DIY用圧力開閉器式レシプロエアコンプレッサ  2006/3/20製作
昔はエアコンプレッサというと業務用の高価な製品しか選択肢がありませんでしたが、10数年前から外国製の安価なAC100Vコンプレッサが流通するようになりました。

ホームセンターなどで1万〜5万円という現実的な価格で販売されており、購入をご検討なさっている方、もしくは既にお使いになっている方もいらっしゃるかもしれません。

今回はAC100V、1.5馬力、30Lタンク搭載の標準的なDIYモデルについて、「全体の仕組み」と「逆流防止弁」、「圧力開閉器」、「圧縮機」というテーマでお伝えします。
コンプレッサの背面です。圧縮機(A)から送り出されたエアは逆流防止弁(C)を通りタンクへ送られます。

これだけで済んでしまうような気もするのですが、C点から圧力開閉器(B)へ黄銅色の細いパイプが伸びています。これは一体何なのでしょうか。結論から申し上げると、これは圧縮機とタンクを繋ぐ配管からエアを排出するための経路となっています。

一般的なコンプレッサでは、8kg/cm2停止、6kg/cm2再起動を繰り返します。モーターは回転数ゼロから規定の回転数に達するまでの間に大きな負荷が掛かります。

人間に例えてみましょう。座った状態から「よいこらしょっと」と言って立ち上がるのには大きな力が必要です。しかし、一旦立ち上がってしまえば、そこから歩き出すのはそれほど大きな力は必要ありません。モーターにとっても、最初の「よいこらしょっと」が大変なのです。

したがって、起動時に6kg/cm2もの圧力が掛かっていてはモーターの起動が困難になります。6kg/cm2の圧力をものともしない強力なモーターを積んでしまえば問題ありませんが、当然大きく、重く、高価になりがちです。
そこで、モーターが再起動しやすいようにA-C間の配管の圧力を抜いてあげれば始動時の負担を軽減でき、小さく、軽く、安価なモーターで対応できるようになります。

8kg/cm2の停止圧力に達すると、「プシュ〜ン」という音と共に若干のエアが抜けるのはこの機構のためです。このとき、A-C間、B-C間のエアが排出されています。

C点には逆流防止弁が装備されており、タンクに溜まったエアは排出されません。タンクの中に入ることはできても、出ることは出来ないという仕組みです。
逆流防止弁をみていきましょう。

圧縮機から伸びている放熱フィン付きパイプと、圧力開閉器へ向かう細いパイプが並んでいます。
逆流防止弁をみていきましょう。
背の部分をスパナなどで外します。通常のネジですので、左回り(反時計回り)に回すと外れます。
逆流防止弁です。非常に精密なバルブが組まれているのでは?とご想像なさった方もいらっしゃると思いますが、たったこれだけの仕組みです。

白色プラスチック製の弁とコイルバネのみです。



別の角度から見てみましょう。白色プラ製弁がバネで押し付けられているので、圧縮機側から来た空気はタンクへ入っていきますが、タンクのエアは弁を押し付けるような向きに力が働くので、エアが逆流しないようになっています。
【逆流防止弁に不具合が発生するとどうなるか】
この固体は新品購入時から逆流防止弁にトラブルを抱えていました。圧力ゼロからモーターが始動し、停止圧力の8kg/cm2に達します。正常ならば「プシュ〜ン」という排気音と共に停止する筈です。ところが、「プシューーーー」と圧力開閉器近くの排気弁からエアが抜け続けてしまうのです。

そして、6kg/cm2の再起動圧力まで低下すると排気は止まり、再びモーターが「ブイ〜〜〜ン」と動き出します。8kg/cm2に達しモーターが停止すると再び「プシューーーー」と排出され続け、6kg/cm2で排気が止まり再起動します。つまり、「ブイ〜〜〜ン」「プシューーーー」を延々と繰り返してしまうのです。

