とても怪しい人間としての生き方



フィレンツェでの学会を気持ちよく終え、

さあてとロンドン経由でアメリカへ帰ろうと思っているとき事件がおきた。

つなぎの飛行機にのろうとチケットをある航空会社に提示した。

すると空港の職員、目は笑っているものの

チケットの裏に赤でTの字を書き添えそして怪しげな書類を作成し始めた。

私も小中高大と教育を受けてきたものである。

ただならぬこの雰囲気に中枢が不安を発生させている。

怪しげな彼の笑みに耐えられなくなり質問してみた。

「何してるんですか?何か問題でもあるんですか?」

3流ドラマの善人面した悪役のような笑顔で「問題なんてありませんよ。」と怪しく動く。

5分ほどの容疑者体験のあとOKサインを出してもらった頃には

怒りで十分に立毛筋を収縮させ、東洲斎写楽顔で係員をにらみつけていた。

しかし解放された安堵感もありよだれは自由に口角よりダラダラたれていき、

笑みもそこいらじゅうに浮かべっぱなしでシッポをふっていた。

それでも搭乗口近くにたどり着くと

能力としては完全に否定されてしまっていたと思っていた私の記憶力が

屈辱の5分に再びカテコラミンを分泌させた。

「ふざけやがって、テロでも起こすと思ったんかい?」

「それがこの国のお客さんに対する対応かあ。」

頭皮も完全に張っていた(?)。

出発時間が迫ってきたためゲートで搭乗券をみせ、飛行機に乗り込もうとしたとたん

今度は2人の頑強そうで強面のおじさんが私を別室へと連行していったのだ。

「私が何をしたというんだああ。」「お前ら日本人を舐めとるんかあ。」の訴えは

発生直後より怒り顔を作る神経回路を迂回し、

実際はしっぽを丸めておなかを見せてひっくりかえるといった行動を示してしまった。

「キャイーン、キャイーン。ごめんなさい。ぶたないでええ。」

「兄さんよ、ジャーナリストでもやっとるんか?」

「目的はなんだあ?ああっ?イタリアへいった目的だよ?」

「アメリカへは頻回にいくんかあ?」

撲殺されるんではないかとの不安もあったから、

おとなしく研究者としてのお仕事を話して、

日頃ねずみのシッポを集めていることを語って・・・。

私はここ半年の間に、日本への往復、カナダへの往復、

そしてアメリカへの往復とかなり動きまわっていた。

つまりパスポートはスタンプだらけだったのだ。

それで私が何かの運び屋とでも思ったのであろうか?

やっと解放されて最後に「いい旅を。」と言われたときは、

「いいかげんにしろおお。」とは面と向かっては言えなかったけど、

心の中で思いっきりののしってやった。

「このおたんこなす」

2001.02.21

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