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医療FMEA  工程FMEA  FTA

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設計作業中の図 設計FMEA 入門

 FMEAとは、設計通りに作ったシステム(製品や工程)の信頼性の合否を故障モードごとに判定するツール・活動をいう。

    換言すれば、
  • 壊れても被害が出にくく、
  • 壊れにくく、
  • および、大事に至る前に危険を検知して対処しやすくなるように、
    十分な対策が講じられているかどうかを判定する手法・活動をいう。
 このページでは、FMEAの理論と事例の解説を行います。

 FMEAと言えば、特に断らなければ製品に関する設計FMEAを意味し、これを工程に応用したものを工程FMEAという。医療工程に関するものを医療FMEAと呼ぶ。

 FMEAは、Failure Mode and Effect Analysis のアクロニムで、日本語訳では「故障モードと影響の解析」という意味です。

 製品設計又は工程設計において、起こり得る故障モード(Potential failure mode)を列挙し、ボトム・アップに故障や災害を推測し、現行対策で合格かどうか評価します。

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事例解説

 手順を下のガスコンロのホースの事例でやり方を説明しよう。

ガスコンロのFMEAシート
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ 法定点検          
                   

  1. 部位:アイテムと表現してもよい。解析する「故障モード」が発生し得るところであれば、部品、組立品、液体その他、製品のどの段階でもよく、部品の一部でもよい。

    〔注1〕上のFMEAシートに「ホース」と記載されれいるが、これはガスコンロに組みあがった製品のホースであって、ホース単体のことを意味するのではない。部品とは部品単体ではなく、完成品の使用中に構造破壊が起きる部品の意味である。

    〔注2〕従って、部品のFMEA表と組立品のFMEA表があるとする説明は誤りである。


  2. 故障モードとは、構造破壊をいう。
    製品の「構造」とは、材質、形状、寸法、組合せをいう。これらが変化することが故障モードである。ガスホースでいえば材質の劣化 → クラック、熱溶融その他いろいろあり得るが、起こり得るものを挙げればよい。本件の場合、材質の劣化 → クラックを故障モードとする。

    部位が組立品の場合、その組立の接合部の破壊が故障モードになる。例えば、ねじの緩み、ハンダの割れ・溶融、カシメの緩み、圧入の緩み、差込みの外れなど。

    〔注1〕「エア吸い込み量の低下」、「振動や騒音が出る」などは故障であって故障モードではない。

    〔注2〕FMEAは設計を評価する手法・活動であり、従って設計通りに出来上がった製品を対象にする。不良品は設計した通りの製品ではないので、FMEAの対象ではない。


  3. 要因:その故障モードが発生するメカニズムを指す。本件では経年変化である。

  4. 影響:故障モードが起きたなら、その結果、何が起きるか。本件ではガスもれ、さらにガス爆発や火災も連想されるが、そのことを当然として「ガスもれ」で代表している。

    〔注〕材料の劣化の影響としてクラックが発生し、クラックの影響としてガス漏れが発生し、ガス漏れの影響として爆発や火災が発生する。できるだけ初期の段階で対処できるように、次のような対策を講じる。


  5. 対策:故障モードやその影響について採用する対策である。

    「対策」の記載欄がないFMEAフォーマットは、評価の対象がないから誤りです。皆さんの家庭で使っているガスコンロにも対策はとられている。それは、ガス事業法によってガス会社が行う4年に1回の定期点検です。

    「対策」は広くとらえる。信頼性試験や強度計算など設計者が行った対策だけでなく、自然に備わっている強度や類似製品での結果などもこれに含まれる。


  6. 影響(a):「ガスもれ」「爆発・火災」などによる被害を軽減する対策として合格かどうか、4段階評価をする。

    ここで、被害の大きさを評価するやり方

  7. 頻度(b): 「クラック」「ガスもれ」「爆発・火災」などの発生を防ぐ対策として合格かどうか、4段階評価をする。

  8. 検知(c):大事に至る前に危険を検知して対処することができる対策として合格かどうか、4段階評価をする。 〔注〕被害の大きさ、頻度、検知難度を評価するのか、それらの対策状況を評価するのかという議論は、本論の → ここ で説明します。

  9. 積: a×b×c を計算する。

  10. RI:危険指数(Risk Index:RI)RIの計算式 を計算する。
〔注1〕 a、b、c、および RIのスコアリングは次のように行う。a、b、c、の判定は、どれに一番近いかで決める。

スコアリング
評価 無策 不十分 合格 完全
採点 4 3 2 1

〔注2〕 a、b、c のスコアリングは相互に独立ではない。影響の被害が大きければ、それだけ頻度対策や検知対策は厳しく要求される。

〔注3〕 a、b、c のスコアリングの順序はケースによって一様ではない。例えば、

  • 影響度(a)=1 or 2 となる軽減策を講じた場合

     (a)=1 or 2 であれば発生しても支障ないから、(b)や(c)を評価する必要もなく、

    b=1 or 2
    とみなしてよい。

  • 頻度(b)=1 or 2 となる対策を講じた場合

     (b)=1 or 2 であれば検知の必要性もなくなるから、は(c)を評価する必要がなく、

    b=c
    とみなしてもよい。ただし、(b=2、c=1) や (b=1、c=2) もあり得る。

  • 検知度(c)=1 or 2 となる対策を講じた場合は、その結果として(a)と(b)がどうなるか評価すればよい。本件ガスコンロの事例がこれに該当するので、参考に。
最初のFMEAシートへ

 このように故障モードごとに対策の合否を判定するやり方を絶対評価4点法、あるいは、絶対法と呼びます。現在、理論的にも実用的にも、これが最も優れた方法です。

 さて、本件のガスホースの場合、対策は4年に1回の法定点検だけですが、これで a、b、c、RIの値はどうなりますか?

