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FMEA (客観説TQM研究所


FTA  なぜなぜ分析
Contents

はじめに

 このページはセミナーの予習事項であり、詳細はセミナーで説明します。従って受講者でない方は、このページの記事について質問は出来ません。

 まず必要なのは、故障モードの意味、故障と故障モードの違い、解析の目的と手法の原理を知ることです。

 また工程FMEA(PFMEA)について、特性要因図 → QC工程表 → 工程FMEA という基本を知らないと、故障モードのことを「不良モード」や「トラブルモード」などと呼び変えるナンセンスな思想に陥ります。それ故、FMEAセミナーでは、工程FMEAを行う前の段階、すなわち、管理用-特性要因図、QC工程表、機能設計と信頼性設計の講義を欠かせません。

 そういう基本を無視したFMEAソフトも販売されているが、購入をちょっと待って頂き、先に当セミナーでFMEA事例を学んでみて下さい。

 世の中はあらゆる情報で溢れ、玉石混交です。私達はどれが正しくどれが誤りか取捨選択しなければなりません。それには分析力・判断力が必要となります。多くの書物や講習会が「これが正しいFMEAだ」と誤った指導をするからです。

 このページではいろいろな見解の「ダメな点」を指摘し、誤りを見抜く力の大切さと、いかに誤った事例が多いかを明らかにします。

 最も要注意なのは、多くの参考書やセミナーで指導される危険優先指数:RPNを指標とする相対評価法が全くの間違いだという点です。

 大学の研究者やセミナーの講師等が示すFMEA教材の多くは、10点法の危険優先指数(RPN)を用いる模範例として提示されます。指導を受けた企業もそのまま模倣します。それは膨大な労力を使って、FMEAを行った振りをする結果となるだけです。

 品質管理は、「形だけ模倣して何も考えない」という小・中学生のような勉強の仕方では身に付きません。今、自分が行っているやり方を含めて、いろいろな事例や指導例を批判する力を養うことが必要なのです。

 (1)「故障モード」とは何か?、「故障」とどう違うのか?、故障モードと不良品の関係は?、などの疑問に何一つ答えられない。

 (2)故障モードを評価した結果、どうであれば合格なのか。

 (3)評価項目である "Severity"(厳しさ)とは、故障モードの影響の「深刻さ」を評価することなのか、影響が及ばないようにする「対策の不足」を評価するのか。

 (4) 3つの評価、Severity(厳しさ), Occurrence(頻度), Detection(検知難度)は、独立に評価するのか、相互に関連させるのか。

 以上のようなことが不明なFMEAを、「形だけ模倣して何も考えない」という小・中学生のような勉強の仕方で学んだ結果、全くの形骸化を招くのです。

 セミナーを開催すると、よく、「誤った事例の解説はもう結構だから、正しい事例を示して下さい」と要求されます。しかし、そのようなお手本を見て学ぼうとする人は、模倣のためにセミナーに参加しているため考える力が身につかず、結局はものにならないのです。

 次の記述は、マック・デルモットという米国の著名なFMEA研究者からの引用です。

Robin E. McDermott P.10
 The risk priority number (RPN) is used to rank the need of corrective actions.
 Corrective actions must continue until the resulting RPN is at an acceptable level for all potential failure modes.

 翻訳すると、前段では「危険優先指数 (RPN=S×O×D) は是正活動の必要性を順番づけるために使用される」と、相対評価を唱えています。

 しかし後段では、「是正活動は、是正後のRPNが全ての故障モードについて合格水準に達するまで継続しなければならない」と説いています。

 ここに、明らかな矛盾があります。RPNに「合格水準」というものがある筈はないのです。もしあるなら、優先順位ではなく最初からその「合格水準」にあるかどうか絶対評価をすればよいはずです。RPN は、最初の一歩を間違った結果なのです。

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1.FMEAとは

 FMEAは、Failure Mode and Effect Analysis のアクロニムで、故障モードと影響の解析という意味です。設計通りに作ったシステム(製品や工程など)の起こり得る故障モードを予測し、故障モードごとに信頼性の合否を判定す手法・活動をいう。FMEAにより、壊れても被害が少なくなるように、壊れる頻度が小さくなるように、および、大事に至る前に危険を検知して対処できるように、十分な対策が講じられているかどうかを判定します。

