梅雨の合間の思い出

梅雨の合間の蒸し暑さに、イライラする日々

そんな中なんとまあ、不思議な体験をさせてもらいました。

鹿児島といえば西南戦争。

私学校跡から城山へ向かうということは

敬天愛人の思いでいっぱいになるということなのではないかと、

用事を済ませた私はこの道路を感動で涙しながら車を走らせていた。

丁度私学校前では、信号待ちではありながらも

薩摩人としての生き方についての考察をしていた。

鹿児島の真っ昼間といえば、とんでもない蒸し蒸し状態。

でも、Thanks God! 我が愛車にはクーラーがついていたのだ。

車内は快適であり、赤信号は無視せずに我慢して待つといった、

交通ルールを遵守するには最高のコンディションであった。

ところがそんな平和空間を、突然の震動が引き裂いた。

オートマ車でのノッキングに対しては打つ手をもたない私は、

戦場にとりのこされた幼子の思いを完璧に理解できるような

不安感でいっぱいになっていたのであったが、

隣のタクシーの運ちゃんが指し示す我が愛車の後ろには

オカマ野郎がへばりついていたのであり、

我が愛車の故障といったとんでもない状況ではなさそうである。

そう、追突だったのである。(故障より悪い?)

待っていた信号が青にかわったので、

とりあえず、交差点を越えたところで、

「ふざけるなよ、どこ見てやがったんだ。」をオカマ野郎に告げるために、

車を路肩に寄せたのであるが、そのオカマ野郎逃げて行きやがった。

「ちょっと待て、きさま、俺を何様だと思っているんだ。」

あれ?なんかおかしいな、ええと、

「逃げられると思っているんかああ。」



追突オカマ野郎に逃げられ短い怒髪を衝天させながらも

車から降りて愛車のお尻を触ってみた。

あれ?まったく被害がない。

バンパーのクッションの範囲内での衝撃だったようだ。

たしかに大した衝撃でもなかったしなあ。

しかし、愛車の尻を撫でて逃げていった痴漢をこのまま放置したら、

次の犠牲者がでるに違いない。

天は敬っても、人をなかなか愛さない私としては、

逃亡者に愛を注ぐ気はまったくない。

捕まえるしかあるまい。

すばやく逃げたのかもしれないが、

ナンバープレートからの光はしっかりと私の網膜に像を結んだ。

追突オカマ野郎の運命やいかに。



とりだしたるは文明の利器携帯電話。

人差指でしっかりと110。

無邪気な私のコールに

警官がぞろぞろとやってきた。

よく見ないとはっきりしない程度の傷をバンパーにつけた

犯人を求めて国家権力が動き出したのである。

びびりまくる私。

「うわああ、通行人の顔が野次馬になってるじゃないですか。」

どんな悲惨な事故が起こっているのかと現場を覗きこむドライバー達の

期待を裏切るこの状況。

ただ単にオンボロ車が停まっているだけだなんて、

何のための事故見渋滞なのかわかりゃしない。

「Tadさんの通報のあった車は現在鹿児島県下に手配中です。」

「事故時の状況を詳しく教えてください。」

「ええええええ。」半泣き状態。

「おまわりさん、あのお、私もこのまま逃げていいですか。」



そうこうしているうちに警察官の無線機に連絡が入った。

無腺:「手配車の持ち主と連絡がとれた。これから中央署へ出頭してもらう。」

えええ出頭かあ。

「Tadさんも出向いていただけますよね、お手間は取らせませんよ。」

完全に怖じ気付いてしまっている私は、

「あのお、今から仕事があるし、すぐに帰らなければ。」

警官:「いやいやすぐ終わりますよ。」

目は笑っているけど口元は、帰ることは許さん風の形態となっている。

私:「わ、わかりました。すぐに終わるのであれば。」

中央署に着いた時はまだ、手配犯(既に犯人扱い)は到着しておらず、

被害者であり通報者でもある私は

おどおどしながら取り調べ室へと入った。

「やくざでも登場したらどうしよう。」と不安でいっぱいだったが、

登場したおたずね者は白髪混じりで紳士風の高貴そうなお方であった。

知らない人がこの状況を見たら、私が犯人という解釈になるであろう。

紳士:「ぶつかったような、そうでないような。」

紳士:「前の方が車を走らせたので、大丈夫だったんだろうと思いそのまま、走り去りました。」

認識していながら逃亡したのであれば、

完全な当て逃げ扱いにされてしまい、

犯罪者になってしまうから、

彼も出頭して来るまでの間、

窮地からの脱出方法を考えてきたのであろう。

まあ、謝っていることだし、

私も納得していることだしおとがめなしということにしてやるか。

いや、実際、傷もついていないんだから、

修理もないのだけど。

ただ、相手が高級車だったことには腹がたったね。

くっそう、後ろからぶつかってくるとわかっていれば、

ギアをバックにいれて迎え撃ったものを。

かくして梅雨の合間の夏の日の一日は

いつものように蒸し暑さだけをのこして暮れていったのだった。

2002.07.04, 06, 08

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