ガスコンロのFMEAシート
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ 法定点検 2 2 2 8 2
                   

 なぜこうなるか? FMEAを本格的に勉強して「考える力」を身につければ容易に解答を出すことができます。この続きは、→ ここ で解説します。
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絶対法と相対法

 以上のFMEAのやり方は故障モードごとに対策状況の合否を判定するもので、「絶対法」と呼びます。これに対して、故障モードごとに危険度を判断して、多数の故障モードの危険度の順位を決めるやり方があり、これを相対法と呼びます。

 相対法では、対策の良し悪しではなく、

  • 厳しさ、Sevirity(S):被害の大きさ
  • 頻度、Occurrence(O):頻度の大きさ
  • 検知難度、Detection:検知の難しさ
を10点で評価し、危険優先指数、Risk Priority Number(RPN)
RPN=S× O× D
の値が大きい故障モードだけに対策を講じ、その他は放置するという扱いをします。

 しかし、相対法は不合理な点が多く、実用性がないと考えられます。例えば、厳しさ(S)を問題にするなら、「割り箸」が使用中に折れても大した被害が生じないから、割り箸には対策を講じないという結論になって、実務に合致しません。被害が大きいかどうかではなく、「割り箸」としてふさわしい対策か講じられているかを判断すべきです。

 また、相対法では、対策の合否判断ができないという難点があります。


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設計FMEA 本論

目次

故障の予測の難しさ

 故障の予測の難しさは、「何が起こるか」の質的予測が必要なところにあります。例えば天気予報では、発生する事象は晴れ、曇り、雨、雪などに限定され、そのいずれが起こるかの蓋然性を定量的に定めることです。

晴れ後曇りの図 曇り後雨の図  しかし新しい技術、製品、工程で起こる故障を予測することは容易でなく、「想定外」の危険が常につきまといます。FMEAは、この「想定外」の故障や災害を抜け漏れなく予測し、十分な対策が行われたかどうかを定量的に判定するための手法ないし活動です。

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故障モード

 そこで、その「抜け漏れのない予測」を容易にするために採用されるのが、「故障モード」の概念です。

 なぜ、「故障モード」によって故障の予測が容易になるか。ここが重要なところです。これを理解するためには、「設計とは何か」を知らねばなりません。

 我々は、製品の構造を設計し、その構造が機能を果たすのです。換言すれば、所定の機能を果たすように構造を設計するのです。ここに、構造と機能の関係が明らかになります。すなわち、構造破壊(故障モード)によって機能障害(=故障)が起きるという関係にあります。

 設計通りにできた製品であっても、寿命に達する前に構造が破壊して故障することがあります。その多くは、設計の時点で想定外の故障(起きるとは予測しなかった故障)です。

 製品によって機能は様々であり、故障も製品によって多種多様です。しかし、製品に使われる部品や材料は共通のものが多く、例えば「ねじ」は非常に多くの製品に使われます。従って、「ねじ」の緩み、錆び、曲がり、折損などは共通の故障モードであって、容易に列挙することができる。そして、ここから故障を辿れば、様々な故障が漏れなく探索できることになります。

 従ってFMEAでは、いきなり「故障を予測する」のではなく、まず構造破壊(=故障モード)を列挙し、「もし、ここがこのように壊れたら、何が起きるか」と故障や災害を推測するのです。

 そして、対策は十分かどうか、これを「起こり得る故障モード」ごとに評価して合否を判定します。

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JISの定義

 JIS z 8115 に次のような定義があります。

  • 「故障」とは規定の機能を失うこと。
  • 「故障モード」とは故障状態の形式による分類。例えば、断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など。

 この定義の意味をごく普通に解釈すると、

 (1) 「故障」とは規定の機能を失うこと、つまり設計上予定した機能をかつて正常に果たしていたのに果たさなくなった状態(=機能障害)です。ここには、格別の問題は見当たらない。

 (2) 「故障モード」とは「故障状態の形式による分類」という表現は、理解が困難である。しかし、その後に、「例えば、断線、短絡、折損、磨耗、特性の劣化など」とあるので、構造破壊 であることが明確になっている。

 ところが、この故障と故障モードを区別できない指導者が圧倒的に多いのが実情です。

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潜在的故障モード

 では、全ての部品や組立品について、全ての故障モードを列挙すべきだろうか?

 それは実に大変な仕事で、しかも無駄なことです。「起きない」と確信が持てる故障モードは対策が不要だから列挙する必要はありません。従って「起こり得る故障モードだけを列挙せよ」ということになります。この「起こり得る」ことを英語で "Potential" と表現します。

 ところが例によって、学者による誤訳がこの本来の意味を曲げてしまったのです。「潜在的故障モード」と呼ぶ人がいますが、それは英語の "Potential" を誤訳したものです。 "Potential" は「潜っていて外から見えない」という意味と「将来起こり得る」という意味を持ちますが、誤って前者を採用したのが「潜在的故障モード」の用語です。正しくは、「将来、起こり得る故障モード」という意味でなければなりません。

 誤訳の結果、「故障モードは潜在的で容易に列挙できないもの」という先入観にとらわれ、それを解決するための手段として「先に機能を列挙して、ついでその機能の異常を故障モードとする」というやり方に陥ったのです。これだと、故障(=機能異常)と故障モードの区別がつかないという結果になります。