 FMEAは、応用される分野によって特徴づけられ、、設計FMEA、工程FMEA、医療FMEAなどに分かれます。

 最も重要なことは、FMEAの内容が指導者によって全く違うことです。有名な指導機関だからと言って安心できません。多くの企業が誤った指導により、実用性のないFMEAを形骸的に実施し、時間を無駄にしています。

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2.設計FMEA

ガスコンロの事例

 手順を下のガスコンロのホースの事例で説明しよう。

ガスコンロのFMEAシート
FMEAシート
  1. 品名:アイテムとも呼ぶ。
    故障モード(=構造破壊)が発生し得る場所を示す。部品(液体や周囲の環境の場合もある)や部品の一部でもよいが、その部品がどの組立品に属するか示さなければならない。組立品の名称だけを記載しても不可である。

  2. 故障モード:構造破壊をいう。
    製品の「構造」とは、材質、形状、寸法、組合せをいう。これらが変化することが故障モードである。ガスホースでいえば材質劣化とクラック、熱溶融その他いろいろあり得るが、起こり得るものを挙げればよい。本件の場合、材質劣化 (→クラック) を挙げている。

    組立品の場合、その組立の接合部(ねじ、ハンダ接合、カシメ結合、圧入、溶接、差し込みなど)の接続の破壊が故障モードになる。

    〔注意1〕「回転しない」、「振動や騒音が出る」などは故障であって故障モードではない。
    〔注意2〕不良品は設計した通りの製品ではないので、故障モードではない。

  3. 要因:その故障モードが発生するメカニズムを指す。本件では経年変化である。

  4. 影響:故障モードが引き起こす結果
    本件ではガスもれが起きる。さらにガス爆発や火災も連想されるが、そのことを当然として、ここでは「ガスもれ」で代表している。

  5. 対策:故障モードについての対策

    「対策」の記載欄がないFMEAシートは、評価の対象がないから誤り。皆さんの家庭で使っているガスコンロにも対策はとられている。それは、ガス事業法によってガス会社が行う4年に1回の定期点検である。

    「対策」は広くとらえる。信頼性試験や強度計算など設計者が行った対策だけでなく、自然に備わっている強度や類似製品での結果などもこれに含まれる。

    対策の記載欄は1個である。影響対策、頻度対策、検知対策と分けてはならない。1個の対策が、これらの2個、あるいは全てに効果を及ぼすからである。

  6. 影響(a):「ガスもれ」という影響を軽減する対策として合格かどうか、4段階評価をする。

  7. 頻度(b): 「クラック」という故障モードの発生を防ぐ対策として合格かどうか、4段階評価をする。

  8. 検知(c):大事に至る前に対処するために危険を検知す対策として合格かどうか、4段階評価をする。

  9. 積: a×b×c を計算する。

  10. RI:危険指数(Risk Index:RI) を計算する。
〔注1〕a、b、c、および RIのスコアリングは次のように行う。a、b、c、の判定は、どれに一番近いかで決める。

スコアリング
評価 無策 不十分 合格 完全
採点 4 3 2 1

〔注2〕 a、b、c のスコアリングは独立ではない。影響の被害が大きければ、それだけ頻度対策や検知対策は厳しく要求される。

 このように、故障モードごとに対策の合否を判定するやり方を絶対評価4点法と呼びます。現在、理論的にも実用的にも、これが最も優れた方法です。

 さて、本件のガスホースの場合、対策は4年に1回の法定点検だけです。実務もそうなっていますが、これで a、b、c、RIの値は表のようになり、合格となります。

ガスコンロのFMEAシート(再掲)
FMEAシート

 なぜこうなるか? FMEAを本格的に勉強して「考える力」を身につければ容易に解答を出すことができます。

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評価

 上の事例では、故障モードごとに対策の合否(あるいは、対策十分、不十分)を評価しました。なぜ、そのように評価するのが正しいか、簡単に説明しよう。

 下に示すのは、機械振興協会研究所からの引用です。
頻度の評価基準
発生の可能性 程度 可能性の目安
1 まれに 年に1回程度
2 たまに 月に1回程度
3 時々 週に1回程度
4 頻繁に 日に何回も

 これは頻度の評価基準になるだろうか?
 なるほど、紙コップや割り箸などの製品の場合は、年に1回程度なら「まれに=1」と評価してもよいと思われます。しかし、パソコンになると年1回では問題です。まして、航空の墜落を招きかねないケースだと年1回は「頻繁に=4」と評価すべきのように思われます。

