小径車のリアハブ整備 「ボスフリー型」  2007/6/13製作
このページでは、外装6段変速の安価な折り畳み自転車を題材に、以下の項目を取り上げます。

■後輪の取り外し
■「ボスフリー」の取り外し
■後輪車軸のグリスアップ
■「玉押しの調整」
■「バンドブレーキ」の取り外しと構造
■組み付け時の注意点


折り畳み自転車を題材にしていますが、現在1万4,000円前後で販売されている外装6段変速のシティサイクル(一般車)にも共通の部品が使われています。
取り外す前に、各部品の組み方などをデジカメなどで記録しておきます。
特に、ブレーキ周辺は込み入っているので、入念に確認します。

スタンドを入れる順番、ナット・ワッシャの位置・方向・裏表などです。
バンドブレーキのサポート部分も混乱しやすい場所です。

取り付け金具、ブレーキユニット取り付け部、アジャスターステーの順番などを特に注意します。
今回使用する道具です。

■専用工具
シマノ カセットフリー抜き"TL-FW30" 600〜1,000円

■コンビネーションレンチ 8,10,12,15,17
15mmは珍しいサイズなので、セット工具には含まれないことが多いです。グリップの赤いレンチは百円ショップで200円工具として販売されているものです。

■プラスドライバ サイズ2番【中】
■モンキーレンチ 専用工具TL-FW30の幅が24mmの為、少なくとも24mm開くものが必要です。
■プライヤ
車輪を外す
左車軸のナット、ワッシャを外します。


ワッシャに緩み止め機能として放射線状の溝が切ってある場合は、溝が内側(車軸中心側)となります。
ブレーキステー周辺、ワイヤーを外します。
ワイヤーの先端にはアルミ製の保護キャップが装着されています。

プライヤで キャップの潰れた部分 =  を ○ 丸に近くなるように修正すれば、スポッと外れます。また、こうすると再利用できます。
ディレイラーを外す前に、ギアを1速(最も重いギア、最も小さなギア)へ変速しておきます。この位置が変速ワイヤーが最も戻った状態となり、車輪の取り付け・取り外しがしやすいからです。

ディレイラー側は多めに緩めた後、黄色い矢印の方向へ車軸を押し出します。
スポッと外れます。
左の画像のように、既製品でも自作品でも結構ですので、自転車を保持できる整備スタンドがあると重宝します。


当研究所では、手頃な木材を利用して自作しています。詳細は「自転車メンテナンススタンド製作」をご覧ください。
<ボスフリーとフリーハブ>

自転車のペダルを漕ぐと、チェーンを通じて後輪が回転します。しかし、ペダルを漕ぐのを止めても、後輪は回り続けます。

まったく当たり前のことです。しかし、ポイントは「漕ぐときにだけ力が伝わり、漕がないときには車輪だけが回る」という点です。つまり、漕ぐ力が一方通行でしか伝わらないようになっているのです。
仮に【ペダル】と【チェーン】、そして【後輪車軸】が直結していたとします。加速していく時は問題ありません。ところが、急な下り坂に差し掛かった時にペダルを漕ぐのを止めようとしても、ペダルは勝手に勢いよくグルグル回り続けてしまいます。

そこで、回転を一方向だけ伝え、逆方向では空回りする仕組みを搭載しました。これが"Freewheel"(フリーホイール)、通称「フリー」です。


ラチェットレンチで考えると分かりやすいかもしれません。"Ratchet"とは「逆転を防ぐ歯止め装置」という意味なのだそうです。

「歯止め装置」がバネで歯車に押しつけられています。矢印の方向に回転するときは「チッチッチッ・・・」という音を立てて歯止め装置が歯車を乗り越えていきます。自転車では下り坂などでペダルを漕ぐのを止めて、車輪だけが「チチチチチ・・・・」と回転している状態です。

しかし、逆転しようとしても歯止め装置が歯車に引っ掛かります。自転車では、ペダルを漕いで動力が伝わっている状態です。

昔の競技用自転車や、現在の安価な自転車は、この「フリー」をスプロケット側に備えている「ボスフリー」型です。
<参考事例 フリーハブ>

当研究所のマウンテンバイクの後輪車軸です。

力を一方通行で伝える「フリー」と、車軸「ハブ」が一体となっているので「フリーハブ」と呼ばれます。
ボスフリーを外す
この自転車はスプロケット側に「フリー」が備わっている「ボスフリー」型です。これを外すには、シマノ"TL-FW30"という専用工具を使います。
<関連サイト>
サイクルベースあさひ > TL-FW30

<関連ページ>
1998 GT PALOMAR MTBレストア > ボスフリー取り外し
シマノ"TL-FW30 マルチプル フリーホイール抜き工具"です。
間違えやすいのは、フリーハブ用(カセットスプロケット用)の"TL-LR15"です。