アイテム(品名)→ 機能 → 故障モード

となっているFMEA表のフォーマットは、この誤解に基づいています。

 設計は、機能を満たすための「機能設計」と故障を予防する「信頼性設計」に分かれますが、普通はこれらを同時に行います。例えば、モーターを「ねじ」で取付ける構造の場合、「取付ける」という機能と「運搬や使用中に緩まない、折れ曲がりが起きない、錆びない」という信頼性を同時に考慮して「ねじ」を設計します。

 ねじの材質やサイズは、経験、過去の実績、実施例などから決め、確認のため、信頼性試験などを実施します。つまり一人前の技術者が行う設計では、FMEAを行う前に一応の信頼性設計(対策)が済んでいるのです。

 FMEAによって、何を評価するのですか? 「この設計で信頼性は大丈夫か、対策は十分か」を評価するのです。だから、対策が示されていなければ評価の対象がないことになります。従って、

故障モード → 評価 → 対策

となっていて、対策が先に示されていないFMEA表は、この点の誤解にも基づいています。

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ボトム・アップ

 ある1個のイベント(故障や災害)を上に置いて、「このイベントはなぜ起きるか」と問うと、下向きにいくつかの要因に展開できます。それぞれの要因について「なぜ起きるか」と問えば、さらに多数の要因に展開できます。1個のトップ・イベントから出発して、「なぜ、起きるか?」を繰り返して末広がりに事象を展開するのは、FTA(故障の木解析)の場合です。

 このように少数から多数へと、末広がりに辿る展開をトップ・ダウンと呼びます。会社でいえば、一人の社長から下に向かって取締役、部長、課長、係長、担当者〜と次第に数が増えて、最後に多数の一般従業員が並びます。

 これを製品などのシステムでいえば、システムの異常 → サブシステムの異常 → コンポーネントの異常 → パーツの異常という具合に、下向きの展開(トップ・ダウン)になります。

 しかしFMEAは、「何が起きるか分からない」から行なうのです(同説:久米均)。いわば故障や災害の「想定外」を起こさないための解析です。多数の故障モードから少数の故障や災害へと辿るボトム・アップのアプローチを採用します。

 FMEAでは「故障がなぜ起きるか」の展開ではなく、その逆を行うのです。「このパーツが壊れたら、どんな故障が起きるか?」という展開です。会社でいえば、「社員Aが欠勤すれば、何が起きるか」、「Bが欠勤すれば、何が起きるか」と追跡するのです。

 これを製品などのシステムでいえば、パーツの破壊(故障モード) → コンポーネントの故障 → サブシステムの故障 → システムの故障という具合に上向きの展開(ボトム・アップ)になります。

〔注〕 「パーツの破壊(故障モード)」は、パーツ単体での状態で考えるのではなく、完成品に組まれた状態で考えます。「完成品の中のこのパーツがもし割れたら、どうなるか」という追跡です。

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不良は故障モードか?

 FTAの場合は、起きては困るトップ事象からトップ・ダウンに要因事象を列挙します。その目的は、トップ事象の発生頻度を集計することにあります。そして、その起きては困る事象は、設計通りの製品に起きるとは限らず、不良品を含ませることは一向に支障ありません。

 「不良品を含まない場合はこうで、含む場合はこうなる」という頻度評価も可能です。

 しかし、FMEAの対象は設計です。つまり、設計を評価するのです。「その設計で対策は十分か、それとも不十分か」です。当然のことですが、その設計の中に不良品は含まれていません。従って、不良品はFMEAの対象に含まれません。あくまで、設計通りの製品の信頼性を評価するのです。

 下の図で、故障モード a, b, c, d〜からボトム・アップすると不良には辿り着かないことがよく分かります。

Bottom-upの図
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 ところが、「その故障は、なぜ起きるか」とトップ・ダウンすると、当然、不良も故障モードとして列挙されることになります。従って、故障モードに不良品が入っているFMEAは、この点を誤解したものです。次の指導も、その点を誤ったものです。
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自動車の事例

 次の図表は、真壁肇氏から引用した事例です。

 表中の番号、および吹き出しは、当研究所が説明のために付加したもので、故障モードをトップ・ダウン式に追跡することによる弊害を説明しよう。
 

真壁、信頼性工学入門の図

 表中(1)「踏み込めない」は機能障害だから、明らかに故障である。これが故障モードの欄に記載されている。

 表中(2) 「ペダルクランクの折損」は構造破壊だから、明らかに故障モードである。これが原因の欄に記載されている。

 表中(3) 「継ぎ手剥離」は構造破壊だから、故障モードである。これは故障モードの欄に記載され、妥当である。黄色の背景のところは、全て故障モードである。つまり、同一人が同一の表の中に矛盾する記載をしている。

 表中(4) 「ペダル戻らず」の原因(実は、故障モード)として「戻りばねの折損」だけを記載している。これはトップ・ダウンをしているために見逃しているのです(例えば、床マットの外れが有名)。

 表中(5) に「溶接不良」とあるが、設計に不良品というものはないから、明らかにカン違いである。不良を問題にするなら無限にあるのに、なぜか溶接の不良しか記載していない。

 表中(6) は、ペダル戻らずの原因には自動車の使い方のミスもあることを指摘したものである。トップ・ダウンすると、下ばかり考えるから、完成品のさらに上位の「使い方の欠陥」には注意が届かず、記載もれになる。

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FMEAフォーマット

 故障モードを挙げてボトム・アップ式に影響を追跡し、対策を示し、影響対策として十分か、頻度対策として十分か、検知対策として十分か、を評価するのが正しい手順であって、フォーマットもそれに呼応したものでなければならない。

