あの時は、とてもショッキングでした。

          ・
          ・
          ・

「ちょっとぉ〜〜、待ってよ、おんぷちゃん、はづきちゃん!」
「ほらはやく、どれみちゃん!」
「今日遅れると、マジョリカに何言われるか分からないわよ!」
「そう思うんならこの荷物持ってくれてもいいじゃんさァ!!」

「だぁ〜め!いいだしっぺはどれみちゃんなのよ」
「うふふ、ジャンケンに負けた人がみんなの荷物を持つんでしょ?」
「ぐ・・・しぃましぇ〜ん〜〜もう許してよぅ〜〜」

 私とはづきちゃんはくすっと笑ってどれみちゃんに言ってあげたの。

『だぁ〜〜め♪』 「ひぃ〜〜ん」(泣)


   そうこうしている内に、私達は横断歩道に差し掛かったんだけど
   ちょうど渡り始めたときに、信号機は私達をせかし始めたわ。

「あ、点滅し始めたわ!いそぎましょ」
「どれみちゃん早く!」

   何でこんな時、私ははづきちゃんのように出来なかったんだろう。
  『どれみちゃんなら大丈夫』そう思ったから、私は渡りきっちゃったのに。

「荷持もってあげるから急ぎましょ!」
「いゃはぁ〜ありがと、はづきちゃん♪」
「早く早く、二人とも!」
「う、うん! ! うわったた・・・てうっ」(べちゃ)
「ど、どれみちゃん!」

   せかした私が悪かったのか、どれみちゃんは見事なドジっぷりでコケちゃった。
   ああもう、どれみちゃんたら! やっぱり放っておけない!
   そう思って私が歩道に入ろうとしたら、信号はついに赤になっちゃって・・・

「ごめんなさい! すいません! お願い少しだけ待って!」
「あたた・・・」
「大丈夫どれみちゃん! 自動車が待ってくれている内に、おんぷちゃんと一緒に荷物を拾いましょう」


     その時だったわ・・・あちこちに散らばった荷物を、私達が拾い上げている時に
   交差点に入ってきた車が、私達に気付かなかったのは・・・・

「! あぶないっ !!」


     PAPAPAPA―――――!!  キキ――――――――――――ッ!!  ドンッ!!!




   ・・・・一瞬のことだったし、何が起きたのか私、わからなかった・・・・

   気が付くと、私とはづきちゃんは横断歩道の端にしりもちをついてて、
   目の前には焦げ臭いブレーキ跡を残した車が斜めになって止まってる・・・・

   え? 何が起きたの?! 私とはづきちゃんがどうして? 歩道の真ん中にいたのに?

   やっぱりはづきちゃんもキョトンとしてたけど、私と目を合わせた瞬間『ハッ』として車を見たの。
   私も『ハッ』として・・・あの時、あの時どれみちゃんは、どれみちゃんは私とはづきちゃんを!

   ・・・・足が見えてる・・ロングソックスをはいた、ピンクのシューズをはいた、どれみちゃんの足が!
   ・・うそ・・そんなのいや・・・いやよぉ・・いや・・いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

「どれみちゃ―――ん!!」
「どれみちゃ〜〜〜ん!!」

   どうして! いやよそんなの! 最悪の答えが頭をよぎる、だめ、ダメよおんぷそんなこと考えちゃダメ!!
   胸が張り裂けそうなほど鼓動が早くなる! のどがカラカラになって頭がグラグラする! 
   はやく、早くどれみちゃんのところに行かないと! そう思って立ち上がろうとしたのに、したのに!


          どうして足がゆうこと利かないのよ! お願い動いて! うごいてぇ〜〜〜!!


         涙が溢れてきた・・・何が女優よ、何がチャイドルよ! 腰を抜かしてどうするのよ!


                     私のバカ!おんぷのバカ!


                あの時私、どうして荷物を持ってあげなかったの!


   私ははづきちゃんを見た。お願い、おねがいはづきちゃん! どれみちゃんを、どれみちゃんを!!
   はづきちゃんは私を抱き起こしてくれて、どれみちゃんの所まで連れていってくれたわ・・・・
   私と同じように、目にいっぱい涙を浮かべて・・・・

   ドライバーが頭を抱えてうずくまってる・・・ 携帯で救急車と警察を呼んでくれている人もいる・・・
   人だかりができ始めてきた・・・ 心配して私達のそばに駆けてくれる人もいる・・・
   知らない誰かが、どれみちゃんの脈をはかってくれてる・・・
   どれみちゃんは、動かない。 目を瞑ってぐったりしてる・・・ 口と額から血が流れてる・・・
   誰かがハンカチを当てて血を止めようとしてくれてるのに・・それなのに、何で止まらないのよ―――!!

「ど   どれみ ちゃん?!」
「うそ   だよね うそよ 嘘よそんなのうそよ、嘘よ〜〜〜〜〜!!!」
「お願い返事してどれみちゃん!!」 「目を開けて、おねがい、おねがいどれみちゃん!!」

   私達は泣きながら、どれみちゃんにすがって叫んだの・・・・


『どれみちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!』

          ・
          ・
          ・




   あれから二日後、私達はどれみちゃんの病室で話をしていました。
   私とはづきちゃんにはケガは無かったんだけど、どれみちゃんは全身打撲と擦り傷、
   あと・・・足の骨にひびがはいっちゃったの・・・・私達を助けてくれたせいで・・・


「もう! どれみチャンのバカ! バカバカ!!」
「あたしら、どれだけ心配したか!」
「いっやぁ〜〜〜〜ほんと! あたし自分でもどうなるかと思ったさァ。
 でもさ・・・相手の人にもすごく迷惑かけちゃったな・・・一番あたしが悪いのに・・」


   車を運転していた人は、自分の不注意を全面的に認めて、入院費や通院費、医療費を全額払ってくれるんだって。
   そうどれみちゃんは言ってくれたの。その人さっき謝罪とお見舞いに来てくれていたし。
   だけど、相手の人も相当ショックだったみたい・・・私達にも物凄く謝罪してくれて・・・

   どれみちゃん、悲しそう。
   自分が転んで、横断歩道にいつまでもいたのが悪いのにって、
   そう言って・・・相手の人を気遣って・・・
   私達にも非はあるのに・・・私にも非があるのに・・・どうしてそんなふうに思えるの・・・
   いつもどれみちゃんはそう・・・自分より人のことを先に考えてあげられる女の子・・・

   関先生や、一組のほとんどの子が、さっきまでひっきりなしにどれみちゃんのお見舞いに来てくれてたわ。
   みんなどれみちゃんのことが大好きなんだって、しんぱいで心配で仕方が無いってすごく良く分かった。

   特に玉木さんの意外な一面が知れてちょっとビックリしちゃった♪
   何でも事故の知らせを聞いた時、一番慌てふためいて『春風さん死んだりしたら許さないわよ!』って
   半泣き状態で一組のみんなに連絡したんだって。
   本人は『わ、わたくしそんなこと言ってませんっ!』とか否定してたけど、
   電話の最後に必ずそう言ってたの全員が聞いてるんだから、それは無理って言うものよね。
   しかも半泣きだったんでしょ♪ ほんと案外健気なのね、玉木さんって。

   だけど現場検証をした警察の人や、お医者さんは奇跡じゃないかって言ってたそうなの。
   あの事故の状態だと、この程度のケガで済むはずが無いほど本当はひどいことになっていたんだって・・・
  『ヘタすれば、死んでたかもしれないんだよ』  お医者さんはおどけてそんなこと言ってた。
   冗談でも絶対そんなこと言わないでほしかったけど、当のどれみちゃんは、けろっとしてて
  『いやぁ〜〜あたしって悪運強いっすからぁ〜〜〜 えへへ』  なんて笑ってたし・・・だけど・・・


「でも・・・でも・・・ほんとに」
   「よかった・・どれみちゃん」
「心配かけちゃったね・・・はづきちゃん・・おんぷちゃん」
「それに・・モモちゃん、あいちゃん、ごめんね・・・」
「も〜どれみちゃん! ほんまこれ以上あたしらに心配かけさせたら許さへんよ」
「そうダヨ! ワタシ・・・あ、あれゴ  ゴメンナサイ・・・ヤ、ヤだなまた・・ゴメン・・ナサ・・」

   モモちゃん・・・泣き出しちゃった。
     そうよね、モモちゃんは・・・・マジョモンローのことがあったし、これ以上・・・大好きな人に何かあったら・・
   そっとあいちゃんが、モモちゃんの肩を抱いてあげてる・・・
   あいちゃんも、はづきちゃんも、私も・・・・涙が出てきちゃった・・
   みんなあんなに泣いたけど、どれみちゃんの為に流す涙は枯れることなんか無いものね・・・・

「みんなぁ・・・もう、泣かないでよ、ネ、ほらあたしこんなに元気だよ!
   だから泣いたりなんかしないで!  お願いだからさ・・・・」

   そう言って笑顔を向けてくれたどれみちゃんの目にも、涙が浮かんでる・・・
   みんなの心の中で、どれだけあなたの存在が大きいか感じてくれたんだ・・・
   だけどそんなあなただから、私達の前からいなくなるなんてこと絶対にあって欲しくない・・
   私の前からいなくなるなんてことに、絶対になっちゃ・・・いや・・・・

「(ぐすっ)・・せやな・・・ほんまごめんや、どれみちゃん」
「どれみチャンの(グスン)・・バカ・・心配かけさせないデ・・」
「モモちゃん・・・もう泣かないの(グスッ) ねっ?」
「どれみちゃんごめんね(ぐすん)・・小さい時から助けてもらって・・・(くすん)ばかりで」

   そう言って、私達は泣笑いの顔をどれみちゃんに向けたの。
   そうしたら、どれみちゃんも微笑んでくれたわ。 涙が頬を伝った笑顔で・・・
   みんなが笑いながら涙を拭いていたちょうどその時、病室のドアをノックして、
   どれみちゃんのお父さんとお母さん、ぽっぷちゃん、それにハナちゃんが入ってきてくれた。
   ぽっぷちゃん、ハナちゃんと一緒にきてくれたのね・・・
   私達じゃ嫌がって来なかったけど・・やっぱり姉妹なのね、ぽっぷちゃん。

「お父さんおっそーい! ネ、頼んでた本買ってきてくれた?」
「どれみ・・頼むから、もう少し女の子らしい本を選んでくれないか・・・」

   どれみちゃんのお父さん、何とも言えない顔でどれみちゃんに本を渡したけど・・・

「何、何の本なのそれ?」 「どれどれ?」 「エ〜ッと?」 「ばとる・・」



  『バトルレンジャーV コマンダーホワイトの挑戦!の巻』・・・・



  なに・・・それ・・・さっきのしんみりムードぶち壊すのに十分すぎるわよ、どれみちゃん!


「まぁ〜ったく、何をたのんだかと思えば! お姉ちゃんもっと大人になりなよ!」

  目が点になってる私達を尻目に、ぽっぷちゃんがするどい突っ込みを入れてるわ。
  でも・・ハナちゃんは、私達やどれみちゃんを見ないでうつむいたまま・・・
  どれみちゃんのお母さんが、後ろから優しくハナちゃんの両肩を抱いてあげてる・・・

「い、いいじゃん! 別に!」 「よくないっ! 来年中学生なんだよ、お姉ちゃんは!」
  「だ、だからなんなのさぁ!」
「い〜いお姉ちゃん! 読むなとは言わないけど、そんな変な本お父さんに買いに行かしちゃダメだかんね!」
「変とは何さ、変とは! 大体、あんたに迷惑かけてないんだからイイでしょうが〜!」

  どれみちゃんがそう言った瞬間、
  ぽっぷちゃんとハナちゃんの二人がほとんど同時に、『びくっ』ってなっちゃって、
  急にぽっぷちゃんは何も言わなくなって、うつむいちゃったわ・・・
  二人とも肩を震わせてる・・・
  どれみちゃんのお母さんは、さっきよりも身体を添わせて、優しくハナちゃんの肩を抱いてあげてる・・・

「ぽっぷ? どう・・したのさ?」
「・・・もん」
「え?  な、なにぽっぷ」
「かけてるもん・・・めいわくかけてるもん! かけてるんだもん!
 お姉ちゃんは知らないんだあたしの気持ちなんか! ハナちゃんの気持ちなんか知らないんだ!
   どんなにお父さんやお母さんやみんなやあたしやハナちゃんが、お姉ちゃんのこと心配したか知らないんだ!!」

「ぽっぷ・・・」

「あたしやハナちゃんがどんなに心配したか、ちっとも判ってなんかくれないんだ!!
 あたしずっと、ずっとMAHO堂でハナちゃんとお願いしてたんだよ!!
『あたしのお姉ちゃんを、みんなのお姉ちゃんを、ハナちゃんのお姉ちゃんを遠くになんか連れてかないで!』って!!」

「だからあたしとハナちゃんは・・・あたしとハナちゃんは!!.......」

   ぽっぷちゃん・・・泣きそうな顔でどれみちゃんに、綺麗なビーズのブローチとストラップをふたつ渡してる・・・
   ぽっぷちゃん、ハナちゃんの為にMAHO堂にお泊りしてる時、作ったのね・・・
   どれみちゃん・・・キューブストラップに入ってる字を見てる・・・・


   ■□□□□■ ■□□□□□□■ ■□□□□□□□□□□■
   □あたしの □・ □おねえちゃん □・ □ ずっといっしょだからネ □
   ■□□□□■ ■□□□□□□■ ■□□□□□□□□□□■

   ■□□□□□□■ ■□□□□■ ■□□□□□■ ■□□□□□□□□■
   □ハナちゃんの □・ □大好きな □・□ どれみママ□・ □どこにもいかないで□
   ■□□□□□□■ ■□□□□■ ■□□□□□■ ■□□□□□□□□■


「・・・・ごめん・・ほんとごめんね、ぽっぷ・・ハナちゃん・・・」

「もう・・・お姉ちゃんなんか嫌いだ・・・・
   お姉ちゃんなんか、おねえちゃんなんか・・・あたしのことなんてほおっておいて・・・(じわっ)
 どこへ(ひっく) どこへでも・・・(ひっく)どこへでも (ひっくひっく)
 行っちゃえば・・・いいん(ひっ...ひっくひっく)いいんだ・・・・・」


