☆ 血管炎症候群 ☆f14

血管炎症候群とは,血管壁を炎症の場とする疾患群
血管の大きさ別に見ると以下の通りになる。
@小血管ANCA関連血管炎(Wegener肉芽腫症・アレルギ―性肉芽腫性血管炎・顕微鏡的多発血管炎)Henoch-Schonlein紫斑病
A中血管結節性多発動脈炎川崎病
B大血管側頭動脈炎高安動脈炎



「ANCA関連血管炎」
ANCAとは抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cystoplasmic antibody)のことで、細胞質全体に反応するC-ANCA(C=cytoplasmic、細胞質)核周辺にのみ反応するP-ANCA(P=perinuclear、核周辺)の2種類がある。C-ANCAの対応抗原はproteinase-3という蛋白分解酵素で、P-ANCAの対応抗原はmyeloperoxidaseという酵素である。好中球は蛋白分解酵素で異物の消化や炎症反応をおこし、ミエロペルオキシダーゼで殺菌をおこなっている。ANCAはこれらの好中球機能の中心を担っている物質を標的とし、その機能をさらに亢進させ、その結果、血管の炎症が起きる。ANCA関連血管炎は中小動脈、それより小さいサイズの毛細血管を好んで障害する。


顕微鏡的多発血管炎  Microscopic polyangitis(MPA)

細動脈・毛細血管・細静脈などの小血管に発生する壊死性血管炎。P-ANCAが強陽性
@顕微鏡的とあるように毛細血管に炎症がおき、腎臓と肺がやられる。腎臓では急速進行性糸球体腎炎(RPGN)、肺では肺出血・間質性肺炎が必発する。
A臨床的には、肺出血とRPGNを伴う症例で疑い、P-ANCAを測定して陽性であれば、診断がつく
B治療としてはステロイド大量投与や強力な免疫療法を行い、呼吸不全や腎不全に対しては人工呼吸管理・透析を積極的に行う。


アレルギ―性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)  Allergic granulomatous angiitis(AGA)

気管支喘息・好酸球増加・小血管に発生する血管炎を3主徴とする壊死性血管炎で肉芽腫を形成する。P-ANCA陽性
@臨床経過ははっきりしていて、まず気管支喘息が先行し、血管炎(多発単神経炎は必発)が起きる。関節炎もみられる。腎病変はあんまり起きない
A@の症状がみられ、末梢血で好酸球・血清IgEの著明な増加・P-ANCA陽性であればまず確定。本当の確定診断は生検をおこない、血管壁に好酸球浸潤を伴う肉芽腫を確認する。⇒画像(生検)


Wegener肉芽腫症  Wegener's granulomatosis   くわしくはこちら!

C-ANCAが高率にみられる小血管の血管炎の伴う肉芽腫形成疾患。
1)鼻・眼・耳・上気道・肺の壊死性肉芽腫、2)肺を中心とする全身の小血管の壊死性肉芽腫性血管炎、3)半月体形成性腎炎を3主徴とする。
@C-ANCAには好中球を活性化する作用だけでなく、マクロファージから巨細胞を形成させたり、T細胞を活性化する作用もあり、これが原因で、肉芽腫を形成する。
A「鼻血・鞍鼻(鼻中隔の破壊による)・中耳炎→肺病変→腎病変(RPGN)」といった経過をたどる。
B診断は上記の症状がみられ、血液検査にて好酸球↑・C-ANCA(特異的)、胸写にて空洞を伴った肺の結節性病変がみられたらまず確定。確定診断は鼻粘膜生検で巨細胞を伴う壊死性血管炎と肉芽腫を確認する。腎生検にてもRPGNがみられることがある。
画像(胸写)  画像(生検)
C治療法は免疫抑制剤と副腎皮質ステロイドの併用で、これにより予後が著明に改善する。腎不全が大きな死因になり、この段階にいく前に早期発見することが重要。


とここまでが、ANCA関連血管炎 ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ


(古典型)結節性多発動脈炎  (clssical) polyarteritis nodesa

全身の中小動脈(毛細血管まではいかない)に原因不明の壊死性血管炎が起き、 一部に動脈瘤の形成や結節状がみられ、多彩な症状を呈する。40〜60歳の男性に多い
@全身の中小動脈に炎症が起き、非常に多彩な症状を示し、「特徴がない」のが特徴・・・
全身の炎症症状として、発熱や体重減少が先行する。
その後、血管が閉塞して各々の臓器虚血症状が現れる。
腎症状腎虚血・腎不全・腎血管性高血圧)、脳病変(脳出血・脳梗塞)、心病変(心筋梗塞・心不全)
神経症状(多発性単神経炎)  *肺や脾臓では虚血症状は現れない。
他に皮膚症状(発疹・皮下結節・皮膚潰瘍)、筋肉痛、関節痛がみられる。
A慢性炎症の所見として、WBC↑・好酸球↑・血小板↑・血清補体価↓・γ-グロブリン↑・フィブリノーゲン↑・アルブミン↓・赤沈↑・CRP(+)がみられる。ANCA陰性なのが、ポイント。
BB型肝炎ウイルスに対する免疫反応でcPNが起こることがあり、HBの検索は必須。
C確定診断は生検にて筋型動脈の壊死性動脈炎が確認されればできる。
D治療は大量の副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤。未治療の場合、経過は悪い。ただ、一度切り抜けると再発は少ないため、one shot diseaseと呼ばれる。