 その事例を下に示す。

ガスホースのFMEAフォーマット(再掲)
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ 法定点検          
                   

 若干の説明をすると、次の通り。

  • 「部位」は部品や組立品の品名、あるいは流体など、構造が変化するところを表示する。

  • 「故障モード」は、構造破壊である。本件では、ホースの材質劣化→クラックを挙げている。

  • 「要因」は、その破壊が起きるメカニズムであり、本件では経年変化である。

  • 「影響」は、その破壊によって何が起きるか、被害を示す。本件ではガス漏れである。

  • 「対策」は、現在の設定でどのような対策が打たれているかを示す。本件では、ガス事業法の定期点検が予定されている。

  • 次は、評価になる。3~4年に1回の法定点検という手段で、(a)、(b)、(c) の欄に次の評価値を記載する。

     (a):影響の緩和策は十分か?  (b):発生対策は十分か?  (c):検知対策は十分か?

     大事に至る前にホースの劣化が十分に検知され、事故の頻度は十分に抑制され、影響も十分に軽減されるなら、合格という判定がされることになる。

 この先どう進めるか、この先、読み続ければ分かります。

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故障モードの評価

ボルト・ナットの図  ある製品で、ねじの緩み(=故障モード)が起こり得る場合、この状況を次のような観点から評価します。

 その故障モードについて、

  • 発生した場合の被害の軽減策の程度(a)、
  • 発生対策の程度(b)、
  • および、影響が大事に至る前に検知できるような対策の程度(c)
を、1点(完全)、2点(十分)、3点(不満)、4点(無策)の4段階の採点をします。

 これは対策評価法と呼び、この点に関する反対説は、→ 状態評価法 を参照のこと。

絶対評価4点法の評価基準
きびしさ(a) 頻度(b) 検知難度(c)
無策 4 無策 4 無策 4
不満 3 不満 3 不満 3
十分 2 十分 2 十分 2
完全 1 完全 1 完全 1

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総合評価

 以上のような3つの観点について評価をしただけでは、その故障モードに対策を講じる必要があるかどうか判断できません。

 a=4、b=1、c=1 の場合に、これは合格なのか、不合格なのか?

 FMEA活動が出す結論は、「総合して、この故障モードの対策は十分か不足か」の判断でなければならず、これを総合評価と呼びます。

 上の3つの評価値 a、b、c から、総合評価指数として危険指数 Risk Index(IR)

RIの計式

を求めて、故障モードごとに対策の状況が合格かどうかを総合評価するのが絶対評価です。一応、次のような基準が適用されます。

 RI=2.5以上で不合格
 RI=2.3 で保留
 RI=2.1以下で合格

 このように故障モードごとに合格、不合格の判定をするやり方を 絶対評価法 と呼びます。反対説に、複数の故障モードに関する相対的な重要度を評価する → 相対評価法 があります。

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相互勘案

 影響(a)、頻度(b)、検知度(c)は、それぞれ独立に評価すべきか、それとも相互に影響するのか?

 被害の程度(S)が大きければ、それだけ厳しい頻度対策や検知対策が求められるはずです。つまり、(b)や(c)の評価は、被害の大きさによって変わる。割り箸や紙コップのクラックなら(b)や(c)の評価は緩く、航空機の墜落なら(b)や(c)の評価が厳しくなるのは、言うまでもありません。

 他方で、発生対策が完全で(b)=1、なら、検知の必要性がないから(c)=1 とみなす場合があります。同様に、(b)=2、なら、(c)=2 とみなす場合があります(ここでは詳細な説明はできませんが)。

 対策として「故障モードが起きないようにする」ものが多いので、これによって著しく簡単になります。
 反対説は、→ 独立評価説 を参照。

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ガスコンロの演習問題

 下の表は、ガスコンロのホースについて、設計FMEAの入門の 事例解説 で途中まで解説した例題です。これまでの勉強を生かして回答を導いてみよう。

 経年変化で材料の劣化 → クラックの発生、その影響でガス漏れに至ることを確認したところです。もちろん、ガス漏れが発生すれば、爆発の危険があることは承知の上で記載を省略しています。

 このホースが数年で劣化する材質の普通のガスホースだという前提で、この後の進め方を検討しよう。

ガスコンロのFMEAシート(1)
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ            
                   

  1. この後、何をすべきでしょうか?
    この後、最初に行うことは、対策の検討です。

    多くの人は、a, b, c の評価をしようとします。その結果、ある人は「対策が十分とはいえないから、a=3」と答え、またある人は「ガスが漏れたら大変だから、a=4」と答えたりします。

    しかし、数年で劣化する材質のホースだから、対策が必要なことは分かっているのです。だから、まず対策を講じて、その対策を評価しなければならない。上の表には対策が示されていないから、評価の対象がないのです。

    この「対策が示されていない状態」で評価をする(=何を評価しているのか分からない)のは、現在、多くの指導者が犯している誤りです。

  2. ガスコンロの設計者なら当然に知っていますが、実はガス事業法で「ガス事業者によるガス器具の定期点検」が義務付けられており、3〜4年ごとにガス消費者のところに出向いて点検することになっています。
    そこで、対策欄に「法定点検」と記載したのが下の表です。
ガスコンロのFMEAシート(2)
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ 法定点検          
                   

    この後、どうしますか?

  1. 法定点検で、ホースの白化の程度によって、大事に至る前にホースの材質劣化やクラックを検知できると推測されるので、c=2 と評価できます(下表)。
ガスコンロのFMEAシート(3)
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ 法定点検     2    
                   

  1. 上の対策は法定点検を利用しただけで、影響を軽減する対策、頻度を減らす対策は講じていません。a や b の対策と評価はどうしますか?

