Stress Management Power Group(SMaPG)「こころの薬箱」
睡眠導入剤

睡眠導入剤の分類

ベンゾジアゼピン系薬剤の中で特に睡眠促進作用を強く有するものが睡眠導入剤として用いられている。たとえば先発製品名、ジェネリック薬の順に=でつないで紹介すると、以下のものが代表的である。
・ハルシオン=トリアゾラム=パルレオン=ミンザイン=アサシオン=アスコマーナ=ハルラック=カムリトン=トリアラム=ネスゲン
・ロラメット=エバミール〔これはジェネリックではなく併売品〕
・レンドルミン=ブロチゾラム=プロゾーム
・サイレース=ロヒプノール〔これはジェネリックではなく併売品〕
・ユーロジン
・ベンザリン=ネルボン〔これはジェネリックではなく併売品〕=ニトラゼパム
・エリミン
次の二種は分類が異なるが実際には睡眠導入剤としてベンゾジアゼピンとほぼ同じ扱いでよいと思う。
・リスミー
・アモバン=ゾピクール
場合によっては次の二種も使用できる。
・ラボナ
・べゲタミンA、B
比較的最近の薬として次の二種がある。
・マイスリー
・ドラール
新しい分だけ、危険とする体験談も少ないが効果は従来薬とほぼ同じと考えてよい。
速く効いて体内で速く分解されるものと、ゆっくり効いてゆっくり分解されるものがあるので効果に違いが現れる。各個人の体質により分解酵素が異なるので効果の開始・持続時間には個人差がある。また使用開始の頃と1ヶ月後くらいでは効果が異なる。使い始めには効果が強くあらわれ、1週間程度たつと効果は安定してくるので自分の場合にはどのような効き方をするか評価できると思う。1週間して「効かなくなった」と誤解することがあるが、1週間経過してからの効き方が本来の効き方である。
睡眠を安定させる方法としてSSRI、SNRI、抗てんかん薬、第一世代抗精神病薬、第二世代抗精神病薬などを用いる方法もある。背景にうつやてんかんの傾向がある場合があるからである。ビタミンB12(メチコバールなど)には睡眠リズムを整える効果がある。メラトニンは処方薬ではないが効果があると話題になった。光線療法が用いられることもある。朝時間を決めて、かなり明るい蛍光灯の前で光を浴びて、メラトニンを生成させる。
単純化しすぎではあるものの、目安を記す。
アルコールは併用しないこと。アルコールは寝付きをよくするが睡眠を浅くし、睡眠の質を悪くする。途中でトイレに起きることも多くなる。
副作用についてはあまり心配しなくてよい。アモバンなどは次の日の朝、口が苦いが、特に重篤な副作用ではない。かつては睡眠導入剤を飲んでからあとの、夜中の記憶が障害されるタイプの記憶障害が報告されたが、あわてないで服用を継続すれば消えることが分かっている。使用法を正しく守れば安全である。
漢方薬でゆっくり対処する方法もある。たとえば、つむら12 柴胡加竜骨牡蛎湯、つむら11 桂枝加竜骨牡蛎湯を用いる。体質改善に役立つ。

使い分け

睡眠薬使用のガイドライン 一般名で表示、()内は代表的製剤名

・神経症的傾向が弱く、脱力・ふらつきが出やすい人には抗不安作用・筋弛緩作用が弱い薬剤を使う。
--入眠障害ならゾルピデム(マイスリー)、ゾピクロン(アモバン)
--中途覚醒や早期覚醒ならクアゼパム(ドラール)

・神経症的傾向が強く、肩こりなどを伴う人には抗不安作用・筋弛緩作用を持つ薬剤を使う。
--入眠障害ならトリアゾラム(ハルシオン)、ブロチゾラム(レンドルミン)、エチゾラム(デパス)
--中途覚醒や早期覚醒ならフルニトラゼパム(サイレース)、ニトラゼパム(ベンザリン)、エスタゾラム(ユーロジン)

・腎機能障害、肝機能障害がある人は代謝産物が活性を持たない薬剤を使う。
--入眠障害ならロルメタゼパム(ロラメット)
--中途覚醒や早期覚醒ならロラゼパム(ワイパックス)

不眠症の鑑別診断

不眠症については、以下のものを鑑別する。
・環境因(騒音、光、湿度、温度)
・身体因(疼痛、掻痒)
・薬剤性不眠
--抗結核剤 イソニアチド
--降圧剤 レセルピン
--降圧剤 メチルドーパ
--βブロッカー プロプラノロール
--抗パーキンソン剤 ドーパ製剤
--インターフェロン
--コレステロール合成阻害薬 ロバスタチン
・睡眠時無呼吸(激しいイビキ、窒息感、体型中途覚醒、昼の過眠など)
・むずむず脚症候群
・周期性四肢運動障害(睡眠時の下肢不随意運動の自覚)
・睡眠相後退症候群
・うつ病
・睡眠相前進症候群(高齢者の早朝覚醒)
・中途覚醒型不眠
・入眠障害型不眠
・自分は眠れないという固い思いこみ

不眠は致命的ではない、しかしかなりつらい

不眠は非常に高頻度の問題である。充分な睡眠は多種の条件が揃ったときにはじめて得られる。その条件が一つでも欠けたら不眠になる。従って様々な原因の不眠が発生する。睡眠には体調を整える調整作用があるので、不眠が続くと体調調整機能がストップしてしまう。まず睡眠障害の背景に元の病気がないか検討する。その後に薬剤を用いて睡眠を確保すればそこから自分の体内の調整作用が作動するのでかなり楽になる。寝る子は育つというが、大人も寝ているうちに治る、という面がある。ノンレム睡眠=徐波睡眠は脳が寝ていて体が起きている。生体にとって絶対必要ではない。浅い睡眠すなわち夢を見るレム睡眠=逆説睡眠は脳が起きていて体が寝ている。これは生命維持において必須である。実験的にレム睡眠を遮断すると急速に体調が悪化する。「眠れないとき、リラックスして、目を閉じておくだけで充分」とよく言われる。「まったく眠れない」と語る人に病院に泊まってもらい、脳波計をつないでビデオで撮影するとそれなりに寝ていることが多いと報告されている。
眠れないのは本当につらいし、夢にうなされるもの嫌だ。浅い眠りで夢を何度も見た日は、朝から苦しい。そして夢の不思議なこと、言うまでもない。明恵の夢日記からフロイトまで。深層心理への入り口である。
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