資料167 新日本建設に関する詔書(昭和21年1月1日の詔書)




 

      新日本建設に関する詔書

茲ニ新年ヲ迎フ。顧ミレバ明治天皇明治ノ初國是トシテ五箇條ノ御誓文ヲ下シ給ヘリ。曰ク、
 一、廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決スヘシ   
 一、上下心ヲ一ニシテ盛ニ經綸ヲ行フヘシ
 一、官武一途庶民ニ至ル迄各其ノ志ヲ遂ケ人心ヲ
   シテ倦マサラシメンコトヲ要ス
 一、舊來ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ    
  一、智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ
叡旨公明正大、又何ヲカ加ヘン。朕ハ茲ニ誓ヲ新ニシテ國運ヲ開カント欲ス。須ラク此ノ御趣旨ニ則リ、舊來ノ陋習ヲ去リ、民意ヲ暢達シ、官民擧ゲテ平和主義ニ徹シ、獲樓乾ニ文化ヲ築キ、以テ民生ノ向上ヲ圖リ、新日本ヲ建設スベシ。
大小都市ノ蒙リタル戰禍、罹災者ノ艱苦、産業ノ停頓、食糧ノ不足、失業者増加ノ趨勢等ハ眞ニ心ヲ痛マシムルモノアリ。然リト雖モ、我國民ガ現在ノ試煉ニ直面シ、且徹頭徹尾文明ヲ平和ニ求ムルノ決意固ク、克ク其ノ結束ヲ全ウセバ、獨リ我國ノミナラズ全人類ノ爲ニ、輝カシキ前途ノ展開セラルルコトヲ疑ハズ。
夫レ家ヲ愛スル心ト國ヲ愛スル心トハ我國ニ於テ特ニ熱烈ナルヲ見ル。今ヤ實ニ此ノ心ヲ擴充シ、人類愛ノ完成ニ向ヒ、獻身的努力ヲ效スベキノ秋ナリ。
惟フニ長キニ亘レル戰爭ノ敗北ニ終リタル結果、我國民ハ動モスレバ焦躁ニ流レ、失意ノ淵ニ沈淪セントスルノ傾キアリ。詭激ノ風漸ク長ジテ道義ノ念頗ル衰ヘ、爲ニ思想混亂ノ兆アルハ洵ニ深憂ニ堪ヘズ。
然レドモ朕ハ爾等國民ト共ニ在リ、常ニ利害ヲ同ジウシ休戚ヲ分タント欲ス。朕ト爾等國民トノ間ノ紐帶ハ、終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、單ナル神話ト傳説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神
(アキツミカミ)トシ且日本國民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル觀念ニ基クモノニモ非ズ。
朕ノ政府ハ國民ノ試煉ト苦難トヲ緩和センガ爲、アラユル施策ト經營トニ萬全ノ方途ヲ講ズベシ。同時ニ朕ハ我國民ガ時艱ニ蹶起シ、當面ノ困苦克服ノ爲ニ、又産業及文運振興ノ爲ニ勇往センコトヲ希念ス。我國民ガ其ノ公民生活ニ於テ團結シ、相倚リ相扶ケ、寛容相許スノ氣風ヲ作興スルニ於テハ能ク我至高ノ傳統ニ恥ヂザル眞價ヲ發揮スルニ至ラン。斯ノ如キハ實ニ我國民ガ人類ノ福祉ト向上トノ爲、絶大ナル貢獻ヲ爲ス所以ナルヲ疑ハザルナリ。
一年ノ計ハ年頭ニ在リ、朕ハ朕ノ信頼スル國民ガ朕ト其ノ心ヲ一ニシテ自ラ奮ヒ自ラ勵マシ、以テ此ノ大業ヲ成就センコトヲ庶幾フ。

御名御璽

  昭和二十一年一月一日

 

内 閣 總 理 大 臣
第一復員大臣第二復員大臣    男爵 幣原喜重郎
司  法  大  臣           岩田 宙造
農  林  大  臣           松村  謙三
文  部  大  臣           前田  多門
外 務 大 臣       吉田  茂 内 務 大 臣       堀切善次郎
國 務 大 臣       松本 烝治
厚 生 大 臣       芦田  均
國 務 大 臣       次田大三郎
大 藏 大 臣
     子爵  澁澤  敬三 
運 輸 大 臣       田中  武雄
商 工 大 臣       小笠原三九郎
國 務 大 臣       小林  一三

 

 

 

 

 

 

 

  

      (注) 1. 詔書の本文は、『国立公文書館アジア歴史資料センター』の作成による「アジア
          歴史資料データベース」所収の「御署名原本・昭和二十一年・詔書一月一日・新
          日本建設に関する詔書」の画像によりました。
            2. この詔書は、一般に昭和天皇の「人間宣言」と言われている詔書です。
            3. 次に、詔書の語句の読みのいくつかを示しておきます。
            
茲ニ……ここに。  國是……こくぜ。  五箇條ノ御誓文……ごかじょうのごせいもん。
            上下心ヲ一ニシテ……しょうかこころをいつにして。 經綸……けいりん。 叡旨……えいし。
            朕ハ……ちんは。  誓ヲ新ニシテ……ちかいをあらたにして。  須ラク……すべからく。
            暢達シ……ちょうたつし。  眞ニ……まことに。  克ク……よく。  夫レ……それ。
            效スベキノ秋……いたすべきのとき。  惟フニ……おもうに。  亘レル……わたれる。
            動モスレバ……ややもすれば。  詭激ノ風……きげきのふう。  頗ル……すこぶる。
            兆……きざし。  洵ニ……まことに。  休戚ヲ分タント……きゅうせきをわかたんと。
            紐帶……ちゅうたい。  延テ……ひいて。  時艱ニ蹶起シ……じかんにけっきし。
            相倚リ相扶ケ……あいよりあいたすけ。  我至高ノ傳統……わがしこうのでんとう。
            斯ノ如キハ……かくのごときは。 所以……ゆえん。 心ヲ一ニシテ……こころをいつにして。
            自ラ奮ヒ……みずからふるい。  庶幾フ……こいねがう。
           3. 『オロモルフのホームページ』に、「いわゆる「人間宣言」について(オロモルフ)」
          というページがあって参考になります。
             
『オロモルフのホームページ』 
                      →
「いわゆる「人間宣言」について(オロモルフ)」


      


            

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