 つまり、影響・頻度・検知難度をそのまま評価するのでは製品ごとに基準を変えなばならず、評価基準は成立しないのです。つまり、評価不能に陥ります。

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故障モード

 「抜け漏れのない故障予測」を容易にするために採用されるのが、「故障モード」の概念です。

 なぜ、「故障モード」によって故障の予測が容易になるか。ここが重要なところです。これを理解するためには、「設計とは何か」を知らねばなりません。

 われわれは製品の構造を設計し、その構造が機能を果たすのです。換言すれば、所定の機能を果たすように構造を設計するのです。ここに、構造と機能の関係が明らかになります。すなわち、構造破壊(故障モード)によって機能障害(=故障)が起きるのです。

 設計通りにできた製品であっても、寿命に達する前に構造が破壊して故障することがあります。その多くは、設計の時点で予測しなかった故障です。

 製品によって機能は様々であり、故障も製品によって多種多様です。しかし、製品に使われる部品や材料は共通のものが多く、例えば「ねじ」は非常に多くの製品に使われます。従って、「ねじ」の緩み、錆び、曲がり、折損などは共通の故障モードであって、容易に列挙することができる。そして、ここから故障を辿れば、様々な故障が漏れなく探索できることになります。

 従ってFMEAでは、いきなり「故障を予測する」のではなく、まず構造破壊(=故障モード)を列挙し、「もし、ここがこのように壊れたら、何が起きるか」と故障や災害を推測するのです。

 そして、対策は十分かどうか、これを「起こり得る故障モード」ごとに評価して合否を判定します。

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JISの定義

 JIS z 8115 に次のような定義があります。
  • 「故障」とは規定の機能を失うこと。
  • 「故障モード」とは故障状態の形式による分類。例えば、断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など。

 この定義の意味をごく普通に解釈すると、

  1. 「故障」とは規定の機能を失うこと、つまり設計上予定した機能を果たさない状態です。ここには、格別の問題は見当たらない。

  2. 「故障モード」とは「故障状態の形式による分類」という表現は、理解が困難である。しかし、その後に、「例えば、断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など」とあるので、構造破壊を意味することが明確になる。
 ところが、この故障と故障モードを区別できない指導者やウェブサイトが圧倒的に多いのが実情です。
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組立品の故障モード

 部品の故障モードが割れ、切れ、材質劣化などの構造破壊であるとしても、動く、作動する、静かに回転するなどの機能を持つ完成品やユニットなどの故障モードは、何か?

 この問題について、間違った指導をする講師やサイトが跡を絶たないのが現状です。
ユニットの故障モードを間違った事例
機能故障モード
電装ユニット内の熱を放出するエア吸い込み量が低下
騒音がなく、静かファン筐体の異音

 組立品は部品の結合によって成り立っており、その結合の破壊が故障モードです。上の表に記載された「故障モード」は、機能の異常=故障に他なりません。

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潜在的故障モード

 では、全ての部品や組立品について、全ての故障モードを列挙すべきだろうか?

 それは実に大変な仕事で、しかも無駄なことです。「起きない」と確信が持てる故障モードは対策が不要だから列挙する必要はありません。従って「起こり得る故障モードだけを列挙せよ」ということになります。この「起こり得る」ことを英語で "Potential" と表現します。

 ところが例によって、学者による誤訳がこの本来の意味を曲げてしまったのです。「潜在的故障モード」と呼ぶ人がいますが、それは英語の "Potential" を誤訳したものです。 "Potential" は「潜っていて見えない」という意味と「将来起こり得る」という意味を持ちますが、誤って前者を採用したのが「潜在的故障モード」の用語です。正しくは、「将来、起こり得る故障モード」という意味でなければなりません。

 誤訳の結果、「故障モードは潜在的で容易に列挙できないもの」という先入観にとらわれ、それを解決するための手段として「先に機能を列挙して、ついでその機能の異常を故障モードとする」というやり方に陥ったのです。これだと、故障(=機能異常)と故障モードの区別がつかないことになります。

