し、ゆっくりと進めてほしいところもありました。枚数制限があるのかな?選評は、前回の方がいいといいものが多かったようですが、それでも、芥川賞受賞は立派です。
主人公梁浩遠(りょうこうえん)と親友謝志強(しゃしきょう)が、秦漢大学に入学し、詩人甘先生の影響を受け、学生運動に入り込んでいき、また、女性活動家白英露(はくえいろ)と知り合い、天安門事件を最後に、それぞれの道を歩んでいくというストーリー。これから、伸びて欲しい作家です。
ポール・オースター
シティ・オヴ・グラス 山本楡美子・郷原宏 訳 角川文庫 ★★☆☆☆
「ガラスの街(シティ・オヴ・グラス 邦訳 角川)」、「幽霊たち」、「鍵のかかった部屋」はポール・オースターのニューヨーク三部作の第一作。こうした小説の面白さの評価は分れるかもしれません。「鍵のかかった部屋」と同様、主人公の行動に必然性・動機が感じられないので、無理をして読まなければならないところが、素直に面白さを感じないのであろう。「いったい、自分は誰?」という問いかけ、あるいは、名前は記号にしか過ぎないという主張は何となく伝わるが、違う「名前」を語ることで、人格まで変えることができるのかという疑問も。
作家名艦にも載せないウィリアム・ウィルソン、ことクィン。彼の最新作主人公は探偵ワーク。クィンの自宅に「ポール・オースターさんですか?」という間違い電話がかかる。ポール・オースターになりすまして、この電話の主を訪ねると、応対したのは、35歳位の美人・ヴァージニア・スティルマンで、依頼主ピーターの妻であった。そして、ピーターと面会。そのピータ�[は相当の変わった人物であるが、クィンも、ワークのような探偵ポール・オースターになりすましており、彼の話を延々と付き合い、依頼を受けることになる。それは、ピーターの父親である元大学教授ピーターが出所して、彼ピーターを殺しにくるのを防ぐという依頼である。
推理小説のように、途中、色々な細工があるが、推理小説として読むと、全く結論も何もない。そして、行動に必然性がないし、最終部分もいただけない。ストーリー性だと不自然極まりない。作家のポール・オースターがでてくるは、ピーターの父親のピーターと似た人物は出てくるは、ピーターの妻のヴァージニアの思わせぶりも、結局どうってことはないし、それぞれが、ある意味では中途半端になっている。結局、クィンを少し知っている作家ポール・オースターの友人が、クィンの赤いノートを元に、この物語を語るという体裁もまた、動機性が感じられない。すべてが、ある意味では、不自然なのであるが、そうした、やや不条理とも思えるところをテーマとして読めば、この小説の意味が何となくわかるかもしれない。
短編で、簡単に読めるので、読み飛ばすと、結局、よくわからないままであっても、再読するほどの魅力を感じないので、まあもういいかという感じになる小説。
マルグリット・ユルスナール
東方綺譚 多田智満子 訳 白水Uブックス ★★★☆☆
マルグリット・ユルスナールは、1903年に�xルギーのブリュッセルに生まれる。「ハドリアヌス帝の回想」と「黒の過程」でフェミナ賞を二度受賞。
東方綺譚は、九つの短編から成り、いずれも、風変りな題材で�ヘあるが、訳文がとてもよくて、面白い。軽く読んでしまったので、再読したい。短編の中で、「老絵師の行方」、「源氏の君の最後の恋」は、物語として、楽しめるのではないだろうか。この二つは★5つです。その他は、東方(オリエント)といっても、ヨーロッパからの東方なので、ギリシャやブルガリア、インドの故事等を題材にしたものも含まれる。「老絵師の行方」、「マルコの微笑」、「死者の乳」(これもよくある題材と思いますが、★4つ)、「源氏の君の最後の恋」、「ネーレイデスに恋した男」、「燕の聖母」、「寡婦アフロディシア」、「斬首されたカーリ女神」、「コルネリウス・ベルクの悲しみ」(これはアムステルダムのお話)。
ジェームズ・ボールドウィン
ジョヴァンニの部屋 大橋 吉之輔 訳 白水Uブックス ★★☆☆☆
アメリカの黒人文学の代表者ジェームズ・ボールドウィンは、1924年に黒人街ハーレムで生まれる。この作品自体は、読んでいても、黒人文学の片鱗も見せないのは、不思議に思う。アメリカ人の「ぼく」デイヴィッドと彼女のヘラはパリにやってく�驍ェ、ヘラはスペインに旅に出てしまう。デイヴィッドは、ギヨーム(フランス名家の出)の経営するバーに友人のジャックと出かけ、そこでバ�[テンのジョヴァンニ(イタリア人)と知り合い、僕とジョヴァンニは愛する関係になる。そして、破局に。
男同士の同性愛の話がメインで、物語としては面白いとは思わない。約300ページの小説であるが、とても長く感じられ、疲労感が残った。人間愛、自己愛、そして自分とは何かを問いかける。最後の章はそれでも圧倒的な力を持って語りかけてくる。これでノックアウトって感じです。これで疲労感が残ったのかもしれない。
<われ童子(わらべ)の時は語ることも童子のごとく、思ふことも童子のごとく、論ずることも童子のごとくなりしが、人と成りて童子のことを棄てたり>(本文から)
「ぼくは、この予言を実現したいとねがう。ぼくは、あの鏡をうちわって、解放されたい。ぼくは、自分のセックスを見る。ぼくのやっかいなセックスを見る。そして、どうしたら、それが罪から救われるか、どうしたら、それが劫罰(ごうばつ)の刃から助けることができ�驍ゥと考える。墓場への旅は、すでにはじまった。腐敗への旅は、つねに、すでに、なかば終わっている。しかし、ぼくの救いにいたる鍵は、ぼくの体を助けることができないままに、ぼくに肉のなかにかくされている。(本文から)」
「山に登りて告げよ」(1953年) ニューヨークが舞台。自�`的小説。黒人ばかりが登場人物。
「ジョヴァンニの部屋」(1956年) パリが舞台。白人たちの物語。
「もう一つの国」(1962年) ニューヨークが舞台。白人と黒人が登場。
(本書解説から) 本書以外は、邦訳はないものと思われる。ただ、「アメリカ短編24」が集英社から発行されているの。収録作家ジェイムズ・ボールドウィン、アーネスト・ヘミングウェイ、フィリップ・ロス、ジョン・バース他であるが、作品名は不明。
ポール・オースター
鍵のかかった部屋 柴田 元春 訳 白水Uブックス ★★★★☆
ジュンク堂の白水Uブックスコーナーで平積みになっていたので、何気なく取って、購入した本。
僕が、行方不明になった幼馴染のファンショーの妻ソフィーから、手紙をもらい、ファンショーの書いた原稿を世に出す仕事を引き受けるが、僕はソフィーに恋をし、子供のベンとともに暮らし、結婚する。ファンショーの小説は、難しいわりには、ヒットし、いったい、ファンシーは誰なのかと世間で噂されるようになる。そして、ファンショーの伝記を書くことを僕は引き受けるが、ファンショーのことを調べ、探すほど、自分はファンショーを好きなのか、そうでないのか、自分はいった�「誰なのか、ファンショーは誰なのか�ニ、泥沼にはまっていき、ソフィーとの関係も険悪になってくる。
ファンショーが生きていることを望む反面、ソフィーとのことを考えるといないほうが、いいと思うが、その時、ファンショーから二通目の手紙が僕にくる。そして、会いにいくが。
「鍵のかかった部屋」の意味が後半(P180)で明らかになる。この小説の面白いのは、いったい自分は誰なのかという問いかけが、「僕」がファンショーの伝記を書くために調べることで、自分が彼であるかのように感じていくところにある。
「僕」がファンショーの母親ジェーンとセックスしたあと、「もしかしたら彼女は、僕の中にファンショーに対する憎悪を感じ取ったのではないだろうか――彼女自身のそれと同じくらい強い憎悪を。おそらく彼女はわれわれのあいだの、この言葉にされない絆を嗅ぎつけたのだ。おそらくそれは、何か倒錯した、異常な行為によってのみ確認しうるたぐいの絆だったのだ。僕と性交することは、ある意味ではファンショーと性交することに似ている。自分自身の息子と性交することに似ているのだ。そしてその罪の暗闇の中で、彼女はもう一度息子をわが物にする――だがそれは彼を滅ぼすためにだ。恐ろしい復讐である。(中略) 僕は憎悪の念によって性交していた。僕はそれを暴力の行為に変容させ、あたかもこの女を粉々に打ちのめそうとしているかのように彼女を荒らしく攻め立てた。僕は僕自身の暗闇に入りこんでいたのだ。(中略)彼女は単なる影だったのだ。僕はファンショーを攻撃するために彼女を利用しているにすぎなかった�フだ。(本文から)」
ファンショーを探す?自分を探す?
「ガラスの街(シティ・オヴ・グラス 邦訳 角川)」、「幽霊たち」、「鍵のかかった部屋」はポール・オースターのニューヨーク三部作。
ポール・オースター 1947年生まれ、コロンビア大学を卒業後、タンカーの乗務員を経験後、フランスでボヘミアン的生活を過ごす。1970年代半ばに帰米し詩人、翻訳家、作家。
「孤独の発明」(新潮社)
「シティ・オヴ・グラス」(角川書店)
「幽霊たち」(新潮社)
「鍵のかかった部屋」(1986年・白水社)
「消失――ポール・オースター詩集」(思潮社)
「最後の物たちの国で」(1987年)
「ムーン・パレス」(1989年・新潮社)
「偶然の音楽」(1990年)
「リヴァイアサン」(1992年)
レイモンド・チャンドラー
さらば愛しき女よ 清水 俊二 訳 ハヤカワ文庫 ★★★☆☆
大鹿マロイは、刑務所から出てから、彼の愛したヴェルマ・ヴァレントを探している途中で、殺人事件を起こし、追われる身になってしまう。病身の富豪を夫に持つグレイル婦人の硬玉翡翠のペンダントが街中でホールドアップに会い、盗まれたが、それを買い戻すために彼女の情夫リンゼイ・マリオがギャングからそれを買い戻そうとしたが、マリオが殺されてしまう。その殺人事件のどちらにも居合わせた私立探偵フリップ・マーロウが、77丁目の警察署の警部ナルティやロサンゼルス警察署の殺人課の警部ランドールと色々な駆け引きをしながら、犯人を見つけだすハードボイルド探偵小説。ナイトクラブ「フロリアン」の元経営者の妻ジェシー・フロリアンは、ヴェルマがダンサーからの知り合い。アン・リアードンは、マーロウに好意を寄せる、元ベイ・シティ警察署署長の遺児。そのほかに、乱暴な神経病医者のジュールズ・アムサー、怪しい医者ゾンダボーグ、暗黒街のボス レアード・ブルネット、元刑事レッド・ノーガード、気のいい不良警官ガルブレイス(ヘミングウェイとマーロウから呼ばれ)が登場。
しかし、60年以上前とはいえ、こんなにお酒を飲んで、車を運転してもいいのかと。。。
訳が古いわりには、とても読みやすいです。ただ、ローマ字表記に馴染まないものも多いのはご愛敬です。
レイモンド・チャンドラー 1888年〜1959年 シカゴ生まれ
「大いなる眠り�v1939年 東京創元社
「さらば愛しき女よ」1940年 早川書房
「高い窓」1942年 早川書房
「湖中の女」1943年 早川書房
「かわいい女」1949年 東京創元社
「長いお別れ」1953年 早川書房
「プレイバック」1958年 早川書房
アントニオ・タブッキ
�Cンド夜想曲 須賀 敦子 訳 白水Uブックス ★★★☆☆
訳は須賀敦子さんなので、とても読みやすいです。インドで失踪した友人を探すというストーリーで、そんなにあっと驚く展開があるわけではありません。インドの風変わりな土地や風習や雰囲気が伝わってきますが、それ以上、特に面白いという本でもありませんが、読んでいて、なんとなく不思議な余韻をまた残します。著者のアントニオ・タブッキは、1943年ピサ生まれのイタリア作家。ジェノヴァ大学のポルトガル文学の教授で、詩人のフェルナンド・ペソアの作品をイタリアに紹介した研究家。
Uブックスからは、「遠い水平線」、「逆さまゲーム」、「供述によるとペレイラは・・・・・」(以上、須賀敦子訳)、「レクイエム」が邦訳・出版されている。
「ダマセーノ・モンテイロの失われた首」(白水社)、「ベアト・アンジェリコの翼あるもの」、「夢のなかの夢」、「島とクジラと女をめぐる断片」(須賀敦子訳)、「黒い天使」(以上、青土社)。
トマス・ハリス
レッド・ドラゴン(上・下) 小倉 多加志 訳 ハヤカワ文庫 ★★★☆☆
2003年に映画化されており、映画かテレビで見たように思う。結末が今一(よめてしまうのが残念)で、フランシス・ダラハイトの殺人に至る心理や背景にどうも切迫感がないように思う。ウィル・グレアム(異常犯罪捜査官)と妻モリーとモリーの息子の関係も、グレアム本人の心理描写もあと一歩という感じを受けました。ハンニバル・レクター博士が初登場するわけですが、彼の異彩が発揮されることもなく、グレアムは彼と同類であるから、犯人が捕まえられるという精神分析も本当にそうなのかと思う。ダラハイトは赤き竜(ドラゴン)を崇拝し、それになろうとしている訳で、ダラハイトの憧れのレクター博士と「大いなる赤き竜と日をまとう女」との関連性はどうなるのだろうか。読み物としては、まぁ面白いですが、予期したほど面白さを感じなかったのは、こうした題材がもの新しさに欠けているからでしょうか。
ハンニバル・ライジング(上・下) 高見 浩 訳 新潮文庫 ★★★☆☆
「レッド・ドラゴン」、「羊たちの沈黙」、「ハンニバル」の著者が、ハンニバル�フ生い立ちを書いた一番新しい小説。面白く読めるが、あのハンニバル・レクター博士の生い立ちにしては、殺された妹ミーシャの復讐がストーリーの中心であるので、もっと、複�Gな心理の動きがあればと思う。「羊たちの沈黙」は映画で見たが、小説としては三部作を読んでいないので、読んでみよう。(ハンニバルは読まない方がいいと言う人もいるが、、、)
ロバート・ニュート�刀Eペック
豚の死なない日 金平 瑞人 訳 白水Uブックス ★★★☆☆
豚を殺すのが仕事の農夫ヘイヴン・ペックと息子ロバートとが母親ルーシー、隣人のベンジャミン・ターナ�[と自然の中で、質素ながらもほのぼのと生きていく物語。あるとき、ターナーさんのホルスタインの牝牛(エプロン)が草むらで、突然、お産をした時に、ロバートが大けがを負いながら出産の手助けをする。そのお礼としていただいたかわいい白い豚「ピンキー」とともに、ロバートが色々と自然や動物のことを父親に教えてもらいながら成長していく物語。豚の死なない日の題名を想像すると、とても可哀そうな物語でもある。
レイモンド・ラディゲ
肉体の悪魔 中条 省平 訳 光文社古典新訳文庫 ★★★★★
戦時下、15歳の僕が、19歳の人妻マルトへの愛が本当のものかどうか悩みながらも、愛に対して僕の深く鋭い洞察力で描く恋物語。すごく読みやすい訳文です。
僕はさまざまな非難を受けるようになるだろう。でも、どうすればいい?戦争の始まる何か月か前に十二歳だったことが、僕の落ち度だというのだろうか?あのと�ナもない時期に僕に降りかかった災厄は、ふつう十二歳という年齢ではまず経験しないものだ。見かけ�フ変化はともかくとして、僕たちをいきなり大人にするほどの力を持つものなど存在しないのだから、一人前の男だって途方に暮れるような出来事のなかで、僕は子供として振舞うほかなかった。(本文冒頭から)
