深爪実験




目的


 爪は日々の生活において重要な役目をしている。鼻や耳の掃除にはじまり、弦をつま弾くピック代わり、そして、ノミをプシュっと潰すときにもキーとなる役割を果たしている。また、構造的な研究によって、足の親指の爪は硬くて爪切りで切りにくいこともわかっている。

 今回勢い込んで爪を切ったために深爪をしてしまい、その後の生活にどのような不便さが生じるかを検討したので報告する。









方法


 被験者の爪がある程度伸びた状態で、手の指10本を爪の先端から少しずつカットしてもらいこれは痛いというポイントぎりぎりを抑えてもらう。最初の1本目が終わった時点で、
「よくここまでぎりぎりに切ることができたなあ。すごいなあ。あんたは最高だよ。俺もあんた位の根性があればねえ。今頃もっと出世できてただろうにねえ。」とよくわからないがとにかく誉めあげて、次の指のフロンティアがさらに進むようにしむける。
 被験者が、「いてっつ」と痛みを訴えたら。
「それだっ。その言葉が欲しかったんだよ。」と、指先を見つめる苦悩顔を次の試験の部屋へと送りだす。






確認事項





 少なくとも深爪が一つあること。(すべての指が深爪である必要はない。普通の人の深爪は1本、多くても2本であろう。それより多い人は、深爪マニアとして恐れられている人々と考えられる。)

 ビビリゴロ(鹿児島弁?)つまり痛くもないうちから、痛くなるのではと恐れ、痛いと言ってしまう人を省くため、爪の白い部分が残っているのに深爪だと主張している人には、
「最高の深爪ですねえ。三国一の深さですよ」とこれまた訳の分からない誉め言葉を惜しみなく捧げて、そのままお帰りいただくことにする。(一度誉め上げた人を、「深爪じゃないじゃん。なに言ってるんだよ。」と引きずり下ろしてしまうと、厄介なことが起こりかねない。自尊心を傷つけることはこの世界では危険なトライアルとされ、浅野内匠頭の殿中ですぞおお現象がおこるとされている。被験者が怒りのなかで、切腹ではなく深肉をされたらfollowが大変だ。もっともビビリゴロはそんな大胆な事はしないと思うが)


さて深爪と認定されたひとに、以下の事をしてもらい、その反応を楽しむ。









結果



深爪の人は顔を洗いたがらない傾向が認められたが、後輩の間違いを意味もなく指摘する能なし上司ではなくなるようである。また、ピーピング行動も以前に比べて少なくなる傾向が認められた。また、愛しい彼を人生のすべてと考えている、猛者Rにとっては辛い状況になると推察された。








「いてっつ。」

「ついにやっちまったよ深爪。」

「うわあああ。」

「ごめんよ痛かったかい。」

「左足の小指。」

「でも今日のできは最高だったろお。」

「最高のできだよ。ありがとう。」

「深爪作ってもらうにはその道のプロにまかせたほうがね。」



By 深爪職人歴37年



「そんな職業あったの?」















「いやもともとは爪の先端割り職人だったのだけど、食えなくなってね」





2000.11.26