アイテム(品名)→ 機能 → 故障モード

となっているFMEAシートのフォーマットは、この誤解に基づいています。

 FMEAによって、何を評価するのですか? 「この設計で信頼性は大丈夫か、対策は十分か」を評価するのです。だから、対策が示されていなければ評価の対象がないことになります。従って、

故障モード → 評価 → 対策

となっていて、対策が先に示されていないFMEAシートのフォーマットは、この点の誤解にも基づいています。

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コンポーネントのFMEA

 部品の故障モードの影響とは、原則、ユーザーが使用する完成品の機能への影響、及び災害等です。しかし、その部品の設計と生産を受注する場合、受注企業には完成品への影響や災害を判断できない場合があります。

 その場合でも、絶対評価4点法のFMEAを適用することができます。その詳細は、セミナーで説明します。

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相対法は実用不可

 当研究所が指導しているFMEAは、評価時点での故障モードごとの信頼性の合否を判定するもので、これを絶対法と呼びます。これに対し、日科技連や日本規格協会等が指導している相対法は、
  • 被害の深刻さ(S)
  • 発生頻度(O)
  • 検知の難度(D)
を10段階で評価し、危険優先指数:RPN(=S×O×D)の値の大きいものにだけ対策を講じて、他は放置するというやり方をとります。

 次の頻度に関する評価基準は、10段階の評価が事実上不可能なので4段階評価に簡易化したもの(相対的4点法)と思われますが、それでも実行不能です。
(財)機械振興協会技術研究所からの引用
発生の可能性 程度 可能性の目安
1 まれに 年に1回程度
2 たまに 月に1回程度
3 時々 週に1回程度
4 頻繁に 日に何回も

 なぜ実行不可能か、説明しよう。上の評価基準は、使用中の紙コップにクラックが生じるとか、割り箸が折れるなど、被害の比較的少ない故障モードについては妥当な基準になると思われる。

 しかし、自動車の走行中にエンジンから火が出て爆発するとか、航空機の墜落を招くような故障モードには全く使えない(年に1回でも「まれに」とは言えない)。つまり、製品ごと故障モードごとに評価が変えねばならず、評価基準を作れない。

 さらに、仮に評価できたとしても、結局のところ合格なのか不合格なのか判定ができない。以下に示す指導例はいずれも相対法であるため、これらの欠陥を持っています。

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構造化知識研究所のFMEA

 以上のFMEA理論と著しく異なる内容を紹介している構造化知識研究所のFMEAを検討してみよう。これを研究することにより、FMEAの理解が深まること請け合いである。

 以下、提示されている模範例と、それに対する当方のコメントを紹介する。

 まず最初に、同じ電装ユニットの冷却ファンAssyにつき、部品のFMEAとアセンブリーのFMEAがあるとのことである。

(1)部品のFMEA
構造化知識研究所から引用
部品FMEAの左半分
@ アイテム A 機能 B故障モード C故障影響 D故障原因 E重要度(対策前)
F厳しさ G頻度 H検知難度 I致命度
冷却ファンBRG *ファンシャフトの回転保持
*振動がなく静か
BRGボールかじり 冷却ファン停止
→電装ユニット高熱により動作不良
*BRG潤滑剤劣化
*BRG転動面への異物侵入
*BRG腐蝕量大
*BRGハウジング部変形
3 3 3 27

(表中の@A等の番号は当方の記入 )

 コメント:
 @アイテムの記載欄
 アイテム記載欄に「冷却ファンBRG」とある。
 しかし、内容を見ると、ボール、潤滑剤、ハウジングなどがアイテム(故障モードを起こすもの)である。つまり、アイテムの意味を誤解している。これだと、アイテムがどこに記載されているか探さなくてはならない。

 A機能の記載欄
 ここに機能の記載欄があるのは、機能を列挙すれば機能障害(=故障)が判明し、この故障を故障モードみなせばよい、との誤解による。つまり、故障と故障モードの区別を知らないということになる。

 B故障モードの記載欄
 「BRGボールのかじり」と記載されていが、正しくはBRGボールがアイテムでかじりが故障モードである。

 C故障影響
 影響とは、故障モードの影響でなければならない。なぜ、故障の影響になったか? 故障と故障モードの区別を知らない故だと思われる。
 事実、ここに記載されているのは、4組のアイテムとその故障モードである。