マルトは首を振った。「ジャックと幸福になるより、あなたと不幸になるほうがいい」とつぶやいた。(本文から)
愛がエゴイズムのもっとも激しいかたちというのは本当のことなのだろう。(本文から)
レイモンド・ラディゲ(1903年〜1923年 20歳) パリ郊外生まれ。
愛読した文学者は、「ダフニスとクロエ」(本作にも言及あり)のロンゴス、ボードレール、ランボー、ヴェルレーヌ、ラ・ファイエット夫人、スタンダール、ロートレアモン、マラルメ、プル�[スト。
三島由紀夫曰く、(訳者あとがき)
「戦後の若い人たちは、フランス映画『肉体の悪魔』でラディゲの名を知った人が多かったろう。しかし一度ラディゲを知れば、この青春の魔にとりつかれない若者は、むしろどうかしている。・・・・こんなに颯爽たる若者はオリンピックの選手にもざらにはいない」(ラディゲ全集について)
三島由紀夫の「金閣寺」や「仮面の告白」では、愛や美というものは、戦時下の明日死ぬかもしれない時にこそ、愛が輝き、美しくなる。あるいは、そういう存在が危うい時に、愛や美と感じてしまう。本当に愛しているのか、��、い時代だから愛と錯覚しているのか。ラディゲと共通するように思う。ラディゲが20歳で亡くなったということもまた三島にとって、颯爽としているのであろう。
ジョン・ファウルズ
コレクター 上 小笠原 豊樹 訳 白水Uブックス ★★★★★
今でいうストーカーの小説ですが、まるで、映画でも見るかのように、引き込まれて、読んでしまいます。決して、ストーリーは気持ちのいいものではありません。
主人公のフレッド(後、ファーディナンドと名乗るが)は、二歳の時に父親を自動車事故で亡くし、母親は家出したため、アニー伯母さんとディック伯父さんといとこのメイベルと一緒に育った。彼は、市役所の税務課に勤めていたが、フットボール賭博で大金(七万三千九十一ポンド)を得て、勤めも辞めて、アニー伯母さんとメイベルと暮らすことにした。彼の趣味は蝶々を標本するコレクターであった。彼は、市役所勤めのころから、職場の窓から見える美しいブロンド女性に憧れていた。彼女は画家志望のミラ�塔_。時期を待って、彼は彼女を誘拐し、郊外に買った古い屋敷の地下室(彼女用の部屋を作った)に軟禁し、彼と彼女�フ生活?が始まる。彼は、彼女を大切に扱う様子は、彼が彼女を軟禁状態にしているというよりは、恋した彼が彼女に服従しているようにも映る。彼は、彼女の写真を撮らせてもらったりした。彼からみれば、二人は一見、理解しあったように思うこともあったが、彼女からすれば�Aいかにして、ここから脱出するかに知恵を巡らしている訳で、いずれ、彼女の考えがわかり、彼は絶望感の中、本来の立場に戻り、彼女に厳しい態度で接するようになる。
地下室での軟禁状態では、現実と隔離されるわけで、ミランダにとって、最終的には現実との架け橋はファーディナンド(フレッド)だけとなる。フレッドが最初からそうしたことを予期していたとは、思えないが、誘拐の計画や軟禁状態のミランダが逃亡できないように色々と策略をめぐらすのはとても計画的で緻密。誘拐にクロロホルムを使うのは、彼に彼女を引き寄せる力がないとの自覚があるからであろう。フレッドの異常な考え方が、いつしか、小説の中(地下室・軟禁)では当たり前となり、読者も同一化しそうになると、時折、ミランダの抵抗で現実に引き戻され、正常な感覚に戻るが、また、フレッドとミランダが表面上仲直�閧キると、読者はまた、フレッドになってしまう。
出だし(本文から)
「その家は市役所の別館のまむかいにあるので、寄宿学校から帰省していた彼女の姿は、ほとんど毎日のように見えるのだった。・・・中略・・・折よく彼女の姿が見えた日は、夜、観察日誌にしるしをつけた。初めはX、やがて彼女の名前が分ってからはMと。」
(本文から)
「彼女のぼくにたいする態度は、三か月もかかって蝶々になる幼虫を、三、四日で成虫にしようというようなものだ。そんなことをしたら、ロクな結果にならぬことは目に見えている。彼女はせっかちだ。最近の人たちは何かを手に入れたいと思うや否や手に入れないと気がすまないらしいのだが、ぼくはちがう。ぼくはもっと古風で、物事が自然に熟していくのを待ちながら未来のことを考えるのが好きなのだ。のんびりいこう、と大きな魚がかかったときディック伯父さんも言ったっけ。」
こうした論理のすり替えが、狂気の正当化なのでしょうか。
コレクター 下 小笠原 豊樹 訳 白水Uブックス ★★★★★
上卷の2章から、下巻にかけて、ミランダの語り(日記形式)になる。ミランダの心の葛藤、いかにして、キャリバン(フレデリック・クレッグ)を説得、教育、暴力にて変えて、脱出しようかと考えると同時に、今までの、自分の生き方(平和主義・非暴力主義)について、考え、反省し、また、彼女よりはるかに年上の芸術家(画家・G・P)に対する思いを分析するなどして、成長していくが、。。。。3章からは、また、フレデリックの語りとなり、4章まで続く。
サスペンス的で、結末は、ここでは、書けないが、驚きです。
フレデリックとミランダの二人の登場人物。暴力的(接し方は優しいが、彼女を閉じ込めるという暴力)なフレデリックと、彼に対していかに非暴力的に接するミランダ。時には、立場は逆転するが、ひとりの変質者の行動が最終的には、非暴力的なミランダを追い詰めてしまうのは、当時(1960年代)のイギリス、ヨーロッパの停滞を暗示している。
「ときどき変な錯覚が起きる。つんぼになったような錯覚。わざと音を立てて、そうではないことを確かめる。咳払いをしたりして、万事異常がないと自分で納得する。広島の廃墟で見つけられた日本の少女みたい。すべての死に絶えたなかで、その少女は子守唄を歌って人形をあやしていたのだ。」(本文から)
「今朝、私がうまく逃げて、キャリバンが法廷に立たされたところを想像した。私はキャリバンの弁護をするのだ。このひとのケースは悲劇的であり、このひとに必要なのは同情と精神科の医者なのだ、と。そして寛大な心。高潔を気取ったのではない。キャリバンを心底から軽蔑しているから憎めないのだ。」(本文から)
「C (とつぜん激しい口調で沈黙を破る)あなたには分らないんだ、あなたとはどういうものなのか。すべてなんです、あなたは。もしあなたに行ってしまわれたら、ぼくには何もないんだ。(永い沈黙)」(本文から)
「待合室へ入って行ったぼくはきちがいみたいに見えたにちがいない。みんな一せいにぼくをじろじろ眺めた。・・・・もし勇気を出してそのときすぐ診察室に入って行ったとすれば、何もかもぶじに収まったにちがいない。だから、わるいのはそのとき待合室にいた連中なのだ。」(本文から)
ここでも、論理のすりかえが、自己正当化の狂気が垣間見える。
下巻は品�磨B
彼の邦訳は、ほとんど絶版・品切れで古本でしか入手できないものが多い。また、古本の売価も高い。ダニエル・マーチンは上下揃うと、15,000円位。
『コレクター』(1965年映画化ウィリアム・ワイラー監督作品)、『フランス軍中尉の女』(1981年映画化カレル・ライス監督作品)
ジョン・ファウルズ(1926年〜2005年)イギリス作家
<作品>
コレクター・The Collector(1963) 上・下 白水Uブックス 1984年 下巻は品薄、白水社世界の文学 1979年
アリストス・The Aristos(1964) パピルス 1992年 品切れ
魔術師・The Magus(1965) 上・下 河出文庫 1991年 品切れ、上・下 河出海外小説選(新装版) 1979年 品切れ
フランス軍中尉の女・The French Lieutenant's
Woman(1969) サンリオ 1982年 絶版
黒檀の塔・The Ebony Tower (1974)
ダニエル・マーチン・Daniel Martin(1977) 上・下 サンリオ 1986年 絶版 古書も高価
The Tree(1979)
Mantissa(1982)
マゴット・A Maggot(1985) 図書刊行会 1997年
Wormholes - Essays and Occasional Writings
(1998)
The Journals - Volume 1 (2003)
フランツ・カフカ
変身 池内 紀 訳 白水Uブックス ★★★★☆
昔に読んだことのある「変身」ですが、Uブックスのカフカ・コレクションとしては、初めてとなります。ある朝、起きたら虫・・・という恐怖感は、誰しも少しは持ち合わせているかもしれません。主人公のグレーゴル・ザムザがまさしくその恐怖を味わうわけですが、物語の中では、意外と虫になったグレーゴルは淡々としています。
出てきたグレーゴルを見て、母親のアンナは卒倒しますが、エメナル靴の支配人は慌てて逃げだし、父親はグレーゴルにりんごを投げる有様。妹グレーテや家族は、最後に少し大騒ぎはするものの、その現実を受け入れています。働き手のいなくなった家族は、それぞれ仕事を持ちますが、決して、裕福ではないので、部屋を貸すことにし、間借人が三人やってきますが、これもなんだか、人間性�フかけらも感じない人たちです。家族愛を感じなくても、虫になったグレーゴルはそんなに悲しむでもなく、また、家族も最後には、グレーゴルが邪魔になるという悲しい物語です。女中を解雇した後にきた、白髪のお手伝い女は、また、グレーゴルを本当の虫けら同様に扱い、殺してしまうが、家族も、結局、それを受け入れてしまいます。何らかの魔法・力で元の人間に戻�驍ニいうお話でないのが、カフカたる所以でしょうか。
※フランツ・カフカ 1883年〜1924年、チェコのプラハ生まれ。両親ともユダヤ系。プラハ大学卒業後、ボヘミア王立労働者傷害保険協会に就職。ベルリンのフェリーツ・バウアーと婚約、解消し、再度、婚約、また解消。プラハに戻り、ユーリエ・ヴォリツェクと婚約、南チロルで療養し、ユーリエ・ヴォリツェクとの婚約を解消し、ミレナ・イェセンスカと恋愛。プラハに戻り、勤務したが、また、療養のため転々とし、バルト海の保養地でドーラ・ディアマントと知り合い、ベルリンで同棲(四十歳の男とニ十二歳の女)。翌年、死去。
1912年「観察」、13年「火夫(失踪者・第一章)」、15年「変身」、16年「判決」、19年「流刑地にて」「田舎医者」、24年「断食芸人」。1982年に「城」、「失踪者」、「審判」。
イアン・マキューアン
アムステルダム 小山 太一訳 新潮文庫 ★★★☆☆
1998年ブッカ―賞。文庫本200ページの短編だが、登場人物はとても多い。中心的な人物は数人だが、意外とあまり登場しない人物を読み飛ばしてしまうと、わかりにくくなる。短編ながら、じっくりと読んだほうがいいかもしれない。あらすじ等は省略ですが、娯楽・通俗小説に近いかもしれません。編集長、作曲家、政治家も人物�ロとしてはありが�ソで、自分勝手で、自信過剰気味タイプです。結末もやや難かな。
モリー・レイン・・・写真家・園芸家、かつて外務大臣ガーモ二―に愛されたが、夫は所有欲の強いジョージ(出版社社長)
クライヴ・リンリー・・・作曲家・モリーの元恋人・ヴァーノンの親友
ヴァーノン・ハリデイ・・・新�キ「ザ・ジャッジ」編集長・モリーの元恋人・�Nライヴの親友
マンディ・ハリディ・・・ヴァーノンの妻
ジョージ・レイン・・・モリーを溺愛した夫、出版社社長、
ジュリアン・ガーモ二―・・・外務大臣、モリーの元恋人
ミセズ・ジュリアン・ガーモ二―・・・ローズ・ガーモ二―、医者でジュリアンの妻。
アナベル、ネッド・・・ガーモ二―の成人した子供たち
ミリー、ブライアン・・・ガーモ二―家の犬と猫
フランク・ディベン・・・「ザ・ジャッジ」の国際面担当・デスク代理、ヴァーノンの後任編集長
グラント・マクドナルド・・・「ザ・ジャッジ」副編集長
パット・レッドパス・・・環境問題論説編集
レティス・オハラ・・・特集部デスク・オランダ医療スキャンダル追及
ジェレミー・ボール・・・国内部デスク
マニ―・�Xケルトン・・・死亡記事デスク
ハーヴィ・ストロー・・・政治部デスク
トニー・モンタノ・・・「ザ・ジャッジ」の社長
ジーン・・・ヴァーノン編集長の秘書
ジャック・モービー・・・重役会議の手先、元編集長?
ジュリオ・ボー・・・ブリティッシュ・シンフォニー・オーケストラ指揮者
スージ・マーセラン・・・ニューヨークの女性、クライヴの彼女
ポール・ラナーク・・・音楽批評家
キャンディ・・・9歳の黒人の女の子。ミセズ・ガーモ二―が心臓病の彼女を手術した。
ハート・プルマン・・・ビート詩人、モリー十六歳時代を知る?
その他に、アレン・クラッグズという山を歩く女性、レイプ犯、警官、刑事、第二オーボエの若い女の子、オランダ人の医師と看護婦、ヴェラだかミニ、ガーモ二―の秘書、
シャム双生児、オーケストラのマネージャー、ガーモ二―の執達吏、顧問弁護士、編集部員の女他。
イアン・マーキュアン�i1948年生まれ) ショッキングな題材(レイプ・小児愛・人肉食などタブー)を冷徹な手法で描くものが多いが、本作は異なる趣き(訳者あとがきから)
C・D・B・ブライアン
偉大なるデスリフ 村上 春樹訳 中央公論社 �噤噤凵凵�
題名からしてわかるように、グレート・ギャツビーへのオマージュ(フランス語で敬意。尊敬する作品に影響を受けて、似たような作品を作ること)。1960年代の1920年代への憧れのような作品�B主人公デスリフの親友アルフレッド・モールトンが語る「アルフレッドの書」と主人公が語る「ジョージ・デスリフの書」からなる。モールトンの人妻テディ・ボールドウ�Bンへの恋物語は意外とあっさりと書かれ、アルフレッドと妻のアリス・タウンゼンドの夫婦生活は、かなり執拗に書かれている。グレート・ギャツビーに比べると訳も今一かな?
�Xコット・フィッツジェラ�泣h
グレート・ギャツビー 村上 春樹訳 中央公論社 ★★★★☆
最初の名文は少し読みづらいが、それを読むと、一気に物語は進みます。1920年代のアメリカが好景気に沸いている中、贅沢三昧な生活(誇張されているかも�オれませんが)の数々。語り手ニック・キャラウェイがギャツビーについて滔々と語りかけます。ギャツビーがどうしてあんなに富みを築けたのかはやや不思議ですが、あれほどまで、デイジーに対する思いが強いので、純愛物語とも言えましょう。アメリカ社会への皮肉、警鐘を感じます。
村上春樹さんが一番好きな物語で、翻訳にも力が入っています。新潮文庫からは野崎孝訳があります。やはり訳文に古さを感じます。
J・M・クッツェー
恥辱 鴻巣友季子 早川書房 ★★★☆☆
ノーベル文学賞作家クッツェーの著書は「夷狄(いてき)を待ちながら」を読みましたが、前回に比べると、小説として面白さに欠けます。作者は南アフリカ生まれですので、黒人の社会進出に対する色々な思いが背景にあるのは、よく理解できますが、どうも、主人公の元大学教授デヴィッド・ラウリーの考え方や行動パターンに共鳴できません。下降線をたどるのが当たり前で、その先に運気が上がるとも思えない物語です。★二つ半かな?
