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たばこ塩産業 塩事業版  2009.12.25

塩・話・解・題 57 

東海大学海洋学部非常勤講師

橋本壽夫

 

日本と世界各国の食塩摂取量を比較

 

 平成20年国民健康・栄養調査で食塩摂取量が発表された。前年に比べて0.1g低下の10.5gとなっており、調査を始めてからの最低値である。各国の食塩摂取量と比較するとどうなのだろうか?統一された調査データはないが、食塩摂取量について調査した研究論文のデータを集めた論文が発表された。データを抜粋して紹介する。

国内の食塩摂取量は低下

 毎年発表されている食塩摂取量の変遷を図1に示す。これらのデータは後に述べる調査法と違って、食事思出法を用いている。何をどれだけ食べたかを調べ、その中の塩分を計算している。

食塩摂取量の推移

食塩摂取量が10 g/日と定めていた目標摂取量に近くなってきたので、本紙(1009.6.25)で紹介したように男性で9 g、女性で7.5 gと新たに一層低い値が設定された。
  年齢・性別で厚生労働省の発表データを一部抜粋すると表1のようになる。
  総じて摂取量は低下して来ており、2008年の調査では女子成人は9 gに近くなっているが高齢者では11 gに近い。男子成人では11 ? 12 g台であり、高齢者ではまだ13 gと高い。
年齢・性別食塩摂取量
加齢に伴う増加と供給源

 国際疫学学会誌(International Journal of Epidemiology 2009;38:791-813)に世界の食塩摂取量が発表された。減塩を勧めるために世界中の食塩摂取量の現状を提供しようと書かれた論文だ。食塩摂取量の国際的で大規模な疫学調査にはインターソルト・スタディ(1985-87)とインターマップ・スタディ(1996-99)がある。その他にも規模は小さいが多数の疫学調査がある。それらの中から主として尿中の食塩排泄量を食塩摂取量とした報告を集めている。食塩摂取量の推定には食事思出法よりもこの方法は正確だ。
 本論文が述べているところによると、世界中の食塩摂取量は生理的必要量(0.6-1.2 g/)よりも相当過剰である。成人の平均食塩摂取量は6 g/日以上で多くの国(特にアジア諸国)では12 g/日以上である。5歳児以上の子供の摂取量は通常6 g/日以上であり、加齢に伴って増加する。ヨーロッパや北アメリカの諸国では食塩摂取量は主に加工食品(摂取量の約75)からである。イギリスやアメリカの成人では食塩摂取量の最大供給源はセリアルやパンであり、日本や中国では調理や食卓で加えられる醤油である。
 表2に成人の食塩摂取量を示す。原論文にはもっと多くのデータが記載されており、その中から条件不明なデータを除き一部抜粋した。また、それらを見やすいように(各国の最初の欄で)摂取量の多い順に並べ直した。日本のデータは今から15年くらい前のものであり、世界的にも摂取量の多い国である。図1を見ると分かるようにその後低下してきた。

世界中の成人に関する食塩の摂取量または排泄量

しかし、この図は総数のデータであるので、表1の年齢別データと比較すると表2のデータよりかなり高いことが分かる。これは子供・青少年で調査した表3との比較でも同様で、調査年代がかなり異なっているが、表3のデータよりも一層高い。

世界中の子供・青少年に関する食塩の摂取量または排泄量

高血圧との関係は?

 食塩摂取量の広範囲な国際比較を述べた報告は少ない。試料数、方法論から一律にデータを比較検討することは出来ないが、貴重な参考資料だ。
  日本で毎年発表される国民健康・栄養調査による食塩摂取量は低下しつつあるとは言え、国際比較をすると相当高いレベルにあると言える。このことと男女総合で世界一平均寿命が長いこととの間にはどのよう関係があるのだろうか?研究してもらいたい興味深い問題である。
  ごく最近、新聞で発表された記事によると、不規則な生活が高血圧症を引起す準備段階であり、それに食塩過剰摂取が加わると高血圧になると言う。動物実験ではあるが、現代人も教訓にして欲しいとのこと。
  国際的に減塩政策は進められるだろうが、食塩摂取量だけを問題にしても解決しそうにない。