高安動脈炎(大動脈炎症候群)  Takayasu's arteritis

大動脈およびその分枝の大・中動脈炎を主徴とする疾患で、若年女性に好発。日本に多い。
@全身の大動脈が閉塞する。
1)総頸動脈領域の虚血⇒めまい・失神・頭痛
2)鎖骨下動脈領域の虚血⇒上肢のしびれ・冷感・脈拍減弱
3)下行大動脈・腎動脈狭窄⇒腎血管性高血圧(レニン分泌↑)
4)総腸骨動脈⇒間歇性跛行
A稀な疾患であるが、若年女性血圧に左右差があったり、原因不明の炎症所見があったら疑う。確定的な検査法はないが、血管撮影で血管壁の不整・狭窄等がみられれば大きな診断の手がかりになる。
B治療は副腎皮質ステロイド・免疫抑制剤。


側頭動脈炎  temporal arteritis

浅側頭動脈や眼動脈などといった大中動脈の血管壁に非特異的肉芽腫を呈する血管炎。欧米に多い。50歳以上の女性を多い。
@高齢者の発熱・頭痛・視力障害の組み合わせをみたら、これを疑う。
それで浅側頭動脈を触れて腫脹や圧痛があれば、ほぼ確定。 ⇒画像(側頭動脈)
A本症はリウマチ性多発筋痛症を合併しやすく、四肢近位の筋肉痛がみられる。名前に反してリウマトイド因子は(−)なので注意。
B確定診断は側頭動脈の生検で巨細胞を含む肉芽腫形成(巨細胞性動脈炎)を証明をする。
C放置すると失明が起こりうるので、生検の結果を待たずに治療を開始する。
ステロイドが著効し、非常に高い確率で寛解が得られる。

Henoch-Schonlein紫斑病  Schonlein-Henoch purpura(SHP)(シェーンライン・ヘーノホ)

小児に好発し、アレルギー反応により毛細血管の透過性が亢進し組織への浮腫と出血を生ずる紫斑病である。
その本態は
IgAが関与する全身の細小血管炎
@
4〜6歳の小児に好発する。
A
急性上気道炎(特に溶連菌)が前駆症状としておき、引き続き四肢伸展側に対称性の紫斑が出現し(毛細血管抵抗の減弱)、関節痛急性腹痛腸重積・消化管出血)・IgA腎症(血尿・蛋白尿)がみられる。 ⇒画像(紫斑)
B
血小板・凝固系は正常
である。炎症所見とIgA↑がみられる。
C経皮針生検にて皮膚真皮全層における細小血管炎・Leukocytoclastic vasculitisを確認できれば確定。
D数週間で自然治癒することが多い。腎病変が予後を左右する。
治療は小児には抗血小板薬(サリチル酸)、成人にはステロイド・免疫抑制剤


川崎病  mucocutaneous lymphnode syndrome(MCLS) :急性皮膚粘膜リンパ節症候群

定義
主として、4歳以下の乳幼児にみられる原因不明の急性熱性疾患で、病理的には全身の血管炎がみられ、主に皮膚・粘膜・リンパ節等が侵される疾患。

病態
全身性の血管炎(中動脈)を特徴とし,主に皮膚・粘膜・リンパ節を侵す。特に冠状動脈を特異的に侵され,重症例では冠状動脈拡大性病変(冠状動脈瘤)の形成がみられ,急性心筋梗塞(AMI)による突然死の原因となる。原因は不明。

診断のポイント
以下の6症状中5症状以上あれば確診、4症状で冠動脈病変を伴うものを不定型とする。



1)5日以上続く発熱(抗生物質無効)
2)両側眼球結膜の充血


3)口唇・口腔の所見口唇紅潮、苺舌、口腔粘膜のびまん性発赤


4)不定型発疹⇒発熱後3〜4日目に出現する。


5)四肢末端の変化⇒急性期手足の硬性浮腫・指先端の紅斑回復期膜様落屑


6)急性期における非化膿性頚部リンパ節腫脹⇒典型的には皮膚の発赤,圧痛を伴う膨隆

合併症
@冠動脈炎に基づく動脈瘤
A心筋梗塞
B僧帽弁閉鎖不全

治療方針
@アスピリン療法⇒抗炎症作用と抗血栓作用を兼ねた療法.開始が発病1週間以内のものは有意に冠動脈病変の合併が少ない.
Aγ-グロブリン療法⇒重症例に対して用いられる。全症例の約70%が本治療法の適応となる.冠動脈後遺症を有意に減少させる.
冠動脈病変が残ると、数年してから突然死が起こるので、持続管理が必要!