酔雲庵



『草津温泉膝栗毛・冗談しっこなし』のあらすじ



草津温泉膝栗毛・冗談しっこなし



 端午の節句の前日、江戸通油町の十返舎一九の裏長屋に浮世絵師の喜多川月麿が、大変だと飛び込んで来た。

 月麿が以前、惚れていた深川の芸者、夢吉が旦那と別れて、草津温泉に行ったという。

 夢吉を追って草津に行こうと月麿は一九を誘うが、一九はそれどころではない。

 『東海道中膝栗毛』が売れて、売れっ子作家になっていた一九だが、曲亭馬琴が書いた読本『椿説弓張月』を読み、馬琴には負けられないと読本を書こうとしていた。

 月麿は以前、草津に行った事があり、草津に木曽義仲の伝説がある事を思い出した。それを聞くと、一九は義仲をネタに読本を書くのも面白いと乗り気になった。

 路銀もない二人だったが、酒屋の主人で粋な遊び人として有名な津の国屋の旦那も夢吉を追って草津に行く事を聞き、戯作者の山東京伝に頼んで、一緒に連れて行って貰う事になる。深川で送別の宴を張った後、津の国屋、一九、月麿、津の国屋の取り巻きで三味線弾きの都八らは草津へと向かった。

 草津に着くとすぐに月麿は夢吉を捜し回るが、夢吉はどこにもいない。そして、夢吉の別れた旦那、相模屋も夢吉を追って草津に来ていた事を知る。

 一晩中、寝ずに夢吉を待っていた月麿は朝早く、夢吉から手紙を貰う。喜んで手紙を開くと、そこには謎が書いてあった。苦労して謎を解き、夢吉に会いに行くが、また謎の手紙を貰う。第二の謎はそう簡単には解けなかった。

 月麿が夢吉捜しに夢中になっている間も一九は読本のネタ捜しをしていた。

 一九が土地の歴史家と一緒に、義仲伝説のある村に行って帰って来た後、ようやく、謎が解け、月麿は夢吉に会いに行く。一九らも二人の対面の場を見に雨の中、出掛けた。

 日が暮れる頃、ようやく、夢吉は現れたが、見知らぬ浪人者に斬られてしまった。月麿はかっとなって浪人者に素手でかかって行くが簡単にやられてしまう。

 血だらけになった夢吉を抱き、嘆き悲しんでいると、なんと、そこに京伝が現れ、すべてが茶番だった事がわかった。浪人者に扮していたのは鬼武という戯作者で、一九たちの噺の会の仲間だった。

 京伝たちは一九たちを騙すために一足早く、草津に来て、夢吉を隠したのだった。茶番も終わり、一行は料理屋に繰り出し、芸者たちを呼んで宴を張った。

 一九と月麿は草津に連れて来てもらう代わりに、草津を舞台にした艶本(春本)を書くという約束を津の国屋としていた。夢吉と会えた月麿はようやく、その仕事に取り掛かる。

 そんな時、草津から信州へ向かう道の途中にある蟻の門渡りという難所が崩れた。一九らが泊まっている宿屋で、来るはずの山崎屋というお客が来ないと大騒ぎになり、雨の中、崖崩れの現場を掘り返した。

 山崎屋は見つからなかったが、相模屋と連れの河内屋の死体が土砂の中から見つかった。噂を聞き、相模屋を知っている津の国屋が死体の確認をした。死体は傷だらけで顔もわからなかったが、着ていた着物から二人に間違いないという事となった。

 別れたとはいえ、世話になった旦那が突然、死んでしまい、夢吉は自分を責め、月麿が慰めるが沈みきってしまう。

 一九は読本のネタになるかもしれないと崖崩れの現場に出掛ける。現場の近くにある茶屋の親爺から話を聞き、その近辺を捜していた一九らは、山崎屋の妾が裸で殺されているのを発見する。妾は見つかったが、山崎屋の死体は見つからなかった。

 草津に戻った一九らは京伝たちと誰が妾を殺したのか推理し、崖崩れで死んだのが相模屋でない事に気づく。もう一度、死体を確認して、相模屋だと思っていたのが、山崎屋だった事が分かった。