 D故障原因
 これは、故障モードの原因でなければならない。なぜ、故障の原因になったか? 故障と故障モードの区別を知らない故と思われる。

 ここに記載されているのは、アイテムと故障モードのみである。
 すなわち、潤滑剤劣化とあるのは、正しくは、潤滑剤がアイテムで劣化が故障モードである。
 転動面への異物侵入は、転動面がアイテムで異物混入が故障モードである。
 BRG腐蝕量糧大とあるのは、ベアリングがアイテムで腐食が故障モードである。
 ハウジング部変形は、ハウジングがアイテムで変形が故障モードである。

 E重要度(対策前)
   何の対策もせずに(信頼性設計なしで)FMEAを行うと理解しているらしい。
 そんな技術者はいるだろうか? 強度計算もせずに建築物、電車、自動車を設計する? それは全くの素人です。信頼性設計をしなかったら、起こり得る故障モードが多すぎて、何から何まで設計のやり直しになる。

 プロは、機能設計と同時に信頼性設計を行い、その信頼性設計(対策)をFMEAによって評価する。従った、評価欄の前に「対策」とか「現行管理」など、信頼性設計の現状を記載する欄がなければならない。

 F厳しさ=3
 G頻度=3
 H検知難度=3
 これは、10点法で評価したもので、このような評価は一般に妥当性がない。例えば、年に1回起きれば最悪の10点なのか、ほぼ問題でない2点なのか、判断ができない。なぜなら、航空機の墜落を招くような故障モードなら年に1回でも10点とすべきであるが、割り箸が折れるという故障モードなら年に1回起きてもほぼ問題なしの2点が妥当である。つまり、評価基準を設定することができず、人によって評価がまちまちになることを回避できない。

 I致命度
 致命度=27という評価は、対策必要の意味なのか対策不要の意味なのか、不明なのである。そのことは、FMEA表の右半分を見れば分かる。

部品FMEAの右半分
対策の検討 対策実施と
その結果
重要度(対策後)
対策内容 対策部門
実施部署
厳しさ 頻度 検知難度 致命度
*BRG封止構造を××にする
*評価方法を××に変更
設計
〇月〇日
実験
〇月〇日
封止構造を実施
試験合格
3 3 1 6

 コメント:
 一番右に、致命度=6とある。6なら合格なのだろうか。そして、なぜだろうか?
 潤滑剤劣化、異物侵入、ハウジング部変形は、どうなったのか? 何とも不思議なFMEAという他はない。

(2)アセンブリ―のFMEA
アセンブリーのFMEAの左半分
@ アイテム A 機能 B故障モード C故障影響 D故障原因 E重要度(対策前)
F厳しさ G頻度 H検知難度 I致命度
冷却ファンAssy *電装ユニット内の熱を放出
*振動がなく静か
*メンテ作業が容易
エア吸い込み量が低下 電装ユニット高熱により動作不良 *ファン排気口の背面の隙間がない
*ファンに塵埃が付着
*ユーザー改造
3 4 2 24
冷却ファン筐体の異音 異音クレーム *ファンASSyの取付けボルトの緩み、ファン筐体の共振 2 4 3 24

(表中の@A等の番号は当方の記入 )

 コメント:  @アイテム
 冷却ファンASSYがアイテムになっている。しかし、内容の全体を見ると、アイテムと故障モードは、ファンの塵埃付着、取付けボルトの緩みという2組が登場しているだけである。

 A機能
 ここに機能の記載欄があるのは、「なぜ、その機能がだめになるか」とトップダウンするためと推定される。即ち、「なぜ、電装ユニット内の熱を放出という機能がダメになるか」→「エア吸い込み量が低下するから」と導いて、これが故障モードだと勘違いしている。
 同様に、「なぜ、振動がなく静か」という機能がだめになるか」→「筐体から異音が出るから」と導いて、これが故障モードだと勘違いをしている。

 B故障モード
 「エア吸い込み量が低下」や「冷却ファン筐体の異音」などは、、故障であって故障モードではない。

 C故障影響
 記載欄の名称は「故障モードの影響」が正しい。
 記載内容の「電装ユニット高熱により動作不良」は、どのアイテムのどの故障モードによって動作不良となるか、不明である。

 D故障原因
 記載欄の名称は「故障モードの原因」が正しい。
 記載の内容は、「ファン排気口の背面隙間なし」がどの故障モードの原因なのか不明。また、「ファンに塵埃が付着」は、アイテムと故障モードである。「ファンASSY取付けボルトの緩み」もアイテムと故障モードである。