また、再起動圧力まで低下する前に7kg/cm2前後で「プシューーー」が止まる場合もあります。かろうじて逆流防止弁が作動した場合です。
【原因と対策】
何故逆流防止弁が閉じないのでしょうか。正常に作動していたコンプレッサの場合はゴミの噛み込みや腐食などが考えられるかもしれません。

この固体の場合は弁付近のクリーニングと、白色プラスチック部品のバリ取りで直ったという経緯があります。両方を一度に作業したので、どちらが原因かは不明です。片方が原因かもしれませんし、両方が少しづつ影響していたのかもしれません。

頻度は少ないとはいえ、現在でもごく稀に逆流防止弁が閉じないこともあります。しかし、もう一度再起動すれば「プシューン」と正常作動するので大目に見ています。ただし、しばらく離れるときは電源をOFFにし、コンセントからプラグを抜くようにしています。
逆流防止弁(逆止弁)の修理 2006/4/28補足
弁の継手周辺のバリ取りや白色プラスチック弁の清掃などを行い、一見調子が戻ったように見えた逆止弁ですが、再び閉じなくなってしまいました。

通常ならば停止圧力に達すると「プシューン」という音とともに停止します。ところが、「プシューーーー・・・」と抜け続け、再起動圧力まで圧力が低下し、再びモーターがブイーンと動き出すという症状です。

ありとあらゆる手段を駆使しても上手くいかないので、修理を断念し、逆止弁を部品で入手しようとさえ考えていました。

そんなとき、ふと「バネを替えてみるか・・・」という考えが頭に浮かびました。そういえば、遥か昔にラジコンで使用していたコイルバネがちょうど良さそうです。
これは「ユージープロダクト」という会社の製品です。ラジコン用にも関わらずオイルダンパーが装備されており、ネジを回すことでバネの強さも変更できるという凝った仕組みがされています。

コンプレッサーの標準装着のバネはヘナヘナですが、このRC用はシャキッとしています。

まさか20年後にエアコンプレッサーの修理に使用するとは思いもしませんでした。
サイズを測っていきましょう。標準のコイルバネは0.69mm、ラジコン用は0.80mmです。太さが14%増でまさに狙いどおりの寸法です。
直径を測ってみましょう。すると、標準が13.3mm、ラジコン用が13.4mmとほぼ同一です。

ほとんど同じサイズなので、そのまま入れ替えるだけです。さっそくテストしてみると、6回再起動させて6回正常作動という結果でした。

これで当分の間気分良く使えそうです。やりました。
圧縮機の構造について
圧縮機の構造をみていきましょう。これはレシプロ型というもので、シリンダー(筒)の中をピストンが上下して空気を吸気・排気しています。
ヘッドを外します。
何故か吸気側には腐食が見られず、排気側の腐食が目立ちます。
ヘッドを外すと弁機構が載っています。弁には「リードバルブ」"reed valve"が用いられています。"reed"とは植物の葦(あし)を意味します。

楽器のクラリネットの吹き口に装着する葦製の部品を「リード」といい、材質は異なるものの、リードバルブの形状とよく似ています。

また、オートバイの2サイクルエンジンを分解整備した方ならばご存知かもしれませんが、吸気側にリードバルブが装着されています。
もうひとつ弁機構が載っています。
シリンダとピストンに辿り着きました。
シリンダには特に傷は入っていないようです。
リードバルブが方向を変えて2つ用いられています。

よく観察すると2つとも同じ部品で、上下逆になるように重ね合わせているようです。
【吸気】

ピストンが下降して吸気を行います。吸気側のリードバルブは負圧で開き、外からシリンダ内へ空気を取り込みます。

このとき、排気側のリードバルブはシリンダ内で負圧が生じているのでピタリと閉じた状態となります。
【排気】
ピストンが上昇して排気を行います。シリンダ内には正圧が発生するので、排気側のリードバルブは持ち上げられて開き、エアはタンクへ送られていきます。