 相模屋はどこかに隠れ、夢吉を連れ出そうとしているに違いない。一九らは相模屋を誘い出すため、夢吉を連れて、伝説のある平兵衛池に向かう。相模屋は罠にかかって簡単に捕まった。

 無事に一件落着と一九らは平兵衛池で酒を飲み、草津に戻る。草津では一九たちの捕物が話題になり、一九たちを一目見ようとやじ馬が押し寄せて来た。村役人たちも下手人を捕まえてくれた事を喜び、料理屋で宴を張ってくれた。一九は読本のネタが揃い、月麿は艶本の構想もでき、芸者たちに見送られて草津を去って行った。




酔雲庵



主要登場人物



十返舎一九 (44)‥‥‥戯作者。滑稽本『東海道中膝栗毛』の作者。

お民      (23)‥‥‥一九の妻。

喜多川月麿 (34)‥‥‥浮世絵師。喜多川歌麿の弟子。

夢吉      (25)‥‥‥元深川の売れっ子芸者。

村田屋治郎兵衛(47)‥‥‥一九の『膝栗毛』を売り出している版元。

山東京伝   (48)‥‥‥江戸で一番有名な戯作者。

津の国屋伊兵衛(38)‥‥‥江戸の酒屋の主人で粋な遊び人。

都八造    (32)‥‥‥一中節の三味線弾き。都八と呼ばれる。

感和亭鬼武 (49)‥‥‥戯作者。京伝の弟子。

桜川善好   (29)‥‥‥深川の太鼓持ち。

湯本安兵衛  (41)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、年寄役を務める。
                  旅館『日新館』の先祖。

湯本新三郎  (23)‥‥‥安兵衛の伜。

おかよ     (19)‥‥‥安兵衛の宿屋の壷廻り女。

相模屋清五郎 (35)‥‥‥江戸の酒屋の主人。夢吉を囲っていた旦那。

河内屋半次郎 (35)‥‥‥大坂の商人。

豊吉     (23)‥‥‥深川の芸者で夢吉と共に草津に働きに来る。

麻吉     (23)‥‥‥深川の芸者で夢吉と共に草津に働きに来る。

坂上治右衛門 (47)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、名主を勤める。

黒岩鷺白   (63)‥‥‥草津の俳諧の師匠。ホテル『望雲』の先祖。

中沢眺草   (67)‥‥‥草津の歌人で歴史家。中沢杢右衛門の叔父。

横山夕潮   (60)‥‥‥草津の歌人で歴史家。

湯本菅菰   (58)‥‥‥鷺白の弟子。湯本平兵衛の隠居。

藤次      (31)‥‥‥深川の太鼓持ちで夢吉と共に草津に働きに来る。

梅吉      (25)‥‥‥草津の料理屋、桐屋の芸者。元、深川の芸者。

春吉      (24)‥‥‥草津の料理屋、桐屋の芸者。元、深川の芸者。

お夏      (23)‥‥‥草津の料理屋、桐屋の芸者。

お糸      (22)‥‥‥草津の料理屋、桐屋の芸者。

お鈴      (21)‥‥‥新三郎の幼馴染みで医者のもとで働く娘。

お島      (17)‥‥‥お鈴の妹。安兵衛の宿屋の壷廻り女。

越前屋長次郎 (20)‥‥‥江戸の貸本屋。都八の弟。

お富      (21)‥‥‥草津の矢場の女。

山崎屋四郎兵衛 (38)‥‥‥信州中野の質屋の主人。

お菊      (21)‥‥‥四郎兵衛の妾。

おさの     (22)‥‥‥草津の料理屋、桐屋の芸者。

おえん     (21)‥‥‥草津の料理屋、桐屋の芸者。

源蔵親分   (42)‥‥‥草津の親分。八州様の道案内として十手を預かっている。

湯本角右衛門 (35)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、年寄役を務める。

宮崎文右衛門 (36)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、百姓代を務める。

中沢善兵衛  (45)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。

山本十右衛門 (38)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。

湯本平兵衛  (34)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。

中沢杢右衛門 (48)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。

市川権兵衛  (44)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。

山口幸右衛門 (42)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。

小林所左衛門 (40)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。

黒岩忠右衛門 (28)‥‥‥草津の宿屋の主人であり、組頭を務める。鷺白の伜。



夢吉  麻吉  豊吉




庵主の紹介に戻る      創作ノートに戻る