形状が似ているので一見すると使えそうですが、差し込み口の形状が微妙に違っているので互換性はありません。
それでは外していきましょう。

車軸に薄型ナットがありますが、これはそのままで構いません。TL-FW30の内側はナットを避けるように深くなっているからです。
"TL-FW30"をすっぽり被せます。

車軸やナットが当らないようにできています。

2面幅が24mmなので、24mm開くモンキーレンチなどを用意します。
ボスフリーは普通の「正ネジ」です。

"TL-FW30"を差し込み、反時計回り(左回り)に回すと外れます。


ポジションとしては、左手でタイヤをガッチリと掴み、右手でモンキーレンチを押し下げるようにすると力が入ります。

締め付けトルクは30Nm (約3kgf/m)なので、錆び付いていなければグッと力を入れるだけで外れます。ただし、年季の入っている自転車の場合、ここで外れずに苦戦する方が多いようです。
誤った例です。ボスフリーはカセットスプロケを押さえる必要はありません。

カセット式スプロケットの場合は「フリー」が「ハブ側」(車軸側)に付いているので、スプロケットを固定する工具(スプロケット抜き工具)を使用します。

しかし、「ボスフリー」の場合は必要ありません。空回りなどはしないので、"TL-FW30"にモンキーレンチを掛けるだけです。

仮に押さえたとしても、回す対象(スプロケ)を右回り、左回りの双方から回そうとしていることになり、ピクリとも動きません。
カセットスプロケに慣れた方だと、うっかりするとやってしまうかもしれません。


スプロケットが外れました。
黄色い線で示した範囲が、空回りする「フリー部」です。
この凹凸が専用工具"TL-FW30"と噛み合います。
玉押しの調整
スプロケット側の「玉押し」です。

「玉押し」と「スペーサー」、そして「ロックナット」から構成されています。
ブレーキ側のベアリングを見てみましょう。
このような状態でした。2〜3年前に新品調達で屋内保管、まだ100km以下しか走っていません。

玉受けのメッキが浮いて剥がれているようです。ドライバで軽く突くと、メッキがパリパリと剥げていきます。
ベアリング球の直径は6.35mmタイプのようです。

当研究所のマウンテンバイクでも後輪車軸は6.35mm(1/4インチ)を使っていました。


玉押しの調整方法はガタが出ずにゴリゴリしないポイントを狙いますが、なかなか一発で決まりませんでした。

■一般的な方法
玉押しをちょうど良い位置にし、そこへロックナットを締める
しかし、ロックナットを締めると玉押しがつられて動いてしまい、当たり具合が変わってしまう場合があります。
■MTBショップ オオタケ流
大竹雅一『MTBパーフェクトメンテナンス』山海堂1994 107ページ「締め合わせって何?」で紹介されているやり方です。

玉押しをゴリゴリする位置まで回してしまい、その上にロックナットを軽く締めます。そして、ロックナット側を固定して玉押しをゆるめる側へ回してロックする方法です。

左の場合では、一般的なやり方では【15】を固定して【17】を締め付けます。
大竹流は【17】を固定し、締め気味にした【15】を持ち上げる方向(ゆるめる方向)へ回すことで、ロックナットと玉押しを固定します。

つまり、ごく微妙に当たり具合を緩めたければ、ロックナット固定で玉押しを持ち上げてしまうという、微調整が可能になります。
「バンドブレーキ」の取り外し
スプロケットと反対側にはブレーキがあります。
矢印の位置にある2面幅17mmの薄型ナットを緩めます。正ネジです。
薄いナットなので、面取りが深く取られたレンチでは完全に引っ掛からず、ナットの角をなめてしまう場合があります。

そこで、200円工具の17mmコンビネーションレンチをディスクグラインダで削りました。

僅かな加工ですが、当る感触がしっかりとしたものになりました。
ブレーキユニットが外れました。

なお、外す必要はありませんが、ブレーキの車軸側ドラムを外すには専用区具が必要になります。

ホーザン C-349 ドラム抜き
バンドブレーキの構造です。摩擦材が付いた輪っか(バンド)を回転軸に巻き付けるので「バンドブレーキ」と呼ばれます。

ブレーキを握るとワイヤーが引っ張られ、ブレーキユニットのレバーが右側へ引かれます。すると、バンドが引っ張られて車軸に巻き付きます。

回転ドラム(車軸)は時計回り(右回り)に回っているので、回転ドラムはバンドをさらに引き込んで巻き付けようとします。これが「サーボ効果」(自己倍力効果)です。

サーボ効果により、小さな力で大きな制動力が得られます。
回転ドラムです。バンドブレーキはドラムの外周に巻き付けて制動力を得ています。

<バンドブレーキの効き方は一方通行>
上の写真をもう一度ご覧ください。回転ドラムが時計回りに回っている時はサーボ効果が働いてブレーキがよく利きます。

では、逆回転になったらどうでしょうか。例えば、急な上り坂の途中で止まっていたい場合です。

逆回転(反時計回り・左回り)になると、バンドを持ち上げて「ゆるめよう」とする方向に力が加わります。これではサーボ効果も働きません。

バンドブレーキ装着車が坂道停止でズルズル下がる、つまりバックでブレーキが利かないのには、こうした理由があるのです。
組み立て編
チェーンが6速ギアを乗り越えてスポーク側へ脱線しないようにするカバーを付け忘れないようにします。