74年処女作「ダスクランド」。83年「マイケル・K」、2000年「恥辱」で二度ブッカ−賞を受賞。03年ノーベル文学賞を受賞。
トルーマン・カポーティ
夜の樹 川本 三郎訳 新潮文庫 ★★★☆☆
短編集。「ミリアム」、「夜の樹」、「夢を売る女」、「最後の扉を閉めて」、「無頭の鷹」、「誕生日の子どもたち」、「銀の壜」、「ぼくにだって言いぶんがある」、「感謝祭のお客」の9編を収容。
「ミリアム」は、未亡人ミセス・ミラー(ミリアム)と不思議な少女ミリアムのお話。「夜の樹」、田舎駅から列車に乗車したケイと同席した少し恐ろしい変わった五十歳くらいの女性と棺桶男。「夢を売る女」、夢を売ったシルヴィア、オライリーとの淡い恋愛物語。「最後の扉を閉めて」、自分勝手のウォル�^ーの栄枯盛衰。「無頭の鷹」、風変りな絵描きの女の子レイチェルに惚れるヴィンセントの話。「誕生日の子どもたち」は、映画のシナリオになりそう、「昨日の午後、6時のバスがミス・ボビットを轢き殺した。」から、最後は「午後6時のバスが彼女を轢き殺したのはそのときである」、「銀の壜」、商店の売り上げを伸ばすために、銀の壜に入れた銀貨の金額を当てるゲームを行う。それを当てようと、貧乏な少年とその妹が毎日と、遠くからその店にやってくる。結果は。「ぼくにだって言いぶんがある」、若くして結婚した二人は、奥さんの実家に入るが、そこには、悪意の持つおばさん達が。「感謝祭のお客」、田舎町に住む裕福なバディが、彼を虐める嫌いなオッド・ヘンダーソンを、バディの親戚の集まりの感謝祭に、彼の親友ミス・スック(伯母さん)が招待し、問題が。。。
ミリアム、無頭の鷹、誕生の、銀の壜、は不思議な子供たちがでてくる短編です。それ以外は意外とストレート。物語は面白いが、全体的に奥深さを感じない娯楽小説。
ウラジーミル・ナボコフ
ロリータ 若島 正訳 新潮文庫 ★★★☆☆
あらすじだけですと、単なる変態(失礼)のお話。ロリータ、12歳の少女ドロレスの母親シャーロットと結婚するハンバート。狙いは娘のドロレス。手記の形式で、ハンバートがロリータ、ドロレスへの思いを語る。文庫で550ページにわたる長編ですが、読んでいて、少々呆れるのが感想です。ただ、注釈が相当あります。普通に読み飛ばすのは、もったいないのですが、このストーリーと長さで再読する気になる人はそんなにいないのでは?注釈は再読用につくられていますが、私は最初から時々注釈を参考にして読みました。
�鞄魔フ知識ですが、そもそも、そんなにダジャレに知識を背景に書く必要はあるのかなとも思います。多くの読んだ方は★★★★★ですが、私は、題材とあまりに衒学すぎて、疲れました。
レイモンド・カーヴァー
ぼくが電話をかけている場所 村上 春樹訳 中央公論社(絶版) ★★☆☆☆
短篇集。「ダンスしないか?」、「出かけるって女たちに言ってくるよ」、「大聖堂(カセドラル)」、「菓子袋」、「あなたはお医者さま?」、「ぼくが電話をかけている場所」、「足もとに流れる深い川」、「何もかもが彼にくっついていた」。
評価がわかれる短編かもしれません。読みやすいし、謎めいているし、不思議だし、読者の想像力に負うところも多いし。。。でも、どうも、嘘っぽい感じがします。とにかく、飲酒運転、ドラッグがよくでてくる短編ですね。「ぼくが電話をかけている場所」は、僕とJPが飲酒癖を治療するために、フランク・マーティンの療養所の中でのお話。
この短篇集の中では、「足もとに流れる深い川」が面白いかと思います。友人たちと釣りにいった場所で、女性の死体を発見するが、釣りを数日楽�オんでから、保安官に連絡するというお話で、スチュアートと妻のクレアの心理描写が面白いです。物語としても楽しめるでしょう。絶版でしたので、アマゾンの古本を購入。
「ぼくが電話をかけている場所」の英語版は出ている。”Where I’m Calling From”
アゴタ・クルストフ
悪童日記 堀 茂樹訳 早川書房 ★★★★☆
「ぼくら」が行う悪事の数々を日記形式で、超短編仕様で書かれた小説。「ぼくら」が淡々と行う悪事ではあるが、実は、時代背景、と著者の出身のハンガリーでの動乱時期を考えて、読むと、「ぼく�轣vの悪事が、少々やり過ぎの嫌いはあるものの、人間の良心・正義を感じてしまう。読み始めは、余り感銘を受けなかったが、読了すると、この小説の言いたいことが伝わってくる。著者の母国語でない、フランス語で書かれたことが、文学的な装飾や情景描写が少ないものとなり、かえって、シンプルな形式の小説になったようだ。小説の中では、場所を特定する地名は一切記述がなく、「大きな町」から「小さな町」に疎開し、双子の「ぼくら」が、お婆さん(母親の母)に預けられるという設定。また、このお婆さんが、悪童に匹敵す悪婆ではあるが、「ぼくら」とおばあさんとのやりとりもなかなかのものである。
解説によると、「大きな町」はハンガリーの首都ブタペスト、「小さな町」のモデルはオーストリア国境に近いクーセグという田舎町。第二次世界大戦が時代背景で、ハンガリーは、ハンガリー政府の同意なしのドイツ軍の圧力で、ソ連に宣戦布告(1940年6月27日)したが、1942年以降は、戦線から離脱するために連合国軍との単独和平を望んだ、かえって、ドイツ軍の国土占領を招き(1944年3月19日)、傀儡政権を押し付けられた。
ここで登場する将校は、ドイツ人で、従卒は同盟軍のオーストリア人。解放後は、ドイツ�Rに替って、ソ連軍が駐留することになる。
「私はね、窓から何もかも見たのだよ。あの一切れのパン……。しかし、懲罰は神だけの権限なのだ。おまえたちに、神の代理を務める資格はない」
�レくらは黙っている。彼が問う。
「おまえたちに祝福を授けてもいいかね?」
「それでお気が済むなら、どうぞ」
司祭は、ぼくらの頭の上に手を載せる。
カズオ・イシグロ
日の名残り 土屋政雄訳 早川書房 ★★☆☆☆
執事からイメージされるのは�A推理�ャ説の登場人物くらいで、あまり現実感がないので、イギリスのお屋敷の一流の執事たるものは、どうあるべきかという読み物として読んでしまうと単なるボヤキ?あるいは「執事の品格」になってしまいます。が、時代背景が、第一次世界大戦と第二次大戦の挟間で世界が大きく動く歴史をおさらいして読むと、もう少し、理解ができるものと思う。
ダーリントン卿にお仕えした執事の仕事の達成感と寂しさ、ダーリントン卿が失脚して、新しくアメリカから来たファラディ様に仕え、イギリス流とは違ったジョークを勉強しなければならない。執事のスティーブンが、ファラディ様の好意で休暇を取り、フォードを借りて、かつて一緒に働いた女中頭ミス・ケントン(ミセス・ベン)からもらった手紙を見てから、会いに行�ュ�ィ語。時代背景・スティーブンの執事としての人生・スティーブンとケントンの恋物語・ダーリントン卿の衰退とイギリスの衰退。
その時だったと存じます。男がこう言ったのは――「人生、楽しまなくっちゃ。夕方がいちばんいい。私はそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一番いい時間だって言うよ」 「たしかにおっしゃるとおりかもしれません」と私は言いました。
私はここに残り、今の瞬間を――桟橋のあかりが点燈するのを――待っておりました。先ほども申し上げましたが、楽しみを求めてこの桟橋に集まってきた人々が、点燈の瞬間に大きな歓声をあげました。その様�qを見ておりますと、あの男の言葉の正しさ�ェ実感されます。たしかに、多くの人々にとりまして、夕方は一日でいちばん楽しめる時間なのかもしれません。では、後ろを振り向いてばかりいるのをやめ、もっと前向きになって、残された時間を最大限楽しめという男の忠告にも、同様の真実が含まれているのでしょうか。
トルーマン・カポーティ
遠い声 遠い部屋 �ヘ野一郎訳 新潮文庫 ★★★★☆
現実と夢想と過去が時折混乱し、少々、読みづらいですが、少年ジョエルの心理を良く描いた小説だと思います。少々、お話としては難解かな。再読するともう少しわかるのかもしれません。13歳の主人公ジョエルが、まだ見ぬ父親の住む町へ一人で出かけ、そこに住むランドルフ、エイミイを訪ねる。そこのお屋敷にはいろいろと謎めいたことが多い。
個人的には、腕白・お転婆のアイダベルの心理描写をもう少し欲しい気がします。訳は全体的に非常にうまいのですが、手紙を候文にしているのは、古いかな。
登場人物
ジョエル・ハリソン・ノックス、ランドルフ、リトル・サンシャイン、エドワード・R・サンソム(ジョエルの父親)、エイミイ・スカリイ(その妻)、エレン・ケンダル(ジョエルの母親)、ミス・ウィスティーリア、アイダベル、フローラベル、ズー(ミズーリ、ジーザス・フィヴァーの孫)、R・V・レイシー、ジーザス・フィヴァー、ぺぺ・アルヴァレス(拳闘家)、シドニー・カッツ(カフェ明星の主人)、サミー・ラドクリフ(トラック運転手)、ケッグ・ブラウン(囚人)、ロミオ、サミー・シルヴァースタイン。
「虎百合の花が人の顔ほどの大きさに開く沼地のような窪みでは、蛍光を発する緑色の丸太が、黒い沼の水底に溺死体のように光っている」
「そうするとたちまち遠い声が、遠い部屋が、失われ遠くかすんだ声が、彼の夢を搔き乱したからだ」
「最初から、彼はこの邸には複雑な物音があるのに気づいていた。それは静けさと紙一重の物音であり、石や板のひそかな溜め息というか、古い部屋部屋がたえず息を吸いこみ吐き出しているかのような物音な�フだ」
「いまジョエルは十三という歳で、将来のどの時期におけるよりも死をよく理解していた――彼の内部では一輪の花が開きつつあった、やがて堅くむすんだ花弁がすっかりひろがり、青春の正午がひときわ�ヤ々と燃えさかるとき、彼もまた他の者たちのようにふり返り、他の扉の�o口を探し求めるであろう」
「白かびの生えた絨毯で柔らかなまわり階段が、ホテルのロビーから階上へくねっている。柱時計から突き出たカッコー鳥の悪魔的な舌は、無言のまま四十年前の時を告げ、ぎざぎざだらけのフロントデスクの上には、ぱさぱさで剥製のようにった鉢植えの棕櫚がのっている」
アガサ・クリスティー
アクロ�Cド殺し 早川書房 羽田詩津子 訳 ★★★☆☆
久しぶりに推理小説を読みました。「百年の誤読」を読んでから、この推理小説を読んだので、犯人を知っていました。しかし、やはり、五つ★ですね�Bしっかりと、楽しめました。
登場人物
エルキュール・ポアロ 私立探偵、
ロジャー・アクロイド 地主
ラルフ・ペイトン ロジャーの義理の息子(美男子)
セシル・アクロイド婦人 ロジャーの義理の妹
フローラ・アクロイド セシルの娘(美人)
ジェフリー・レイモンド ロジャーの秘書
ジョン・パーカー ロジャーの執事
ミス・ラッセル アクロイド家の家政婦
ア�[シュラ・ボーン アクロイド家の小間使い
ヘクター・ブラント ロジャーの旧友。少佐
フェラーズ婦人 �Lングス・パドック屋敷の未亡人
ジェームス・シェパード 語り手 医者
キャロライン ジェームスの姉
百年の誤読 岡野宏文×豊崎由美 アスペクト ★★★★★
丸の内オアゾの丸善では、「百年の孤独」(ガルシア・マルケス)が平積みされています。手にとって買おうか迷いました。読みたい本がまだ、たくさんあったので、今回はやめました。横浜の有隣堂に、雑誌を買いに立ち寄り、その際、外国文学の本棚を見ていると、孤独ならず誤読があるではないですか?まったく知らなかったので、手にとってさらっと見て、本棚に戻しましたが、一回りして、やはり、この本をもってレジに並んでいました。
よくも、これだけの本を読んでいますね、という感じですが、二人のやり取りが面白くて、ついつい読んでしまいます。いいのは、それぞれが、いい本、お勧め本に★を(1から5)つけるということです。五つ星が最高で、二人とも五つ星の中から、読んでいくのもよいかもしれません。1900年〜2000年の外国文学が対象です。果たして、名��ヘ面白いか。
二人とも五つ星(★★★★★×2人)の中で読んでみたいものは、「伝奇集」(ボルヘス)、「アクロイド殺し」(クリスティー)、「燈台へ」(ウルフ)、「ガラスの動物園」(ウィリアム)、「うたかたの日々」(ボリス・ヴィアン)、「遠い声 遠い部屋」(カポーティ)、「ロリータ」(ナボコフ)、「時間割」(ビュトール)、「アメリカの、鱒釣り」(ブローティガン)、「百年の孤独�v(マルケス)、「めくるめく世界」(アレナス)、「冬の夜ひとりの旅人が」(カルヴィーノ)、「ぼくが電話をかけてる場所」(カーヴァー)、「悪童日記」(クリストフ)、「日の名残り」(カズオ・イシグロ)。
ジェームス・ケイン (1892−1977 アメリカ)
郵便配達は二度ベルを鳴らす 新潮文庫 訳 田中西二郎 ★★☆☆☆
ミステリーというより純愛小説かな?映画とストーリーが全く違うような。。。
主人公チェンバーズにも、彼の勤め先の食堂の主人の美人妻のコーラにも魅力を感じない。ストーリ�[も今ひとつ面白いとは感じなかった。
吉屋 信子
屋根裏の二處女 図書刊行会 ★★★☆☆
大正時代の小説。復刻版。 乙女チックですが、�酷Iで、文章、物型が楽しめます。
やや自虐的な章子が、同じ寄宿舎の屋根裏部屋の、隣同士の美人でクールな秋津環に想いを寄せる物語。
なお、監修は嶽本野ばらです。註が面白いです。
(屋根裏)
この一つの語彙のうちに、章子は溢れるような豊富な、新鮮な、そして朦朧とした幽暗と、そして(未知)に彩られた奇怪と驚異と、幼稚な臆病な好奇心と――の張り切れるほどいっぱいに盛り上げられて充満しているのをその一刹那から感じた。その観念の前に(屋根裏)の語音は、非常に魅力ある巧みな美しい響きを伝えるものとなった、そして美と憧憬とを含んで包む象徴的の韻を踏ませてゆくのものとなった。
たとえば、(薔薇の花)――(珊瑚樹)――(初恋)――(・・・・・・)・・・・・
ああ、若者達の多くの幻想を寄せるに、ふさわしいこのあまたの数々の抒情詩集の中から引き抜かれた言句にも優って更に深くつよく若い心を搔き乱す如き心憎くも幽遠な響と感じを発するものと――章子にはなったので。
ジェフリー・フォード
シャルビューク夫人の肖像 ランダムハウス講談社文庫 ★★★☆☆
帯封に桜庭一樹氏絶賛!とありました。ミステリー。主人公は画家のビアンボ。肖像画で荒稼ぎをしていたが、自分の仕事にもっと、芸術性を目指したいと考えていた。資本家のリード氏から夫人の肖像画を注文され、依頼主の評価を得たが、夫人からは「あなたなんか、死ねばいいのに」と耳元で罵られる。そのパーティーの帰路、見知らぬ人から声をかけられる。その男の眼球には、瞳がなく、白い膜がかかっていた。彼は「ワトキン」と名乗り、主人のシャルビューク夫人の肖像画を依頼される。破挌な値段を告げられ、これをやれば、当面は嫌な肖像画を描かずに、自分の好きな絵を描けると受けることにする。しかし、�ム像画を描く条件は。。。
日本製の枯葉の屏風の向こうにいるシャルビューク夫人(ルシエル)を描かなければならなかった。
登場人物は、ビアンボの彼女の俳優サマンサ、サマンサの同僚エマ、ビアンボの友人の画家シェンツ、警官で画家のシルズ、ビアンボの絵の師匠サボット、ビアンボの弟子のエドワード、赤道から来た男のゴーレン�A錠前破りのウルフ、大金持ちのオシアク、結晶言語学者のルシエルの父親、母親、漁師のエイモリー、汚穢学者ボーン、それとシャルビューク。キーワードは「双子」??? 一気に読めます。映画を見ている感じでした。最初から最後まで、きっちりと書いていますが、最後をもう少し書き込んだほうが一段と楽しいかな。
「さっきは、どうしてわたしがビアンボとわかったんだ?」
「自己満足のにおいですよ。ナツ�<Oとカビのにおいが、ぷんぷんしているのです」(ワトソン)
桜庭 一樹
桜庭一樹読書日記 東京創元社 ★★★★☆
「私の男」の作家がどういう本を読んでいるのか、興味をもって読みました。本もさることながら、生活?の一端が垣間見えて面白い。よく食べ、よく読み、また、仕事に入ると、食欲ゼロ、読書ゼロの時が続く。ミステリーが中心ですが、私の読んだことのないジャンルが多く、いくつか本を購入しました。
「あなたに不利な証拠として」(ハヤカワミステリー)、「文士の生魑魅」(車谷長吉・新潮社)、「屋根裏の二処女」 (吉屋信子乙女小説コレクション・国書刊行会)、「シャルビューク夫人の肖像」(ジュフリー・フォード・田中一江訳・ランダムハウス講談社)、「不思議島」(多島斗志之・創元推理文庫)、「珍品堂主人」(井伏鱒二・中公文庫)を購入。
その他、興味があるのは、「愛についてのデッサン 佐古啓介の旅」(野呂邦暢)、「海の上の少女−シュベルヴ�Bエル短篇集」、「愚か者」(車谷長吉)、「妖櫻記」(皆川博子)、「白い果実」(ジェフリー・フォード)、「柘榴のスー�v」(マーシャ・メヘラーン)。「海の上の少女」は、光文社古典新約�カ庫から「海に住む少女」として復刊されていました。
しかし、速読というか、多読というか、凄いです。
ちなみに、桜庭氏がミステリー作家と知らず、紀伊国屋の小説のコーナーを探しても、見つからず、ミステリーのコーナーにありました(失笑)
以下、WEB版あり。
http://www.tsogen.co.jp/web_m/backnumber.html
http://www.tsogen.co.jp/web_m/sakuraba0704_1.html
私の男 文藝春秋 ★★★☆☆