このとき、吸気側のリードバルブは正の圧力で押し付けられる状態となり、ピタリと閉じた状態になります。

モーターの回転数は毎分1500rpmなので、1分間に1500回、1秒間に25回この行程を繰り返していることになります。

リードバルブは「パッタン、パッタン・・・」というレベルではなく、「ブイーン」と目に見えないような速さで閉じたり開いたりを繰り返しているのではないでしょうか。
圧力スイッチの仕組みについて
次に圧力開閉器とその周辺についてみていきましょう。

なお、電源スイッチはマッチ棒のような形状の棒を倒したり起こしたりして操作をします。
○で囲んだのは安全弁で、モーターが最大圧力を超えても停止しないという緊急時に作動するそうです。

黒い箱から伸びているのはモーター電源です。
プラスドライバを使用しカバーを開けます。カバーの内側にはスイッチの調整方法を解説するステッカーが貼られています。
A:"TURN CLOCKWISE TO INCREASE BOTH CUT-IN AND CUT-OUT PRESSURE"
Aのネジを時計回り(右回り)に回すと、再起動圧力(CUT-IN)と停止圧力(CUT-OUT)が両方とも増加します。

分かりにくいので具体的に考えていきましょう。6kg/cm2再起動、8kg/cm2停止の設定だったとします。このAのネジを時計回りに回す(つまり締め込む)と、7kg/cm2再起動、9kg/cm2停止となるということになります。もっと回せば8kg/cm2再起動、10kg/cm2停止と理屈の上ではなります。つまり、6-8、7-9、8-10というように、2kg/cm2の幅で再起動-停止を繰り返すということになります。


B:"TURN CLOCKWISE TO INCREASE CUT-OUT PRESSURE WITHOUT AFFECTING CUT-IN"


Bのネジを時計回りに回すと、停止圧力のみが上昇します。再起動圧力は変わりません。具体的に考えてみましょう。6kg/cm2再起動、8kg/cm2だったとします。Bのネジを回すと6kg/cm2再起動、9kg/cm2停止となります。つまり、再起動圧と停止圧の幅を調整するネジと考えてよさそうです。

このコンプレッサは再起動圧が6kg/cm2(80PSI)、停止圧力が8kg/cm2(115PSI)と指定されています。

指定値より上げることは非常に危険です。指定された範囲を超える調整は決してしないでください。
AとBふたつのネジを回すことで調整します。上の解説と実際の画像を重ね合わせてご覧ください。

Aのネジを締めると再起動-停止圧力が増加します。何故なのかいまいち実感がわかないかもしれませんが、原理としてはそれほど難しくはありません。

タンクからの圧力が上昇すればするほど圧力開閉器に加わる力が増していきます。言い換えると、下から押し上げられている状態といえます。

この力を押さえ付けているのが左の画像に写っているコイルバネです。「コイルバネ」と「タンク内圧力」が押し合いをしているのです。タンク内の圧力が低下し、コイルバネの力が「勝利」すると、接点がONになりモーターは再起動します。

モーターがしばらく回転し、停止圧力に達すると、今度はタンク内圧力がコイルバネの力を上回り、接点はOFF、モーター停止となります。

Aのネジを締めていくとコイルバネが圧縮されていきます。より圧縮されたコイルバネを押し上げるには、より高い圧力が必要になります。こうして再起動-停止圧力の両方が増加するのです。
圧力開閉器と一体になっているこの弁はどのような仕組みになっているのでしょうか。
モーターが回転し、エアを充填している状態です。圧力スイッチがONになっているのがご覧頂けると思います。

