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  INDEX:

 T 基本設計
 
  1 建造の流れ
 
  2 船の注文
 
  3 基本性能の確認
  (1)重量(DW)
  (2)復元性
  (3)速 力
  (4)構 造
  (5)配 置
 
  4 終わりに

 U 速力推定法
 
  1 抵 抗
 
  2 自航要素
 
  3 プロペラ設計
 
  4 馬力計算
T 基本設計
  (2)復元性:

船が適切な復元性を有することとは、横方向を考えると船がひっくり返らないことで、縦方向(船長方向)ではひっくり返ることはありませんが、荷物を搭載しても適当な傾斜(トリム)を保てることが基本になります。

横方向の安定性はメタセンタ高さ:GMで評価し、GM>0であれば船はひっくり返りません。実際上は当然ある程度の余裕は持たせて設計を行います。(注3)

さらに風などに基ずく動的復元力を加え考慮します。JG(Japanese Government)では旅客船、旅客フェリーに対してルールを定めています。アメリカ、イギリスでも同様も規則が施行されています。

通常「TYPE SHIP」から計画する場合はまず問題になることはありませんが、コンテナ船などはデッキ上にコンテナを積みますので、重心が高くなり、GMが小さくなり注意を要します。

鉱石運搬船などは、重いものが船底に少しだけ積まれることになり、GMが大きくなりすぎて、これは船の横揺れ固有周期を小さくし、乗り心地が悪くなります。(スティフな船という。客船はこのためGMは小さめにします)このため鉱石運搬船では全部の船倉に積むのではなく、飛び飛びに積む(Alternate Loading)のが普通です。

その他注意を要するのは進水時で、このときはまだエンジンが搭載されていないことが多く、重心が上のほうにあり注意を要します。かつて中小の造船所でしたが、エンジン未搭載での進水時でひっくり返った例もありました。

たて傾斜:トリムは、特に荷物を積まない時の喫水やトリムなど考慮する必要があり、そのため海水を積むためのタンク(バラストタンク)の配置などの計画時に検討し適切なトリムを確保します。(特にタンカー、ばら積み貨物船など往路または復路が積荷なしの場合が普通で、プロペラの作動のためバラストタンクに海水(バラスト)を積み、喫水を確保をします。

                   

   注3: 復元性        


     WL: Water Line(水線)
    W: 傾いた後のWL
      G: 船の重心
      B: 船の浮力の中心
      BM = I/∇
      GM = KM−KG
      GZ =
Δ・GM・sinθ

      I:水線面積まわりの慣性モーメント




2014 4 韓国で大変な海難事故が起きました。

TVでの報道では最上部に居住区を増設しており KG が相当大きくなっていると思われ、BM(一義的には船幅による) はほぼ変わらないので、対策(例えば下部にコンクリートブロックを搭載する等)をしなければ GMは 相当小さくなります。さらに増設に伴う重量の増加に見合うだけの DW の減少が生じますが、これに見合う積荷を減らす必要があります。しかし過積載の様子。

今回はおそらく出港時点でGM≒0であったのでは。航海に伴い下部にある燃料の消費でさらに重心が上がり、ちょっとしたきっかけ(操舵)で大きく傾き、荷崩れを起こし、浸水、沈没に至ったと思われます。(計画時では必ず出港状態及び入港状態で GM のチェックをおこないます)

また外洋を航走するフェリーでは積荷(自動車を含め)の固縛が大切で、確実な固縛が行われていなかったものと思われます。が今回はそもそもが復元力がない状態で出港したものに起因すると推察されます。
 
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  3.基本性能の確認

  (1) 載貨重量の確保:


載貨重量:DW(デッド・ウェイト)は基本計画でも重要ファクターの一つであり、定義は下記の通り。(注1)(注2)

船の寸法を、垂線間長さ:Lpp、幅:B、深さ:D、喫水:d及び肥痩係数:Cなどで表しますと排水量:
Δは 
        
Δ=ρ x Lpp x B x d x Cb
             ρは海水の密度(比重)で海水の場合は1.025

となります。船はアルキメデスの原理で−排除した水の重さだけ軽くなる−を利用したもので、この排水量:Δから船自身の軽荷重量:LW(ライト・ウェイト)を差し引いたものがいわゆる載貨重量となり、その船の積める重量になります。

      載貨重量:DW = 満載排水量:
Δ − 軽荷重量:LW

商船(貨物船)ではトン数としてこの載貨重量:DW が普通使用され、載荷重量(DW)は重要な要素であり、通常速力とともに保証項目になっており、このために軽荷重量の推定が重要になります。

また強度の厳しい船では軽荷重量(LW)の分布も問題になります。軽荷重量は'Type Ship'から推定するのですが、新しい船型を採用した場合は注意を要します。


   注1:船の大きさの表現
  ふつう何万トンという場合、尺度が船種によって異なります。

    重量トン:  載荷重量(DW):一般貨物船
           排水量(
Δ) :軍艦

    容積トン:  総トン数:GT:客船など   GT:Gross Tonnage
           (貨物船も取得し、入港時の費用の算出などに使用される)


   注2:船の要目の表現

       Lpp:舵の中心と前部垂線との距離
        B:船の幅
        D:船の深さ
        d:船の喫水
        ∇:排水容積
        Cb:肥痩係数=∇/L・B・d 
        
Δ:排水量(=1.025x∇)