第138回直木賞受賞作。テーマはどうも馴染めないし、また、登場人物の心の動きにどうも不自然なところがあるように思う。「花」(娘・主人公)と淳悟(父)との気持ちのやり取りの世界は、あまりいい気持はしないが、なぜか、筆力で�き込まれていく。海の情景描写はうまく、オホーツクの海、北国の重くて暗い空を想像してしまう。現在から過去へと時間を遡って、進めていく手法もうまい。このような設定でなければ描けない世界があるのでしょうが、もっと、違ったテーマで書いていれば、このもやっととした気持ちなしで読めるのかもしれない。しかし、全体的に暗さがありながら、淡々とした筆致で進められる「物語」をかく力は、期待大。
第一章
2008年6月 花と、ふるいカメラ
�u南太平洋って、この世の楽園とか、みんな褒めるけれど。たしかにきれいだし、すごく素敵だけど、でも、どことなく、ばかみたいな海よね。・・・脳裏にあったのは、子供のころ毎日のように見続けた、青黒く光る海だった。まるで意思を持つおおきな黒い怪物のようにわたしを飲み込んで、まっすぐ私の男のもとに送り届けたあの海。懐かしい、暗くけぶる夜の景色。もう何年も帰っていないけれど、わたしたちを結びつけた海も、つめたい大地も、いつまでもあの場所にあるのだろう。これまでも、ずっと。これからも、ずっと。海は、灰色の波を寄せては返しているのだろう。」
第二章
2005年11月 美郎と、ふるい死体
「それきり、一枚の絵画のようにすべてが静止した。窓辺に、座る男と、その男の膝に頭を乗せて寝る女。窓の外では吹雪がつめたい音を立てていた。キタ、という、二人の口をついて出た言葉を、また反芻した。キタ。キタからきた、二人。おかしな父と娘。」
第三章
2000年7月 淳悟と、あたらしい死体
「乱暴に襖を閉めると、冬の海から氷が押しよせてくるような硬い冷気が、押入れのおくから迫ってくるようだった。幻だ。」
第四章
2000年1月 花と、あたらしいカメラ
「わたしはじっと、海を見下ろした。ここからだと、冬のオホーツク海がよく見える。黒ずんで、波飛沫が氷の粒みたいで、どこまでも暗くて重苦しい、不思議な海。流氷の到来を告げる白いほそい帯が、水平線の辺りにかすかに浮かんでいた。凍りかけた海はシャーベットみたいに全体がねっとりしていて、地元ではそれを、海が眠たくなった、と言ったりする。寂しくて、とほうもなくおおきな、風景。わたしは物心ついたころからずっと海を見て育ってきた。紋別にきてからもそうだった。わたしは、北のこの海がやっぱり好きだ�B」
第五章
1996年3月 小町と、凪
「冬はとにかく、一面の白だ。平野がぜんぶ雪にかくされて、白い布をかぶらせたようで、空もまた青ではなくて、白くけぶる。空と平野の切れ目がどこかわからなくなるほどだ。天気が�れると、空だけが暗い灰色になる。海も、流氷に覆われてどこまでも白く、海と平野と空が、同じつめたさで凍りついている。海辺の道に出ると、春が近�テくにつれ割れ始めた流氷が、黒々とした海に浮かんでいるのが見えた。オホーツクの、冷酷な冬の終わり。」
第六章
1993年7月 花と、嵐
「嵐が、くるよ。窓の桟にもたれて、濃い紫色に広がる夜空を、わたしはまっすぐに指差した。青苗岬の先端にあるちいさな家は、民宿の並びに建てた平屋で、いつも海の気配に満ちていた。地を揺らすような、波の音。からだににじり寄ってくる、潮の匂い。北の黒い海は、その夜に限って嘘のように鮮やかな紫色の空を照りかえして、ガラスみたいにてらてらとしていた。」
青山 七恵
やさしいため息 文藝 08年春号 ★☆☆☆☆
芥川賞受賞第一作。人づきあいの不器用な姉と、人あたりのうまい弟が電車の中で数年ぶりに出会う。弟は姉のマンションに転がり込み、毎夜、姉に一日の出来事を聞いて、日記風に簡単に記録していく。弟の友人緑君と出会った姉は、緑君に仄かな恋心を持つが。。。
非常に読みやすい文体で自然と小説の世界に入っていけるが、どこか、作られた世界のような気がしてくる。姉や弟の生きる事の悩みのようなものは感じるが、それは余りに日常的過ぎないのかと感じてしまう。西村憲太の私小説を読んだ後だと、どうも軽く感じてしまう。もっと、深い心の葛藤を描写してほしいが、そうした事は、必要ないのかもしれません。
角田 光代
福袋 文芸 08年春号 ★☆☆☆☆
短編。私と出来の悪い兄の婚約者で兄を探す。炎天下の大阪が舞台。私は兄が見つかりませんようにと考え、婚約者は見つかりますようにと祈る。私が思う兄と婚約者が知る兄との格差に驚きながらも、個性の強い婚約者に振り回されながら、兄を見つけたのかな?
西村 賢太
どうで死ぬ身の一踊り 講談社 ★★☆☆☆
著者の初めての出版。主人公、テーマはほぼ同じと思っていいと思います。「墓前生活」、「一夜」の二編を収録。
二度はゆけぬ町の地図 角川書店 ★★☆☆☆
暗渠の宿、けがれなき酒のへどがよかったので、購入した最新作。貧寠(ひんる)の沼、春は青いバスに乗って、潰走、腋臭風呂。
主人公は、ほとんど共通で、港湾労働など稼いで一日一日を生活している。酒屋のアルバイトで稼ぎ、前借をしたりして信用を失う青年の話、あるいは、喧嘩して留置場に入れられる青年の話、人の良さそうな大家さんが、滞納する主人公に対して変貌して罵倒される話や、腋臭の臭い男に、風呂屋で煙草をふかしていると煙たがられる話等、読みやすいが、前作に比べると、新鮮感もなく、感銘は受けなかった。
暗渠の宿 新潮社 ★★★☆☆
今回の芥川賞候補者の作品。評価が高い選者がいたので、購入。自らの経験を綴った私小説。「けがれなき酒のへど」、「暗渠�フ宿」の二編。藤澤清造の作品集を製作しようとし�ス中卒の人が主人公。二編とも共通している。心理描写はうまく、主人公のいらいらしたやるせない思いが伝わってくる。「けがれなき」は、ソープランドに勤める女性に恋をして、結局、お金をだまし取られるような主人公であるが、藤澤清造の菩提寺の副住職の飲んだ後に、「日頃あれ程うす汚い気持�ソで安酒を��閨Aつまらぬ所業を繰り返して一向に吐かない自分が、なぜ今夜のような善意にみちた、澄みきった、けがれなき酒に限って吐�ュ羽目になるのだろうか、とふと思った。」のである。
楊 逸 ヤン・イー
ワンちゃん・老処女 文芸春秋刊 ★☆☆☆☆
今回の芥川賞の候補作。中国人では初めての候補。日本人が書いたとしたら評価された�ゥどうか。平易ではあるが、人物の描写や心理の動きがもうひとつ。「老処女」もストーリーがすぐに読めてしまうし、主人公が40を過ぎた年齢で、恋愛についての考え方は、どうも不自然。しかし、外国語でここまで書いた力はすごいと思います。
なお、同芥川賞の候補作で、文学界11月号に掲載された「�ャ銭を数えては」、一部の選者から評価が高かったので、探したが、書店には在庫がなかった。かわりに、同著者の「暗渠も宿」「けがれなき酒のへど」を購入。
川上未映子
乳と卵 文芸春秋08年3月号 ★☆☆☆☆
芥川賞受賞作品。大阪弁で綴る主人公。その姉巻子は39歳で、娘緑子と豊胸手術のために上京。2泊3日の三人の出来事。緑子は、ノートで文字を書いて、母親やその妹と話す。主人公の語り口が大阪弁で、読点を多用し、とめどもなく話しかける。豊胸手術の無意味さを緑子が訴えるのか?卵を自分自身にぶつけるくだりはいかにもという感じ。
同芥川賞の候補になった「ワンちゃん」が単行本で出ていたので購入。中国人作家。文芸春秋の芥川賞選者の中では、石原慎太郎は、乳と卵とワンちゃんに対しては極めて批判的であった。
イ・ミョンオク 樋口容子訳 作品社
ファム・ファタル 妖婦伝 ★★★★★
これもすごく面白い本。続けて、なかなか興味深い題材の本を見つけることができてラッキーでした。綺想迷画大全がやや変わった絵をテーマにしていますが、この本は悪女?を描いた絵をテーマにしたもの。残酷(サロメ・メディア・スフィンクス・メデューサ・ユーディット)、神秘(イブ・モナリザ・キルケ・パンドラ・セイレン・ロクセラーナ・クレオパトラ・ジョセフィーヌ・ロリータ)、淫蕩(マリリンモンロー・オンファーレ・デリラ・カルメン�Eナナ・メッサリナ・リリス・�oテシバ)、魅惑(ヘレナ・ヴィーナス・フィリス・フリュネ・レカミエ・サバティエ・ハミルトン夫人)。よくぞ、画家はこのような女性をテーマに描いてきたものだ。
中野美代子
綺想迷画大全 飛鳥新社 3619円+税 ★★★★★
すごく面白い本。いったい著者は何者か?孫悟空の専門家で、とても多くの著書があるが、絶版ものも�スい。アジアの絵が中心ではあるが、西洋のものも扱い、テーマが面白い。交錯する異形、空間のあそび、動物たちの旅、いつもできごとの4章からなる。絵だけ眺めていても変わったものも多く、興味が持てるはずです。
図録
モディリアーニと妻ジャンヌの物語展 Modigliani et Hebuterne, le
couple tragique
山口県立美術館 07年11月10日〜12月16日
新幹線
モディの絵では、若い娘の肖像(ルイーズ)が、よかったかな。スーチンの肖像をモディとジャンヌがそれぞれ描いて、並べて展示している�フも面白かった。ジャンヌはなかなかカラフルな色使いですが、やはり、物真似っぽさがありますね。
帰りに、湯田温泉「かめ福」で一風呂浴び、東京庵で長州そばを食べてきました。
図録
モーリス・ユトリロ展
福岡県立美術館 07年10月26日〜12月2日
アルコール中毒のユトリロは、親族に軟禁状態で絵葉書を見ながら、絵を書いて、その収入�ヘ親に入り、ユトリロはワインを貰っていたとのことでした。絵葉書を見ながら絵を書くのも、とても物悲しいきもちでしたが、白を基調とした絵が多い中、ある時期はとてもあかるい色合いを使っていた頃もあったようです。
図録
シャガール展
上野の森美術館 07年10月13日〜12月11日。
図録の表紙は青・黄・黒がありました。
古居 みずえ
岩波フォト・ドキュメンタリー 世界の戦場から
パレスチナ 瓦礫の中の女たち
中野 京子
怖い絵 ★★☆☆☆
試みはとても面白いと思いました。ドガに踊り子の絵の解説は面白かっ�ス。ただ、全般的には、怖いという印象を受けるものは少なく、「怖い」の意味合いをもう少し伝える表現があったら、もっと面白いのではないでしょうか。有名な絵の再確認にはいいと思います。ベーコンのベラスケスの話はGOOD。
ギュスターヴ・モロー 画と文 藤田尊潮 訳編
ギュスターヴ・モロー
自作を語る画文集 夢を集める人
グザヴィエ・ジラール 著 高階 秀爾 監修
知の発見 双書 創元社
マティス
シルヴィ・パタン 著 高階 秀爾 監修
知の発見 双書 創元社
モネ
図録
印象派とエコール・ド・パリ展
9月4日〜20日 福岡三越9階「三越ギャラリー」
これはずごい展覧会でした。よくぞこれほどの絵を集めたと思います。また、展示の仕方も、シンプルですが、非常に分かりやすくて、初心者の印象派前後の絵の勉強にはとてもいいと思いました。キスリン�Oの絵は最後に1枚ありましたが、残念なのはモディリアーニが一枚も展示されていなかったことです。その点を除けば、とてもいいと思います。結局、三回見に行きました。
図録
キスリング展
07年9月1日〜10月8日 北九州市立美術館
ART BOOK
モディリアニ 孤高の異邦人 昭文社
図版が小さいのが難点。2300円+税であれば、もう少し大判のものを出して欲しい。分かりやすいが、少々物足りないか。TASHENから出版されているモディリアニの方がお勧めです。(1500円+税)
ベルンハルト・シュリンク
朗読者 松永美穂訳 新潮文庫
15歳の少年と36歳のハンナとの恋の物語?と思いきや・・・。彼は彼女に学校で習った物語等を朗読してあげるが、彼女は突然消えてしまう。彼が大人になって法学を勉強し、あるナチスの裁判で彼女と再会。彼女は被告席に。
久しぶりのドイツ文学です。ブリキの太鼓以来の大ヒットした小説とのこと。
椎根 和
平凡パンチの三島由紀夫 新潮社 1400円
久しぶりの三島由紀夫の評論を読みました。三島の違った側面が読めます。
魯迅
阿Q正伝・狂人日記 竹内 好 訳 岩波文庫
この時代の背景を理解していないので、よくわかりません。阿Qが何をいいたいのでしょうか。恐らく時代批判です。もっと、勉強しないと。。。
坂口安吾
ちくま日本文学全集 坂口安吾 文庫 筑摩書房
「桜の森の満開の下」で読みたくて買いました。残酷な話ですが、物語としての一読の価値はありますね。
青山 七恵
ひとり日和 文芸�t秋07年3月号
第136回芥川賞受賞作。春・夏・秋・冬・春の手前。吟子おばあさん宅に居候することになった知寿さんが、恋に悩んだり、おばあさんに若さをひけらかして、意地悪したりしながらも、おばあさんとの微妙な間隔を少しずつつめていく物語。駅の近くの古い一軒家を中心とした設定で、ドラマチックなストーリー性はないものの、知寿さんの細やかなこころの動きがうまく描かれている。とても、読みやすい文章です。
春・「雨の日、わたしはこの家にやってきた。」から始まり、春の手前・「電車は少しもスピードをゆるめずに、誰かが待つ駅へとわたしを運んでいく。」で結ぶ。
ジョン・ボールトン・スミス
アート・ライブラリー ムンク 佐藤 幸宏 訳 西村�蒼X
エドヴァルト・ムンク(1863年〜1944年)。最初の解説ページの図版・挿絵を除いて、すべてカラー。自画像の3枚は1895年、1909年、1940〜1942年に描かれた物で、それ以降はほぼ時代順に48点のカラー図版と32の挿図があります。ムンクは「叫び」が有名ですが、初期の自然主義的、写実的なものから象徴主義に由来する感情的、観念的な絵と変わっていきます。1899〜1900年の「生命のダンス」が最も象徴主義的、哲学的な作品といわれています。1899〜1901年に描かれた「桟橋の少女たち」はバリエーションも多く、後期には木版でも作品化されています。「2頭立ての馬」はとても力強い絵で、かつてのムンクの特徴であった不安感があらわれていない絵です。
藤永 香織
ハヤーティ・パレスチナ 夢をつなぐカフェ 新風舎
友人から読んでみてといただいた本。パレスチナ人と遠距離結婚した著者(年に一度、エジプトでしか会えないが毎日電話をしている)が、ボランティアから学んだことや反省から、パレスチナ人の自立を探る手記。ガザ地区に住むパレスチナ人にも、難民もいれば、そうでない人もいるが、貧富が逆転している場合もあり一筋縄でいかないパレスチナの事情がよくわかる。イスラムの休日が金曜日であるとか、ラマダン、犠牲祭の話、パレスチナ人の夫が経営するカフェによって、少しずつ、パレスチナの人たちが自立していく様子が生き生きと描かれている。「活動はあくまでもパレスチナ人のためにあるべきで、私たち外国人の自己満足のためであってはいけない」、「子供には本を、大人には仕事を」、「ささやかでも幸福感や安定感を手にすれば相手にやさしくする余裕が生まれる」、「相手の立場になって考える想像力」、「相手をきちんと認識せずに先入観や価値観を押し付けるのが、いかに危険か」と、ヒステリックにならずに、冷静に分析している人間論でもある。現在、日本の社会を考えるうえでもとても示唆に富む言葉だ。一夫多妻制は、色々な考え方もあるが�A「女性や子供の保護」でもあり、アラブの女性にとって「制約」と「保護」は表裏一体である。ハヤーティとはMy Lifeのアラビア語。
朽木 ゆり子
フェルメール全点踏破の旅 集英社新書
図版はカラー。フェルメール33点を年代順ではなく、現在、展示されている美術館等で鑑賞していく旅。ベルリン、ドレスデン、ブラウンシュバイク、ウィーン、デルフト、アムステルダム、ハーグ、ロッテルダム、ロンドン、パリ、エジンバラ、ワシントン、フィラデルフィア、ニューヨーク。フェルメールと完全に認定されていないもの�煌ワめると、37点あるが、そのうちの33点を踏破。しかし、フェルメールの晩年の絵はどうもいただけない�ナすね。
ピカソ マティス シャガール 巨匠が彩る物語(図録)主催 うらわ美術館06年11月18日〜07年2月18��j
うらわ美術館で開催中の挿絵。「芸術家の本」の展覧会です。ピカソ「いきものたち」、シャガール「寓話」と「ダフ二スとクロエ」、フェルナン・レジェ「サーカス」、アンリ・マティス「ジャズ」、アレクサンダー・コールーダー「祝祭」、アンドレ・ドラン「パンタグリュエル」、ジョアン・ミロ「ひとり語る」「ユビュ王」。ドランのパンタグリュエルはストーリー性も版画も面白い。シャガールの寓話は黒一色ですが、ダフニスは色彩豊かなリトグラフ。本当にこんなにきれいな色が出せるものだと感心しました。すごい。
谷川 渥(あつし) 編
廃墟大全 中公文庫
ドイツ・ロマン主義のカスパー・ダーヴィット・フリードリヒ(1774−1840念・ドイツ画家)の絵画「樫の森の修道院(1809年)」を見て、廃墟に興味を�エじ、購入。種村季弘、谷川渥他合計16名の著者が「廃墟」について語る。この本とは別に、「廃墟」をテーマにした映画はアンドレ・タルコフスキーの「ぼくの村は戦場だった」「アンドレイ・ルブリョフ」「ストーカー」「ノスタルジア」がある・また、ドイツ・ロマン派の作家としてはティークがおり、「ルーネンベルク」の「あの石の城のなんと美しくひとの心�引き付けることでしょう」の一節は有名。
ダニエル・マルシェッソー
シャガール 色彩の詩人 訳 高階 秀爾
「私は夢を見ない」のシャガールの言葉には驚いてしまいます。彼の絵は、遠近法に関係なく、家や人がいたり、動物や女性が空を飛んだりしています。色彩はとても鮮やかで綺麗。この本でシャガールの虜に?