  2. 「a、b、cの評価は独立か?」という問題を思い出して下さい。
    独立なら、aの対策とその評価、bの対策とその評価が必要になります。しかし、相互勘案の所で説明したように、a、b、cの評価は相互勘案です。c=2 なら、劣化がひどくなる前にホースを交換するのでガス漏れの頻度対策の状況は、b=2 と評価できます。

  3. すると、ホースは常に劣化の途中で交換され、劣化の影響が十分に軽減されるから、a=2 と評価できます(下表)。
ガスコンロのFMEAシート(4)
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ 法定点検 2 2 2    
                   

 これで「対策記載欄」が1か所しかない理由が明確になりました。

 ホースの結論は、次のように合格となる。

ガスコンロのFMEAシート(5)
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
ホース 材質劣化 経年変化 ガスもれ 法定点検 2 2 2 8 2
                   

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模範例を模倣する勿れ

 事例を研究することは、理論を学ぶ上で非常に大切なことです。事例を吟味することによって、理論が持っている合理性、矛盾など、いろいろな特徴が明確になります。

 しかし、そこには大きな落とし穴があります。事例の研究と模倣を区別しなければなりません。

 FMEA(に限らないが)を学ぶ人には、2つのタイプがあります。

Aタイプ

 事例(従来正しいとされた考え方、やり方)を吟味し、納得できない点があれば、何が間違っているか考えようとします。このタイプの人は「自分で考える力」が身について、将来一人前になっていきます。 Bタイプ

 事例を吟味することなく、そのまま素直に受け入れます。抽象的な理論を説明されるよりは、具体例を示して欲しいと考えます。そして、誤った指導を何の抵抗もなく受け入れてしまいます。

 このタイプの人は「自分で考える力」が身につかず、他人が示す模範例の形を模倣する傾向に走り、将来モノになりません。

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多くの指導者が誤解する点

 (1) 設計には無数の信頼性欠陥があり、その全てに対策を打つのは、限度あるリソースの有効利用にならない。だから、欠陥に優先順をつけるためにFMEAを行うと誤解することです。

 これは建築物を強度計算なしに設計し、FMEAで「優先的」と評価した欠陥だけに対策するやり方で、根本的な誤りです。プロの設計では、機能のほかに信頼性(壊れにくさ)の設計を行い、念のために信頼性が十分かどうかを検討するためにFMEAを行うのです。欠陥は少数であって優先順をつける必要は全くありません。

 (2) 「故障モード」と「故障」の区別を知らないため、「故障モードの影響」ではなく、「故障の影響」を挙げようとする。

 私達は、小学校、中学校、高等学校、大学で教育を受けます。しかし、大切なものを失っています。それは何でしょうか?

 教育内容のほとんどは、「誰かが検討して、これが正しいと結論づけたもの」を教材にしています。他人が既に検討し終わっているので、学生はただ覚えて模倣するだけです。従って、「間違っているかどうか」を疑って検討するという能力や習慣が身につかず、「ただ模倣するだけ」で終わってしまいます。

 大学の研究者やセミナーの講師等が示すFMEA教材の多くは、相対評価法(10点法)の危険優先指数(RPN)を採用します。指導を受けた企業もそのまま模倣します。それは膨大な労力を使って、FMEAを行った振りをする結果となるだけです。

 品質管理は、単純作業ではありません。「形だけ模倣して何も考えない」という小・中学生のような勉強の仕方では身に付きません。今、自分が行っているやり方を含めて、いろいろな事例や指導例を批判する力を養うことが必要なのです。

 (1)「故障モード」とは何か、「故障」とどう違うか、不良は故障モードか、などの疑問に答えられない。

 (2)故障モードを評価した結果、どうであれば合格なのか不明。

 (3)評価項目である "Severity"(厳しさ)とは、故障モードの影響の「深刻さ」を評価することなのか、影響を軽減する対策の不足を評価するのか。

 (4) 3つの評価、Severity(厳しさ), Occurrence(頻度), Detection(検知難度)は、独立に評価するのか、相互に関連させるのか。

 以上のようなことが不明なFMEAを「形だけ模倣して何も考えない」という小・中学生のような勉強の仕方で学んだ結果、形骸化を招くのです。

 セミナーを開催すると、時折、「誤った事例の解説はもう結構だから、正しい事例を示して下さい」と要求されます。しかし、そのようなお手本を見て学ぼうとする人は模倣を目的にセミナーに参加しているため、考える力が身につかず、結局はモノになりません。

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Robin E. McDermott

 以下、自分で考える力と習慣がないと、モノにならないことを示す事例をいくつか示そう。

 下の記述は、相対法のRPNについて、マック・デルモットという米国の著名なFMEA研究者からの引用(翻訳文は当研究所による)。

Robin E. McDermott P.10
 The risk priority number (RPN) is used to rank the need of corrective actions.
 (RPNを使う目的は、是正の必要性に優先順位をつけることにある。)

 Corrective actions must continue until the resulting RPN is at an acceptable level for all potential failure modes.
 (起こり得る全ての故障モードに、RPNが合格水準に達するまで是正を継続しなければならない。)


 前段では、「危険優先指数:RPN は是正活動の必要性を順番づけるために使用されます」と、相対評価を唱えています。しかし、後段では「是正活動は、是正後のRPNが全ての起こり得る故障モードについて合格レベルに達するまで継続しなければならない」と絶対法を説いています。