  ・・・ぽっぷちゃん・・・


「どれみ・・・」

  どれみちゃんのお母さんが優しく、本当に優しく、ハナちゃんの背中を押してあげてる・・・
  ハナちゃん、ようやく顔を上げてくれたけど・・・ハナちゃん、あなた・・・

「ど.....ひっく....どぇみ.....ひっく....どぉえみ〜....ぅぇえ・・・」


  ・・・ハナちゃんも・・・


  二人とも泣いてる・・・しゃくりあげながら・・・

  私達より・・・私よりも・・この二人の方が辛かったのね・・・
  血を分けたあなたの大好きな・・お姉ちゃんなんだものね・・・ぽっぷちゃん・・・
  あなたの大好きな・・・一番大好きな・・ママなんだものね・・・ハナちゃん・・・

「ぽっぷ・・・ハナちゃん・・・」

  そう言って、どれみちゃんはベッドの上で両手を広げてる。
  まるで、二人のお母さんのような・・すごく優しい顔で。
  涙の浮かんだ、優しい瞳で・・・・

「ぇうぅ〜〜ぅわぁ〜〜〜ん」 「どぇ....ぇっく....ひぅ〜〜〜ぅえ〜〜ん〜」
「ばかぁ〜〜〜(ぅっく)おねぇ〜〜うぅぅぇ〜〜ん」
「は(ぐしゅぐしゅ)はなちゃ(ひっくひっく)こん(えうえう)な....きもちさせない....ぇ〜〜〜ぇえ〜〜ん」

  ・・・二人はどれみちゃんの胸に顔をうずめて泣いてるわ・・・・
  ・・・・泣くもんかって、頑張ってるけど・・・

  私はみんなと、どれみちゃんのお母さんとお父さんを見つめてこう言ったの。

「おじ様、おば様、みんな・・・三人だけにさせてあげましょう?」
「・・そうだね」 「・・ええ」 「・・そうね」 「・・せやね」 「・・ウン」

  扉をそっと開け、病室の外に出た私達は、病院のロビーまで足を運んだの。
  その間、誰も口を開けなかったわ・・・だって、あの二人の気持ちを考えると・・・・
  みんな、きっと私と同じ気持ちなんだろうな・・・

  ロビーの椅子に座った私達に、どれみちゃんのお父さん、渓介さんが言葉をかけてくれたの。
  ほんとうにありがとう、って。はづきちゃんと私に怪我が無くて本当によかった、って。
  私達のお父さん、お母さんにも迷惑をかけて本当に申し訳無い、って・・・
  渓介さんが、どんな気持ちでこの言葉をかけてくれたか、
  私とはづきちゃんは痛いほど良く分かるから・・・『・・いいえ』って....それだけしか言えなかった・・・
  だって・・・こんな不公平なことって・・・私達が何でも無くって・・・どれみちゃんが....どれみちゃんは・・・

  あいちゃんも、ももちゃんも、私とはづきちゃんの気持ちを感じてくれて・・・
  首を横にふってくれるのが精一杯だった・・・
  そこにどれみちゃんのお母さん、はるかさんが、私達の為に飲み物を持ってきてくれたの。
  すごく申し訳なくなっちゃって・・・すごく失礼なのは分かってるのに・・・顔・・あわせられなくって・・・

「どうしたの、みんな? 暗いわよ、ん? はい。あいちゃん、悪いけどみんなに配ってくれるかしら?
 ・・・渓介、だめでしょう! あなたがこの子達の元気を取っちゃってどうするの!」
「いや! 違う、ちがうってはるか! 俺はこの子達にお礼が言いたくてだな・・」

「うふ、判ってるわよ。でもこの子達に気を使わせてどうするのよ、ホントこんな時男はダメよね。
 そう思わない、みんな。うちの旦那、『どれみがしぬ〜、しぬなどれみ〜』なんて大騒ぎだったのよ?
 そんな訳ないって、なだめるの大変だったんだから。 いい、みんな? ちゃんと男は選んで付き合いなさいね!」


  やっぱり、どれみちゃんのお母さんだな・・・すごく強いひと・・・いちばん....辛いはずなのに・・・


「おいはるか・・・」 「・・・ごめんなさい」 「あの・・・ぽっぷチャンはやっぱり?」
「ええ、昨日MAHO堂に泊めさせてもらったわ・・・」 「せやから、ハナちゃん・・・声が出るように・・」


「今日、迎えに行った時にはようやく、少し喋れる様になっていてね・・・」


  私達が事故にあったショックで、ハナちゃん言葉が喋れなくなったって聞いて
  どれみちゃんにはホントに申し訳なかったけど、昨日MAHO堂に様子を見に行ったわ。
  そうしたら、ぽっぷちゃんがハナちゃんの側についててくれてたの・・・
  それ見たら....何も言えなかった・・・
  だってぽっぷちゃんまだ小さいのに、必死にハナちゃん励ましてたんだもの・・・

  ハナちゃん、私とはづきちゃんを見て....抱きついてくれて...出ない声で....いっぱい泣いてくれたわ・・・・
    私達に抱かれて、少し落ちついたハナちゃんに、どれみちゃんのお見舞いに行こうね、って言ったんだけれど
  青白い顔でうつむいて、イヤイヤするだけなの・・・
  マジョリカやララが、自分たちに任せておけ、って言ってくれたとき、

 『あたしがハナちゃんのそばにいる! 絶対ハナちゃんの声が出るようにしてあげるんだもん!
  だから、おんぷちゃんとはづきちゃんはお姉ちゃんのそばにいてあげて! お願い!』

  ・・そう、ぽっぷちゃんが言ってくれたの・・・・
  ・・・どれみちゃんの所に戻ったわ・・・私とはづきちゃん・・・

  ・・・・どれみちゃんに怪我をさせて、みんなに心配かけて、ハナちゃんにショックを与えちゃって・・・
  ・・・・・ぽっぷちゃんに・・・・あんなことまで言わせちゃって・・・正直、自分に腹が立ったわ。

「せやったんですか。せやけど、やっぱりぽっぷちゃんはどれみちゃんの妹やなぁ」
「そうネ、ちゃんとハナちゃんが喋れるようになッてたんだもノ」
「あれでもぽっぷは、どれみよりずっとしっかりしてるから」(くすっ)
「あはは、いえてる」(くすっ)
「まあ! おば様、どれみちゃんが聞いたら怒りますよ」
「そう言えば、どれみチャン達どうしてるのかナ?」
「それじゃあ、そろそろ病室に戻りましょうか?」
「あ、はるか、俺は先生の所に足を運んでおくから、後は頼むよ」

  そう言うと渓介さんは、担当の先生のところに行ってしまったわ。


  さっきより幾分気持ちが軽くなった私達は、病室の前まで戻って来たんだけど......
  あれ? 何か聞こえる・・・歌?


「〜〜〜〜さぁ〜〜おやすみ〜の〜じ〜か〜ん〜だよ〜 すてきな〜レディ〜に〜な〜る ゆ〜めをみて ほしぃよ〜〜〜〜」


  どれみちゃんの声だわ。 これ、ルピナスの子守唄よね....何でこの唄、歌ってるのかしら・・・
  私達は顔を見合わせて、そっと病室のドアを開けたの。 
  そうしたら....どれみちゃんのベッドに頭をもたげたぽっぷちゃんと、ハナちゃんが眠ってて・・・


「〜〜〜す〜やすや〜 うでのなか〜 かわいいね〜が〜お〜 まもりたい〜ず〜っと〜〜〜

                        ルピナスの花のよ〜に〜〜〜〜そぉ〜〜っと〜〜〜・・・・」


  子守唄を歌い終わったどれみちゃんは、すごく優しい目でぽっぷちゃんとハナちゃんを見つめながら、
  自分の羽織ってた上着を二人にそっとかけてあげて、私達に小さな声で話しかけてくれたわ。

「あたしが元気なの見て安心してくれたからかな....二人とも眠っちゃった」

  どれみちゃん.....二人の髪の毛を、すごく愛しそうに撫でてあげてる・・・いいな...二人とも・・・
 (はっ!)な、何考えてるのよ、おんぷ! 不謹慎すぎるわ! ・・でも....うらやましいな。

「(小声で)どれみ、どんなにこの子達があなたのこと心配してくれたかよ〜く判ったと思うけど、
 これからは横断歩道でいつまでも居るなんて事、しちゃだめよ」
「(小声で)だ、だぁって、しょうがな」
「どれみ」

  そう言ったはるかさんの口調は、私達と喋ってた時と違ってた。
    すごくまじめで、『ほんとうにあなたのこと心配しているのよ』って口調・・・『おかあさん』の口調・・・

「ご.....ごめん...なさい」

  だけど、どれみちゃんの『ごめんなさい』を聞いて、すぐにやさしい顔になってどれみちゃんの頬を撫でてる。
  どれみちゃんの前髪をそっと手の平で分けて、ガーゼの貼られたおでこの傷を見てる・・・

「もう....お父さんやお母さんや、ぽっぷやみんなにこんな思いをさせないって約束しなさい」
「お母さん......ごめんなさい。  ごめんなさい、みんな。 あたし約束するよ....みんなに心配かけないって」
「うん、それでこそ、わが娘よ、どれみ」

「うん!はよ元気になってや!」 「約束したわよ...どれみちゃん」 「ホントにホントだからネ?」

「・・・約束...破っちゃイヤよ」(もう...こんな思い....私したくない.....どれみちゃん)

  その後、みんなで少しお喋りをしたの。(もちろん小声よ)
  元気になったらみんなでどこに行こうか? とか ももちゃんと一緒にみんなでお菓子を作ろうね♪ とか そんな話。

  でもあんまり長居しちゃうと、どれみちゃんが疲れちゃうから、みんな今日は帰ることにしたの。



   ♪     ♪     ♪     ♪     ♪



「じゃあどれみ、お母さん今日はこれで帰っちゃうけど、おとなしく寝てなさいね」

  寝息を立てているぽっぷちゃんを、そっとおんぶしたはるかさんが、どれみちゃんにそう言ってる。
  私の横には、眠ったハナちゃんをおんぶしたあいちゃんと、はづきちゃん、ももちゃんがいるわ。

「ほなどれみちゃん、あたしらこれで帰るけど、また明日くるさかい」
  「どれみちゃん、消灯時間は守ってね」
「ケガしてるンだから、夜更かししちゃダメよ」

「私も帰るけど....さみしく...ないよね?」
「・・・うん」
「あ、おんぷちゃんは、あと十分ぐらいおれる(居られる)みたいやで!」
  え?! ちょ、ちょっとあいちゃん、なによそれ!

「あ〜〜・・そういえばそうだッたネ!」
  も、ももちゃんまで何言ってるのよ?!

「・・じゃあ、おんぷちゃん....よろしくね」
  あの、はづきちゃんまで・・・わ、わたし....い、いいの?! みんな・・はづきちゃん?

「・・・それじゃあおんぷちゃん、悪いんだけどあと少しだけ、どれみに付き合って居てくれるかしら?」
「は、ハイ!」
  いいのかな...ホントに・・・
  私がそう思ったとほとんど同時に、「どぇ〜みぃ・・・むにゃぁ〜〜」「おねぇ〜〜ちゃ・・ぅん...く〜」って
  ハナちゃんとぽっぷちゃんの、可愛い寝言が聞こえたの。くすっ♪ ゴメンね二人とも。

  みんなも『くすっ』って笑って、私とどれみちゃんに手を振りながら病室を出ていっちゃった・・・
  他に人の居ない病室(個室だから)には、私とどれみちゃんの二人っきり・・・
  何でだろ.....なんか緊張するわ....さっきまで色んな事どれみちゃんとお話しようって思ってたのに・・・
  パイプ椅子の背もたれが、何だか熱く感じちゃう・・・

            カッチ、コッチ、カッチ、コッチ、カッチ、コッチ

  時計の音だけが聞こえる・・やだ、何でこんなに緊張するのよ(赤)

「あの、どれみちゃ」「きょ、今日なんか暑いよね」・・・
「そういえばさっ」「わたしやっぱり」・・・・
「そういやさ、玉k」「かよこちゃんが」・・・・・なんでこんなに話....かみ合わないの・・・やだぁ〜〜(赤)

  私とどれみちゃん、かみ合わない言葉のたびに顔を見合わせてモジモジしちゃって・・・

  い、いやだわ(ドキドキ) この空気を何とかしないと・・・こら! おんぷ! 今日どれみちゃんを意識しすぎよ(赤)
  ・・・や〜〜ん! きっとどれみちゃんに変に思われてるよ〜〜!
  ほらぁ〜! どれみちゃんも意識してうつむいちゃったじゃないの〜〜 バカ! 私のバカ! 何やってるのよ〜〜(赤)
    とにかくちょっと何とかしないと、どれみちゃんの顔まともに見れないままじゃない〜〜!
  ずっと下向いてモジモジしててもしょうがないじゃな・・・あれ?なんだろ? まくらの下にあるの・・・?

「ね、どれみちゃん、そのまくらの下にあるの何? ノート?」

  私はそう言って『それ』をちょっと見せてもらおうかな〜と思って手を伸ばしたんだけど、

「やぁ〜〜〜〜!! だめ! それだめだってばぁ―――!」 って、『スパン!』と抜き取られちゃった・・・

 なんで―――! そんなことされると見たくなっちゃうじゃな〜〜い!

「え〜っ、どうしてぇ、いいじゃないどれみちゃん、ちょっとぐらい!」
「だめぇ!」

  ハシッ!ヒョイッ!→ バッ!サッ!→ シュバッ!シュタ!→ ハァヒィハァフゥ はぁはぁはぁハァ

  むぅ〜〜〜〜・・・ ! うふ! こうなったら!

「えい! こちょこちょこちょこちょ!」「いやはぁ〜〜ん〜! や、やめ あはははは!」
「えい、えい! さ〜 どれみちゃん! みせなさ〜い!」「やはぁぁはははは、だぁ、だめぇ〜〜あは、い、いたいたたた!」
「! あ !ご、ごめんなさい! どれみちゃん!」

  おんぷのバカ! どれみちゃんを痛がらせてどうするのよ! あ〜も〜〜私って・・・
  つい、どれみちゃんがいっぱいケガしてるの忘れて、からだをくすぐったりして・・・
  ギプスの巻かれた足に体重をかけちゃったりして・・・・私ってどうして・・・

「ごめんなさい! ホントにごめんなさいどれみちゃん! わたし....私....」
「はぁはぁ・・・・おんぷちゃ〜ん」(ジ―――――・・・)
「あの....あの、その・・ほんとに・・・」 「ジ――――・・・」「ご....ごめ」「じ〜〜〜」「え〜ん、もうゆるしてぇ〜〜〜」

          ぐいっ

「きゃっ!」「おかえしだ〜〜〜!こちょこちょこちょこちょ!」「やだどれみちゃ、きゃはははは!」・・・

  ・・・どれみちゃんにくすぐり返されちゃった。 でもうれしい! 怒ってなくって。

「・・どうしてもだめ?」「いくらおんぷちゃんでも、これだけはだァ〜め!」「どれみちゃんのケチ!」「すねてもダメだよ」

  ちょっと残念だけど、諦めるしかないわね。本当に誰にも見られたくないみたいだし。
  あ、どれみちゃんあくびしてる。あわてて口元を手で押さえちゃって、可愛い。
  そういえばさっきお薬飲んでたから、そのせいもあるのかしら?