バタイユ (Georges Bataille) (1897−1962年・フランスの作家、思想家)
空の青み Le Bleu du ciel 訳 伊東守男
エディートという妻のいる主人公は、悪化する時代背景の中、自虐的に生きながらも、ダーティ(ドロテア)を愛し、ラザールを困惑させ、グゼニーを翻弄する。
アンドレ・ブルトン
ナジャ 著者による全面改訂版 巌谷 國士 訳 岩波文庫
「ナジ�メv、シュルレアリスムの生んだ最も重要な作品と言われている。小説なのか実話なのかよくわからない。序言(遅れた至急報)から、始まり、11ページから70�yージまで(第一部)は、「ナジャ」として読むとなかなか主人公が登場しない?いらだちを感じる。しかし、71ページから171ページまで(第二部)は、一気に読め、また、不思議な世界に誘われてし�ワう。現実の延長にこの世界がある。そして、173ページ以降(第三部)へと続く。写真が挿図されているが、ナジャのデッサンもあり、この話が実話に基づいたものであることがわかる。脚注が多いので、それを無視して読んだほうがよいか�烽オれない。余裕のある方はもう一冊購入して、脚注を片手に読むことをお勧めします。ナジャの本名は、レオナ。
訳注によると、底本は、1963年5月にパリのガリマール出版社から刊行されたもの(1963年版)。その�齡N後に同出版社からポケットブック版(リーヴル・ド・ポッシュ版)が出た。体裁は1963年版と違う。1974年にも同出版社からフォリオ叢書版が刊行(フォリオ版)。1988年に同出版社のプレイヤード叢書に「アンドレ・ブルトン全集�vが入り、「ナジャ」があり、巻末にマルグリット・ボネらの詳細な解題と注が付された(プレヤード版)。改訂以前の版本は、1928年にガリマール書店から「ナジャ」刊行されていた�i1928年版)。序言は1963年版から追加。本文は、修正箇所が300以上になる。写真も、変更あり。
しかし、な�コ、アンドレ・ブルトンは35年後にこんなに大幅な改訂を加えたのでしょう?「私は誰か?・・・誰がいるのか?あなたなのか、ナジャ?あの世が、あの世のすべてがこの人生のなかにあるというのは本当か?私にはあなたのいうことがきこえない。誰がいるのか?私ひとりなのか?これは、私自身なのか?」
現代思潮新社 からは、1996/12に単行本として、稲田三吉訳があります。
白水社 からは、1989/05に新書として巌谷國士訳があります。83年頃にも野中ユリ装幀の単行本が白水社から出ていた模様。
巌谷 國士(いわや くにお)
シュルレアリスムとは何か ちくま学芸文庫
シュルレアリスムとは何か、メルヘンとは何か、ユートピアとは何かの三回の講演記録。特に、シュルレアリスムの項は、おそらく、誤解しているシュルレアリスムをわかりやすく解説している。人物では、アンドレ・ブルトン、マックス・エルンスト。用語では、自動記述、オブジェ、コラージュ、デペイズマンがキーワード。また、脚注が優れていて、参考になる書籍や言葉の意味が紹介されている。超現実と現実は繋がっている。ここでいう超は「超える」ではなく、超スピードの超の意味にとるほうがわかりやすい。「現実」と「超現実」との間は、度合いや段階の差しかなく、連続している。「連続性」がヒント。「いつも見なれたおなじ町を歩いていて、ふだんは気がついていないんだけれども、あるときその町がちがうふうに見えてくる、なんでいうことはよくあります。(中略)道ばたをふと見ると石がおちていて、�サれが不思議な形をしていて、思わず拾ってきたくなる。鳥なら鳥の形をした石があって、つぎの瞬間にまた別の出来事がおこり、そこへ鳥がとんできて何か奇妙な動きをするとか、そんなようなことは案外よくあるんじゃないか。そこらへんから『超現実』を出発させたっていいわけです」(27P〜28P)
KISLING 生誕100年記念キスリング展図録
(1991年11月19日〜12月29日・三越美術館他)
キスリングの図録をオーク�Vョンで購入。15年前の図録にしては、状態も非常に良く満足。熊本でのエコール・ド・パリ展ではキスリングのものは7点あったが、展示されていた「赤いセーターの女」「サン=トロペ近郊」「スペインの風景(1915年)・同題の1913年のもの(プロヴァンスの風景)とは異なる」の3点はこの図録には含まれず。キスリングの1912年から53年までの絵を制作年代順に78点掲載。「イングリッド」もそうであるが、表紙の「オランダの女性」も、まるで人形のような絵であり、輪郭がはっきりとした色合いは、鮮明で、キスリングの絵の特徴がはっきりと感じられる。
Moise
KISLING (1891-1953) ポーランド生まれ。
バルビゾンから印象派 図録
2006年7月15日〜9月3日
風景画中心のバルビゾン派(1830年頃〜70年頃)から初期の印象派(1870年頃)までの絵画と版画。全体的に暗い風景画が多い。クールベの「もの思い」は図録より本物の方が、暗みが多く、吸い込まれそうな絵。ミレイの「食事の支度をする若い母親」は有名であるが、とても小さな絵で、驚きました。これも小さな絵ですが、ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャの「ジプシーの母と子」は、子供の表情と手のしぐさが可愛らしいものです。点描の肖像画は珍しいと思いますが、アンリ=エドモン・クロスの「クロス夫人の肖像」はインパクトの強いものです�B87点。
画家 ジャン=バティスト=カミーュ・コロー、ポール・ユエ、ジャック=レイモン・ブラカサ、コンスタン・デュティユー、ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ぺーニャ、コンスタン・トロワイヨン、ジュール・デュプレ、ピエール=エティエ�塔k=テオドール・ルソー、シャルル=エミール・ジャック、ジャン=フランソワ・ミレー、フランソワ=ルイ・フランセ、レオン=ヴィクトル・デュプレ、シャルル=フランソワ・ドービニー、アドルフ・アピアン、ギュスターヴ・クールベ、ヨーハ�刀<oルトルト・ヨンキント、アンリ=ジョゼフ・アルピニー、ウジェーヌ=アントワーヌ・ラヴィエイユ、ウジェーヌ・ブーダン、アレクサンドル・ドゥフォー、ジュール・ブルトン、ジャン=フェルディナン・シェニョー、レオンス・シャブリ、オーギュスト・アロンジェ、アンリ・ファンタン=ラトゥール、ポール・セザンヌ、アルフレッド・シスレー、クロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、アルマン・ギヨマン、レオン・リッシェ、エマニュエル・ダモワ、エミール・クラウス、アルベール・ルブール、フィンセント・ファン・ゴッホ、アンリ=エドモン・クロス、アンリ=ウジェーヌ・シダネル、ピエール・ボナール。知らない画家も多いですね。
エコール・ド・パリ プリミティヴィスムとノスタルジー 図録
2006年8月4日〜10月9日 熊本県立美術館
エコール・ド・パリ�Wは国内でも、何度か開催されています。過去の図録では、1985年開催のもの(絵画・彫刻96点)を所持しています(古本にて購入)が、今回は、作家の範囲も広く、地方で開催されたものと�オては、展示点数も多い方(絵画・彫刻85点)かもしれません。キスリングの「イングリッドの肖像、スウェーデンの少女」は110×82.5pと大型の絵で、輪郭のはっきりとした綺麗な絵でした。パスキンの「椅子にもたれ�髀ュ女」は、タッチが柔らかく印象的でした。モーリス・ド・ヴラマンクの「人形を持つ少女」は色合い、表情と不思議な絵です。
10月18日から兵庫県立美術館で�煌J催。6月3日〜7月30日
作家 アレクサンダー・アーキペンコ、坂東敏雄、マリア・ブランシャール、マルク・シャガール、アンドレ・ドラン、藤田嗣治、ナターリヤ・ゴンチャロヴァ、アンリ・エダン、キキ(アリス=エルネスティーヌ・プラン)、キスリング、ピンクス・クレメーニュ、アメデオ・モディリアニ、シモン・モンザン、チャーナ・オルロフ、ジュール・パスキン、パブロ・ピカソ、アンリ・ルソー、シャイム・スーティン、アマデオ・デ・スーザ=カルドーソ、レオポルド・シュルヴァージュ、キース・ヴァン・ドンゲン、マリー・ヴァシリエフ、モーリス・ド・ヴラマンク、オシップ・ザッキン、ウジェーヌ・ザック。
モディリアニ 「カリアティド(1914年・混合技法・紙)」、「青いカリアティド(�xアトリス・へステイング・1914年・青とオークルの色鉛筆、黒鉛・紙)」、「新聞紙のカリアティド(1914年・インクと色鉛筆・新聞紙)」、「青い目の女(1918年・油彩・カンヴァス)」、「扇を持つ女(1919年・油彩・カンヴァス)」、「スウェーデン娘�iアニー・ビャーネ・1919年・油彩・カンヴァス)」、「自画像(鉛筆・紙)」、「膝に手を置く男の裸像(鉛筆・紙)」。
キスリング 「スペインの風景(1915年・油彩・カンヴァス)」、「果物のある静物(1914年・油彩・カンヴァス)」、「プロヴァンスの風景(1913年・油彩・カンヴァス)」、「サン=トロペ近郊(1917年・油彩・カンヴァス)」、「プロヴァンスの庭師(1917年・油彩・カンヴァス)」、「赤いセーターの女(1917年・油彩・カンヴァス)」、「イングリッドの肖像、スウェーデンの少女(1932年・油彩・カンヴァス)」。
ジャニーヌ・ヴァルノー
ピカソからシャガールへ ―洗濯船(バトー・ラヴォワール)から蜂の巣(ラ・リューシュ)へ― 監修 高草茂 清春白樺美術館発行
モディリアニ関連の本はないかと探していたときに、たまたま、ジュンク堂書店で見つけた本。山梨県に、バトー・ラヴォワールを再現した建物や白樺美術館があるのを初めて知りました。本書は、いわゆるエコール・ド・パリと呼ばれるようになった芸術家達が住んだバ�gー・ラヴォワールからラ・リューシュの時代の画家達の伝記ともいうべきもので、一人の芸術家に焦点を合わせるのではなく、この時代を全般的に捉えた読み物としてはとても興味深く読めます。
アポリネール、アルキペンコ、インデンバウム、キコイーヌ、キスリング、ザッキン、サルモン、シャガール、ジャコブ、スーティン、ドラン、パスキン、ピカソ、ブーシェ、ブラック、マティス、マルロー、モディリアニ、リプシッツ、アンリ・ルソー、レジェ、ローランサン他。
ジューン・ローズ
モディリアーニ 夢を守りつづけたボヘミアン 宮下規久朗・橋本啓子 訳 西村書店
アンドレ・サルモンのモディリアニの生涯は、�゙が見た、あるいは覚えているモディリアニ像であったが、本書は、多くの人から取材して、筆者がまとめたモディリアニ像。芸術を理解する人たちとそれを食い物にする人。貧困と愛する女性と生きたモディリアニ。彼と母親との書簡などもあり、イタリアを愛して、フランスで死んだモディリアニの生涯が克明に語られている。カリアティード(柱を支える女性像)を描き、多くの女性をデッサンするモディリアニ。彼が絵を描こうとする内なる力が見えてきます。図版がモノクロは残念。また、図版と文章との関連が少ないので、本書とは別に図録を併せ持って読んだ方がいいかもしれません。
ビリー・クルーヴァー 北代美和子訳 白水社
ピカソと過ごしたある日の午後 コクトーが撮った29枚の写真
本書はジャン・コクトーが撮った29枚の写真を、筆者が科学的に分析して、場所や日付を特定し、ジャン・コクトーがピカソと会った一日を想像したもの。6枚撮りの�tイルムであれば、あと1枚の写真があるはず。当初は18枚の写真の分析からスタートしたが、1986年「アート・イン・アメリカ」に発表後、3枚が新たに発見されて、フランス語版(1993年)とドイツ語版(1994年)で初めて公表された。以降、発見されたものを含めて24枚で英語版(1997年)が発行されたが、29枚まとめたものは日本語版が初めてである。1916年8月12日の午後のモンパルナスを楽しめます。登場人物。ヴァランティーヌ・グロス(画家・29歳)とエリック・サティ(音楽家・50歳)ピカソ(34歳)、マックス・ジャコブ(詩人・画家?40歳)、アンリ・ピエール・ロッシェ(作家・37歳)、マヌエル・オルティス・デ・ザラテ(画家・29歳)、マリ・ワシリエフ(画家・食堂経営・32歳)、エミリエンヌ・パクレット・ジェスロ(女優・モデル・20歳)、モイース・キスリング(25歳)、キスリングの愛犬クスキ。アメデオ・モディリアニ(32歳)、アンドレ・サルモン(詩人・美術評論家・34歳)。ジャン・コクトー撮影(27歳)
ビリー・クルーヴァー 協力 ジュリー・マーティン 北代美和子訳 白水社
キキ 裸の回想
1920年代のモンパルナスのキキ。幼少時代の貧困と苦労。芸術家・写真家等に憧れていたキキはモデルとして、画家として認められてくる。彼女の生い立ちとモデルとなった写�^や絵。また、彼女が描いた絵を掲載。フジタ、キスリング、コクトー�Aマン・レイ、モディリアニ他が登場。1901年10月に私生児としてブルゴーニュで生まれる。
アンドレ・サルモン 福田忠郎訳
モディリアニの生涯 美術公論社
モディリアニと同時期に生きた詩人が書いた伝記。しかし、事実でない部分も多く含まれているというが、モディリアニの酒と薬で退廃した生活の中で、二人の女性と知り合い、画家として開眼していく姿が描かれている。二人の女性とは、自称詩人の英国人ベアトリス・へスティングとモディリアニの死後、彼に殉じたジャンヌ・エピュテルヌ。藤田嗣治、スーチン、キスリング、ピカソも登場する。モディリアニはダンテの「神曲」、マラルメ、ランボー、ボードレール、ニーチェ、ベルブソン、ダヌンツィオを好む。ロートレアモンの「マルドロールの歌」を諳んじていた。
1884年7月12日、イタリアのトスカナ地方の港町リヴォルノに生まれる。1906年(21歳)パリに出て、モンマルトルに住み、ピカソ、サルモン、ジャコブとめぐり会う。ユトリロと親交。1909年(24歳)モンパルナ�Xに移る。ブランクシーンと親交を結び、彼の影響で彫刻を始め、一時帰省する。1914年(29歳)ベアトリス・へステイングと2年間同棲する。1915年(30歳)絵画に専念。1917年(32歳)アカデミー・コラロッシの生徒ジャンヌ・エビュテルヌと知り合う。生涯唯一の個展を開催するが、裸婦の絵が風紀上問題とのことで中止となる。1920年(35歳)サン・ペール街の慈善病院で病死。翌日、エビュ�eルヌは投身自殺。
千足伸行(監修・執筆)石鍋真澄(執筆)
すぐわかるキリスト教絵画の見かた 東京美術
日本人にはあまりなじみのないキリスト教絵画。時々、生々しい絵を見て、意味不明であったものが、よくわかります。聖書にも色々あって、まだまだ、奥は深そうですが、さわりの部分を学ぶにはとてもわかりやすい。値段が少し高いかな。2,100円。
旧約聖書の世界、キリストの生涯(1)(2)、聖母マリアと聖家族、預言者と聖人の世界の五章からなる。
天地創造(The
Creation) 夢見る乙女たちに託された天地創造神話。神はご自分にかたどって人を創造された。・・・「創世記」。絵はバーン・ジョーンズの天地創造シリーズ(1876年)。バーン・ジョーンズはラファエル前派。
ドリース・クリストフ
�Aメデオ・モディリアニ TASCHEN
ニュー・ベーシック・アート・シリーズのモディリアニ画集。MODIGLIANI(1884-1920).彼の画風は一目瞭然ですが、レンブラントやラファエル前派の影響があると�セわれている。余計なものを描かない、あるいは、古典主義を模倣とする部分か?裸婦を描いたものにすばらしい物も多いが、「黄色いセーターのジャンヌ・エビュテルヌ」は、モディリアニらしくない、らしい絵で、とても好きです。解説のページと図版のページがとんでいるので、ページを繰るのは少々煩雑であるが、手頃な価格(1500円)で鑑賞できるので、とてもいいシリーズです。
パスカル・ボナフー 著 高階秀璽 監修 村上尚子 訳
レンブラント 光と影の魔術�t 創元社
オランダのライデンに生まれた、栄光と挫折のレンブラントの一生を、図版とともに解説。見開きにある図版に工夫が欲しい。絵が見づらい。翻訳はとても�ヌみやすい。「夜警」(1642年)は有名。
Rembrandt
(1606-1669)
小林頼子他
フェルメール 六耀社
各専門家がフェルメールの見方を紹介し、分析。図版も�L富。
序文 ミニマルな世界(小林頼子)
端正な室内はいかに構成されたか(小林頼子)、観察の光と芸術の光(徳丸仁)、フェルメールの絵画に聴く音風景(藤原怜子)、画中画は語る(阿部純子)、
鏡の中の世界(蜷川順子)、フェルメールの妻と女性観(小林頼子)、作者を問われる四点の絵 他。
小林頼子・��木ゆり子
謎解きフェルメール
以前、ドレスデン展で「窓辺で手紙を読む女」を見ましたが、地味な絵ですが、光と影が印象的で、静かな感じを受けました。この本では、フェルメールの生まれたオランダのデルフトの街を紹介しながら、各絵を年代的に、分かりやすく説明しています。世紀の贋作事件、盗難史は、絵の話とは別として、面白い。「青いターバンの少女」はどこで見たのだったかな?
