白雪姫(世にも恐ろしい童話)

 白雪姫という話しをご存じでしょうか?おそらくほとんどの人は、あらすじくらいは知っていると思います。

 何年か前に、ちくま文庫の「グリム童話」を買いました。本当は「釘1本」という話しが読みたくて買ったのですが、白雪姫も収録されていたので、読んでみたのです。

 読んでみて、驚きました。僕がなんとなく覚えている白雪姫とは、あまりにもイメージが違うのです。はっきり言って、この話しはメチャメチャ怖いです。最近「本当は怖いグリム童話」なんて本も出ていて、童話の怖さが騒がれていますが、この白雪姫ほど怖い話しはそうはありません。

 本題に入る前に、それまで僕の頭の中にあった白雪姫の話を簡単に書いてみます。

 昔々あるところに(こんな書きだしではなかったかも知れませんが)、雪のように白い肌に血のように赤い頬、そして黒檀のように黒い髪のお姫様がいました。それが白雪姫です。継母であるお妃は、実は魔女で夜な夜な鏡に質問していました。
「鏡よ鏡、この世で最も美しいのはだあれ?」
すると鏡は
「それは、あんたじゃなくて白雪姫だよ。ざまあみろ!」と答えます。
いや「ざまあみろ」とは言わなかったと思いますが、かなり意地の悪い返事をしたように思います。嘘でも「あんたが世界一!」と言っていれば、八方丸く収まりましたのに。

 怒った魔女は「うおのれ!かぐや姫!じゃなかった白雪姫!どういう間違いだ!」とか言いながら、毒リンゴを食べさせて白雪姫を殺してしまいます。7人の小人達は、嘆き悲しみました。そこへ王子様が通りかかって、白雪姫が死んだことを知って、お別れのチューをします。いや、チューってああた!接吻をします。接吻もなんだかしっくりこないなあ。そうそうキッスをします。

 すると愛の奇跡か幻か!親の因果が子に報い、ああ恐ろしや化け物のような・・・って見世物小屋の呼び込みか!
 奇跡が起こって、白雪姫は生き返ったのです。そして王子様と一緒にお城へ行って、王子様と結婚して幸せにくらしました。めでたしめでたし。

 だいたいこんな話しでした。多分皆様の記憶にあるのも、こんなストーリーではありませんか?

 原作はどこが違うかと言いますと、大きく2つあります。1つは白雪姫は王子のチューで生き返る訳ではないのです。たまたま森で迷っていた王子が、柩の中の白雪姫の死体を見て「これを売ってくれ」と小人に頼むのです。

 これは怖いです。「死体売っとくれ」ってああた!小人が断ると「じゃあタダでおくれ」と言います。図々しいにもほどがありそうですが、小人はそれで納得してタダであげてしまいます。で、死体を運ぶ途中で、家来がこけたひょうしに白雪姫の喉から、リンゴの塊がポロっと落ちて、白雪姫は生き返るのです。

 で、無事に王子と結婚してめでたしめでたし・・・と思ったら、とんでもない血も凍るようなエンディングがまっているのです。白雪姫を殺そうとした妃(継母)に白雪姫の結婚式の招待状が届きます。で、この継母はのこのこと結婚式に出かけていって、そこで世にも残酷な方法で処刑されてしまうのです。

 そう、結婚式の会場で惨殺されるのです。真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされて、死ぬまで飛び跳ねるのです。信じられますか?いかに白雪姫を殺そうとした悪い継母とはいえ、自分の結婚式の会場で焼き殺すとは・・・高砂の白雪姫は、どんな表情でそれを見つめていたのでしょうか?継母とはいえ、自分の母の断末魔の悲鳴をどんな気持ちで聞いたのでしょうか?

 僕の頭の中の白雪姫のイメージが、ガランガラン音をたてて崩れました。
「そんなハズはない!僕が読んだのは、こんな話しではなかった!」
とても信じられません。

 という訳で、調べてみました。図書館に行って、絵本から小学校低学年向けまでの「白雪姫」の本を片っ端っから調べてみたのです。絵本とかでは、この凄絶なエンディングはカットされているに違いないと思いました。

 最初に見たのは、斉藤尚子さん訳の絵本でした。驚きました。なんと!絵本にもしっかりとこのエンディングが書かれていたのです。さすがに絵はありませんでしたが、妃が倒れて死ぬシーンもちゃんと書かれています。

 「嘘だ!こんなハズはない!」次に見たのは「ブルーフのおはなし文庫」の中の「しらゆきひめ」です。これはとても可愛い絵の絵本で、さすがにあのエンディングは書かれていませんでした。

 ということで、都合10通りの白雪姫を調べました。下の表が調べた本のリストです。2点にしぼって調べました。
「白雪姫は王子のキッスで生き返ったか?」
「白雪姫の結婚式場で継母が焼き殺されるシーンがあるか?」
の2点です。処刑シーンがない場合は、継母がどうなったかも調べてみました。

出版社 タイトル 王子のキッス 継母の処刑シーン
福武書店 しらゆきひめ なし あり
講談社 ブルーフのおはなし文庫
しらゆきひめ
なし なし(継母のその後
は不明)
児童図書館 しらゆきひめ なし なし(鏡を破片が
心臓に刺さって死亡)
偕成社 ディズニーアニメ小説版
白雪姫
あり なし(稲妻に撃たれて
崖下に転落して死亡)
岩波書店 グリム童話集2 なし あり
こぐま社 子どもに語る
グリムの童話2
なし あり
福音館書店 グリムの昔話2 なし あり
童話館出版 グリムの昔話
林の道編
なし あり
偕成社 グリムどうわ(2年生) なし
西村書店 グリム童話集 なし あり

 興味深かったのが、偕成社の小学校2年生向けのグリムどうわでした(※印)。継母はお城に出かけていって、兵隊に捕まりますが「そのあと、お妃がどうなったかは、恐ろしくてお話できません」となっていました。小学校低学年には、それが無難だと思います。読んだ小学生は、気になって仕方がないと思いますが。

 調べてみて驚いたのは、10作品中、6作品に処刑のシーンが、書かれていたことです。

 そして王子のキッスで生き返るのは、なんとディズニーアニメ小説だけでした。アニメが刷り込みになっていたようです。さすがはディズニー。

 最後にこの物語の中の白雪姫って、何歳だと思いますか?



 正解は「7歳」です。

 僕が思うに、この話しは白雪姫という少女の空想の物語ではないかと思います。そのくらいの歳の女の子って、お母さんから叱られたりすると「私はきっと拾われてきた子供なんだわ」といった具合に自分を悲劇のヒロインにしてしまうことがあります。

 空想の中で、母親を継母にしたてあげ、自分は王子様と結婚して母親は・・・

 どっちにしても、恐ろしい話しです。くわばらくわばら・・・


2004年11月28日

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