「はうぅ....なんだか眠たくなってきちゃったよ」「・・じゃあ私...そろそろ帰るわね.....」
「え?!.....う..ん。 おんぷちゃんありがと」「?なにが」「居てくれて・・」「そんな、私のほうこそ・・」

  どれみちゃん、ちょっとだけ悲しそうな顔で私を見るの。『行かないで』って子犬のような目で・・・
  だ、だめよおんぷ! ほんとはもっと居たいけれど、どれみちゃんを寝かせてあげないと。

「明日....私、一番にどれみちゃんに会いに来るから」
「絶対だよ、絶対だからね!」「うん!」「じゃあ指切りして!」「くすっ♪いいわよ、そのかわり私からもお願い」
「なに?」「....絶対に...絶対に私の前からいなくならないでね、どれみちゃん!」「おんぷちゃん.....うんっ!」

         ゆびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんの〜ます、ゆびきった!

「それじゃあまた明日ね・・どれみちゃん」
「待ってるからね・・おんぷちゃん」

  ・・・やっぱりちょっと寂しそうな目だったな、どれみちゃん。
  あ、そうだ! どれみちゃんのお父さんに挨拶して帰らないと。


  え〜っとたしか小児外科の・・・あ、ここだわ。

「そんな! それじゃあ」

  ? どれみちゃんのお父さん、渓介さんの声だけど、なんだろう・・・・

「・・・こうなってしまっては...もう打つ手が・・」
「しかし!」
「精密検査の結果....悪性の脳腫瘍が発見され....もう手の施し様が無いまでに・・・」
「しかし現代医学なら、助かる手術の方法があるでしょう! いくらなんでも、あんまりでしょうが!」
「・・先ほども申しましたが、何度か嘔吐や頭痛があったはずです。
 よくあるケースですが、どうということは無いだろうと、だれにも何も言わない事がほとんどなんです。
 ・・・もう、手術では、現代の医学では....助かる見込みが・・」
「・・・じゃあ....諦めろと....どれ・・・

  う...うそ...だ  うそよ....うそだわ....の 脳腫瘍だなんて....どれみちゃんが....
  どれみちゃんが脳腫瘍だなんて....ウソよ....

  体が震えて......足が震えて....うまく...立って...いられないよぉ....

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

      あれ? どれみちゃんどうしたの?
                                  うん・・なぁんか、頭....痛くてさ・・・
      お薬、飲む?
        マジョリカ〜〜頭痛薬どこかしら?

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


  そういえば....何度かそういうことが.....あった......


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

      ど! どれみちゃんどうしたの、顔真っ青よ!
                                     ちょっ...と、気持ち悪くて・・・
                                     は...吐き気がしてさ・・
      吐きそうなんやったら
      吐いて、すっとしたほうがええで! どれみちゃん

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    ただ.....体調が悪いだけだって......そう...そう思ってたのに....そう思ってたのに!
    違うってゆうの!? ウソよ! 違うわ! 絶対違う! 私の....勘違いよ....ぜったいに....


          だってさっき約束したもの! 私の前からいなくならないって!

             うそだよね....死んだりなんか...しないよね....



                   ・・・どれみちゃん・・・


  渓介と担当医の話をドアごしに聞いてしまったおんぷ。しかし、それでも気丈に自分を奮い立たせ
  よろよろとしつつも、もう一度どれみの病室へと足を運ぶ。
  自分の聞いてしまったことが、自分の知ってしまったことが嘘だと確認をするかのように。

    コンコン・・・『どれみちゃん....入るわね....』

「・・・・どれみちゃん....? (ふぅ〜) 眠っちゃったのね・・・」
「....ぅ...ん....くぅ〜〜....」(ばさっ)
「くすっ.....」(風邪ひくわよ。お布団放り出しちゃ・・・)

  寝返りを打ったどれみがはねのけた布団を、悲しげな笑みを浮かべたおんぷが
  そっとどれみの身体にかけ直そうとしたとき、『パサッ』と何かがベッドから落ちた。
  おんぷはそれを柔らかく拾い上げると、少し困惑した表情でどれみを見つめる。

 (....さっきのノートだわ.....どうしよう....・・・ゴメンね...どれみちゃん。
  私、だれにも言わないから...私だけに見せてね.....)

  可愛らしい花のワンポイントをあしらったノートには、少女らしい文字が書かれている・・・
  おんぷは、その文字を一文字とて逃すまいと、ゆっくりと、心で受け止める様に、黙読し始めた。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

  どこか遠くで、小さな子達の笑い声が聞こえる。 楽しそうな声・・・

  あたたかい日差しの中、あたしは夢を見ているような気持ちで、みんなとお話ししました。

  みんなとても優しくて、見ているあたしが嬉しくなるような笑顔で、色んなお話をしてくれました。

  あたしはドジでおっちょこちょいだけど、そんなあたしでも、みんながこうして会いに来てくれて、
  本当にあたしを心配してくれて、泣いてくれる子までいたの・・・


  あたしはみんなの笑ってる顔が好き。 元気な姿を見るのが好き。
    だから、あたしのために泣いちゃう子がいるのは、すごく辛い・・・
  だからあたしは、みんなの前では笑っていたい。
  だって、そうしたらきっとあたしのために泣いちゃう子は、いなくなるはずだもん。


  あたしはほんとドジだし、くいしんぼだし、頭もよくないし、みんなに迷惑ばかりかけて来たけど、
  それでも....それでも本当に楽しい日々が過ごせたんだって、心から思っています・・・

  あたしの自慢の、素敵で優しい大好きな幼なじみのはづきちゃん・・・・
  とっても頑張りやさんで元気いっぱいの、大好きなあいちゃん・・・・
  とっても明るくて、いっぱい元気をくれる大好きなモモちゃん・・・・

  いっぱい抱きしめたって、いっぱい足りないくらい大好きな、
  あたしの愛しい娘....ハナちゃん・・・・

  ちょっぴり生意気だけど、あたしのことが大好きな、
  あたしの大好きな妹、ぽっぷ・・・・

  もう一人のお母さんみたいな、ほんとはとっても優しいマジョリカ・・・・
  色んな悩み事を聞いてくれる、小さなお姉さんのララ・・・・
  もう一人のドジでかわいいあたし....ドド・・・・

  どこかお姉さんみたいで、だけどあたしにはとっても優しくて、
  とっても可愛くて、とっても頑張りやさんで....とってもさみしんぼやさんの....
  大好きなおんぷちゃん・・・・

  今さら言うのも遅いかもしんないけど....みんなに出会えて、あたし本当に幸せだったよ.....
  もう、大好きなみんなの笑顔が見られなくなるなんて.....すごく悲しいけど・・・

  だけど...だけど、みんなと過ごしたいっぱいの時間は、あたしにとって永遠のたからものなんだよ。
  ほんとうに、本当に楽しかった・・・あたし....ほんとに迷惑ばっかりかけて来たよね....ごめんなさい・・・



  でも、これだけは聞いて欲しいんだ。



  みんな....




  ほんとうに.....




  ほんとうに......




              ――――――――――あ り が と う――――――――――

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

        ねえ、おんぷちゃん.....あたし思うんだけどさ、
        あの時おんぷちゃんが転校してこなかったら、
        あたし達、きっとハナちゃんやモモちゃんに.....
        会えなかったよね....

        おんぷちゃんと出会ったのって....運命なんだなって、思うようになったんだよ....


                                          ・・・あたし

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


  そう.....言ってくれたじゃない.....そう私に言ってくれたじゃない! なのに....なんで....

  なんでこんなこと書くのよ!!・・・   いやよ....いやだよ....いやだ...よぉ.....

  約束....したじゃない....  さっき約束したじゃない!!  絶対に私の前からいなくならないって....

  それな....それな...のに....  こん.....なの....いやだよぉ....  どれみちゃ... どれみちゃん.....


        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

        おんぷちゃんは、覚えてる・・? あたし達の為に魔法使ってくれたこと・・・
        あの時さ....本当のおんぷちゃんが、あたし達助けてくれなかったら....
        みんな魔女ガエルになってたよね・・・   あの時は....ありがと.....

        だけど約束して! もう...はづきちゃんや、あいちゃんや、ぽっぷや.....あたしを...
        あたしを.....絶対に悲しませるようなことしちゃ....やだかんね・・・
        もう....あんな思い....あたしにさせないでね.....


                                       ・・・おんぷちゃん

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

        いや〜〜なんか照れちゃうなぁ〜・・・ おんぷちゃんからチョコレート貰うなんて...
        お互い寂しいやねェ〜〜、父親以外にあげる人いないんだもん・・・
        .....でも...ありがと、おんぷちゃん・・・
        あたしが男の子だったらなぁ・・・

        そしたらさぁ...そしたら....おん...い、いや!(あたふた)なな、何でもないっすよ!
        え! ば、バツって....そんなぁ・・・・い、言わなきゃ....ダメ? んも〜〜(赤面)
        おんぷちゃんいじめっ子さんなんだからァ・・・....えへへ....じゃ、じゃあ...言うね
        ・・・・大好きだよ! あたしの.....


                                       ・・・おんぷちゃん

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


                           ほんとうに......


                         あ り が と う・・・


  イヤぁ〜〜〜〜〜〜〜!!   そんなのヤダ!!   そんなのイヤよ!!   イヤよぉ....いやだよぉ.....


  まるで、自分の病状を知っているような....自らの命のともしびを悟ったような文面・・・

  堪えきれずに溢れ出す嗚咽.....止めるすべなど無くなった心の防波堤からは....悲しみと...絶望の涙が.....
  おんぷの.....澄んだ瞳から....溢れ出した。

  拭いきれるはずなど無い、愛しく...切ない....心が張り裂けそうな想い・・・
  本当の自分を見つけ出し、心の垣根から連れ出してくれた親友達の中でも、特別な存在のどれみ。
  そんな彼女が、自分の前から姿を消してしまう・・・・・
  あの時から....心の中で芽生えた....禁じられた想い.....叶うべく無き純粋な愛....
  性別など関係の無い.....人が人を好きになる.....心から心への....紛う事無き....想いのメッセージ・・・

  ひた隠しに隠しつづけてきた『好き』という想いが伝えられぬまま....愛する者が消えてしまう恐怖と絶望感。
  しかし.....


  ・・・どれみちゃん....ごめんなさい....私は....あなたが....好き....大好きなの....
  変だよね・・・私達....女の子なのに.....だけど私は....もう私の心に嘘がつけなくなっちゃったの.....
  あなたが教えてくれた....本当の私を知ってくれたあなたを.....どれみちゃんを好きだって言うことに....
  私の心が....嘘で居たくないって....教えてくれてるから.......
  だから.....知って欲しいの....本当の私の気持ちを.....ずるいよね....わたし.....わたし....


    嗚咽を堪え、いま....自分の前から フッ と消えてしまうかもしれない想い人.....どれみの前に.....
  おんぷはそっと立ち、どれみの顔を見つめる。可愛らしい顔に浮かぶその無邪気な寝顔を見つめていると
  涙が再び溢れ出してくる。  ....さっきまでじゃれあっていた少女.....
  暖かな体の、甘く柔らかな香りのする少女が自分の前から消えるはずが無い.....あって欲しくない....
  その少女....どれみの存在を確認する様に、優しく、柔らかく、そっと.....慈しむ様にゆっくりと、
  おんぷは自分の手をどれみの頬に触れさせた。

  柔らかく、暖かい頬を滑るしなやかな指。

  ウソだよね....いなくなったりなんか....わたしの前からいなくなるはずなんかないよね.....どれみちゃん
  私の気持ち.....嘘なんかじゃ....おふざけなんかじゃ...ないの.....だから.....
  ごめんなさい....みんな・・・ごめんね....あいちゃん、ももちゃん、ハナちゃん、ぽっぷちゃん、はづきちゃん

  ごめんなさい・・・・どれみちゃん.....私の...気持ち....今だけでいいから....受け取って欲しいの....


  絶望感を、ほんの小さな希望....生きていて欲しいと言う希望を、心から伝えたい想いと一つにするように、
  おんぷの.....涙で濡れた顔がどれみに近づく。

  大好きなの・・・・あなたが・・・

「ごめんなさい.....どれみちゃん」

  小さな....ささやくような涙声で少女は、もう一人の少女へと自らの唇をそっと重ねる・・・
  気付いてしまった本当の自分の気持ち....涙で枕を濡らした日々....許されるはずの無い、自分の....
  少女への....どれみへの本当の気持ちを.....心苦しい....あまりにも切ない愛を.....その唇は伝えた....
  瞑った目からこぼれる涙.....想いの泉から溢れた純粋な....あまりにも純粋なその想いは....おんぷの頬を伝い....
  どれみの頬を濡らしていた・・・


  まるで.....少女の...おんぷの純粋な想いを感じ.....共に泣いている様にさえ....見えた....


  窓から見える夕日が....二人の少女を見つめていた。 木の枝に残っていた木の葉が一枚.....風に揺れて舞っている.....
  風は....開いていた窓にそっと訪れ....白いカーテンを揺らす.....

  夕日は照らしていた。白いカーテンと.....二人の少女を.....ただ...照らしていた....


          (おねがい・・・・・死なないで・・・・・私の前から・・・・・いなくならないで!!)


                   おねがいよ......大好きな.....どれみちゃん......