Johannes Vermeer
(1632-1675)
ディヴィッド・ロジャーズ
アート・ライブラリー ロセッティ 湊 典子訳 西村書店
解説の図版を除いて、すべてカラーで、ほぼ時代順に48点のカラー図版と41の挿図があります。それぞれの絵に解説がありますが、やや翻訳がこなれていないせいか、前後関係がわかりにくい箇所もあります。ざっと、絵と解説を先に読んでから、最初の解説のページを読んだ方がわかりやすいか。「ベアータ�Eベアトリクス」は有名な絵で、どこで見たのか覚えていませんが、印象に残っていた絵です。1855年頃に描かれた水彩にも、いいものがありました。リジー(エリザベス)・ジダルをモデルにして、音楽をテーマにした不思議な絵「クリスマス・キャロル」。両側に柊(ひいらぎ)がるので、季節はクリスマスであるが、鍵盤つきの椅子に座って音楽を弾いている女性が中央におり、その両側の女性が彼女の髪の毛を梳いている。色合いは全体的には緑がかっており、女性の服は赤で、背景の壁は青である。ロセッティの画集として見るには、手頃な値段(2100円)。
ローランス・デ・カール
ラファエル前派 高階秀璽監修、村上尚子訳 創元社
資料編を除いて、すべてカラーで、内容も非常にわかりやすい。ラファエル�O派(ラファエル以降の絵を否定するグループ、P.R.B.)のミレイ、ハント、ロセッティの絵の背景を解説。ミレイの「オフィーリア」は「ハムレット」からインスピレーションを得たものだが、ロセッティの「ベアータ・ベアトリックス」は、亡き妻エリザベス・シダルをダンテの「新生」のベアトリーチェになぞらえて、描かれたもので、衝撃的な絵でありながら�A神秘さもあ�驕Bまた、ロセッティの「エクシ・アンシラ・ドミニ」(1849〜50年)が宗教的な主題が物議をかもし、ミレイの「大工の仕事場のキリスト(両親の家のキリスト)1849〜50年」は、チャールズ・ディケンズから酷評された等、なかなか興味深い。資料編も面白くて、初心者には良本です。
マルク・シャガール
シャガール わが回想 三輪福松・村上陽通訳 朝日選書
シャガール(1887〜1985) ロシアのヴィテブスク生まれのユダヤ人。シュルレアリスムとしての絵は有名。「七本指の自画像」「誕生日」「街の上で」等。永遠の恋人でもある妻ベラとの関係を題材にした絵が多い。両親、妻への思いを戦争やロシア革命での苦難とともに語った自叙伝。1922年頃にロシア語で完結した「Ma Vie �}・ヴィ」を1931年に出版社パウラ・カッシーラーが「Mein
Leben マイン レーベン」として出版した。同年にベラが�tランス語で翻訳した「マ・ヴィ」がストック社から出版。1957年にこのマ・ヴィに石版画を加えて再版された。この訳書に使用されたのは1931年のストック社のもの。1966年に美術出版社から発売されたが、絶版になったものを1985年に朝日選書から再刊された。
荒俣 宏
レックス・ムンディ 集英社文庫
ダ・ヴィンチ・コードの解説者の著書。怪奇小説。プロローグの意味が少し読んでいくうちに、ストーリーの全貌が分かってしまう。
ニコラ・プッサンの絵画「アルカディアの牧童」(1639年−40年・ルーブル美術館蔵)の秘密は?「アルカディアの牧童」には、1630年頃制作されたバージョン違いがある。その絵にはキリストが復活している???
ダン・ブラウン
ダ・ヴィンチ・コード(上・中・下)越前 敏弥 訳
文庫版が販売されたので購入。ミステリ推理小説の感覚で読める。内容はご存知の通りですが、関連本を読みたくなる。解説者の荒俣 宏著「レックス・ムンディ」から読もうか?「レンヌ=ル=シャトーの謎」は面白そうですが、5040円と高価。「ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く」(サイモン。コックス著)は文庫で手軽な解説本。
藤田 嗣治展(画家)図録
藤田 嗣治画文集 猫の本
藤田 嗣治 「異邦人」の生涯 近藤 史人 講談社文庫
藤田 嗣治 「腕一本 巴里の横顔」 エッセイ集 近藤 史人 編 講談社文芸文庫
ポーラ美術展の印象派コレクション 2006図録
三島�R紀夫
春の雪 新潮文庫
三島由紀夫の晩年作「豊饒の海」の第一巻。聡子と清様は幼馴染。聡子は天皇家に嫁ぐことになるが、清様は禁じられた恋に燃えあがる。その結末は。輪廻転生。
死=美、美=禁、禁=恋。聡子は美の象徴。�エ様も美の象徴。美+美=美? 否�A恋!否! 美+禁+美=最高の美・恋=死なのか?
東宝で上映中。竹内結子の着物姿は、似合わないなぁ?映画はしっかりとできています。
ガストン・ルル-
オペラ座の怪人 角川文庫
ア�塔hリュー・ロイド=ウェバー製作・脚本・作曲、ジョエル・シュマッカー監督作品の「オペラ座の怪人」の映画は、最近DVD化された。ミュージカル史上空前の人気を博した「オペラ座の怪人」。とても、絢爛豪華な映画で楽しめます。また、1925年�ノ、アメリカで映画化されたDVDが500円で発売されている。監督はルパード・ジュリアンで、サイレント映画ですが、これも味があっていい。なお、現在、劇団四季の東京「海」でも上演されている。舞台で見る「オペラ座の怪人」が本当は一番でしょう。
梨木 香歩(なしき かほ)
家守 綺譚(いえもりきたん) 新潮社
なんとも不思議な物語。好みが分かれるかもしれませんが、とても面白い。家守綺譚の意味は最後でわかりました。まぁ、題名は無視してかまわないと思いますが。桜鬼(はなおに)が座っていたり、河童が出てきたり、再読したくなりました。「西の魔女が死んだ」と同じ作者?って思いです。
NHK「新シルクロード」プロジェクト編著
新シルクロード1 楼蘭 四千年の眠り・トルファン 灼熱の大画廊
新シルクロード2 草原の道 風の民・タクラマカン 西域のモナリザ
新シルクロード3 天山南路 ラピスラズリの輝き・敦煌 石窟に死す
新シルクロードを観ようと思い、テレビの日時まで調べたが、見るのを忘れてしまった。残念。小さい頃、敦煌、楼蘭、于闐 (ウテン・ホータン)という地名になんとなく憧れ?憧憬?を感じていた。城砦国家で、栄枯盛衰が激しい、シルクロードの天�R山脈や崑崙山脈のオアシスにあった国。本は写真も多く、楽しめます。
陳舜臣・NHK取材班・
シルクロード 絲綢之路 第一巻 長安から河西回廊へ(昭和55年発刊)
上記、三巻を読んだ後に、オークションで昭和55年に発刊さ�黷スシルクロード全六巻を購入。まだ、一巻しか読んでいません。時代を感じさせます。写真もカラーが少なく、文章が多い!ただ、陳舜臣氏の「花におう長安」は、繁栄した唐を彷彿とさせる名文。
中村 文則
土の中の子供
第133回芥川賞受賞作品。素材、主人公ともにとても暗い。非常に観念的で、物語として読んでいると、突然、作者の観念の世界に付き合わされると言う感じで、全体的な、流れは良くない。観念的と思われる文章に、時折、力を感じさせるが、何を書いているのかが掴みづらい。映画にしたら、どう描写するのか?面白くないだろうな。フランス映画的になるのか?ただ、作者は若いので、将来性は感じられる。
朱川 湊人
花まんま 文芸春秋
第133回の直木賞受賞作。最近、芥川賞より�シ木賞の方が面白いので、単行本で購入。芥川賞は、雑誌で読む事に。トカビの夜、妖精生物、摩訶不思議、花まんま、送りん婆、凍貼(いてちょう)の六篇からなる。凍蝶はどこかで読んだような話???何だろうか?全体的に環境設定に、あまり現実感がないので、わかりにくいと感じる人もいるかもしれませんが、読むにつれ、不思議に物語に入り込んでいきます。
ジークフ�梶[ト・レンツ
遺失物管理事務所 松永美穂 訳 新潮クレスト・ブックス
巨匠レンツの長編。77歳になって書いた14作目の長編小説。東プロイセンのリュク(現在のポーランド領)生まれのドイツ人。小説の舞台は、ドイツの鉄道の遺失物管理事務所。鉄道関連での忘れ物が届けられる事務所での、忘れ物と人のお話。主人公は、母親と姉には弱い人のいいヘンリー。お坊ちゃまの彼が、管理事�ア所での仕事の生甲斐を感じていく。彼が好きな人妻のパウラ。落し物�オたパシュキール人の研究者ラグティーン博士とは、ヘンリーと姉のバーバラと親密な付き合いをするようになる。また、ドイツ社会を反映した暴走族との戦いや管理事務所を含む鉄道会社のリストラ問題等、ドイツ社会の問題点も浮き彫りにされている。
角田光代(かくた みつよ)
いつも旅のなか アクセス・パブリッシング
しばらく海外旅行をしていないなぁと思いながら、たまには、旅行記みたいな物を読みたいと思い、書店で見つけた本。直木賞作家とは知らず、読み始めました。30数カ国を旅した著者が綴った旅行記。淡々と旅をし、語る。視点も自然で、とても素直に読めました。読後、書店で著者の本を買ってしまいました。
対岸の彼女 文芸春秋刊
直木賞受賞作品。子育てと自分の子供時代を照らし合わせる主人公小夜子。子育てをしながら、再度、仕事探しを。女性起業家葵と出会う。大学が同じであるという奇遇から、�゙女の会社で新事業の「お掃除」の仕事を始める。葵には、高校時代の過去があったが。静かな序奏から、だんだんとシリアスになってくる。女性ならではの視点で、現在と過去が併行して話が進められる。
平間康人 アジア「裏」旅行 彩図社
旅行物の続きで何かないかと見つけた。筆者のアジア旅行の怖い体験を綴っているが、予想を越えない範囲か。やや、突っ込み不足で物足りない。せめて、写真にもっと迫力があればと思います。でも、一度は読んでおいた方が、いいか?
ヨースタイン・ゴルデル
サーカス団長の娘 猪苗代英徳 訳 NHK出版
サーカス団長の娘という題に惹かれて購入しましたが、ストー���[的には小説の題名通りではありません。主人公は、次から次へと小説のアイデアがでてくるペッテル。その能力を生かして「題材」と「梗概(こうがい)」を提供する「作家援助(ライターズ・エンド)」で富を得る。ペッテルは若い頃年上の女性と恋をして別れるが。。。
作家はノルウェー生まれ。主な著書。「ソフィーの世界」
ユーベル・マンガレリ
おわりの雪 田久保麻理 訳 白水社
静かで、ゆっくりとした文章。少年と病床に臥す父親との会話がメイン。フランス人。児童文学者としてスタート。面白い小説ではありませんが、小さな世界にあって、少年と父親との心の動きをしっかりと伝えてくれます。
長野まゆみ
鉱石倶楽部 文春文庫
「ゾロ博�mの鉱物図鑑(短編)と「石から生まれた18の物語」 鉱石の写真と詩的な短文にお菓子にみたてた解説。確かに美味しそうなものもあるかも?
赤川次郎
夢から醒めた夢 絵・北見 隆 角川文庫
3月から劇団四季で上演される同名のお芝居の原作。絵本。主人公は九つの女の子、ピコタン。
梨木 �&�
西の魔女が死んだ 新潮文庫
女の子とお母さん、そしてお父さん。そして、お祖母ちゃん。そして、お祖母ちゃんのお家の、隣家の、少し怖そうなおじさん。西の魔女が死んだ?
