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町を変貌させた美術館

独仏ニュースダイジェスト2001年11月17日掲載

高橋容子

 

 4年前、市内を流れるネルヴィオン川の川岸にグッゲンハイム美術館が開館したことが、この町のイメージを大きく変えた。

 かつて鉄鋼業の町として栄えたビルバオが、その輝きを失ってから30年。バスク地方への玄関となる国際空港があるだけで、観光業となると食通の街として知られる隣のサン・セバスティアンには劣る。それが昨年は、美術館の見学客だけで100万人弱を記録した。

 アメリカのグッゲンハイム美術財団による同名の近現代美術館はニューヨークとベネチア、ベルリンにあるが、このビルバオの来場者数はベネチア、ベルリンを4倍近く引き離し、ニューヨークの本家ソロモン・グッゲンハイム美術館に迫る勢いだという。

 人気の秘密は、かのフランク・O・ゲーリー設計の美術館建物だ。ガラスの石灰石とチタンを使った曲線のフォルム。屋根には「金属の花」をイメージした飾りが乗り、手前にジェフ・クーンズ作の「花の犬」が鎮座する。このSF的な構図は、銀の帆に風を一杯受けた箱舟が、舵先犬に従って港に接岸してくるシーンを連想させる。

 もちろん、このような近未来的な設計には賛否両論ある。グッゲンハイムに対しては、世界制覇をもくろむ商業主義者と批判する声も高い。しかし、土地を提供したビルバオ市と、建設資金を出したバスクの自治政府にとっては批判も評判のうち。空の玄関としての地の利がもともとあったためか、この美術館建設によってビルバオの「町興し」は見事に成功したというわけだ。

 バスク地方最大の人口40万人都市でありながら、ビルバオの市民は意外に「井の中の蛙」的なメンタリティーで知られている。例えばこんな笑い話がある。ビルバオの本屋に入って「世界地図かほしい」と言うと、主人は客に聞いた。「川の左岸か右岸か?」

 美術館のおかげで「世界はオラが村」意識が変わったかどうかは分からないが、人が立ち寄る町になったことだけは確か。

 これをきっかけに、ビルバオを訪れたらバスクの典型的な鱈(タラ)料理「ピルピル(Pilpil)」を味わうのがブームになっているとか。中でもレストラン「Guria」の料理長Pildainさんが作るピルピルは、母親直伝の調理法が評判を呼んでいる。

 また、市最古の「Café Boulevard(1871年開店)」、装飾タイルがアルハンブラ宮殿をほうふつとさせる「Café Iruna(1903年開店)」など、この町ならではの古いカフェへの人気も高い。芸術に触れ、鱈を味わい、古いカフェでくつろぐ。これが最近のビルバオでの過ごし方らしい。

 

ビルバオ観光局 www.bilbao.net

ビルバオ・グッゲンハイムwww.guggenheim-bilbao.es