 ここに、明らかな矛盾があるのです。RPNに「合格水準」というものがある筈はないのです。もし、あるなら、最初からその「合格水準」にあるかどうか、絶対評価をすればよいはずです。RPN は、最初の一歩を間違った結果なのです。

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Plexus(プレクサス)

 ビッグ・スリー(GM,フォード,クライスラー)のFMEAの系統を引いたPlexus (プレクサス) というFMEA指導機関があります。ここでは、IATF とプレクサスが共同開発したテキストを使用するとうたって、自らを「公式」と称し、「資格を取るのに必要な講座」だと唱えています。

 自己以外は「非公式」のモグリであるがごとき言動は、無知を通り越して勝手きわまるというべきです。このビッグ・スリー(GM,フォード,クライスラー)こそが、上記の間違いを生んだのです。ビッグ・スリーが今日まで起こしたリコール数を考えれば、このFMEAが全くの飾り物であることは明らかです。

 宗教が「教祖の言葉」を疑いなく信じ込むように、ビッグ・スリーの理論を信じ込むのは大きな錯覚です。

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相対評価法

 上に述べた危険指数(Risk Index:RI)を指標として故障モードごとに合否判断するやり方を「絶対評価法」と呼びます。

 これに対し、多数の故障モードについて、どれが最も危険な故障モードであり、次はどれ、次はどれ、という具合に重要度の順位を求めるという立場があります。これを「相対評価法」と呼びます。

 3つの評価値 S、O、D から、総合評価指数として Risk Priority Number : RPN(危険優先指数)

RPNの算式

を求めて、多数の故障モードのうちこの値の大きさの順に重視するのが相対評価です。対策を講じないで評価するから、何を評価の対象にしているのか明らかでありません。

 相対評価法には、次のような特徴があります。

 (1)設計というものは多数の欠陥を持っており、従って多数の故障モードについて評価し、重要なものを絞って(重点管理で)対策を打たねばならない。全部の欠陥について対策を講じるのは、経営資源の浪費である、と考える。すると、FMEAは、信頼性設計の前に行うものであり、多数の故障モードの中で特に危険とされたものを絞り込むことを目的とすることになる。

 (2)信頼性設計をせずにFMEAを実施して、重要とされた故障モードだけに対策を講じることになる。すると、設計とは「対策の束」であるとする考え方に真っ向から矛盾する結果となる。

 (3)危険度の順位を決めることが目的なら単に重要度を示す "Risk Priority Number(RPN)" 、

RPNの計算式

を求めることになる。

 しかし、この場合の評価値(S 、O 、D)は、それぞれ、対策が十分かどうかの評価ではなく、

 S:人の死亡などの深刻な結果か、製品にキズがつく程度の軽い被害か。

 O:毎日起きるほど頻繁か、年に1回程の稀な事故か。

 D:事故前の検知の困難さ。

を、それぞれ1点〜10点で採点します。

 すると、RPNの採点幅は1点〜1000点となり、重要度の順番を決めやすくなる。ところが、10点で評価するのは至難の業(ほとんど不可能)です。

 順番が決まっても、「どれに対策を講じるか」の判断ができない。

 順番を決めるという考え方は、実務では採用できません。仮に故障モードの影響が「カバーにキズをつける」だけの軽い影響だとしても、それを放置することをせず、実務では対策を講じます。

 この相対法を実務で使用すれば、行き詰まります。多くの企業では、行き詰まって「形だけのFMEA」に走っています。にも拘わらず、現在わが国で指導されているFMEAのほとんどは、この相対法なのです。

 そこには、FMEAがアメリカの三大自動車メーカー(ビッグ・スリー)で始まり、その時に相対法であったこと、それを皆が模倣した結果が今日の間違ったFMEAの源流になっています。

 相対法のせいで、どれだけ多くの自動車のリコールがあったか、数えようもありません。

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相対評価法の根拠

 FMEAを次のように説く考え方が、恐らくFMEAを根本から誤る原因の1つです。

 FMEAは対策すべき対象を絞るために用います。すべて対策を行うのなら採点は不要です。その場合、CE図(本サイト註:特性要因図)であげられた要因すべて対策を取れば良いわけでFMEAの登場場面はありません。

 限られたリソース(時間、お金など)の中で問題解決する最大の効果を得るには、優先付けすることが必要です。FMEAはそのための実験ツールです。


 分かりやすく翻訳すると、設計には無数の欠陥があり、これら全てを評価し是正するのは効率が悪い。だから、重要なものに絞って是正する必要があり、そのためのツールがFMEAだというのです。つまり、重点管理のツールだという訳です。これは大変な間違いです。

 優先順位を評価するFMEA教育は、この間違った思想が出発点になっています。素人設計の無数の欠陥を探して「優先付けをする」のは全くのお門違いです。素人設計にFMEAを適用しても、よい設計に是正することは不可能です。

 プロの設計なら、機械設計でも建築設計でも、ネジ1本、リベット1本に至るまで、「これで強度は十分か?」を強度計算や試験を含めては検討します。設計で手抜きして、後から「優先順位の高い欠陥だけ是正する」ことは、プロは行いません。

 例えばビルの設計で耐震強度の計算をせずに、FMEAで優先事項とされて初めて対策を講ずる考え方です。それだと耐震強度が不安だとなれば、ビルの設計は金と時間をかけてゼロからやり直しです。「限られたリソース(時間、お金など)の中で問題解決する最大の効果」という話には全くなりません。

 特別な事情がない限りプロが行った設計の信頼性欠陥はゼロ〜数個に過ぎず、優先順位は全く問題になりません。

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状態評価法

 きびしさ(S)、頻度(O)、検知難度(D)の評価は、それぞれについて、1点(完全)〜10点(最悪)の10段階の採点をします。これは対策が十分かどうかではなく、故障モードの危険性の大きさを評価する立場です。