近藤 史人
藤田 嗣治(つぐはる) 「異邦人」の生涯
日本で評価されず、フランスでもてはやされた画家藤田嗣治氏の評伝。明治19年生まれ。フランスでの軽妙なパフォーマンスが日本では、宣伝屋と揶揄され、日本画壇を中心に疎外された。乳白色の肌、猫の絵は有名。戦時中には、戦争画も書き、それが、また、非難された。「日本人嫌い」の画家と噂されていたが、晩年には、一般の日本人がフランスで彼と会っている。晩年の藤田氏は奥さんと仲良く、静かな気持ちで絵を描いていた。フランスに帰化し、洗礼を受けた。画家・藤田氏の生き様をうまく捉えている評伝。
夏目漱石
門
今更、夏目漱石かと思いますが、新仮名に改めた文庫が出て、非常に読みやすくなりました。「門」はやや暗い話ですが、服装とかの描写を除けば、明治に書かれた小説とは思えない筆致です。最近の小説がやや食傷気味で、また、このシリーズの文庫の価格も安く、時々、読むにはいいと思います。「三四郎」「それから」に続いて「門」が執筆されました。
こころ
主人公が尊敬し親愛する「先生」。奥さんと睦まじく生活する「先生」。先生は、青春時代に友人Kとの間におこった事件を今も引きずり、苛まれている。「先生」から主人公への告白の手紙は圧巻です。
浅暮三文(あさぐれみつふみ)光文社文庫
嘘猫
猫を飼ったことのある人なら、なんのことはないお話ですが、暇な時に、お茶でも飲みながら読むにはいいかな。
小川洋子
まぶた
飛行機で眠るのは難しい、中国野菜の育て方、まぶた、お料理教室、匂いの収集、バックストローク、詩人の卵巣、リンデンバウム通りの双子、八編の短編からなる。飛行機で眠る・・・が一番印象的。少し、不思議な物語の数々。
久世光彦
蕭々館日録
時代は大正。九鬼さん(芥川竜之介)、蒲池さん(菊地寛)他が蕭々館(語り部・麗子五歳の父の借家)に集まって、文学談義、名文暗礁大会をやる。語り部の麗子は岸田劉生の麗子像そっくりの衣装を着ている。大正時代への思いを語る長編。
下川裕治
アジア国境旅行
国境おたくという言葉を初めて知りました。アジアの国境を旅するお話です。
キム・ヒジュ 伊藤正治 編訳
SILMIDO−シルミド−
1971年にソウルで起こったシルミド事件をもとに04年に映画化された。特殊部隊育成のため、シルミド(実尾島)では、囚人31名が精鋭部隊として�bえられるが、結局、侵攻作戦は実施されないまま、長い月日が経ち、その存在が否定される。解説には、事実は四割といわれ、いまだベールにつつまれている部分も多いらしい。
東京小説・角川文庫
五編から成る。フランス向けに「東京」をテーマに、林真理子・椎名誠・藤野千秋・村松友・盛田隆二が寄稿。日本でも同時出版された。乗り物全般が苦手な主婦が、娘に言われて交番を見回る「主婦と交番」が面白い。
藤原 新也
空から恥が降る
アフガン問題から猫の話題まで。サイトを公開し、そこでのやりとりが。フランス料理、イタリア料理、中国料理、日本料理は星の数ほどあるが、アメリカ料理、イギリス料理は耳にしたことがない。ごもっともです。
広瀬 仁紀(よしのり)
新選組 風雲録 激闘篇・文春文庫
J.M.クッツェー・土岐恒二訳・集英社
夷狄(いてき)を待ちながら
作者は南アフリカ生まれ。74年処女作「ダスクランド」。83年「マイケル・K」、2000年「恥辱」で二度ブッカ−賞を受賞。本書で03年ノーベル文学賞を受賞。
三島 由紀夫
近代能楽集
邯鄲・綾の鼓・卒塔婆小町・葵上・班女・道成寺・熊野(ゆや)・弱法師(よろぼし)の八編から成る。全般的に少し気味が悪い。卒塔婆小町、道成寺は特に薄気味悪いが面白い。
沈める滝・新潮文庫
三島らしからぬ雰囲気もあるが、所々に三島の観念的な文体が覗く。どうして、顕子が破滅するかの必然性に乏しいが、観念的に、こうあらねば美しくないという�K然なのかもしれません。ストーリーは単純です。
大江 健三郎
二百年の子供
かつての大江健三郎の文体からは想像できないが、三人の子供達が過去、未来と協力して行き交う。未来の話は、少し?でしたが、過去での経験は、色々と問題を考えさせられます。
城 市�Y
定本 発禁本
発禁本の数々と言っても、戦中のことなので、今では、発禁にはならないでしょうが。興味のあるところとそうでないところの差で、面白さも違ってきます。
平凡社ライブラリー刊。
寺山修司
書を捨てよ、町へ出よう
昭和50年初版。競馬の話はよくわかりませんが。。。空想の世界??
M・K・シャルマ
喪失の国、日本(インド・エリートビジネスマンの日本体験記)
1990年代、市場調査会社の仕事で一年八ヶ月日本に滞在。日本の事を再認識できると同時にインドと日本の違いもよくわかります。ライスにカレーがかかっていると、他人が手を�ツけた物であるとか、カレーとライスは自分で混ぜて食べるとか、少し、観念的な部分もあるが、面白い。
綿矢りさ
蹴りたい背中
おたく?の男の子と同級生の女の子。とても、読みやすい文章です。
金原ひとみ
蛇にピアス
蹴りたい背中と芥川賞を受賞。内容も、言葉も、対極をなすか?
島田雅彦
彗星の住人
三部作の一作目。美しい魂・エトロフの恋へと繋がる。
美しい魂
エトロフ�フ恋
筆者の解説には、三部作のどれから読んでもいいと書いてあります。順番に読んでしまいました。
そして、アンジュは眠りにつく (And Anju falls Asleep)
ドンナアン�i
優しいサヨクのための喜遊曲
浮く女沈む男
ジュンパ・ラヒリ
停電の夜に
ロンドン生まれ。両親はカルカッタ出身のベンガル人。2000年4月に新人で、ピュリツァー賞を取る。短編集。「三度目で最後の大陸」の御婆さん(100歳?)は圧巻?
J.D.サリンジャー
ナイン・ストーリーズ・野崎 孝訳(新潮文庫)
題名の通り、九つの短編集。「テディ」は少し不気味?
湯本 香樹実
夏の庭 (The Friends)
友達がお祖父さんのお葬式に行ったことから、物語は始まる。お葬式→死?近くに、怪しげで、死にそうなおじいさんが住んでいる。友達、三人は、死を見たいと
彼を見張ることに。映画化された。なぜか、懐かしい情景の中で、読むにつれて、楽しくなってくる。
横山 秀夫
クライマーズ・ハイ
御巣鷹山(群馬県)に墜落したJAL機の痛ましい事故。社内の人間関係、家族関係で葛藤する地方新聞社に勤めるデスクの主人公・悠木。事故の取材から記事を作る激しい緊張感と、極度の興奮状態で一気に山に登る時のクライマーズ・ハイ。物語の中でも、興奮状態が続き取材現場と過去を振り返りながら山壁を登る話が進む。小説の手法はオーソドックスであるので、一気に、読める。テレビドラマ向きでもある。もう少し、航空事故の問題点を分析して話を進めて、欲しかった。記者の自己満足的な部分が出すぎか?
ミラン・クンデラ
可笑しい愛
七編の短編からなるが、テーマはなんとなく繋がっている。ミラン・クンデラはチェコスロヴァキア生まれ(1929−)で、「プラハの春」以降は、全作品が発禁になった。この短編がなぜ発禁本なのか、日本に住む我々には理解できない場合が多いと思う。社会主義と神、エロス、社会風刺、愛。。。やや、難解か。
1誰も笑おうとしない、2永遠の欲望という黄金の林檎、3ヒッチハイクごっこ、4シンポジウム(これは、長い短編で、プラトンの饗宴のパロディ)、5老いた死者は若い死者に場所を譲れ、6ハヴェル先生の二十年後、7エドワルドと神・集英社文庫・西永良成・訳。映画化された「存在の耐えられない軽さ」は有名。
遠藤 周作
沈黙
遠藤周作の作品は�Aなぜか、真面目に読んだことがなかったが(すみません)、長崎に行ったとき、
「人間がこんなに哀しいのに、主よ、海があまりに碧いのです」
シェイクスピア
ハムレット・小田島雄志訳・白水Uブックス
マクベス・福田恆存訳・新潮文庫
オセロー�E福田恆存訳・新潮文庫
フェルナンド・アラバール
アラバール戯曲集1 戦場のピクニック・若杉彰訳
戦場のピクニック他、青い風船、祈り=ミスチックドラマ、二人の死刑執行人=一幕のメロドラマ、ゲルニカ、ファンドとリス、ポンコツ車の墓場、卵の中のコンサート。反戦演劇であるが、シリアスではない。むしろアイロニーか。ポンコツ車の墓場は、ポンコツ車に人がそれぞれ住んでいる?ポンコツホテルで繰り広げられるドラマ。アラバールは1932年スペイン生まれ。1936年の内戦の影響を受ける。特に、人口7000人のバスク地方のゲルニカの悲��は、ピカソの壁画「ゲルニカ」や、ドイツ人作家へルマン・ケステンの「ゲルニカの子供たち」にも詳しい。
サミュエル・ベケット
ゴド−を待ちながら(白水社)ベスト・オブ・ベケット1
演劇に詳しい友人が、イヨネスコやアラバールのマニアなものより王道ベケットの方が、いいと勧められて読んでみました。戯曲ですが、会話が矛盾?だらけでついていくのが精一杯かなぁ。読�ンなれていくうちに、不条理劇が何たるかが少しわかったような。。。次はアラバールの「戦場のピクニック」に挑戦?
フランソワ−ズ・サガン
夏に抱かれて・朝吹由紀子訳(新潮社)
シャルルと友人ジェローム、彼の恋人アリスとの愛のお話。ナチがフランスを占領していく時代背景。1985年出版。87年にロベール・エンリコ監督にて映画化された。通俗女流作家と言われているが、晩年のサルトルとは懇意だった。
村上春樹 柴田元幸
翻訳夜話2 サリンジャー戦記(文春新書)
下の、二作品を読んだため、どうも気になって読んでしまった。文学を語ると結構、大変です。ただ、本来、The
Catcher in the Ryeの後書を掲載予定だったが、白水社刊のものには、原作者との契約で掲載不可能であったものをこの本に掲載。参考になります。
J.D.サリンジャー・野崎孝訳(白水Uブックス)
ライ麦畑でつかまえて
村上春樹氏の訳と比べて、「you」を意識的に訳していないが、とても読みやすい。1951年邦訳後、84年に補正された。内容はご存知の方も多いが、よく読むと怖いお話でもある。
J.D.サリンジャー・村上春樹訳(白水社)
The Catcher in the Rye キャッチャー・イン・ザ・ライ
「君」が誰を指すのか、気になるところ。大人になりきれない少年・青年時代の筆者?僕が世の中の「インチキ」くささを見抜く。
養老 孟司 対談 宮崎 駿
虫眼とアニ眼
固定しているものも動いているという意味。「平家物語」の諸行無常の話を出しながら、テレビカメラと目玉の違いの話は面白い。養老さんの解説?宮崎アニメ私論はちょっと、屁理屈っぽいかなぁ。
宮部 みゆき
地下街の雨
地下街の雨・決して見えない・不文律・混線・勝ち逃げ・ムクロバラ・さよなら、キリハラさんの7短編からなる。
阿刀田 高
花あらし
山本 文緒
ブルーもしくはブルー
かつて、二人の男性、佐々木と河見を好きになった主人公蒼子Aは、今の佐々木との結婚生活に嫌気が差し、年下の牧原と不倫するが、これもうまくいかない。サイパンからの不倫旅行の帰路、台風で、福岡空港に着陸させられる。牧原と別れた、蒼子Aは、福岡の街で河見を見かけ、後をつける。河見の連れている女性は、な�ニ、蒼子Aと瓜二つの蒼子B。それぞれが、佐々木と河見とどちらと結婚するか迷った時に分かれたドッベルゲンガ−(分身)であった。今の生活に満足できない蒼子Aは蒼子Bと生活を替わって貰うが、思わぬ展開に。NHK連続ドラマ 03年6月23日〜7月17日
パウロ・コエーリョ
アルケミスト 夢を旅した少年
宗教観に乏しいので、理解ができない部分もあるが、自分の心に問いかけ、決断して生きて、夢を掴もうとする姿には心が洗われる気持ちだ。主人公の羊飼いが、何度も見る夢を追い求めて、不思議な力、前兆を信じて、砂漠を旅する。世界的なベストセラー。ポルトガル語の英訳を日本語訳したもの。著者はブラジル人。アルケミストは錬金術師。
ジル・マゴ−ン(中村有希・訳)
騙し絵の檻
ミステリ。
浅田 次郎
活動写真の女
舞台は、京都太秦。時代は昭和44年頃。映画という虚構の世界=異界から、活動写真の女性がやってくる。主人公は東京大学の学園紛争で入試が中止になったため、京都大学文学部に入った三谷薫。映画館で知り合った、京都出身の清家忠昭は京都大学医学部の二回生(注・二年生のことを関西ではこう呼ぶ)。彼に、紹介してもらい太秦の映画館でアルバイトをする。薫は下宿で知り合った先輩の早苗とは、第一印象は良くなかったが、徐々に恋人同�mとなる。三人がアルバイトでエキストラをやった時に、絶世の美女に出会う。その女性は? 清家忠昭は、彼女に恋をして。。。
ワーズワースの詩の意味するところは。
My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky.