  ・
  ・
  ・

「ん...ん・・・うう...ん、ん?  あ...れ、お父..さん?!」
「どれみ、目が覚めたのか。よく眠ってたな」

「あ、うん・・・(ほっぺたが濡れてる・・・)あのさ...お父さん今まで何してたの?」
「ん? 主治医、どれみを見てくれたお医者さんと話をしてたんだよ」
「そっか....そうだよね、やっぱ夢だよね....あれ」
「夢? どんな夢なんだい? よかったらお父さんに教えてくれないか?」
「う...ん...あのさ、あの....お父さん...あたしに....キス...した?」
「え? いや? どうしたんだ? そういう夢を見たのか?」
「うん...なんか、ちょっと悲しい夢....ごめんなさいって言われて....
 そんで...キスされて...あ、別にヤじゃなかったよ!」(じ〜っ)

「いや! だからお父さんじゃないって(苦笑)・・そうか・・・
 なぁ、どれみ....人はね....何かを共に感じ合い、その気持ちが何の隔たりも無く、
 心からお互いが分かち合えるようになると、言葉はそれほど必要としなくなるんだ」

「...そうなんだ・・・」

「二つの道が一つになって、真っ直ぐな線になるみたいに.....
 どれみが、誰かと.....誰かが、どれみと....一緒の時間を過ごしたくて、
 気持ちを知って欲しくて、気持ちを知りたくて....だから、そんな夢を見たのかもしれないな」

「そう...なの...かな? よくわかんないや・・・」
「お父さんとしては、あまり面白いことじゃ、ないがな」
「はっはぁ〜ん! やきもち焼いてんだお父さん!」
「ん、いや、まぁ父親としては普通だろ、ぅ?」
「うり、うりうり(ツンツン)お父さんあたしのこと好きなんでしょう?!
   いいよ! 告白しても! お父さんならオッケーしたげるよ! ほれほれぇ、いっちゃえ言っちゃえ〜!」
「おまえなァ・・・ふっ.....あははははは」
「プっ...あはあはははははは、! あ、そだ」

  どれみは はっ! と思い出して素早く枕の下に手を入れる。

 (ある...よね...あれ?....ま、いっか....)

「何か有るのかい、どれみ?」
「何でもな〜〜い、えへへ...ね、お父さん、あたしいつ、おうち帰れんの?」
「あ、ああ。後・・・

  ・
  ・
  ・




   =MAHO堂=

  あいこ、ももこ、はづきは、眠ったままのハナをそっとベッドに寝かせると、
  MAHO堂のフロアに設置されているテーブルに移動して椅子に腰を下ろし、マジョリカ、ララと話をし始めた。


「(小声で)それでは、どれみは大丈夫なんじゃな?!」
「(小声で)それにしても良かったわ〜、大事じゃなくて」
「(小声で)元気そうで、ほんま安心したわ、あたし」
「(小声で)どれみチャンのバカ!ホントに心配かけるんだかラ!」
「(小声で)まだ言うてんのかいな(笑)せやけど....ももちゃんが一番よう泣いたもんなぁ」
「ヤぁ〜〜ワァ〜〜ヤ〜〜〜(赤面)言わないでェ〜〜!」
「(しぃ〜〜っ)ハナちゃんが起きちゃうわ。だけど.....本当に.....よかった...どれみちゃんが助かって...」


  幼い頃からの大親友にして、その身を助けてもらったはづきの言葉が、全員の胸に響いた。
  少し、空気が重くなる。
  小声で口を開いたのは、あいこだった。
 
「うん、わかる。みんなおんなじやで、はづきちゃん!」
  「そうョ! はづきちャんの気持ち、ワタシにも良く分かるワ!」
「そうじゃの・・・(まぁ、厄除けが効いたということかの)」
「え? マジョリカ、今なんて言ったの?」
「な! 何でも無いわい!」
「言っちゃいなさいよ、マジョリカ」 「う、うるさいわい!(言えるわけなかろうが!)」

「そ、じゃ、私から言ってあげるけど」
「よさんかぁ!」 「黙ってて!」 「ムぎゅ!?」

「あなた達が出かけた後や帰ったあと、マジョリカ、あなた達の為に必ず祈祷してるのよ。
 あ、勿論変な踊りとかじゃなく、ちゃんとした祈祷。神様....ってゆうんじゃないけど、
 万物創生の源、魔力の根源...自然をつかさどる力...そう言った物にね、祈祷してるの。
 でも、マメよねぇ、マジョリカも。 魔力使いたがらないくせに、こういったことには惜しみなく使って
 あなた達に加護を与えつづ、キャ〜〜」(バイ〜〜ン)
「ララよ・・・よくもいらぬことを言ってくれたのぉ〜〜〜〜〜!!!」(赤面)
「イヤ―――ちょっとマジョリカったら、やめなさいって〜〜〜〜!!」(蒼白)
「やかましいわい〜〜〜! そこに直らんかぁ〜〜〜!!」(怒)
「ちょっと、あなた達ニヤニヤ見てないで何とか、キャ〜〜〜!」(逃)
「待たんか、この馬鹿モンがぁ――――!」(追)


 (せやったんや、せやからどれみちゃん・・マジョリカほんまおおきに! おおきにや!好っきゃでマジョリカ!)
 (モンローとは違うケド、モンローと違う優しさでワタシ達を見ていてくれたのネ、I Like you マジョリカ!)
 (マジョリカ、私達の為に....どれみちゃんの為に...本当にありがとう! すき、大好きよ、私達のマジョリカ!)


  どたばた劇も収まって、その後和やかな話をした後、三人はMAHO堂を後にした。
  もう、日も西に沈み、辺りは夕闇に変わろうとしていた。 その時、ある人物の姿が三人の目に写る。

「アレ? もしかしテ!」 「せや、間違いあらへん!」 「おんぷちゃんだわ!」



     ♪     ♪     ♪     ♪     ♪



  その姿を見て三人はおんぷに声をかけた。

「おんぷチャ〜ン」 「お〜い」 「おんぷちゃーん」
「あ、......みんな・・・」

「どうだった? どれみちゃんの様子」
「結構、話とかでけたやろ?」
「どれみチャンも、おんぷチャンとお話ができて嬉しかったんじャないかナ?」
「そう.....ね...」

「?どないしたん・・・なんや元気あれへんけど....」
「なにか...あったの?」
「気分でもワルイの、おんぷチャン?」
「う...ううん何でも無いの....みんなありがと...どれみちゃんと一緒にさせてくれて....。
 私、明日お仕事の打ち合わせがあるから、帰るわね・・・」

「あ、そうなんや....」 「....無理しないでね」 「何かナヤミゴトあるんならワタシ達に言ってネ!」
「うん....ありがとう...それじゃあね・・・バイバイ...みんな」


  ぎこちない笑顔でそう言い残して、おんぷは三人の前から足早に去って行った。


「・・・どないしたんやろ、おんぷちゃん」
「! わかったワ、きっとどれみチャンが変なワガママいっぱい言ったんだョ」
「それで疲れちゃったとか?」
「あ〜! それ言えてるかも知れへんなぁ〜。あれ食べたい、これ買うてきてぇ〜とか...あはは」
「ぷっ....何だかそれ、ありそうね。 どれみちゃんだもの」

「あははははは」 「ヤヒャヒャハハハ」 「くすくすくす」
  
「はは...ほな...あたしらも早よ帰ろか?」
「うふふ....そうしましょうか」
「そうだネ.....」


  ・
  ・
  ・


  夜の帳(とばり)が訪れ、空は薄藍色の夜に変わっていた。
  薄く気高い光を放つ月は、雲の合間から人の息吹を養う街を照らしている。
  その雲の合間を、小さな影が抜けていく。 やがてその影は雲の中に入り、そして雲の上に出ていった。

  紫色の衣を身に纏ったその影....瀬川おんぷは、悲しげな目で、月の光をその身に浴びていた。
  ほうきの浮力にその身を任せたおんぷの脳裏に、思いでの言葉が浮かぶ。
  そっと目を閉じたおんぷには、あの時のみんなの嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  なんか、どれみとおんぷちゃんってさぁ、おひさまとおつきさまみたいだよねぇ。

                                              ぽっぷ、なにさそれ。

  いってほしいぃ〜〜? おんぷちゃんはものしずかでぇ〜キラキラしててェ〜
  どれみはぁ〜(もじもじ)なんか....なんかあったかいんだよね〜

                              うふふ、ありがとぽっぷちゃん。何だか嬉しいわ。
                                そ、そっかなぁ・・ま、悪い気はしないやねぇ。

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 『日の光を浴びてこそ、月は美しく輝き、
  月の誘い(いざない)あるが故、日は再び光を放つ』かァ・・

                                       何を読んでいるの、ももちゃん?

  あ、おんぷチャン、この小説の一文にネ...
  おんぷチャンと...どれみチャンのことが書いてあるノ。

                                      見せて見せて! どんなことなの?

  ネ! おんぷチャンとどれみチャンにピッタリでしョ!

                            ・・・あはは、そ、そうかしら(なんか....恥ずかしいわ)

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (ぼそっ)な、おんぷちゃん。どれみちゃんて、
  お日さんみたいに『ほわっ』てしてて、なんやその....
  一緒におるだけで暖ったかい気持ちになるやろ。
  あたしはな...そんなどれみちゃんが大好きなんや。

                                                    ふうん・・・

  ふふっ....おんぷちゃんかて、どれみちゃんのこと大好きやろ?

                                          わ、私は、べつにそんな・・

  隠さんだかてええやん! ・・・素直になりや...
  あたしらの中で...おんぷちゃんが一番...そのなんや...
  どれみちゃんのことが好きなんやなぁって判るもん、あたし。

                                             わたし・・・わたしは・・・

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (・・・どれみちゃん・・・気付いたら・・私の気持ちは・・・ねぇ・・どれみちゃん
  どれみちゃんは・・・私のこと・・・好き?.....嫌い? 私は....あなたが...『大好き』なのよ・・)

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  変わったのは、おんぷちゃんだけじゃないのよ....
  どれみちゃんも変わったわ....おんぷちゃんと一緒に....ね。

                                          はづきちゃん・・・

  私達は、おんぷちゃんが大好きよ。
  おんぷちゃんは...私たちの事....好きになってくれてる...かしら?

                                    もう! 当たり前じゃない!

  くすっ! よかった、その言葉、どれみちゃんにも言ってあげてね。
  私達の中で、一番喜ぶの....きっと....どれみちゃんだから。

                                       ・・・うん.....言ってみるわ
                                    ありがとう...はづきちゃん・・・

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  ハナちゃん思うんだけどぉ...
  おんぷとどれみってどっか似てるよね〜

                                 おんぷちゃんと?そ、そっかなぁ
                               あ〜、何か嫌そうね どれみちゃん
                          何いってんのさ! そんな訳ないじゃんさぁ!

  えへへぇ〜、だって。おんぷ、どれみ、って
  音楽のお名前でしょ〜? あと、お帽子かぶると、髪の毛が
 『ぴょこっ』って出るのもママ達だけだもん! それにねぇ....それに....

                                         は、ハナちゃん?!
                                       ど、どうしたの急に?!

  へへぇ(赤)...こうしてねぇ...『ぎゅっ』って
  おんぷとどれみにしてもらうとねェ...二人ともおんなじ匂いがするの....
  イイにおいが....すごくウレシイにおいがするんだよぉ...ママ...大好き!

                                            ハナちゃん・・・
                                            ・・・ハナちゃん

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (みんなが、私とどれみちゃんってどこか似てるって言ってくれたよね・・・私ね・・
  すごく・・・すごく嬉しかったのよ! だから、だから・・・・みんなが見つけてくれた....
  本当の私が、太陽のあなたを、みんなの前に昇らせてあげるわ!
  ごめんなさい.....みんな....これが私なの......)

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  再び目を開いたおんぷ。その瞳にはもう悲しみの色は浮かんではいなかった。
  おんぷを乗せたほうきは、眼下の街へと降下して行く。

  雲を抜け....

  月の光を浴びながら.....

  堕ちる様に....

  突き刺さる様に.....

  降下して行く.....



  ほうきはある公園の上まで来ると、おんぷを乗せたまま暫くその場で浮遊していたが
  やがて、ゆっくりと茂みの中へと降下していった。

  人気(ひとけ)は無く、水銀灯の青白い明かりのみが寂しく辺りを照らしている。


  嘘の電子メールを送り、心から信じて集まってくれたファン。

  ただ面倒だったから。
  書く気が無かったから。
  別にどうでも良かったから。

     結果、人の心を弄び、自分を信じたファンの気持ちを裏切ろうとしていた。

  それで終るはずだった。
  だけど、それを望まない子たちがすぐ側にいた。

    魔法で人の心を変えちゃいけない!
  逃げちゃいけない!
  そんな女の子でいちゃいけない!
   
  そう....心から教えてくれた女の子達が.....すぐ側にいた。

  心の垣根を優しく取り除いてくれた女の子がいて、
  こっちにおいでと優しく微笑んでくれた女の子がいて、
  まだ怯えていた自分の手を取り、屈託の無い笑顔で連れ出してくれた女の子がいた。

  あいこ  はづき  どれみ.....

  彼女達が自分の心を変えてくれた....
  本当のおんぷを見つけ出してくれた....思い出の公園。

「・・・静かね・・」

  茂みの中、誰に話すでもなくそう呟いたおんぷは、ジュエリーポロンの柄を左右に引き、
  中央に見えるクリスタルをじっと見つめていた。

「私の事を誰も知らない世界って.....どんな気持ちになるんだろうな.....わたし・・・」

  潤んだ瞳に映るクリスタルの像がぼやけ出す。
  明確な映像を欲する様に、二度三度とまばたきをする。
  映像は....明確にはならず....涙が頬を伝っていった。
(ありがとう、わたしの大好きなみんな、大好きなママ、パパ.....『大好き』な....どれみちゃん)

  涙を堪え、下唇をかみながらジュエリーポロンを頭上にかざすおんぷ。
(大好きよ....まっていてね、どれみちゃん  わたしが...私があなたを助けてあげる!)


  ――――――――――〜〜〜〜〜(本当にごめんなさい! みんな!)〜〜〜〜〜――――――――――

            「プ〜〜ルルンプルン ファ〜〜ミファ〜〜〜ミファ―――――――!!

                              お願い!

                          私はどうなってもいいから!

