資料247 春の七草・秋の七草について
 

 

     

       
春の七草・秋の七草について


 春の七草(はるのななくさ)……正月七日に摘んで、七草粥に入れる七種の
               若菜。
             セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・
        スズシロの七つ。

     漢字で書いてみます。
       芹・薺・御形・繁蔞(繁縷)・仏の座・菘・蘿蔔(清白)
  
      ナズナ…………ペンペングサ ともいう。
      ゴギョウ………ハハコグサ のこと。オギョウ とも。
      ハコベラ………ハコベ のこと。
      ホトケノザ……タビラコ のこと。
      スズナ…………カブ のこと。
      スズシロ………ダイコン のこと。

          
     春の七草の内容は、時代によって異なり、12種のこともあったそう
    ですが、現在では上の七種とされています。
     「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずし
    ろ、これぞ七草」という歌の形のものがありますが、これについては
    
『チューさんの今昔ばなし』というサイトに「七草の歌・作者は誰?」と
    いうページがあり、そこに『河海抄』の写本の映像を引用して詳しい
    考察がなされています。
(このサイトについては、注1をご参照ください。)
     また、
『生薬 ・薬用植物と身近な野生植物のページ』という、帝京大学
    薬学部教授木下武司先生のサイトにも詳しい解説がありますので、併
    せてご覧ください。木下先生によりますと、春の七草の中で万葉集に
    出てくるのは、意外なことに、芹だけだそうです。
(このサイトについて
       は、注2をご参照ください。)

      ※ ホトケノザについて
    『広辞苑』(第6版)には、         
      
ほとけのざ【仏の座】(1)キク科のタビラコの別称。春の
       七草の一つ。〈季・新年〉(2)シソ科の一年草または越
       年草。原野・路傍に自生。茎は柔軟で高さ25
センチメート
       ル春、紫色の唇形花を輪状に付ける。ホトケノツヅレ。
       三階草。漢名、宝蓋草。
     とあります。
      普通、早春に私たちが路傍で見かける紫色の花をつけているホト
  
     ケノザは、この(2)のシソ科の草を言っているわけで、黄色い花
     をつける春の七草のホトケノザとは違うので、注意を要します。

      フリー百科事典『ウィキペディア』のシソ科の「ホトケノザ」(春
     の七草ではないホトケノザ)の項に、
       春の七草の一つに「ほとけのざ」があるが、これは本種のこ
       とではなく、標準和名をコオニタビラコというキク科の草で
       ある。
ところが、この種(引用者注:春の七草ではない、シソ科のホトケノザ)
            
を七草の「ほとけ
のざ」であると誤解されている場合がある。本種は食
           用ではないため、注意を要する

   
   と出ています。
                
ウィキペディアホトケノザ
                   →
コオニタビラコ

     『広辞苑』(第6版)の「たびらこ」の項も引いておきます。
      
たびらこ【田平子】キク科の越年草。畦(あぜ)などに多い
        雑草。茎・葉からは白い汁が出る。早春に、高さ約10セン
        チメートルの花柄を出し、黄色の舌状花だけから成る頭花
        を開く。春の七草の一つの「ほとけのざ」はこれをいい、
        若葉を食用。カワラケナ。

      なお、タビラコは、コオニタビラコ(小鬼田平子)とも言います。
     オニタビラコ(鬼田平子)に対して、小さいタビラコという意味な
     のでしょう。『ウィキペディア』によれば、春の七草の「ホトケノ
     ザ」の標準和名は、コオニタビラコだそうです。      
   
                        (「ホトケノザについて」の項、2015年3月6日追記)

      
                      * * * * *


         
七種の節句(ななくさのせっく)=五節句の一つ。七種粥を祝う正月七日の
       節句。人日
(じんじつ)。七草の祝。若菜の節。    
            七草の囃し(ななくさのはやし)=七草の祝に、前日の夜または当日の朝、
       俎
(まないた)に薺(なずな)または七草や台所のすりこぎ・杓子など
       を載せ、吉方
(えほう)に向かい、「唐土(とうど)の鳥が日本の土地
       へ渡らぬ先になずなななくさ(ななくさなずな)」、または「唐
       土の鳥と日本の鳥と渡らぬ先に、ななくさなずな手に摘み入れて」
       などと唱え囃しながら、それらを叩く習俗。
〈(季)新年〉
                     