So was it when my life began,
So is it now I am a man,
So be it when I shall grow old
Or let me die
久生 十蘭 集 (日下 三蔵 編)
怪奇探偵小説傑作選�|3 ハムレット
著者の久生十蘭(ひさお じゅうらん)氏は1902年生まれ。明治・大正時代は凄い。欧米かぶれの部分もあるが、この恐ろしい、気持ち悪い発想が、現代的。やや、猟奇的な感もあるが、一読の価値はあると思う。「ハムレット」と「刺客」は別バージョン。
小林和彦
神隠しと日本人
表題に引かれて購入したが、学術書の域を出ない。平易に書かれているが、現実的で、もっと、夢があった方が・・・と思いつつも、たぶん、「神隠し」の事実とはこういう事なのでしょう。引用される民話は面白い。
吉村 �コ
天に遊ぶ
21の超短編から成る。
長田 弘 詩集
神島
(前略)「海は光の粒子でできているのだ。曇った日の海が好きだ。青い海じゃない。青みがかった灰色の、神さまの指で幾枚の�Zロファンをかさねて折っていったような海の色が好きだ。」(後略)
石段
「石段をみるとふしぎにこころを引きよせられる。石段の一番うえまで上っていったら、そこからどんな街がどのように見えるか。引�ォよせられるままに、石段を登る」(後略)
ファーブルさん
(前略)「言葉は、きめの細かな、単純な言葉がいい。古い方言や諺や日用品のようによくなじんだ言葉」(後略)
小川洋子
寡黙な死骸 みだらな弔い
※「洋菓子屋の午後」他合計11篇の短編小説。素材が不気味。そして、一編一編が、その不気味な素材で繋�ェっている。休日の広場を描写するところから始まる。苺のショートケーキを毎年買う、子供を亡くした母。少女と少年が出かけると、昔、郵便局だった倉庫には一杯のキーウイが。老婆は、人参とキーウイを栽培するが、夫はどこへ? 小説家であるママと老婆の写真? 医者と不倫する優秀な秘書と汚れた白衣を洗濯すると?鞄職人が初めて心臓の鞄を作るが。彼と喧嘩した美容師が入った拷問博物館には、おしゃれな老人が。伯父さんは、商売に失敗の連続だが、僕にはやさしかった。不倫の夫の彼女宅へ抗議にでかける途中に、老人と死に行くベンガル虎が。トマトを積んだトラックが横転し、道中がトマトだらけ。終章は「毒草」で、美声の青年に奨学金を出す老婆は誰? もう一度読んだほうがよさそう。でも、ちょっと、気味悪いなぁ。
ピーター・フランクル
僕が日本を選んだ理由(わけ)
※数学者でジャグリング大道芸人。当時の社会主義国家ハンガリーからフランスへ亡命。放浪の旅が始まる。日本人女性への恋、アメリカでの大学生活を経て、日本へ定住するまでを面白く、また、日本語で書き下ろされた。すごい�ネぁ。
青木 玉
帰りたかった家
※戦前から戦後にかけての、裕福な商家に育った主人公が、戦後、父親の借金で、家庭が崩壊するが、いい時代�フ思い出を、記憶と想像力で書いた自伝小説。筆者の年を考えると、こんなにかわいく、また、激しい時代ではあるが、静かな視線で物事を見ていた過去の自分をきれいに描けるのが不思議だ。少し、びくびくと生きる�ュ女像が描かれている。幸田文の娘。幸田露伴は祖父にあたる。
玄月
蔭の棲みか
※「蔭の棲みか」「おっぱい」「舞台役者の孤独」の三篇からなる。「おっぱい」が第121回芥川賞候補に、「蔭の棲みか」で第122回芥川賞受賞。どの作品も重みがあって、読みやすいのか、読みにくいのか、読者の受け方によって、変って来そうだ。「舞台役者の孤独」は、激しい描写といったい自分は何者かを問う気持ちとがうまく描かれている。死んだ弟のことを、「死者はいつでも逃げ足がはやく、記憶と手を携えて、炎の向こうで燃え尽きようとする」という描写は見事だ。
雫井脩介
火の粉(hi no ko)
※ストーリーはなんとなく予想でき、ドキドキ度(?)は少ないが、軽快なタッチで書かれた犯罪小説。無罪判決を下してくれた元裁判官の自宅の隣に引っ越してくる男が、なんとも異常性を感じさせる。詰めは、ややありきたりか。惜しい。最終節で、もう少し、元裁判官の息子とこの男の心理描写が良ければ、さらに面白いか。300ページ以上の長編ながら、非常に読みやすい。
辻 仁成
千年旅人
※砂を走る船・シオリ、夜の散歩・記憶の羽の三篇からなる短編小説。不思議な時が流れる。静かな時、空間、海、地球、現実、夢、死、生、寂しさ、疎外感。どこかで出会ったような風景や思い。著者は映画監督・詩人・ミュージシャン・作家と多くの仮面?を持つ。やや、表現力に頼って、冗長な感じの箇所もあるが、時々、はっとする表現に出会う。
ピアニシモ
※著者の処女作。思春期の悩みと苛立たしさが直裁的な表現で書かれていて、あまり、いい感�カはしなかった。読後、村上春樹の「神の子どもたちはみな踊る」を、思わず書店で購入。その後に、「ピアニシモ」の解説を読む。解説者は島田雅彦氏。曰く、「もう、�コ上春樹を葬�翌オてしまおうではないか。云々」。皮肉なことに、ピアニシモを読んだ後に、手にした本が村上春樹とは。結局、いかに「ピアニシモ」で、青春の胡散臭さ?を問われたとして、村上春樹のいかにも「青春」や「恋愛」がコピーのように書かれた物で、化粧するしかないのか。
夢枕 獏
陰陽師
陰陽師 飛天の巻
七人の安倍晴明
※いずれも陰陽師(おんみょうじ)安倍晴明の奇怪なお話。一人夜道を帰るのが恐くなる?
曽野綾子・田名部昭
ギリシャの神々
※短編で、わかりやすく書かれたギリシャ神話。神か人かわからないので、最初、混乱するが、驚きの連続?でもないか。でも面白い。
オーレル・スタイン
コータンの廃墟
※100年以上前の中央アジアでのスタインの探検記。一度は憧れるシルクロード天山南路付近の砂漠に埋もれた遺跡。
米原万理
ロシアは今日も荒れ模様
※エルチェンの裏話は面白い。また、ロシアの汚いトイレの話は笑える。
花村萬月
永遠の島
※はっきり言って、何をいいたのかわからない小説。
澁澤龍彦
うつろ舟
宮城谷昌光
奇貨居くべし(おく)1春風篇、2火雲篇、3黄河篇、4飛翔篇
※古代中国の呂不韋(商家の三男)の立身出世物語。ダイナミックな運命を感じる人生が面白い。
町田 康
夫婦茶碗・人間の屑
くっすん大黒・河原のアパラ
宮脇俊三
韓国・サハリン鉄道旅行
永井路子
うたかたの
茜さす(上・下)
裸足の皇女(ひめみこ)
美貌の女帝
歴史をさわがせた女たち日本篇
噂の皇子(みこ)
浅田次郎
月のしずく
地下鉄(メトロ)に乗って
霞町物語
鉄道員(ぽっぽや)
幸田真音(まいん)
ヘッジファンド
日本国債(上・下)
向田邦子
冬の運動会
眠り人形・花嫁・当節結婚の条件
寺内貫太郎一家
眠る杯
男どき女どき
日比野 宏
アジア亜細亜
島崎藤村
破戒
瀬戸内晴美
夏の終り
色川武大
引越貧乏
怪しい来客簿
百
井上靖
月光
村上元三
足利尊氏(上・下)
つかこうへい
この愛の物語
長野まゆみ
夏期休暇
金子光晴
風流し解記
五木寛之
フランチェスカの鐘
蓮如
ガウディの夏
風の記憶
日本人のこころ2
宮部みゆき
本所深川ふ�オぎ草紙
武田泰淳
ひかりごけ
谷崎潤一郎
蓼喰う虫
平野啓一�Y
一月物語(いちげつ)
群ようこ
び�レう草
曽野綾子
二十一歳の父
高橋三千綱
九月の空
早乙女貢
忍法秘巻
武者小路実篤
愛と死
村山由佳
野生の風
銀色夏生
あの空は夏の中
桐生操
きれいなお城の残酷�ネ話(ベスト版)
狗飼恭子
彼の温度
坂東真砂子
蟲
青木玉
小石川の家
向田和子
かけがえのない贈り物
柳美里
ルージュ
専門学校出の谷川里彩が大手の化粧品会社へ入社し、化粧品CMの撮影場所に用事を言いつけられて出かける。モデルの北原佑が撮影所へ来ないため、里彩が代役を
務める事から物語が始まる。テレビドラマ向きか?軽めの小説。
言葉は静かに踊る
窓のある書店から
家族シネマ・真夏・潮合い
グリーンベンチ・向日葵の柩
女学生の友・少年倶楽部
伊集院 静
むかい風
川上弘美
椰子・椰子 (絵・山口マオ)
蛇を踏む・消える惜夜記(あたらやき)
いとしい
溺レる
宮本輝
星々の悲しみ
夢見通りの人々
胸の香り
蛍川・泥の河
道頓堀川
ひとたびはポプラに臥す(1〜6)
※シルクロードを実際に歩いた体験記。前半、中国の項はやや散漫な感じを受けるが、後半から、人間味が出てきて面白い。
村上春樹
雨天炎天(ギリシャ・トルコ辺境紀行)
篠田節子
女たちのジハード
夢野久作
ドグラマグラ(上)
藤野千夜
夏の約束
江國香織
落下する夕方
すいかの匂い
こ�、ばしい日々・綿菓子
なつのひか��
原田宗典
十九・二十
内田康夫
斎王の葬列
村上 龍
音楽の海岸
森 茉莉
薔薇くい姫
枯葉の寝床
日曜日に僕は行かない
村上春樹
国境の南、太陽の西
久世光彦
聖なる春
触れもせで・向田邦子との20年
陛下
怖い絵
1934年冬−乱歩
早く昔になれ�ホいい
松浦理英子
親指Pの修業時代(上)
ナチュラルウーマン
葬儀の日
倉橋由美子
大�lのための残酷童話
小川洋子
冷めない紅茶
坂口安吾
肝臓先生
桜の森の満開の下
白痴
青鬼の褌を洗う女
オモチャ箱・狂人遺書
新撰組血風録
燃えよ剣(上・下)
世に棲む日日(一〜四)
果心居士の幻術
ペルシャの幻術�t
川端康成
山の音
江戸川乱歩
屋根裏の散歩者(人間豹・押絵と旅する男・恐ろしき錯誤)
江戸川乱歩傑作集(二銭銅貨・D坂殺人事件・心理試験他)
石川淳
六道遊行
紫苑物語
普賢・佳人
大江健三郎
叫び声
若合春侑(わかいすう)
脳病院へまゐります
C・ブコウスキー
ありきたりの狂気の物語
ケン・フォレット
針の眼
アレッサンドロ・バリッコ
絹(SETA)
三田村泰助
宦官
吉増剛造詩集
PHP
裏インターネット事件簿
※想像できる範囲の話で、もっと、突っ込んで書いて欲しい。立ち読みでもいいかも。
サッカー書籍
文体とパスの精度
村上 龍 × 中田 英寿
対談とメール交換。まあまあ、面白い。村上龍氏中田選手追っかけ的(?)であるが、相互信頼がある。
ジョカト−レ 中田英�@新世紀へ
山本昌邦備忘録
トルシェジャパン1369日 日本のために残しておきたいことがある
やっぱりと、思うことしばしば。著者の真摯なサッカー・選手を愛する気持ちが伝わってくる良書。300ペー�Wを越す大作だが、一気�ノ読める。コーチの大変さは、あらゆる世代にも共鳴を覚えると思う。
ルイスアントニオ高崎
ジーコ終わりなき挑戦
ジーコのブラジル代表での人物像が垣間見れて、親近感を覚えるか。
後藤健生 たけお
世界サッカー紀行2002
大陸別、国別にサッカーの歴史特徴を記述。ヨーロッパの項は面白いが、後半はやや単なる歴史を記述した箇所も多い。
ノーベル文学賞�ワ J.M.G.ル・クレジオの作品紹介 (図書館にて確認したもので、読んだものではあ�閧ワせん)※頁最後に著作一覧添付。
大洪水、今日の海外小説 1969年 河�o書房新社
逃亡の書 1973年? 新潮社
愛する台地 1975年 新潮社
巨人たち 1976年 新潮社
戦争 1976年 新潮社 1972年?(ネットオークションの表記に初版1972年とあり)
世界の文学、26、ソレルス ル・クレジオ 1976年 集英社
発熱 1976年 新潮社
大洪水、河出海外小説選、5 1977年1月 河出書房新社 1,260円�i込)
物質的恍惚 1977年? 新潮社(ネットで確認)
調書、新潮・現代世界の文学 1979年 新潮社
来るべきロートレアモン、エピステーメー叢書 1980年5月 朝日出版社 1,050円(込)
木の国の旅、フランスの傑作絵本 1981年7月 文化出版局
マヤ神話 1981年9月 新潮社
砂漠 1983年5月 河出書房新社 2,100円(込)
チチメカ神話 1987年9月 新�ェ社
海を見たことがなかった少年、現代の世界文学 1988年5月 集英社 1,885円(込)
ロドリゲス�への旅 1988年9月 朝日出版社 1,890円(込)
�<Lシコの夢 1991年5月 新潮社
ロンドその他の三面記事 1991年11月 白水社
オニチャ 1993年5月 新潮社
春その他の季節 1993年9月 集英社 1,937円(込)
まだ見ぬ海 1993年9月 朝日出版社 (ネットにて確認) 1,223円(込)
黄金探索者 新潮・現代世界の文学 1993年12月 新潮社
さまよえる星 1994年11月 新潮社
パウナ クジラの失楽園 1995年5月 集英社 1,680円(込)
海を見たことがなかった少年、集英社文庫 1995年6月 集英社 570円(込)
もうひとつの場所 1996年11月 新潮社
ディエゴとフリーダ 1997�N3月 新潮社
偶然 2002年3月 集英社 (偶然−帆船アザールの冒険、アンゴリ・マーラ) 2,415円(込)
黄金(きん)の魚 2003年2月 北冬舎 2,310円(込)
歌の祭�閨@2005年3月 岩波書店 3,360円(込)
はじまりの時、上・下 2005年7月 原書房 各2,310円(込)
アフリカの人 父の肖像 2006年3月 集英社 1,890円(込)
※「ル・クレジオ」 思潮社 2006年10月
<参考>
ル・クレジオ 著書一覧 ウィキペデイアから(08年10月25日)
<小説>
Le Procès-verbal (1963)(『調書』豊崎光一訳、新潮社、1966年)
Le jour ou Beaumont fit connaissance avec sa douleur (1964)(『ボーモンが苦痛を知った日』高山鉄男編、第三書房、1968年)
La Fièvre (1965)(『発熱』高山鉄男訳、新潮社、1970年)
Le Déluge
(1966)(『大洪水』望月芳郎訳、河出書房新社、1969年)
Terra Amata (1967)(『愛する大地』豊崎光一訳、新潮社、1969年)
Le Livre des fuites (1969)(『逃亡の書』望月芳郎訳、新潮社、1971年)
La Guerre (1970)(『戦争』豊崎光一訳、新潮社、1972年)
Lullaby (1970)
Les Géants (1973) (『巨人たち』望月芳郎訳、新潮社、1976年)
Voyages de l'autre côté (1975)(『向こう側への旅�x高山鉄男訳、新潮社、1979年)
Mondo et autres histoires (1978)(『海を見たことがなかった少年』豊崎光一、佐藤領時訳 集英社 1988年)のち文庫
Désert (1980) (『砂漠』望月芳郎訳、河出書房新社、1983年)
Voyage à
Rodrigues (1982)(『ロンドその他の三面記事』佐藤領時、豊崎光一訳 白水社 1991年)
Le Chercheur d'Or (1985)(『黄金探索者』中地義和訳、新潮社、1993年)
Voyage a Rodrigues (1986) (『ロドリゲス島への旅』中地義和訳、朝日出版社、1988年)
Printemps et autres saisons (1989)(『春その他の季節』佐藤領時訳 集英社 1993年)
Onitsha (1991) (『オニチャ』望月芳郎訳、新潮社、1993年)
Étoile errante (1992) (『さまよえる星』望月芳郎訳、新潮社、1994年)
Pawana (『パワナ―くじらの失楽園』菅野昭正訳 集英社 1995年)
La Quarantaine (1995)
Poisson d'or (1997)(『黄金の魚』村野美優訳 北冬舎・王国社 2003年)
Gens des nuages (妻Jemia Le Clezioとの共著)
Hasard : suivi d'Angoli Mala (1999) (『偶然 帆船アザールの冒険』菅野昭正訳 集英社 2002年)
Cœur Brûle et autres romances (2000)
Révolutions (2003)(『はじまりの時』村野美優訳 原書房 2005年)
Ourania (2005)
Ritournelle de la faim (2008)
<エッセイ・インタービュー>
L'Extase
matérielle (1967) (『物質的恍惚』豊崎光一訳、新潮社、1970年年)
Haï (1971) (『悪魔祓い』高山鉄男訳、新潮社、1975年)
Mydriase (1973)
Vers les icebergs
(Essai sur Henri Michaux)(1978)
L'Inconnu sur la
Terre (1978)
Trois villes
saintes (1980)
Le Rêve
mexicain ou la pensée interrompue (1988)(『メキシコの夢』望月芳郎訳、新潮社、1991年)
Diego et Frida
(1993)(『ディエゴとフリーダ』望月芳郎訳 新潮社 1997年)
La Fête
chantée (1997) (『歌の祭り』管啓次郎訳 岩波書店 2005年)
Raga (2006)
Ballaciner(2007)
『もうひとつの場所』中地義和訳 新潮社 1996年
『ル・クレジオは語る』(ピエル・ロストとの共著)
望月芳郎訳 二見書房 1974
<児童書>
Voyage au pays des
arbres (1978)(『木の国の旅』H.ギャルロン絵、大岡信訳、文化出版局、1981年)
<翻訳>
Les Prophéties du Chilam
Balam (1976)(『マヤ神話 チラム・バラムの予�セ』望月芳郎訳 新潮社 1981年)
Relation de Michoacan (1985)(『チチメカ神話 ミチョアカン報告書』望月芳郎訳 新潮社 1987年)
<参考文献>
『ル・クレジオ 地上の夢―現代詩手帖特集版』思潮社、2006年
「現代詩手帖 ル・クレジオ特集」1977年6月号 「瞳孔拡大・ロートレアモン・思考の誕生・下へ、死の方へ」本邦初訳作品
雑誌「海」 1978年8月号 ル・クレジオ特集。「モンド」「牧童たち」の作品とインタビユー。