10点法の評価基準の一例
R きびしさ
(S)
頻度
(O)
検知
(D)
10 機能喪失、人命に関わる 極めて 〜1/2 不能
9 重要機能喪失、重大危機 必然的 1/3 困難
8 高い 1/3
7 性能低下、顧客の苦情必至 しばしば 1/20 低い
6 中程度 1/100
5 快適性・利便性の喪失、顧客の不満 ときどき 1/200 中程度
4 1/500
3 異音、振動、外観、収まり不具合、顧客の不満 低い 1/10,000 高い
2 まれ 1/100,000
1   起きない > 確実

 以下、若干の説明を付加します。

 (1) Severity (S:きびしさ)
 その故障モードが起きたら、どんな影響(=故障、災害)を招くか。単にガタガタと音がするだけか、ガスが漏れて爆発する危険があるか、操作中に怪我でも負う危険があるか、被害の程度はどうか。この10点評価を、きびさ(S)と呼びます。

 その影響の緩和策が十分に講じられているかどうかの4点評価値を(a)で表します。設計者が何も対策しなくても、性質上、自然に影響が制限されている状況の場合は、対策がされているとみなします。

 (2) Occurrence (O:頻度)
 その故障モードが起きる頻度は、10点中いか程かです。

 また、頻度対策が十分かどうか、4点評価値を(b)で表します。ここで注意を要することは、重大事故なら相当に厳重な対策がされていなければよい評価にならないことです。

 (3) Detection (D:検知難度)
 大事に至る前に、影響または故障モードを検知して手が打てるかの10点評価です。4点評価値は(c)で表します。

 例えば、ねじが緩めば火災が起きる前に「異臭がする、変な音がする」等の異常が現れて、対策を打つチャンスがあるなら、検知難度(D)は悪くないという評価になります。

 ここで、S、O、Dの10点評価基準(相対評価)を吟味します。

10点法の評価基準の一例 (再掲)
R きびしさ
(S)
頻度
(O)
検知
(D)
10 機能喪失、人命に関わる 極めて 〜1/2 不能
9 重要機能喪失、重大危機 必然的 1/3 困難
8 高い 1/3
7 性能低下、顧客の苦情必至 しばしば 1/20 低い
6 中程度 1/100
5 快適性・利便性の喪失、顧客の不満 ときどき 1/200 中程度
4 1/500
3 異音、振動、外観、収まり不具合、顧客の不満 低い 1/10,000 高い
2 まれ 1/100,000
1   起きない > 確実

 上の評価基準をみると、この評価がいかに無理な要求か、分かると思います。

  • S の評価で、製品の使用中に故障で騒音が出るなら、当然、苦情がでます。それは S=2〜7 のうち、どれに該当しますか?

  • S の評価で、バッテリーが上がって自動車にエンジンがかからない場合、機能喪失で10点です。すると、人命にかかわる場合と同じ扱いですか?

  • Oの評価で、ある故障モードが 1/200の割合で起きるか、1/10,000の割合で起きるか、誰が予測できるのか? これは予言の世界です。
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機械振興協会

 状態評価法を指導する事例を示そう。下の表は機械振興協会の頻度(O)を評価する基準を示しています。何か、おかしいと感じるはずです。

機械振興協会の事例
発生の可能性 程度 可能性の目安
K1 まれに 年に1回程度
K2 たまに 月に1回程度
K3 時々 週に1回程度
K4 頻繁に 日に何回も

 この基準は、割り箸や紙コップの使用中の破損の頻度に適用できると思われます。年に1回程度なら極めて頻度が小さいと評価できます。

 しかし、この基準を旅客機に適用できるか? 年に1回程度の墜落なら極めて頻度が小さいと評価できますか?

 「まれ」か「頻繁」かという評価(O)ではなく、航空機として割り箸として対策が十分か貧弱かの評価(b)をすべきなのです。つまり、対策評価法が優れています。

 つまり、(S)、(O)、(D)の評価に、基準を設けることはできないことが分かります。

 FMEAは設計を評価する手法・活動です。設計とは「対策の束」です。だから、対策が十分かどうかを評価するのが正しいFMEAです。

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構造化知識研究所

 相対法を採用し、ほとんど実用性のないFMEA事例として、 構造化知識研究所 のFMEAフォーマットを引用します。これのどこに間違いがあるかを吟味することは、FMEAについて考える力を養う上で役に立つと思われます。

構造化知識研究所 のフォーマット(一部省略)
アイテム 機能 故障モード 故障影響 故障原因 重要度
厳しさ 頻度 検知度 致命度
○○ ○○ ○○ ○○ ○○ 3 4 2 24
○○ ○○ ○○ 2 4 3 24
               

〔コメト〕

  1. アイテムの次に「機能」の欄があるのは、なぜか?
    正しくは、FMEAフォーマットに「機能」という記載欄は不要です。にもかかわらず、このフォーマットには「アイテム」の次に設けられているのは、なぜか? それは、機能から機能障害(=故障)を導き、故障を「故障モード」とみなすためです。つまり、故障と故障モードの区別がないという基本的な誤りに起因します。

  2. 「故障モード」の欄に故障を記載する。
    ここに、上記の誤りが顕著に表れています。構造化知識研究所の事例では、この欄に、「エア吸込量が低下する」、「冷却ファン筐体の微振動異音」などが記載されている。これらは故障であって故障モードではない。