(以上、『広辞苑』第6版による。)
          唐土(とうど)の鳥が日本の土地へ……=七種は、前日の夜に俎に乗せて囃し歌を
                     歌いながら包丁で叩き、当日の朝に粥に入れる。歌の歌詞は「七草なずな 
                     唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬ先に、合わせて、バタクサバタクサ」など、
                     地方により多少の違いがある。囃し歌は鳥追い歌に由来するものであり、これ
                     は七種粥の行事と、豊作を祈る行事が結び付いたものと考えられている。
                                (フリー百科事典『ウィキペディア』の「七草」の項による。)

     なお、平凡社の『国民百科事典10』
(1978年3月20日初版発行)の田中宣
    一氏の記述によれば、「この行事
(引用者注:七草の節供、あるいは略して七
    
草)が一般に普及したのは、江戸時代に五節供の一つに定められてからで
     
あろうが、古く中国で7種の羹(あつもの)を食べて無病のまじないとした
    人日
(じんじつ)の風習や、平安時代に野に出て小松を引いたり若菜を摘ん
    で羹を作った<子
(ね)の日の遊び>の影響が考えられる」ということで
    す。

 
                  

 
         子(ね)の日の遊び=正月初子(はつね)の日に、野に出て小松を引き若菜
        を引いて遊び、千代を祝って宴遊する行事。小松引。
〈(季)新年〉
                        
(『広辞苑』第6版による。)


          *  *  *  *  *  *  * 


     秋の七草
(あきのななくさ)……秋に花が咲く代表的な七種の草花。
        ハギ・オバナ(ススキ)・クズ・ナデシコ・オミナエシ・フジバ
             カマ・アサガオ
(キキョウ・ムクゲなどの説あり)

     漢字で書いてみます。
       萩・尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・朝顔
 

      オバナ………ススキ(芒)のこと。
      アサガオ……これについては、今のアサガオとする説、キキョウ・
         ムクゲ・ヒルガオとする説もあるそうです。
(私はキキョウ
         と習ったように覚えていますが。)


     
秋の七草については、万葉集の山上憶良の歌が有名です。

         
山上臣憶良の、秋の野の花を詠む二首
      
秋の野に咲きたる花を指(および)折りかき数ふれば七種の花
      
萩の花尾花葛花瞿麦の花女郎花また藤袴朝貌の花
                         (巻八、1537・1538)


    
 上の歌の本文は、日本古典文学大系5『萬葉集 二』(高木市之助・五
     味智英・大野晋校注、岩波書店発行)によりました。
(2首目の歌の「の」を
      「が」とする読み方もあるようですが、そのほうが適当なのでしょうか。)

     
この本の頭注に、「朝貌─牽牛花(今のアサガオ)・旋花(ヒルガオ)
     
木槿(ムクゲ)桔梗(キキョウ)などの諸説があるが、決定し難い」とあり、
    巻末の補注に詳しい説明があります。
          なお、憶良の歌は、最初の歌は短歌、二首めは旋頭歌(577577)
    になっています。


     
参考までに、上記の日本古典文学大系から原文をひいておきます。

           山上臣憶良詠秋野花二首
      1537 
秋野尓 咲有花乎 指折 可伎數者 七種花 其一
      1538 
萩之花 乎花葛花 瞿麥之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花 其二
      
(2首目の「萩」の漢字は、原文は独特の形をした文字なので、普通の
        字体の漢字に置き換えてあります。)

 

 

                 

 



       (注) 1. 『チューさんの今昔ばなし』というサイトに、「七草の歌・作者は誰?」というページがあり、
          特に春の七草の歌についての詳しい考察が見られます。
              
『チューさんの今昔ばなし』 TOPページ    →  チューさんの野菜ワールド → 「目次へ」                                                →  「あれこれ 野菜・こぼれ話」の 第六話「七草の歌・作者は誰?」  
             
なお、ここに引用されている『河海抄』の本文(全20巻・20冊)の画像が、奈良女子大学学術情報
            センターの
『阪本龍門文庫善本電子画像集』で見られます。
                    
奈良女子大学学術情報センター → 『河海抄』
              この『河海抄』の写本は、「第二十巻末に、散位基重が永和2年(1376)11月から5年(1379)3月
             まで、四辻家から借り出して書写したという元奥書を持つ、いわゆる「中書本(成稿本以前の形態
             のもの)」系統の古写本」だということです。(春の七草についての記述は、巻第十三の11~12枚
             目の画像に出ています。)


          2. 『生薬 ・薬用植物と身近な野生植物のページ』というサイトにも、春の七草・秋の七草
            についての詳しい解説が見られます。
             
『生薬・薬用植物と身近な野生植物のページ』TOPページの「日本文化と植物」 の中の「文明・民俗
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