                   どれみちゃんの病気をいますぐ、今すぐ治して!!」

  ――――――――――〜〜〜〜(私の大親友になってくれて...ありがとう)〜〜〜〜――――――――――


  ジュエリーポロンから放たれた願いの魔力は.....放射状に広がり....霧散した。



     ♪     ♪     ♪     ♪     ♪



  【遡る事 約一時間前】

「せやけど、おんぷちゃんほんま元気あれへなんだなぁ(なかったなぁ)・・・」
「・・・ケンカしちゃった、とかじゃないみたいだし....」
「やッぱり気になるよねェ」
「せやな....?(どれみちゃんが死んじゃうなんて、そんなの絶対嫌よ!)―――――!―――――」
「(私、私絶対にどれみちゃんを助けて見せる!)―――――!―――――」
「(だから、ごめんなさいみんな!)―――――!―――――」

「な、なんやこれ!」 「頭の中に声が!」 「これ、おんぷチャンの声だワ!」

「なんでどれみちゃんが死ななあかんねん!」
「た、助けるって一体?!」
「何で謝ッてるノ? 一体何するつもりナノ、おんぷチャン!」

  三人は咄嗟に、おんぷの去っていった方向を見たものの、
  当然の様にその姿は見えなかった。

「ももちゃん!はづきちゃん!」 「ええ、判ってるわ!」 「早くおんぷチャンを追イかけないと!」


  ――――――――――!!絶対に取り返しがつかないことになってしまう!!――――――――――




  三人は手近な建物の陰で、見習い服に着替えを済ますと素早くほうきを呼び出した。
  ももこが早速ほうきに跨ったもののすぐに困惑の表情へと変わった。

「ど、どうやッておんぷチャン探すノ?魔法使っても、ソレで間に合わなかッたら・・・」
「大丈夫よ、ももちゃん! 私のやるように魔法を使って!あいちゃんもお願いね!」
「よっしゃ! まかしとき!」

「パイパイポ〜ンポイ プ〜ワプワプ〜〜!
 ほうきよ! 
 私達を乗せて、おんぷちゃんの後を追って!」
「パメルクゥ〜ラルク〜ラリロリ〜ポップン!
 以下同上!」
「ペルゥタンペットン パラリラポン!
 上に同じ―――!」

「よっしゃぁ〜〜! ほな行くでぇ二人とも!」「急ぎましょう!」「左に同じ―――!」

  それぞれのほうきは主(あるじ)を乗せ急上昇を始めた。
  そして、夜に変わり始めた空を疾走して行った。




  ―――――「ひゃあ〜〜〜! ちょっとたんま(まって)―――!」
  ―――
  ――
  ―


  ―――――「いやぁ――! あんまりだわ〜〜〜〜!!」
  ―――
  ――
  ―


  ―――――「ワァ―――オ! ジェットコースターみたァい!!!」
  ―――
  ――
  ―



  上空を高くほうきで飛ぶあいこ達。その顔は焦燥に変わっていた。


「くっそー、おんぷちゃんほんまどこいったねん!」
  
「判らないけど、とにかく空を飛んでいる事に間違いは無いわ!」

「こんなに空を高く飛んだノ初めてだけど、嫌な予感がすル!」

「わっぷ! 雲に入ってしもた」―――「きゃっ!」―――「さ、寒いヨ〜〜!」 ――――

「ん?! お、おった!あれや!おんぷちゃんや!」

「 早く! 追いつかないと!」―――――「おんぷチャ―――ン!」―――――



「 あかん!気付いとらへん」――「もっとスピードが出ないと!」――「ダメ!おんぷチャン移動しちャう〜!」
                                 
  ――――

「くっ...なんちゅうスピードで移動するんや、あの子!」
「あ、雲に入っちゃうわ!」――――「見失っちャう――!」

(ぼふっ)「さ、さっむ〜〜!  !み、見失うた!」―――「何処に行ったの?!」――――「(きょろきょろ)NO〜〜〜!」

 ――――「?!ど、どないしたんや、ほうきが止まってしもた・・・」〜〜〜〜
 〜〜〜「!まさか・・おんぷちゃん私達の行動を予測して、何かの予防線を張ったんじゃ....」〜〜〜
 〜〜「こんな魔法の使い方するなンて・・ドウシヨウ〜〜間に合わなくなっちャうヨ〜〜!」〜〜〜

「(落ちつけ、落ちつくんやあたし!)・・!ええかはづきちゃん、ももちゃん!よう聞いて!」
「な、何!」〜〜「イイアイデアでもあるノ!」〜〜〜〜「・・マジカルステージや・・・」〜〜〜〜
「おんぷちゃんが何するかは・・二人とも予測はついとるやろ・・・・」――――〜〜〜
「・・・禁断魔法で....」〜〜――「どれみチャンを助けル.....」――――――〜〜〜

 〜〜↓

           ↓

「おそらくそや。せやからマジカルステージで、おんぷちゃんの願いを消してまうんや!」―――――
「じゃあ早く地上に降りないと!」「ドコに降りるノ?!」―――――〜〜

                    ↓

                        ↓

「このまま降下しながらするんや!!!」―――
「! わ、判ったわ、やりましょう!」――――――――――
――――「三人だけのマジカルステージなンて・・・大丈夫ナノ、あいちゃん!?」

              ↓

             ↓

「とにかくやるんや! ええね二人とも!」――「いくわよ、ももちゃん!」―「ウ、ウン!」―――



  遥か上空からのマジカルステージ。三人だけで、しかも地上に降下しながらの荒業。無茶は承知だった。
  マジカルステージの発動は三人からでも可能とは言え、ほうきの浮力にかかる魔力との調整に失敗すると、
  地上に落下して命を落とす確実な死が待ち構えている。      必死だった・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
===『パメルク〜ラルクゥ〜高らかに―!』(お願いや!お願いやから間に合うて――!)===
=====『パイパイポ〜ンポイしなやかに――!』(絶対に早まったりしちゃだめ〜〜〜!)=====
=======『ペル〜ゥタンペットン爽ヤかに―――!』(おんぷチャンいけないョ〜――!)=======


             「マジカルステ――ジ!」――――「マジカルステ〜〜〜ジ!」
                          \      /
                            \   /
                       「マジカルステ〜――ジ!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
           (プ〜〜ルルンプルン ファ〜〜ミファ〜〜〜ミファ―――――――!!)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(!あかん!おんぷちゃんの!) (!おんぷちゃんの魔力が!) (!発動しちゃうョ〜――!)
 
「お願いや!」
(お願い!)

「おんぷちゃんの間違った願いを!」
(私はどうなってもいいから!)

「叶わない様にシテ〜〜〜―――――!」
  (どれみちゃんの病気をいますぐ、今すぐ治して!!)

  トライアングルポジションで放たれた渾身の願い。あいこ、はづき、ももこの願い。
  三人の頭上に降り注ぐ光のカーテンは眩い光を放ち、瞬時に消滅した。

「くっ!」 「ど、どうなったの?!」 「わ、判らないョ!」

「とにかくや、とにかくこのまま降下するで! 魔力の感じた地点は!?」
「ええ! 判るわ、きっとあそこよ! 私達がおんぷちゃんの心に入れたあの場所だわ!」
   「とにかく早く、急がないとおんぷチャンが―――!」

  消えない焦燥感、より大きくなる不安、結果の見えないマジカルステージ・・・
  三人は地上に急降下して行く。あの、おんぷを変えた思い出の公園に。 

  月の光だけが、今まであいこ達が居た空を照らしていた。
  空間の粒子は、月の気高い光を浴び煌いていた・・・願いは....その想いは叶うのか・・・・



   私....どうなっちゃったのかな・・・何も見えない....どれみちゃんはどうなったのかしら....
   さっき...なにか聞こえたみたいだったな....声....みんなの声・・・・
   ももちゃん...はづきちゃん....あいちゃんの.....声......なんて言ってたんだろ......

      ――――――――――――――――――――――――――――

==「早よう! 早よせんと、どないしょうものうなってまう!」==
==「見えたわ! あそこよ、あの公園だわ、あいちゃん!」==
==「早く降りて探さなイと、おんぷチャンが!」==

      ――――――――――――――――――――――――――――

   私の....ことをどうとか.....もう...いいわ.....もう.....何も考えられない・・・
   ごめんなさい....みんな.....ごめん...なさい.....ママ....パパ.....私のこと.....覚えて....いて...ね.....

      ――――――――――――――――――――――――――――

(バッ!)「走るで二人とも、ぜったいあそこや! あそこにおるねん!」
(バッ!)「ええ! おんぷちゃんダメよ、絶対に駄目!」
(バッ!)「わかったワ! おんぷチャン待ッてて!」

      ――――――――――――――――――――――――――――
                        ・
                        ・
                        ・
      ――――――――――――――――――――――――――――

   ・・・・....こ...えが.....する.....どうし....て...?

      ....ちゃん! ....んぷちゃん!! おんぷちゃん!!!
        ――――――――――――――――――――――――――――

「おんぷちゃん! 目ぇさまして! お願いやから! お願いやから目ぇ覚ましてぇな――!!」
「あなたは一人じゃないのよ! 戻ってきて! おねがい、お願いだから!!」
「NO〜〜〜〜!! もうイヤよ――! モモの前から大好きナ人がいなくなるノは!!」

      ――――――――――――――――――――――――――――
          同じ時間に二度と会えなくなるなんて、絶対に!

                     絶対に!

          イヤ〜〜〜〜―――――――――――!!!

      (お願いやから!) (お願いだから!) (ワタシ達の願いよ!)


             ―――――とどいて!!!―――――

      ――――――――――――――――――――――――――――

「・・・ん....ん......みn.....みん...な...どうし...て...?」

  .....マジカルステージの願いは....大親友達の思いは...おんぷの...禁断魔法を打ち消せた様であった。



  倒れたまま、意識の朦朧としたおんぷを抱き上げるあいこ。
  囲う様にはづきとももこが、心底安堵した表情でおんぷの名を力強く叫んでいる。

「! お、おんぷちゃん!」
「! おんぷチャン!」

  ばしぃっ!!!

「! あ、あいちゃん!」 「な、ナにするの?! あいチャン!」

  ぐったりとしたおんぷの頬を、平手打ちしたあいこ。突然頬をぶたれ、弱々しいながらも『キッ』と睨み返すおんぷ。

「なに....するのよ! あいちゃ
  「何するやあらへん! そんな目で睨んだかて絶対許さへんであたしは!!
 あんた! あたしらの目ぇぬすんで何してんの?! あんた、一人で何しようとしてんの!」
「か....関係ないじゃ 
「関係無いや、ぬかすなぁ! あんた一人で何しようとしてたんか知れへんけど、どれみちゃんが関係してんねんやろぉ?!
 あたしらあんたの声聞こえたんや! あんたがどれみちゃん助ける言う声聞こえたんや!」

「....どう...して....そんな....こと」

「なんでわかれへんねや! あたしらはあんたの何なん?! あんたはあたしらの何なん!!
 友達やあれへんの?! 親友やあれへんの?! 大親友とちゃうのん!!!
 なんで一人で背負い込もうてすんねんな.....なんであたしら頼ってくれへんのや!」

「....そんなこと....
「目ぇそらさんとちゃんとあたしの顔見て、あたしの目ぇみて喋らんかい!
   あんたがどれみちゃんの事好きなんはよう判る、あたしらかてそうや! 
 あんたが何で、どれみちゃんが死ぬ思てたんかは知れへんけど・・・・せやかてあんたが禁断魔法使うてそれでええんか?!」

「.....わた...し」
「あんたに置いてかれるあたしらは、あたしらはどないしたらええの?!  それでどれみちゃんが喜ぶ思うてんの!!
 どれみちゃんだけやあれへん! あんたのこと応援してくれてるファンのみんなは?! 学校の友達は?!
 西沢せんせや、関せんせが....おんぷちゃんのお父ちゃんやお母ちゃんが.....どない悲しむ思うてんねや!!!
 マジョルカやマジョリカ、ララやロロの気持ちはどないなんねや!!!!」

「...う.....」
「あんたには.....どれみちゃんだけしかおらへんのとちゃうねんで....おんぷちゃんのことが大好きで大好きで.....
 いつも....想うてくれてる人がぎょうさん....おるねんで....もっと自分を...大事にしてん....もっとあたしらのこと....見てん....
 あんたは.....一人やあれへん...いつもあたしらが側におるねん....」



「...あい...ちゃん」

「おんぷちゃん....
 あなたが私に言ってくれたことが....あったわよね....
『自分の意思を表すことって、自分自身を見つめて認める事よ』 って、『認めることで、前に進む力と勇気を自分に与えるの』 って。
『はづきちゃんは優しすぎるだけ。でも、あなたの力強い意思は、私ちゃんと理解してるわよ』 って。」

「はづき...ちゃん....」
「.....嬉しかったわ。
 すごく嬉しかった.....ちゃんと見てくれているんだって....おんぷちゃん......私達も....あなたを見ているのよ.....
 感じているのよ..... 辛い事や悲しいこと..... どれみちゃんと同じ様にあなたを理解して.....同じ時間を過ごしているのよ....
 だから.....もう.....あの時と同じ....辛さを....私達に味あわせたり...しないで.....お願い.....おんぷちゃん....」

「....はづき...ちゃん...」

「おんぷチャン....ワタシのこと励ましてくれたことがあったよネ....
 ハナちゃんのお世話で間違ったことしちゃッて....ハナちゃんがおなか壊しちゃッた時.......キビシク...だけど....
 とッても優しく....励ましてくれたよネ....モモ....とっても嬉しかッた.....あの時....やっと理解できたノ....」

「...モモ....ちゃん...」
「『おんぷチャンてクールなのね』 って言っちゃった時に見た.....泣き出しそうな顔してたおんぷチャンの気持チと....
 おんぷチャンの暖かさと.....優しさが.........
 ワタシ達しか知ラない素顔のおんぷチャン.....ワタシ達しか知ラない.....とってもチャーミングで....キュートな女の子.....
 そんな大好きナおんぷチャンが.....モモ達と同じ時間を過ごせなくなるなんて....イヤ...
 逢えない悲しさは.....死ぬほど辛いもの....だけど....間に合ッて.....本当に....良かッた....」

「どんな気持ちでおんぷちゃんが....どれみちゃんの為に禁断魔法使うたんか....判らいでもない....
 けどな...おんぷちゃんがどれみちゃんの事思うとるように....あたしらもおんぷちゃんのこと....思うてんねんで....
 あたしらの事も思うてくれてんねやったら.....もう二度とこないなこと.....せんといて....」

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

          同じ時間に二度と会えなくなるなんて、絶対に!

                     絶対に!

          イヤ〜〜〜〜―――――――――――!!!

      (お願いやから!) (お願いだから!) (ワタシ達の願いよ!)