 I致命度
 致命度=24は、対策必要なのか不要なのか、判断が不能である。

 以上のように間違いを指摘して考察することは、FMEAを実施するための力を身につける早道である。なお、構造化知識研究所は、以上の説明に対して反論を展開しているが、その反論の全てが間違いであることを吟味して頂きたい。

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Plexus(プレクサス)

 この教育機関は、IATF (GM,フォード,クライスラーなど)とプレクサスが共同で開発したテキストを使用します。そして、そのことを売り物にしています。

 これはQS9000のFMEA規格をベースにしており、相対評価の10点法です。上記の構造化知識研究所と同様に、故障モードと故障の区別があいまいで、評価はほとんど不可能で人によって異なり、対策が合格なのか不合格なのか判然としません。

 日科技連、日本規格協会も同様のFMEAを指導しています。

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國井良昌氏

 國井良昌氏から引用します。

 FMEAは、システムを構成する部品やモジュールに故障が発生した場合に、そのシステムにどの程度の影響が及ぶかを解析する手法。

 コメント:
 故障と故障モードを取り違えています。
 正しくは、部品やモジュールに「故障が発生した場合」ではなく、「故障もードが発生した場合」に、そのシステムにどのような故障が生じるかを解析するのです。

 FMEAは、「故障モードとその影響」の解析であって、「故障とその影響」の解析ではないのです。

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機械振興協会

 機械振興協会から引用します。

(手順)(1)まず、製品に生じる故障の状態(故障モード)を想定して故障の原因(故障メカニズム)を分析します。
(手順)(2)次に、故障の影響をなくすための調べ方と、防ぐ方法を導き出します。
(手順)(3)次に、故障が単一的か、致命的かを識別し、その影響・影響度を評価します。 (以下、省略)

 コメント:

  1. 故障モードを抽出し、と述べておきながら、その後は故障の原因、故障の影響という具合に故障モードが故障と入れ代わっており、故障モードの意味を理解していないと思われる。

  2. 頻度や検知度を評価しないのは、評価の総合性に欠け、実用性がない。

  3. 対策を講じない(信頼性設計をしないで)評価する素人設計になっている。
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Resilient Medical

 Resilient Medicalから引用します。

 FMEAを行うチームを編成する際には、分析対象となる業務(工程)に精通したメンバーを選出することが重要です。必須ではありませんが、当該作業担当者が含まれることが望ましいでしょう。
 大切なのは分析対象となる業務(工程)を深く理解し熟知しているメンバーが含まれていることです。
 チームは5〜6名が望ましいといわれていますが、業務の合間をぬって参加することになるので、招集が難しい場合には人数に関して適切な編成をしましょう。

 コメント:
 FMEAを実施するのは、工程設計者ではなく、FMEAチームという別のグループである旨の説明になっている。しかも、業務の合間をぬって参加する、とある。

 これは、設計者は自分が設計した工程についてFMEA(=信頼性の評価)をしないし信頼性設計もしないという、誤った考え方が前提になっている。プロの工程設計者は必ず自分で信頼性設計をするから、FMEAも自分で行う。

 ただ、設計審査チームが「設計者の行ったFMEA」を審査するのは有益・必要である。また、業務の合間をぬって参加する、という片手間の仕事でFMEAが可能だというのは、驚くべき粗雑さである。

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工程MEA

工程FMEAとは

  • Process Failure Mode and Effect Analysis のアノニマスである。
  • 工程設計に基づいて設置した工程において起こり得る違反を故障モードとし、故障モードごとに対策が十分かどうか、合否を判定する手法・活動をいう。
 下のFMEAフォーマットに従って、手順の概略を説明しよう。
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ピン入れ忘れの事例

工程FMEAシート:ピンの入れ忘れ
工程FMEAシート
  1. 工程の記載欄:
    工程を特定する記載。

  2. 故障モードの記載欄:
    起こり得る「工程設計に対する違反」を記載する。例えば、段取りの間違い、作業ミス、機械の故障などである。
    〔注〕不良品の発生や災害は故障モードの影響であって、故障モードではない。

