☆ 胸部X線撮影(異常) ☆i12


病変の存在部位の把握に有効なサイン
シルエットサイン
水濃度と水濃度の陰影が相接して存在する場合、その境界のコントラストが消失することをシルエットサイン陽性という。
シルエットサインは2つの水濃度が接しているかどうかを示すサインで、厳密には2つの水濃度の前後関係を示すものではない。
頚胸部徴候
胸部正面X線写真では気管より前方の肺は鎖骨の高さまでしかないので、気管より前方にある上大静脈や蛇行した腕頭動脈の鮮明な辺縁は鎖骨の高さまでしか追跡できない。肺尖部の肺は気管後方にあり、鎖骨よりも上方にある。
もし、胸部正面単純X線写真で上縦隔に腫瘤状の陰影があり、その腫瘤の辺縁が鎖骨より下方部分で鮮明で、上方部分で不鮮明な場合は鎖骨より下方部分は肺野へ突出して肺野のガスとのコントラストで描出されているが上方部分は頸部の軟部組織内にあって、肺と接していないことを意味している。
胸腹部徴候
胸腹部をまたぐ病変はほとんどが大動脈裂孔の部分で生じるので傍脊椎部に腫瘤状の陰影を形成する。
胸部正面X線写真では横隔膜のラインを形成する横隔膜円蓋部より下方の後肺底区がコントラストを作り腫瘤影を描出するので見逃されやすい。さらに下方は腹部の濃度が異なり腫瘤のコントラストは認められない。
Hilum overlay sign
拡大した縦隔影に重なって、肺門の血管影が認められたときにはその縦隔影は肺門影より前方あるいは後方に存在する。これをHilum overlay signと呼称する。心拡大による縦隔影の拡大でないことを示し、縦隔腫瘍などが疑われる。
Hilum convergence sign
肺門部の腫大の原因が肺血管ならば肺野から血管影が連続性に腫大した肺門影に向かって集中して認められる。あるいは著明な心拡大のための縦隔影の拡大の場合、肺門部肺血管はその縦隔影に向かって集中して認められる。
胸膜外徴候
臓側胸膜との2枚の胸膜で覆われるため、たとえ腫瘤表面が凹凸不整でも覆われた胸膜のために辺縁は滑らかになり鮮鋭となる。胸膜外腫瘤により内側に圧排され壁側胸膜と胸郭との間の胸膜外腔から発生し肺に突出する腫瘤性病変は壁側胸膜と腫瘤とは容易に離れないため、腫瘤の辺縁はなだらかに胸郭に移行する。これらの所見を胸膜外徴候という。


肺野透過性低下を示す病変
肺胞性パターン
@肺胞腔内に病変の主座があるときにみられるX線像。
滲出液・漏出・血液・蛋白・細胞などが肺胞腔に貯溜する状態
A疾患⇒肺炎・肺水腫・肺出血・肺胞蛋白症・肺胞上皮癌など
肺胞性パターンの診断基準
@エアーブロンコグラム(air bronckogram)
肺胞内に水濃度をきたす病態で気管支内ガスの透過性と周囲の肺胞とのコントラストが生じて気管支が透亮像として浮き上がる状態。
A癒合傾向
B境界不鮮明
C細葉性結節
D肺葉性・区域性

間質性パターン
肺間質に病変の主座がある場合にみられるX線像。
*肺間質⇒気管支・血管周囲間質・肺胞隔壁・小葉間隔壁
間質性パターンの診断基準
@Kerley line
Kerley lineは肥厚した小葉間隔壁を表し、肺野に見られる線状影でその部位・長さ・走行によってA・B・Cの3つのラインがある。
急性・一過性では肺水腫が、慢性では僧帽弁狭窄症・癌性リンパ管症などのリンパ流路の障害・肺線維症などがあげられる。
1)A線⇒肺門から血管や気管支の走行とは無関係末梢肺野へ向かう線状影で長さは2〜6cm。
2)B線⇒直線的線状影で主として下肺野の肋骨横隔膜洞近くにみられ、長さ1.5〜2cm。
3)C線⇒下肺野にみられる網状影。
Aスリガラス状
B線状
C網状・網状結節状
D蜂窩(蜂巣)状
E顆粒状・粒状
FPeribronchial cuffing

腫瘤性病変
腫瘤性病変も多岐にわたるが、下記のような特徴的像を把握し、鑑別に役立てることが重要。
@原発性肺癌spiculation・pleural indentation・notching/lobulation・癌性空洞・肺胞上皮癌のair bronckogram
A転移性肺腫瘍辺縁平滑(ときに辺縁不整)・空洞形成・石灰化・cannon ball
B過誤腫popcorn calcification・脂肪成分
C結核性⇒中心性・層状石灰化・散布巣・乾酪壊死・空洞
Dアスペルギルス症meniscus sign・fungus ball
E円形無気肺comet tail sign

肺野透過性亢進
両側性の肺野透過性を示す病変
@肺の含気量の増加慢性肺気腫・気管支喘息発作時・乳児急性細気管支炎
A肺血流の減少Fallot4徴などのチアノ−ゼ疾患
B軟部組織の厚みの減少⇒両側乳腺切断後
C撮影条件不良⇒露出過多
片側性の肺野透過性亢進を示す病変
@肺の含気量の増加気管支異物・腫瘤・代償性肺気腫(肺葉切除後/無気肺)・巨大ブラ・Swyer-James症候群
A肺血流の減少肺塞栓症・中枢型肺癌血管浸潤
Bその他⇒気胸・片側性乳房切除後・先天性大胸筋欠損症・撮影/現像系の問題(グリッド中心はずれ/光漏れ)

寄せ集め
@無気肺
⇒肺葉性無気肺は日常よく遭遇する病態でそれぞれの肺葉ごとに特徴的像を呈する。
A胸水
肋骨横隔膜角の鈍化。葉間胸水は有名であるが、肺下胸水・外における胸水の知識も重要。
B気胸
臓側胸膜によるhair lineの検出。緊張性気胸の場合、肺の虚脱・横隔膜の平低化・健側への縱隔の偏位が重要な所見。
C肺うっ血
⇒左心不全や弁膜症などが原因で肺に血液がうっ滞している状態。
D肺水腫
⇒間質性肺水腫と肺胞性肺水腫がある。Butterfly-shadow・Kerley line・Bronchial cuffing・Hilar haze
E肺塞栓症
Westermark sign・Hampton's hump
FRib notching
⇒肋骨下縁に見られる陥凹。肋間動脈・静脈・神経の拡張や腫瘍によって生じる。大動脈縮窄症・鎖骨下動脈閉塞・Blalock-Taussig術後・肋間神経腫瘍などでみられる。
G腹腔内遊離ガス
⇒立位胸部正面像で最も摘出されやすい。立位が困難のときは坐位や左側臥位正面像を撮影する。
H横隔膜ヘルニア
⇒Bochdalek hernia・Morgagni hernia・食道裂孔ヘルニア