  3. 「故障影響」の欄がある。
    ここに、上記の誤りが顕著に表れています。FMEAは、故障モードの影響を追跡する活動ですが、このフォーマットには「故障モードの影響」を記載する欄がないのです。

  4. 「故障原因」の欄がある。
    上と同様に、「故障モードの原因」を記載する欄はないのです。

  5. 「対策」の記載欄がない。
    「信頼性対策を記載して評価する」ということはしないのです。つまり、機能設計だけで信頼性設計をしない「素人設計」が前提になっており、実務ではあり得ない設計を対象にしています。

    〔注〕日科技連 などは、逆に、「発生対策」と「検知対策」の2つの対策欄を設けているが、これも誤りである。対策欄は1個でなければならない。なぜなら、1個の対策の効果は(a),(b),(c)のうち1個に限らないからである。例えば、発生対策が完全に近いと、(b)=2、(c)=2, となる他、被害(a)の程度を緩和する場合がある。

  6. 「厳しさ」「頻度」「検知度」の評価値を記入する。

    しかし、1から10までの、どの値に該当するか、判断は極めて困難で不可能。

  7. 全てが、反対になっている。すなわち、  
       
    • ボットム・アップであるべきところ → トップ・ダウンである。  
    • 絶対評価であるべきところ → 相対評価である。  
    • 対策であるべきところ → 状態評価である。  
    • 相互勘案であるべきところ → 独立評価である。  

  8. 「致命度」がいくらなら信頼性が合格なのか、全く判別できない。

  9. ここにはスペースの関係で記述しないが、構造化知識研究所のホームページをみると、部品のフォーマットと組立品のフォーマットがあり、組立品の場合は故障が故障モードになっている。
 このようなFMEAフォーマットを使用してはならないこと、明白です。
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割り箸の演習問題

 割り箸を設計して、使用中の「折れ」という故障モードについてFMEAをしてみよう。初心者は、次のように考えてしまうかもしれない。

  • (a)の評価
    折れた時の影響を軽減する対策は、特に講じていないから、a=4

  • (b)の評価
    発生対策は、製造中の抜取検査で保証し、完全とはいえないにしても十分だから、b=2

  • (c)の評価
    折れる前に前兆が或る程度あるから、c=2

  • RIの計算
    (a)*(b)*(c)の積=16、 RI=2.5 で不合格
 これをFMEAシートに表すと次のようになる。

割り箸のFMEA-初心者の場合
部位 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
握り部分 折れ 強度不足 食事が困難 抜取検査 4 2 2 16 2.5
                   

 上の初心者のやり方を吟味しよう。

  • 「対策」
    木材の種類、木目方向、寸法の指定、安全率3倍、強度試験の実施
    生産時の抜取検査は対策にならない。設計FMEAは、設計通りに出来上がった製品の信頼性を評価し、不良品を扱わない。

  • (a)の評価
    「折れ」による被害は「もろに」受けるか? 世界に1個しかない特別な割り箸がではなく普通の割り箸だから、折れたら(折れそうな感じがするなら)新しく用意すれば済む。また、折れても、その短くなった箸で何とか食事をすることができることが多い。だから、決定的に被害を受けるわけではなく、ある程度緩和される。故に、a=3

  • (b)の評価
    普通の食事で折れる可能性がほとんどない程度に、強度を与えている。b=2
    通常の感覚では、試験をしたからといって十分とは言えない。しかし、割り箸の折れによる被害が小さいゆえに、対策も相応に評価する。

  • (c)の評価
    「折れ」が発生する前に、使用者が「この箸は弱そうだ」と前兆を手で感じるから c=1。

  • RIの計算
    (a)*(b)*(c)の積=3*2*1=6、RI=1.8 で合格
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液晶ディスプレーの演習問題

 パソコンの液晶ディスプレーのキズについてFMEAをすると、通常、次のようになります。どうして、こうなるか、読者自身でご検討下さい。

パソコンのFMEA事例
アイテム 故障モード 要因 影響 対策 影響
(a)
頻度
(b)
検知
(c)
RI
液晶画面 表面キズ 清掃 不快感 硬質樹脂 3 1 1 3 1.4
                   

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セミナーのご案内

 FMEAは、「故障モードとは何か?」という最初の第1歩から人によって考え方が違います。故障モードの見つけ方、評価の仕方も人によって教え方が違います。故障、故障モード、不良の区別が分からない講師も多数います。

 書物、セミナー、ウェブ上の講座には疑わしいものが相当数あり、誤った指導を受けて、体裁上のFMEAで終わる危険があります。

 当研究所のセミナーを受講すると、「偽の講師」の判別がつくようになります。考える力を身につけた上でFMEA/FTAに進めば、正しい理解が素早く得られます。

セミナー風景
講習会風景の写真

2017年度セミナー
テーマ FMEA/FTA
QC工程表/なぜなぜ
場 所 東京 京都
月 日 2017-09/19 2017-11/15
手 続 ご案内 ご案内
情 報 申込状況  受講者の声(8/23)
料 金 25,000円
申 込
   ↑申込フォーム中で様々な選択
教材ppt,doc提供、録音OK
講 師 鵜沼 崇郎

 本セミナーは白紙から始まります。従って、初心者の方、また経験者でも疑問を抱いている方が参加されることを念頭に解説を進めます。

 上表の「ご案内」をクリックして、パンフレットをお読み頂き、「申込フォーム」で諸条件を選択・記載の上、お申込み下さい。また、「申込状況」のページから、現時点での申込状況を知ることができます(以上)。

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客観説TQM−TOP   FMEA/FTA セミナー申込状況