このとき圧力開放バルブは閉じています。
タンク内の圧力が上昇すると、ある時点でスイッチの接点が持ち上げられOFFになります。同時に、圧力開放弁の先端部分が押されて「プシュ〜ン」と配管内のエアが排出されます。タンク入口には逆流防止弁が装備されているので、配管内の圧力が排出されるのみで、タンクのエアは排出されません。
【まとめ】
モーターONの時はバルブ閉
モーターOFFの時はバルブ開
【モーターを観察しよう】
どのようなモーターが使用されているのでしょうか。黒色プラスチックのカバーを外します。
INDUCTION MOTOR
SP 1-1/2
VOLT 100
HZ 50/60
AMP 10/9
PHASE 1
CLASS E
KW ?
POLE 4
R.P.M 1430/1720
DATE: 1996
モーター軸と平行に羽が取り付けられています。これでは周囲の空気をかき混ぜるだけのような気がするのですが、何らかの意味があるのかもしれません。

2006/5/26補足
このページをご覧頂いたnaoさんより、「黒色プラスチック製カバーと一体となって一種の遠心ポンプを形成している」というご助言を頂きました。
紆余曲折を経つつも、1996年から2006年3月まで10年に渡って使用してきたことになります。
【見落としやすい注意事項】
【事例】
コンセントまで5mほどの距離があり、20m家庭用コードリールのほとんどを巻いたままコンプレッサに接続した。しばらく別の場所にいたが、戻ってみるとリールから煙が上がっている。よくみるとコードの絶縁皮膜が溶け、燃えてもおかしくない状態だった。


コンプレッサーに装着されている電源ケーブルは3m前後しかありません。近くにコンセントがあれば問題ありませんが、延長ケーブルを使用したくなる場合も少なくないのではないでしょうか。しかしながら、延長すること自体が好ましいことではなく、まして家庭用の0.75スケア、1.25スケアのコードリールを使用するのは危険ですらあるようです。

普段は特に考える事無く使用しがちなコードリールですが、巻いた状態と、全て伸ばした状態では、対応する電流が異なってくる点に注意が必要です。

左のコードリールは非常に太い電線を使用している業務用モデルです。伸ばした状態では15Aまで使用可能と書かれていますが、巻いたままの状態では使用電流10Aまでと指示されています。

家庭用の細い電線のリールでは、巻いたままの状態では5Aまでというものも珍しくありません。
【メモ】
電力(W)=電流(A)x電圧(V)

電流(A)=電力(W)÷電圧(V)

エアコンプレッサを製造するアネスト岩田株式会社よくあるご質問には、電源コードの太さ・長さについて分かりやすく解説されています。

要点は「なるべくコンセントから直接電源を取る」「止むを得ず延長する場合は、3.5SQ以上の電線で20m以内とする」「コードリールは巻いた状態で使用しない」とあります。詳しくは上記のサイトをご覧ください。
【その他】
吐出側のワンタッチソケットがエア漏れを起こしたので、日東工器株式会社製のものに交換しました。

エアが漏れるだけならばまだしも、「バシューン」といって急にプラグが外れたりすると怖いので信頼のおけるメーカー製のものにしました。この日東工器製継ぎ手ひとつだけで1,000円弱します。
このコンプレッサはオイル式です。画像のようなオイルレベルゲージを差し込んでオイル量をチェックします。

最近はオイルレスが話題を集めていますが、古典的なオイル式でも特に不都合は感じておりません。こまめにドレンコックを開いて水抜きしているとはいえ、手の平に向かってエアブローをしばらくしても、手に油がついているような感触はしないです。

当方も試行錯誤を繰り返している段階にあり、注意してはいるものの、誤っている点などあるかもしれません。そんななか、最後までご覧頂きありがとうございました。
<Takaよろず研究所内の関連リンク>
タイヤに空気を入れる エアコンプレッサ編
<参考にさせて頂いたページ>
株式会社 日立産機システム 空圧機器
アネスト岩田 コンプレッサー 
東芝産業機器システム株式会社 圧力開閉器式エアコンプレッサ

TAKAよろず研究所
http://www.geocities.jp/taka_laboratory/
2006/3/20製作 2009/2/20修正
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