あとは組み立てと逆の手順です。

ボスフリーの締め付けトルクは30Nm(約3kgf/m)と取扱説明書に記載されています。これは長さ1mのレンチで端に3kgの力を加えたものです。
【トルク】=【加える力】x【長さ】
T=F x L
3=F x 0.3 (長さ30cmのレンチで3kgf/mを締め付ける場合)
F=10kg つまり、10kgの力を加えることになります。
体重を掛けたりするとオーバートルクになりそうです。
最後にブレーキ周辺の確認をしましょう。

■ブレーキワイヤーの固定
■ブレーキユニットの固定

あと、バネを入れ忘れやすいので注意しましょう。


なお、左の画像ではバネがブレーキレバーの突起から外れています。レバーの突起凸にバネの先端が差し込まれた状態が正規の位置です。ページを作っていて気がつきました。
使用した工具です。

・シマノ TL-FW30
・8mmコンビネーションレンチ
・10mmコンビネーションレンチ
・12mmコンビネーションレンチ
・15mmコンビネーションレンチ
・17mmコンビネーションレンチ
・モンキーレンチ
・#2プラスドライバ
・プライヤ
2008/2/2 サーボブレーキについて
<初出の2007/6/13版で内容に誤りがありましたので訂正しました>

<サーボブレーキの場合>

買い物自転車には主に3種類の後輪ブレーキがあり、これは進化の過程でもあります。

【バンドブレーキ】→【サーボブレーキ】→【ローラーブレーキ】

ブレーキを握ると、ブレーキユニットのレバーが右へ引っ張られます。すると、ユニット内部の「半月状カム」が回転します。

カムの力によってブレーキシューAがドラム内面に押しつけられ、さらにブレーキシューBもドラム内面に押しつけられます。

ブレーキシューA、Bともにブレーキドラム内面に引き込まれる(食い込む)ような力が働きます。これを「自己倍力効果」もしくは「サーボ効果」といいます。
ブレーキシューとサーボブレーキ本体です。

「National PanaServo α」(ナショナル パナサーボ アルファ)という名前の物で、当研究所のナショナル製買い物自転車に標準装備されていたものです。
2つのブレーキシューは可動軸(ピン)によって接続されています。

また、ブレーキシュー【B】の先端部分は、カムと同軸にブレーキ本体へ接続されています。
ブレーキレバーを握るとカムが反時計回り(左回り)に回転します。

すると、ブレーキシュー【A】は(A-1)付近からブレーキドラム内面に押しつけられます。

すると、カムの力はブレーキシュー【A】から【可動軸1】を経由してブレーキシュー【B】に伝わります。

ブレーキシュー【B】では(B-1)付近からブレーキドラム内面に押しつけられます。

(A-1)点、(B-1)点の両方でブレーキドラム内面に引き寄せられる力(倍力効果・サーボ効果)が働き、制動力が効率的に発生します。
ブレーキシューとブレーキドラムの様子です。

カムの力がブレーキシュー【A】から【B】へ伝わり、A-1点、B-1点を中心にサーボ効果が働きます。

しかし、仮にブレーキドラムが逆回転しようとした場合、A-1、B-1点ともにサーボ効果が働かず、制動力もそれほど発生しません。

例えば急な上り坂の途中で停止し続けようとしても、ずるずると下がってしまいます。バックでブレーキが利かないという点は古典的なバンドブレーキと同様のようです。

<←左の画像は画像処理によって左右反転されており、実際の部品とは位置関係が一部異なりますのでご注意ください。>
ホームセンターの中にはサーボブレーキの単品販売をしているところもあります。

左の画像は2005年8月末に購入した「サギサカ」扱いのもので、価格は1800円前後でした。
付属品一覧です。
外観です。
ボディのデザインは異なりますが、内部の基本的な構造は「パナサーボ」と同様のようです。
<Takaよろず研究所内の自転車関連ページ> <参考文献>
『MTBパーフェクトメンテナンス』大竹雅一 山海堂 1994
『バイク・リペア・マニュアル』クリス・シドウェルズ 山と渓谷社 2007

<参考にさせて頂いたページ>
サイクルベースあさひ マルチプルホイール抜き TL-FW30
京都機械工具株式会社(KTC)  トルクの話

TAKAよろず研究所
http://www.geocities.jp/taka_laboratory/
2007/6/13製作
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