             ―――――とどいて!!!―――――

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「.....あ..の声...あ!...あいちゃ....ん...」

  おんぷの頬をそっと撫でるあいこ

「痛かったやろ.....ほっぺた....堪忍な....おんぷちゃん....」
「....お帰りなさい....おんぷちゃん.....」
「ワタシ達の大好きナ.....おんぷチャン....」

  あいこ はづき ももこの瞳から....涙がこぼれ落ちた。
  あいこは優しく....慈しむ様に...包み込む様にそっと.....おんぷの身体を抱きしめて....囁いた。
  それを見て....はづきと.....ももこも....優しく話しかける。

「もう....ええんよ....あたしらが来たから.....」
「辛い事や悲しいこと....あなただけに背負い込ませたりなんか....させない....」
「だかラ....何があッたのか....話して....おんぷチャン.....」

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(精密検査の結果....悪性の脳腫瘍が発見され....もう手の施し様が無いまでに・・・)
(しかし現代医学なら、助かる手術の方法があるでしょう! いくらなんでも、あんまりでしょうが!)
(・・先ほども申しましたが、何度か嘔吐や頭痛があったはずです)
(よくあるケースですが、どうということは無いだろうと、だれにも何も言わない事がほとんどなんです)
(・・・もう、手術では、現代の医学では....助かる見込みが・・)
(・・・じゃあ....諦めろと....どれ・・・)
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「....うっ...うっく....わた...し.....わたしぃ〜〜....ぅわぁ〜〜〜〜ん!!」

  悩み、死にも等しい禁呪を唱えたおんぷの心は、あいこ はづき ももこの心に、受け止められた。
  愛する者がいて、その者を助けたい思い....愛される者がいて、その者の心を助けたい思い....

  二つの心は一つになろうとしていた。

  あいこの胸で泣きじゃくるおんぷ。

  優しくその背をさするあいこ。
  おんぷの手をそっと握るはづき。
  いとおしくおんぷの髪を撫でるももこ。

  三人は共に、暖かな涙を流していた。

  やがて、おんぷの口から....その胸中の苦悩と絶望が語られはじめた。



     ♪     ♪     ♪     ♪     ♪



「・・・う...そや.....うそ....やろ・・・」
「どれみ....ちゃんが....どれみちゃんが.....」
「....脳腫瘍だなん....テ....」

  糸の切れたマリオネットのような.....性も根も尽き果てた表情のおんぷが語った.....残酷な....言葉....
  どれみの父、渓介と、主治医の、絶望的な会話....
  いつ絶たれるかもしれない....命のともし火....
  少女達には....あまりにも酷で.....あまりにも.....惨い話であった.....

「ほんなことが....ほんなことが! 嘘や! 聞き間違いやあらへんの!!
 どれみちゃんのお父さんとお医者の先生が、ほんなコト言う訳あらへんやん!!!」

「・・・・聞いた...もの...私....この耳で.....」

  半ばうわごとの様に....力無く呟くおんぷ.....それが...今の彼女には精一杯の言葉だった。

「・・ヤメテ....あいチャン....おんぷチャンは....禁断魔法まで使っちゃッたんだョ....」
「・・・せやかて...せやかて.....なんで.....」

「まだ....手立てが無い訳じゃ....無いわ」

「・・・どういう.....こ..と...?」

  あいことももこの会話に、はづきが静止をかける様に呟いた。
  あいこに肩を抱かれたおんぷが、力無く、しかしはっきりとした意思ではづきを見つめ、尋ねる。

「現代の医学で治せない....人間の医者が治せなくても....魔女の医者なら....魔女の医学なら.....
 ひょっとしたら.....何か....開く事が出来る道が....有るかも...知れないわ....」

「! マジョハート・・そうや、その手がまだ残ってんねや!」
「! そうョ! マジョハート先生がいたじャなイ!」
「! あ...」



  マジョハート



  かつて人と共に時を過ごし、その優れた薬学、医学知識で人々を救った権威ある魔女の名医。
  しかし、時の流れに人間が見せた業と、罪深さに失意し、人との共存より退いた、悲劇の魔女。

  だが、どれみ達はそんな彼女に一目置かれる人間の少女であった。

「だけどみんな....マジョハート先生でも万能の神様じゃないから....
 それだけは....それだけは....心に....留めておきましょう....」

  後は無い。
  マジョハートは最後の希望であり、しかし、真の絶望を伝えるやも知れぬ存在でもあった。



「だから....もう一度...確かめましょう?   ね?  おんぷちゃん.....」
「確かめ...る...?」
「.....会いに....行くのネ...」
「どれみちゃんのお父さんとこに.....」

「面会時間は九時ぐらいまでだった筈....まだ...間に合うわ....」
「...でも....」
「あたしらは...ちゃんと知っとかなあかんねん....それが...ほんまの事か.....」
「それに....もしかしたラ....もしかしたらおんぷチャンの思い違いかも...知れナイし....」

  おんぷが会話を聞いた事実は有れど、話の真偽は未認であった。
  どれみの父、渓介に真偽の程を伺う......彼女達に残された....もう一つの...僅かな希望であった。
  しかし、ここではづきは二手に分かれる提案を出した。

  真偽の確認と、マジョハートへの謁見および、嘆願である。

  ももことはづきがマジョハートへの謁見に、
  あいことおんぷが渓介に真偽の確認を、それぞれ早急に行なう事になった。
  
「ほな...速攻行ってくるさかい...二人とも頼むで....」
「・・・おね...がいね....」
  精神力の尽きたおんぷを、ほうきの後ろに乗せたあいこは、そう言い残し夜空に消えていった。

「・・・ワタシ達も行こう、はづきチャン.....」
「・・・・ええ...」
  呼び出したほうきに跨り、ももことはづきが夜空に舞う。

  人に気付かれぬほどの高度を取ると、ほうきに乗った二人はMAHO堂を目指すべく
  月の光を浴びながら、夜空を駆けぬけてゆく。
  先を飛ぶももこが、はづきに話しかける。

「何とか間に合いそうだネ、はづきチャン」―――――「・・・そうね」

「....ダケド、はづきチャンすごいわ。
 マジョハート先生のこと思い出すだけじャなくて、こんな手立てまで考えられるんだモノ!」
「・・・そう...ね」
「?・・・・はづき....チャン?」―――――「お願い...振り向かないで....」
「!  ゴ、ゴメンナサイ...」―――――「・・・・」

  ももこは即座に理解した....はづきが泣いているのを.....




  お願い.....

  どれみちゃん.....

  どれみちゃんの.....

  どれみちゃんの命のともし火を.....  消す事の無い手立てを.....








        ―――――――――― 教えて......マジョハート先生...... ――――――――――








           ――――――――――(ぽっぷの 気持ち)――――――――――


「お母さん....」

「あら! ぽっぷ、起きちゃったの」「お姉ちゃん.....」
「うん? どうしたの.....」

「お姉ちゃん、しんだりなんか....死んじゃったりなんか...しないよね!」
「....どうしたの....急にそんな事...」 「ゆめ....見たんだもん!」
「夢....どんな夢?」


「....おねえちゃんが、おっきなカマ持った人と行っちゃうんだ....
 あたし、『待って!』って言ったんだよ! 『行っちゃやだ! そんな人と行っちゃだめだよ!!』って....
 おねえちゃん、さみしそうに笑ってこう言ったんだもん!!」


              『ぽっぷ...元気でね....長生きするんだよ....』


「そう言っておねえちゃん....おねえちゃん行っちゃったんだもん!!!
 あたし『待って!!!』って追いかけたんだもん!!!!  走ったんだもん!!!!
『そんなのやだ!!! おいてかないで!!!!』 って叫んだもん!!!!!」
「.....ぽっぷ....」

「いっしょうけんめい走ったもん!!!!!
 でも追いつけなくて、気が付いたらまっくらで!!!!!
   ・・・髪かざりが...髪かざりが落ちてるだけなんだもん!!!!!」
「....ぽっぷ」

「いっしょうけんめい呼んだもん....でも....でも、おねえちゃんいなくなっちゃったんだもん!!!!!」
「ぽっぷ!!」


  ....半ば半狂乱で悲しい夢の事を話す次女ぽっぷを胸に抱き寄せ、
  涙が零れ落ちる頬に口付けをし、落ちつかせる母はるか。


「今日....元気なお姉ちゃんに会ったでしょ? 大丈夫よ、もうすぐ退院するから....
 ちゃんとお祝いしてあげて、素敵な笑顔をお姉ちゃんに見せてあげなさい....ね、ぽっぷ」
「おかあ..(ひっく)...うわぁ〜〜ん」





           ――――――――――(ハナの 気持ち)――――――――――



              うわぁ〜〜〜〜ん  ひう〜〜〜ぅぇえ〜〜〜ん



「どうしたんじゃ、ハナや!」 「恐い夢でも見たの?!」 「トトッ?!」
「(うっく)ハナちゃ...どれみ...(ひっく)いなくなるのやだ(ひっく)....」

「話して....くれんかのう」 「どんな夢だったの....」 「トトットトォ...」
「ハナちゃんが(ひっく)....」

  悲しい夢の内容は、
  赤子の姿をしたハナをあやしてくれているどれみの側に、大きな鎌を持った黒い影が現れ
  その影と共にどれみがハナの側から姿を消すと言うもので、
  去り際にどれみがハナに言った言葉まで、ぽっぷとほぼ同じ物であった。

「(どれみいっちゃやだ!!!)って...ハナちゃん(ひっく)言ったんだよ...どれみ....
 ハナちゃん置いて行っちゃったんだよ!」


            『ハナちゃん...元気でね....立派な女王様になるんだよ....』

「ハナちゃん、どれみがいなくなったら女王様になんかなりたくないよぉ....(うっく、ひっく)」
「ハナや、心配せんでもどれみがいなくなる筈無かろう!」 
「今日どれみに会ったら、とっても元気だったんでしょう?」
「トトトットト!」
「(ぐしゅぐしゅ)うん....」
「安心せい、ただの夢じゃ!」 「そうよ! ハナちゃんの側からどれみが居なくなる訳無いじゃない!」
「ほんとにぃ....ぐす....ほんとにほんとぉ...?」

「本当じゃて! さあ...わしらが側に居てやるから、もう一度眠っておくんじゃ」
「大丈夫よ! 私達が恐い夢なんか追い払って、ハナちゃんが楽しい夢を見れる様にしてあげる」
「トト トト !」
「....うん...ありがと....マジョリカ...ララ..トト」

  ・
  ・
  ・


  まま.....どれみ....ママ....

    ずっと....

     ずっと....

      ハナちゃんの....


       ハナちゃんのそばに.....

        ハナちゃんの....そばに...いてね.....


         ぎゅって....抱きしめて...ね.....

          あたま....なでなで....して...ね...





            まま.....どれみ....ママ....      大好き...な....ママ....




  病院の病室

「....それじゃあどれみ、お父さん帰るからな...」
「帰っちゃうん...だ....」
「安心しなさい、明日一番に会いに来るから」
「あはっ、誰かさんとおんなじこと言ってる」
「誰かさんって?」
「ひみつぅ〜〜!
 ねぇ、お父さん...今日最後のお願い....聞いて...」

  そう言ってどれみは目を瞑り、父渓介に頬を差し出す。
  溜息混じりの笑顔で渓介はそっと、愛娘どれみの頬に口付けをした。

「ありがと....お母さんにはナイショにしといてあげるね...」
「ああ、そうしといてくれ。やきもちやきだからな、お母さんは」
  お互い くすっ と笑いあった。
  渓介はそっと扉を開き『じゃあな』と言い残して病室を後にした。
「ありがと...お父さん...」(やっぱりアレ...夢じゃ...無かったんだ..)

  ・
  ・

「あ、君達・・どうしたんだい? こんな時間に?」
  病院の夜間出入り口を出た渓介の目に飛び込んできたのは、二人の少女・・・
  固い決意の顔をしたあいこと、疲弊し生気の抜けた顔をしたおんぷであった。

「・・・お願いです! あたしらにおしえて・・教えて下さい!」
「・・・・お願い・・・します・・・・」
「?・・何を・・だい? それに、おんぷちゃん、・・何かあったのか?!」
「もう・・もうハッキリ言います! どれみちゃん、どれみちゃんが脳腫瘍ゆうんは・・ほんまですか!!」
「な!? なんだって?? 一体どう言う事なんだいそれは!?」
「あたしらが聞いてるんです! どれみちゃんのお父さん、ほんまの事ゆうて下さい!」

「ちょ ちょっと待ってくれ!」 「わたし.....聞いちゃったんです...それに...(見ちゃったもの...あのノート...)」

  事の経緯(いきさつ)を素早く手短に、あいこは渓介に話し始めたが、すぐに・・

「悪かった! あの話を聞いてしまわれてたとは。誤解だよ、誤解!」
「だって、だってどう聞いても!」
「分かった・・君の、おんぷちゃんの聞かなかった所を話そう」
(・・・じゃあ....諦めろと....どれだけ....どれだけの思いで...
 ....その子の親御さんは...その子を見守っているんでしょうね....)

「そ・・・それって?!」
「別の子のお話だよ・・たまたま主治医の先生とそういう話になってね・・・まさかおんぷちゃんが聞いていたとはな・・」
「かん....ちがい....なんや・・・やっぱり勘違いなんやん!! おんぷちゃんの、おんぷちゃんのあほぉ―――!!」
「悪かったね、余計な気をつかわ...? ど、どうしたんだい!!」
「あ、あはっ・・・なんでも....ぐすっ...なんでも...な   ないんです」
「あほぉ・・・ぐしゅ....おんぷちゃんの....あほぉ....」

  勘違い ただ、それだけの事  しかし、最高最良の答え
  安堵と疲労感、そしてあまりにも恥ずかしい思い込みに、おんぷは顔を両手で覆い隠していた。
  
「(ぐすっ)有り難うございましたぁ―――! ほなあたしらこれで帰ります――!
   どれみちゃんに宜しゅう言うとってください〜〜〜!!」
「ご、ごめんなさい! (ぐすん)本当にごめんなさい、わたし・・・きゃっ!」
  泣笑い顔のあいこが、大げさに渓介にお辞儀をしながらおんぷを引っ張って去ってしまった。
  後には・・呆然とする渓介だけが残されていた・・・



「こぉの! おんぷちゃんのどあほぉ〜〜!」――「もぉ〜〜ごめんなさいって言ってるじゃない!!」
「い〜〜〜や、ゆるさへん! こんなオオカミ少女には後であたしがお仕置きしたるねん!」
「いやよ!捕まえれるものなら捕まえてみなさいよ!(えへっ♪)」(ばひゅん)〜〜〜〜「なんやてぇ! コラ待てぇ!」(ばひゅん)

  勘違いだった  間抜けと言えば間抜ではあるが、
  どれだけみんなの心にどれみの存在が大きいか、思い知らされた訳である。
  二人はふざけ合いながらも、最大スピードでほうきを飛ばし、マジョハートの元に居るであろうはづきとももこの元に急いでいた。

  ・
  ・
  ・

「今日はあなた達だけなのですね。どれみちゃん達と一緒では無いのですか・・」
    「確かに珍しいですな・・・ハナの事以外で私の元に謁見を願うとは。後の者はどうした?」
  謁見の間では、女王とマジョリン、そしてマジョハートと彼女達を護る衛兵魔女が、二人を出迎えていた。

「・・・その事でお話があって...参りました」
「どれみチャンの・・・どれみチャンの事ナンです!」
「何があった? 話してみろ!」
  沈んだ面持ちのはづきと、真剣なももこの顔を見れば嫌でも只事でないのが分かる。
  マジョハートは急かした。
  そこに急な慌ただしさが加わる。
「お願いです! マジョハート先生に謁見を願います!」
「先にももちゃんとはづきちゃんが来とるはずです!」
「ちょっと、困ります! ア、ちょっと!」
  顔見知りの衛兵魔女の静止を振りきって、おんぷとあいこが謁見の場に現れた。

「おんぷちゃん!」 「あいチャン!」
「違うの!  あの....その・・・」 「勘違いなんや! おんぷちゃんの勘違いなんや!!」
「he??」 「え??!!」

  ええエェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜――――――――――――――――――!!!!