  3. 要因の記載欄:
    故障モードの発生メカニズムを記載する。うっかりミスの発生メカニズムは、ポカである。

  4. 影響の記載欄:
    不良項目、クレーム、ケガ、コスト高、納期遅れ、環境汚染、その他。
  5. 対策の記載欄:
    故障モードの影響を軽減する対策、発生を防ぐ対策、大事に至る前に危険を検知して対処する対策など。

    〔注〕:
    (1) 対策によって信頼性が生まれるから、「対策」の記載欄がないFMEAフォーマットは誤りである。「対策」は「現行管理」などの用語で表される場合もある。

    (2) 「対策」の意味は広くとらえる。設計者が特に対策をしなくても、信頼性試験の結果、自然に備わっている性質、類似の工程での実績なども、この対策に含まれる。

    (3) 対策の記載欄は、1か所である。1個の対策が、影響の軽減、頻度の軽減、検知性の改良に影響するからです。

  6. 影響(a)の記載欄:
    影響を軽減する対策が十分か不足か、4段階で評価する。影響が深刻であればそれだけ厳格な対策を求められる。

  7. 頻度(b)の記載欄:
    頻度対策が十分か不足か、4段階で評価する。頻度対策とは、発生しないようにする対策をいう。影響が深刻であればそれだけ厳格な対策を求められる。

  8. 検知(c)の記載欄:
    検知対策が十分か不十分か、4段階で評価する。検知対策とは、大事に至る前に影響が検知され、対処することを可能にする対策をいう。影響が深刻であればそれだけ厳格な対策を求められる。

  9. 積の記載欄:
    a×b×c を計算する。

  10. RIの記載欄:
    危険指数(Risk Index:RI)を計算する。
 a、b、c、および RIの判定は次のように行う。a、b、c、の判定は、どれに一番近いかで決める。

評価 無策 不十分 合格 完全
採点 4 3 2 1

 対策として、ピンをセンサーで検知した場合だけ圧入機が作動するようにすれば、次のように評価されて合格となる。

工程FMEAシート:ピンの入れ忘れ
工程FMEAシート

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工程設計

 工程設計は、次のような事項に関する細目を決定することを指します。
  • 人(Man):作業や管理の担当者、関係者
  • 機械(Machine):機械・装置・設備・工具など
  • 材料(Material):工程で処理を受けるもの
  • 方法(Method):作業や管理の方法
  • 測定(Measurement):情報の収集と処理
 以上の5つの要素を 5M と呼ぶ慣行があります。時折、4M と称して測定(Measurement)を除外する指導例を見受けますが、実は測定が一番重要な要素なので、これを除外するようでは明らかに偽物の指導者です。

 なぜ測定が一番重要かというと、「この工程で何が求められているか」という情報が明確でないと仕事は始まりません。仕事の途中で問題がないか調査しないとトラブルを予防できません。「首尾よく成果が出たのか」という情報が明確でないと仕事は終わりません。過去のトラブルを調査しないと改善ができません。これらは、全て測定です。

 ところで、なぜ、5M を決めるのかというと、トラブルを予防するためです。「機械はこういうものを使え、段取りはこうして、どんな人に担当させて、材料はこういうものでなければならないし、作業手順はこうでなければいけないし、ここでこれを測定せよ」などと細々と指定する、そうしなければトラブルになるからです。

 5M を適切に指定することにより、次の5つの機能が発揮されます。これらの全てを満たさないと、トラブルになります。

  • 品質 (Quality)
  • コスト (Cost)
  • 納期 (Delivery)
  • 安全 (Safety)
  • 環境保護 (Environment Protection)
   以上の関係を図示すると、こうなります。


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工程の構造と機能

 上の図を見ると、5M が工程の構造であり、その構造が5つの機能を果たすことが分かります。

 製品の場合を思い出して下さい。製品設計は、製品の構造を設計することです。そして、その構造が製品の機能を生むのです。工程も同様です。工程の構造を設計し、その構造が機能を生むのです。

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工程の故障モード

 すると、工程の構造破壊によって機能障害が起きてトラブルになることが分かります。ここに、工程の故障モードが5M に関する違反を指すことが明確になります。

 工程設計には 5M に関する様々な指示が規定されていますが、それらは必ず順守されるように出来ているのか? これが信頼性です。対策が十分かどうかを工程設計の指示ごとに評価するのが工程FMEAです。

 その他は、設計FMEAと同じです。

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不良モード説(田中健次氏)