  ももことはづきの絶叫がこだまする中、
  マジョリンとマジョハートは訝しげな表情で、あいことおんぷに一瞥を向ける。
  その迫力に『うっ・・・』とした二人だったものの、不快な思いをされる前に急いで詳細な説明を始めた。



「・・・そうだったのか・・まあ状況からして、勘違いをしても仕方が無いだろう」
「みんな本当にどれみちゃんが好きなのですね」
「ですが女王様・・・いくら想いの強さから行なったとはいえ、おんぷちゃんの行動は、」
「ええ、すでにおんぷちゃんには罰を与えています」
「わ、私にですか??」
「そうです。魔法を使った後、おんぷちゃんは意識を失いましたね?」「は...はい」
「それが罰です」 「ほ、ほなあたしらの」「私達の」「マジカルステージは意味無かッたノ?」
「いいえ・・・あなた達のマジカルステージは成功しました」
  女王はある程度お見通しだったようで、
  おんぷがあいこ達に使った妨害魔法の魔力を感知した時点で様子を見ていたらしく、
  マジカルステージの魔力に、自身の魔力をほんの少し被せておんぷの気を失わせたらしい。

「どれみちゃんの為とはいえ、おんぷちゃん・・あなたのとった行動は決して良いとは言えません」
「・・・はい」
  おんぷのみを自身の前に呼び寄せ、静かに語る女王。その身を傅(かしず)いて、おんぷは頭(こうべ)を垂れた。
  女王の左右側に控えるマジョハートとマジョリンは、静してそれを見守っている。
  おんぷのやや後ろでは、やはりあいこ達が女王の前に傅いていた。
「おんぷちゃんどうなるのかしら・・」「分かれへんけど・・」「お尻ペンペン100タタキとか・・」

「・・おんぷちゃん.....あなたの側には、いつもあなたを想い、見守ってくれている人達がいるのを忘れてはいけません」
「・・・・はい...」
「本当に...良かったですね、おんぷちゃん」
「え?」
「あなたの事をいつも心から想ってくれている、あいこちゃん、はづきちゃん、ももこちゃんが...あなたの大親友で」
「!は、はいっ!」
  ベールの下ではおそらく微笑んでいるであろう、女王の優しい声。その言葉にはずんだ声で答えるおんぷ。
  謁見の場にいた全員が微笑んでいる。マジョリン、マジョハート、衛兵魔女達、あいこ、はづき、ももこ。
  おんぷがあいこ達の方に向き『てへっ♪』と照れ臭そうに笑い、それに答える様に、あいこ、はづき、ももこが笑う。
  マジョハートが呆れた様に、しかし優しく彼女達に微笑を向け、
「まったく・・私に会いに来たと思えばこの騒ぎとはな。だから、こう言われるんだ」

「ええ、判ってます!」 「そやから頑張ってるんです!」 「ワタシ達!」
「それに、案外気に入ってたりするし、その呼ばれ方。そうよね、みんな!」

  そう言っておんぷは、あいこ達に答えを求めた。そして全員が微笑んでこたえた言葉。


                  『わたしたちはおジャ魔女です!』



  結局 私、瀬川おんぷの早とちりと思い込みだったって訳....何かバカみたい(赤)

  その後、女王様達と先々代の女王様のことについて話をしたの。
  何だか....今回の事で本当に身に染みた感じ....トゥルビヨン女王様の悲しみがどれだけ深いのか。
  だから、みんなで改めて誓ったわ...辛い悲しみを早く癒してあげようねって。

  女王様達にお別れを告げてMAHO堂に戻ると、
  マジョリカとララにトト、それにハナちゃんと、ぽっぷちゃんまで待っててビックリしちゃったわ。
 『遅かったのぉ、取り越し苦労だったじゃろうが.....ん?』 なんて優しい顔で言われちゃって。
  お見通しだったんだ  あはは....(恥ずかしいよ〜〜)

  とっても悲しい夢を見ちゃったハナちゃんとぽっぷちゃんに 『どれみ(お姉ちゃん)大丈夫?』 そう聞かれたから
  みんな笑顔で 『だ〜いじょうぶ! もうすぐ退院よ』 って言ってあげたら、やっと安心してくれたみたい。
  でも....私...あいちゃん達が止めてくれなかったらどうなってたのかしら?....
  ...ホント、恥ずかしい....こんな時どれみちゃんだったらなんて言ってくれるのかな?

 (もぉ〜ダメじゃん、おんぷちゃん! あわてんぼさんは、あたしだけで十分でしょ?)  プッ あはは どれみちゃんらしいわ

「ど、どうしたのおんぷちゃん?!」
「きゅうに吹き出して、どないしたん!?」
「ナニナニ、何か面白いモノでもみたの〜?」
「おんぷちゃんヘンだよぉ?!」
「おんぷ へ〜〜ん!」

「へ? え?! な、なに? わ、わたし笑ってた?!」


                わらってたよ〜〜〜〜 うふふふふあはははは〜〜〜〜〜


  私の涙ではじまって、みんなの笑顔と笑い声で幕を閉じた....ほんの数時間の騒動
  ....何も失わなかったけど、失いたくない物を改めて知った数時間。
  みんながくれた、私への想い。 私がコッソリあげちゃった、どれみちゃんへの想い。
    全部、わたしの宝物。 絶対に失いたくない、絶対に失わない永遠のたからもの。
  なんにも無かったからこそ、改めて分かったの、みんな...みんなありがとう! みんな、みんな大好きよ!
 (あ、でも一番はその...あの....ここじゃ言えないわよね ヤッパリ)

「もぉ〜 そんなに笑わなくてもイイじゃな〜い!」

「ぷ、なんやのその顔」(笑)
「うふふ なんだか」(笑)
「どれみチャンみたい」(笑)

  こうして・・・私達の本当に長い一日は終っていったの。



  そしてどれみちゃんの退院の日。

  MAHO堂のみんなで身の回りのお手伝いをして、先生や看護婦さん達にお礼を言った私達。
  加害者(本意じゃない言い方だけど・・)さんも、謝罪を兼ねた退院のお祝いに来てくれて
  どれみちゃん本人と、どれみちゃんのお父さんお母さんとお話していたわ。
  お互い頭を下げっぱなし....でも...誠意ある心の綺麗な人で....ほんと...良かった。

「本当に、後からお伺いしても宜しいんですか?」
「どれみちゃんにご無理が無いようでしたら、是非!」

  今、お話してるのはどれみちゃんのお母さんと、リリカおばあさん。
    マジョリカも機転が利くわね。 リリカおばあさんに来てもらってるんだもの。
  それに、どれみちゃんの退院祝いをMAHO堂で開いてもいいなんて...しかもよ! クラスメイトまで呼んでいいなんて・・・

  なんだかんだ言ってマジョリカも、本当にどれみちゃんの事思ってくれてるんだぁ・・・♪

「それじゃあどれみちゃんの側には、おんぷちゃんがついててあげてね」
「あたしら先に行って準備してるさかい!」
「あとはミンナを招待するだけだヨ!」

  えへっ ありがとうみんな、私達この日のために一生懸命だったものね。

「それじゃ、みんなよろしくね。 私とどれみちゃんはゆっくり行くから♪ ね、どれみちゃん♪」
「うんっ! ありがとみんな! ありがとおんぷちゃん!」

  ・
  ・
  ・



  退院、おめでと――――♪♪♪  わいわい がやがや きゃ〜きゃ〜


  すごぉい! 一組 二組....全員来てるわ!

「どれみちゃん、本当に退院おめでとう! はい、これ!」「はい! どれみちゃん、お花!」「実はね、このまえ」
「春風、もうイイのか? 無理すんなよ!」 「ほんとに元気になって良かったよ春風さん!」「ホントホント!」
「当たり前じゃない! どれみちゃんは一組の太陽なんだから!」「ホント! 誰かさんなんてさ」「うんうん!」
「まぁ春風さんのことですもの、わたくし心配していませんでしたけど」「うそつけぇ!玉木!」「なんですってぇ!」
「みんな、写真写すから春風さんの周りに集まって!」「エッヘン、ハナちゃんどれみのとなりィ!」「あははは!」

  みんな思い思いでどれみちゃんと話してる・・・こんなに違うんだ・・どれみちゃんが居るってだけで・・・
  どれみちゃんもみんなも、本当に嬉しそう・・よかった、本当に良かった・・ただの勘違いで(赤)
  あれ? 矢田君と長谷部君、小竹君捕まえて何してるのかしら・・・あ! はっは〜ん(てへ♪)
  仕方ない、今日はおんぷ、キューピッドサービスしちゃいま〜〜す!

「い、いいって! よけいなこと」「じゃねえだろ!」「...早く渡しちまえよ」  「なにしてんの♪」
「のわっ!! せ瀬川?!」「あ! プレゼントなんだ どれみちゃんに」「さっさと渡しゃいいのによ」「...照れてんだよ、こいつ」
「いいじゃない! 渡せば?!」「ゃ...だ、だってよ...」「ほらほら! ぐずぐずしないの!」「うわっとと、ちょ!」

「・・引っ張ってっちまったぞ・・」「....すげえな..瀬川って」

  はづきちゃん達がさり気なくどれみちゃんの側に行き易いようにしてくれてる・・・さすが大親友♪

「小竹君・・行ってあげて」「あ、ああ」・・・「あ、あのさど...どれみ」「あ、小竹」「よ...よかったな、早く退院できて...」
「ほら...これ...」「くれんの?!」「つつ...つまんねぇもんだけどよ・・」「ううん! 小竹...ありがとネ」

  うん...いい感じ・・・
     本当に素敵な日 去年のどれみちゃんのお誕生会の時以上だわ みんなの想いが本当に伝わってくる・・・
  さて...いよいよどれみちゃんお待ちかねの物が出てくるはずね....私もお手伝いに行かなきゃ!

   ・
   ・


「うっわぁ―――! ステ〜〜キじゃ〜〜〜ん!!」
「去年の時みたいに食べれない事はないと思うわよ」(くすっ)
「はづきちゃん家がスポンサーで人数分のステーキがあんのやで!」
「今日こそどれみチャン ステーキ食べられるわョ!」
「よかったわね♪ どれみちゃん♪」

「うんうんっ(涙)あたしゃ、この日をどんっ〜なに夢見たことか!」 「ホント大げさなんだからお姉ちゃんはァ」(くす)

「それじゃあ、春風の退院を祝ってみんなで頂こうか」『はいっ!』『いただきま〜〜す!!』
  関先生の声でみんなが食べ始めたんだけど...どれみちゃん...どうして食べないのかしら??

「?どうしたの どれみちゃんうるうるしちゃって? 早く食べた方が美味しいわよ?!」
「もうチョットだけ、この余韻に浸らせてよぉ、ああ・・あたしって世界一幸せな美少女だァ〜〜〜」(うるうる)
「はよ食べた方がエエでぇ」「おいしいわよ、どれみちゃん」「ウンウン! モモもう半分食べちゃったョ!」

「うう〜〜・・そいじゃあ、いっただきまぁ〜〜〜す!」 ズルン、べチャ!!
  「あ!」「あ!!」「Oh!!!」「あ!!!!」

  落ちたァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!


  ・・・・ま、まぁ....そんなこんなで、どれみちゃんの退院祝いは幕を閉じたの。
  とっても賑やかで、とっても楽しくて、とってもあったかくって、とっても幸せな気持ちになれた、どれみちゃんの退院祝い。
  みんなが帰っちゃって、残ったのは私達だけ さてと....ごめんねどれみちゃん・・(てへ)

「ぷ〜〜るるんぷるん ふぁ〜みふぁ〜〜みふぁ〜〜 どれみちゃんの『ノート』よ、出てきて!」

  ・
  ・



     ♪     ♪     ♪     ♪     ♪



「ドコ行ってたノ、おんぷチャン?」 「あら?おんぷちゃん、その手に持ってるの何?」 「ノートやん?!」
「あ〜――っ!それあたしのノー」「ごめんなさいどれみちゃん!でもみんなにみてもらわないと、その私の、あの」

「コレが!」「おんぷちゃんの!」「最大の誤解のもとやな!」(ぱしっ) 素早くあいちゃんがノートを取っちゃった。
「お ん ぷ ちゃ〜〜〜〜ん!!」(ぷんすかプ――!)

  ああ....ごめんなさいどれみちゃん

「・・・コレ...」 「おんぷちゃんじゃ無くっても....」 「...誤解するて....」
「どれみちゃんてある意味...」 「こういう文才に....」 「長けてたノネ....」

「あぁ〜〜〜ん!もうおんぷちゃんのいじわるぅ〜〜!」 「...取りあえズ!」「説明を!」「してもらおか、どれみちゃん!」


  えぇえ〜〜〜〜〜――――――――!! ただの詩ぃ〜〜〜――――――!!!