 工程の故障モードを「不良モード」を意味すると唱える説があります。電気通信大学の田中健次教授は、ホームペジで次のように唱えています(小野寺勝重氏も同意見)。

 「故障モード」とは、
  • 製品設計では、折損、磨耗、短絡などの不具合、工程設計では、寸法不良、加工キズなど。

  • 医療活動であれば、薬剤の選択誤り、カルテ記入忘れなどのエラーが相当するので、ここではエラーモードと呼ぶことにする(トラブルモードと呼んでもよい)。

 上の考え方を吟味しよう。

  1. 製品について述べるときは、の故障モードは「折損、磨耗、短絡など」の構造破壊だとしているので正しい理解です。しかし工程の話になると一変して、「寸法不良、加工キズなど」の不良項目、すなわち機能障害が故障モードであるとしており、論理が一貫していない。

    機能障害は故障であって、故障モードではない。

  2. 品質不良等を先に想定して、その予防策を決めたものが工程設計です。工程設計をした後に品質不良を列挙するのでは、そもそも工程設計で不良の予防をしなかったことになる。

    これは何のために設計するのか、目的を知らない素人の設計です。

  3. 工程のトラブルは、品質に限りません。品質Q・納期(時間塗料)D・コストC・安全S・環境保護E〜などがあり、工程管理はこれら全てを一体に管理しなければなりません(QDC一体管理の原則)。

    工程FMEAで不良だけを考慮し、他を考慮から外すことは実務ではあり得ません。

  4. 問題点は、「工程設計とは何か、信頼性とは何か」という認識です。信頼性とは「工程設計どおりの現場」が維持されやすい(変化しずらい)性質をさす。
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オムロンの工程FMEA

 オムロンのホームページから引用します。
 工程FMEA(PFMEA)とは何ですか?

 工程FMEA(工程故障モード影響解析:PFMEA)とは、工程内での欠陥により発生する不良やバラツキなどの現象が、製品に対してどう影響するかを解析し、事前に問題点を予測・摘出する手法で、製造工程における問題点、故障発生要因やメカニズムを追求し工程の改善を行うために使用されます。

 コメント:上の説明をみると、

 「工程内での欠陥により発生する不良やバラツキなどの現象」が故障モードであり、これが「製品に対してどう影響するか」を影響としている。

 この理解は、故障モードの定義と矛盾しています。同社は、故障モードをJISと同様に、
 ・故障モードとは、故障状態の形式による分類のことをいいます。断線、短絡、折損、摩耗、特性の劣化などが例として挙げられます。

と定義しています。

 この定義は、「故障モードとは構造の破壊である」としており、工程の構造破壊は5M (人、機械、材料、方法、測定) に生じる変化を意味します。

 つまり、工程内での欠陥により発生する不良やバラツキなどの現象は故障モードではないのです。人のポカミスや機械の故障などが故障モードであり、不良やバラツキなどの現象が影響です

 この基本的な間違いのため、工程FMEAを実施に膨大な時間と労力を費やすことになります。

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FMEA/FTA 定例セミナーの申込

4.セミナー風景

 上にみたように、書物、セミナー、ウェブ上の講座には疑わしいものが相当数あります。たまたま教わったFMEAを形だけ模倣すると、結局は「最初からやり直し」のハメになります。

 FMEA/FTAには、いくつかの落とし穴があります。まず、「故障モードとは何か?」という最初の第1歩から人によって考え方が違います。

 また、故障モードの見つけ方、評価の仕方、評価の基準、対策の仕方も人によって教え方が違います。だから、幸運にも正しい指導を受けた人は有効なFMEAを行ないますが、多くは誤った指導を受けて、体裁上のFMEAで終わってしまいます。

講習会風景

 なぜ、そうなるか? 数あるFMEAセミナーには「故障、故障モード、不良の区別が分からない」という、全くデタラメなの講師も多数いるのです。 また、実務経験もなしに書物や論文から得た知識だけの大学の先生もいます。というワケで、いろいろな指導の仕方が生まれます。

 本セミナーを受講すると、偽の講師の判別がつくようになります。客観説TQMの考え方を身につけた上でFMEA/FTAに進めば、正しい理解が素早く得られます。

 なお、 本セミナーの "4点法FMEA" は、ISO/TS16949 の要求に適合します。認証登録事例

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