「そ、そうだよぉ(照)みんながさぁ、あたしの為にお見舞いに来てくれんのがうれしくって書いてたら....こんなんなっちゃって...
 自分で読み返したら『これってなんか・・まずいやねぇ』って思っちゃってさぁ...だから....読まれたくなかったんだよ。
 それなのにさ....やっぱおんぷちゃん、あたしが寝てる時見てたんだね」(じとぉ〜〜〜〜)
「や、あははは....ごめんなさい・・・」
「まあ、そない言わんと、どれみちゃん」 「そうよ、おんぷちゃんはね」 「どれみチャンの為に必死だったんだョ」
「必死?? なに? なにがあったのさ?!」

「あぁあ! そ、そんなのどうだっていいじゃない、どれみちゃん!
 私達はどれみちゃんが元気になってくれただけで、それだけで嬉しいんだから、ね、ねっみんな!?」
「あ〜〜はいはい、そういうことにしとこか」 「くすっ、そうね。そういうことで」 「一件落着ダヨ!」

「それじゃあたし、全然分かんないじゃん!」

「どぉれみぃ〜〜〜!!」(だきっ!)
「うわっと! ハナちゃん?! ど、どうしたの?! どこいってたのさ、あ、ぽっぷも」
「・・はい、お姉ちゃん。あたしとハナちゃんから」
「ルピナスの花....あんた達、あたしの為にわざわざ・・・ありがとっ♪ ぽっぷ! ハナちゃん!」(ぎゅっ)
「ひゃうっ! お、おねえちゃんちょっと!」 「うわぁ〜い! どれみ好き好き〜〜〜♪」



 (これでひとまず...落ち付いたという所じゃの)・・・(そうね、マジョリカも結構心配だったんでしょ)
 (・・さぁのう....自分たちで騒いどっただけじゃろうが)・・
 (よく言うズラ! 水晶玉であいつ等の様子を真剣な顔で追っていたのは何処の誰ズラ! あ〜ン?)
 (や! やかましいワイ....)・・(うふふ、マジョリカったら)



  色々とあった出来事......過ぎてしまえば唯の笑い話.....でも....それも何も無かったから言える事...
  私達はこれから......小学生として残りの日々を.....先々代の女王様の悲しみを解き放ち....ハナちゃんをサポートして...
  魔女になる為に......沢山の思い出を育みながら.....過ごして行くんだなって....思います...

                           :
                           :
                           :
                           :









                           私達は


                          卒業式を終え


                  それぞれの時に向かって羽ばたきます



                           そして


                      その日がやって来ました




  あいちゃん、私、ももちゃんは、それぞれの思いを胸に秘めて...この美空町から...どれみちゃんの元から離れて行きます。
  長かった様で....ものすごく短かった約4年間...この美空町で作った思い出....どれみちゃん達と作った思い出.....
  魔女にはならなかったけど....ハナちゃんと一緒の時を過ごす事を....択ばなかったけれど....でも.....
  いつまでも輝きを失わない宝物として....この胸に大切にしまって....私は少しの間....美空町からお別れします....


「ももちゃん....行っちゃったね・・・」
「すぐじゃないけど....会えるわよ...どれみちゃん....エアメールだって...国際電話だってあるんだもの・・・ね....」
「・・・うん....」
「ほらぁ、そんな顔しないで! この後あいちゃんお見送りするんでしょ....ふぁいと♪」
「...ぁ..あはっ・・・ありがとお.....おんぷちゃん」

  ももちゃんはアメリカに行っちゃいました。
  さちこちゃんやべス、メアリーにいっぱいお話するんだってニコニコしてた....
  目が赤かったのはやっぱりナイショの方がイイのかな・・・ももちゃん、私ももちゃんのパティシエの夢、応援してるわね。
  だから....ももちゃんも私達や、どれみちゃんを....応援してね....


  コンコン

「入ってもいいかい、おんぷ?」 「うん! いいわよ♪」

  カチャ

「おんぷ....準備はできたかい」「あとすこしだけ待って...パパ」「そうか....ママも下で待っているからね」「は〜い」
「・・どれみちゃん」「あ、は、はい!」「おんぷと仲良くしてくれて...本当に有り難う」
「そんな! 当たり前です! だって...大親友...だもの....」「どれみちゃん....」  「・・それじゃあ下で、待っているよ」

  パパはすごく温かい目で私達を見てくれて....そっと....そっと部屋の扉を閉めて、先に降りていっちゃった・・・

  荷物の整理も終って後は降りるだけ。だけど私とどれみちゃんは.....ただベッドに腰掛けて......
  このまま時間が....止まればいいな....ぎゅっと目を閉じれば、今までの事が昨日のように思い浮かんでくる....
  どれみちゃんがケガしちゃった時のドタバタ騒ぎも....まるで昨日のことみたい....

  あの時の私の気持ちは...今も.....ずっと変わらない....


  そういえば....魔法で男の子っぽい格好になった時もあったなぁ.....実はあの格好でどれみちゃんと遊んだ(デートした)のよ!
 




  ・・・・・なんてこと....無かったな〜…


「…おんぷちゃん....」 「! はい?!」 「ごめんっ!」 「え? んぅ?!」

 (え?! な、なに? なに! うそ、うそ〜〜〜!? わた...わたしいま、今どれみちゃんと、どれみちゃんと!)





「・・・・」  「・・・・」
 
「.... ... ..  ごめんね ... おんぷちゃん....」
「.....どれみちゃん…どうして....」
「....だって....ずるいでしょ....あたしだけなんて...さ....だからおかえしだよ えへへ」(赤)
「あ!」(赤〜〜〜〜)

  知って....たんだ…

「あたし女の子だから.....けど! おんぷちゃんの気持ちが嬉しいし! あたしもおんぷちゃんのこと! 大 大 大 大好きだよ!」
「どれみちゃ....どれ....みty....n...」

  や...やだ....明るく笑って....わらって....お別れ...おわ......

「泣かないで…おんぷちゃん.....大好きな人が泣いてると....あたしまで泣きそうになっちゃう....でも泣かないよ...あたし」

  どれみ.....ちゃ...ん....
  
「あたしはおんぷちゃんの笑ってる顔が....元気な姿が...大好きだよ  だからさ....あたしの顔見て.....いっしょに笑おう...」




  .....そう言って...私に微笑んでくれたどれみちゃんの瞳にも....涙が浮かんでた....

  .....クスン...

  .....あはっ....どれみちゃんらしい.....

                              ・
                              ・
                              ・


「そいじゃあ あたしが写すからね!」 「大丈夫なのかどれみ?!」 「お父さんに写してもらった方がいいんじゃないの?」
「しっつれいな! あたしが写してこそ意味あんだかんね!」 「分かった分かった!」 「もう...どれみったら」



                そいじゃ〜〜写しまぁ〜〜す! はい、チ〜〜〜ズ!!


                           “パシャッ”





 
  私と、パパ、ママは、住み慣れた美空の町を.....少しの間だけ離れます....でも、すぐ会えるわ....どれみちゃん...

  電話だっていっぱいするし....お仕事がオフの時は、絶対にこっちに戻ってくるから.....

  その時は....いっぱい....お話して....一緒の時間を....いっぱい....楽しみましょうね.....



「それじゃあね....どれみちゃん....」

「うん....”いってらっしゃい”....おんぷちゃん...写真...すぐ送るからね!」


  こうして、美空町と....
  マジョリカやララ達.....
  ハナちゃん....ももちゃん...あいちゃん...はづきちゃん...どれみちゃんといっしょに過ごせた時間と....お別れしました。


  だけど、もう寂しくないわ。

  二度と会えないわけじゃ無いんだし、電話で話だって出来るし....

  私の心には、いつもどれみちゃん達が居てくれるんだもの。
  大好きなみんなが私の心の中で『ふぁいと♪』って励まし続けてくれるんだもの。
  それに....みんなの心にも....いつもわたしは居るの。

  何時か....またみんな....全員集まって....一緒の時間を過ごしましょうね♪

  ・
  ・
  ・
  ・

「.....ちゃん」 「....nぷちゃん」 「...んぷちゃん」 「..おんぷちゃん!」


  …え?! なに? やだ私 寝ちゃってたの?!


「どうしたの? ぼ〜っとしちゃって」


  !ううん、なんでもな・・・え…ぇえ〜〜〜〜〜――――――!???


  ??ど、どういうこと....ここって・・・・



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                   メッセージ もう一つの輪舞 ――エピローグ――



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「本当にどうしたの....やっぱりお仕事の数を減らした方が良くなかった?」

  え、私・・・眠ってて、いま起きたのよね・・でも....どうしてここに…?
  あれ? それに、パパ....パパは何処?!

「ママ! パパ、パパは何処に行ったの! どうして居ないの!」
「なにを言ってるのおんぷちゃん? パパはお仕事でしょ、さぁ、行きましょう。」
「待ってママ! ちょっと待!......ウソ....」

  どうして私.....服が違うの....背も...縮んでる...


  先に車から降りた母、瀬川美保の後を追う時に見た....車のウィンド―に映る自分の姿。
  そこに映っていたのは・・“ 初めて出会った “・・時の自分の姿そのもの。


「...ママ....待って…」
「おんぷちゃん、なるべく早く行ってお話を聞いておかない...と、どうしたの?! 泣いたりなんかして!?」
「....どうし、て...わた...し、ここに..ぃ...いるのぉ....?」

  慌てておんぷの元に駆け寄り、優しく抱きしめる母、美保。

「大丈夫よ!おんぷちゃん!ママがついてるから!ママがあなたを守ってあげる! 大丈夫、おんぷちゃんは恐い夢を見ただけ。
 ママの為に、ママの夢の為に頑張ってくれているおんぷちゃんを、恐い目になんか遭わせたりしないから!
 だから....ね?! もう泣くのはやめましょう.....」
「ゆ...め....?」
「そう、夢よ! 恐いことなんか何も無いわよ! これからはきっと楽しいことが一杯、おんぷちゃんを待っているわ!」


  ゆめ…なんかじゃ.....夢なんかじゃないんだもん....わたしは...私は確かに....あの時...あの時を・・・・・


                             ・
                             ・
                             ・




「それじゃあ、宜しくお願いします。 おんぷちゃん、大丈夫よ!みんなともすぐに仲良くなれるわ!」
「…うん....」
「さあ! 笑って、ママに笑顔を見せて」
「.....うん....うん! ママ、見ていて! わたし、私、きっとすぐにお友達が沢山出来るわ!」
「そうだよ。みんなとっても気持ちの素直な子ばかりだから、楽しく過ごせると思うよ。
 それに、瀬川とすぐに友達になれる、うってつけの子もいるから安心していいからね」

「はい!」

「ん? あ、あたしの顔に何か付いてるかい?!」
「あ、いいえ...その、嬉しくって! 関先生とも...また逢えたんだな、って♪」
「え? あたしと以前会った事が、あったかな?」
「お、おんぷちゃんそんな事、失礼ですよ!」
「そう仰らないで下さい、お母さん。私が忘れてしまっているだけかもしれませんので。...それじゃ、行こうか、瀬川」
「はいっ!」






                   メッセージ もう一つの輪舞


  ・・・ 今、私がこうしてここに居るのは変えようが無い事実 ・・・
  ・・・・ だけど、判ったの....あれは夢なんかじゃないんだって事が ・・・・

  ・・・・・ だって、ポケットの中に今ある物は、間違える事の無い現実 ・・・・・
  ・・・・・・ マジョルカを魔女だって見破ったからこそ、手に入れた現実 ・・・・・・

  ・・・ ここから始まった出会いの現実は、きっと....違う時間の私が見せてくれた....本当のこれから ・・・



「じゃあ、少しの間、待っててくれるかい? 先生が先に入って瀬川の事を紹介するから」
「分かりました!」


  周りの人に合わせて
  器用に生きる人達が沢山いる世の中で

  自分をいつわれず
  不器用に生きる人達だっているわ......


  どっちの生き方が幸せかなんて、今の私には判らないのかもしれない ・・・ だけど


  ・・・・ そんな人達ともう一度出逢って、本当の自分を生きて欲しい ・・・・


  きっと....そんな願いを....違う時間の私が....この時間に生きる私に...
  記憶と経験として....教えてくれたんだなって....思うの....

  私から…私への....メッセージとして…








                   メッセージ もう一つの輪舞 ――ラストワルツ――
  
「それじゃあ入っておいで、瀬川!」
「はいっ!」


  もしも、本当の時を知ることが出来る人がいたら....
  私が受け取ったメッセージは 『唯の空想だよ』 って言うのかもしれない....

  だけど、私は信じたいの....

  だって....それは本当の私の、本当の心....

  私が受け取った、もう一つの私の想い....

  違う世界の、違う時間の私が、あの子達と信愛の輪舞を踊り続けた様に!
  この世界の、この時間の私は、この子達と信愛の輪舞を踊って行くわ!


  ざわざわ おいあれ! チャイドルの瀬川おんぷちゃんだよ! うそ 転校生っておんぷちゃん?! かわい〜!


「ちょっと! あれって、チャイドルの瀬川おんぷちゃんだよ!」
「へぇ〜あれがチャイドルかいな?」
「こ、こっちを笑顔で見ているわ?!」


  そう…もう一人の私が教えてくれた…もう一つの輪舞…

  また....逢えたわね....あいちゃん....はづきちゃん.......どれみ..ちゃん

  もう少しだけ待っててね....私の愛する....私達が愛する娘....ハナちゃん....大好きな...ももちゃん....
  後でお話しましょうね、またお友達になりましょうね♪ 同じ、今日という日に転校してきた....かよこちゃん....


「こんにちは♪ 瀬川おんぷです♪ みんなにお願いがあります。
 私をチャイドルとしてじゃなく、一人の女の子として、見てください!
 普通の女の子として、みんなのお友達にしてください!」


                今、この時間から、私はワルツを奏でるわ!
               そして踊るの!また出逢えた大好きな大親友達と!


                        もう一つの輪舞を!

                  大好きな....大好きなどれみちゃんと踊るの....


  だから、感じててね 私の時間を…私にあんな素敵な時を見せてくれたんだもの…絶対感じてくれるわよね.....


                  もう一人の....違う世界の....違う時間の....私...



     きっとわたし...ううん! ぜったいにわたし、あなたが見せてくれた時以上に幸せになれるわ!

  ありがとう 素敵な 本当に素敵な時を 想いを見せてくれて ・・・ ありがとう ・・・ もう一人のわたし




                    【おジャ魔女どれみ アナザーストーリー】



                    
                        【メッセージ もう一つの輪舞】




                               【完】