Stress Management Power Group(SMaPG)「こころの薬箱」
家庭内虐待 アダルトチルドレン

統計数字

2005年6月30日付朝日新聞夕刊によれば、2004年一年間で児童虐待死が49件である。2003年は41件。児童虐待防止法では「保護者が監視する児童に対し、暴行やわいせつな行為、長時間の放置や心理的外傷を与えること」を児童虐待と定義している。被害児童の1/3は1歳未満、6歳以下が9割である。殺人容疑などで逮捕された61人のうち、実母は28人、実父は19人、養継父母と内縁者は6人。親としてつらいとき、あるいは自分の周囲でつらそうにしている人がいる場合、相談窓口はまず第一に児童相談所である。緊急の場合には施設への入所もできる。病診、診療所、保健所も相談に応じているし、女性センターなどでも受け付けている。
話すだけで楽になることがあるので、ぜひ考えてみてください。

まず、「虐待 沈黙を破った母親たち」岩波書店(1999年刊)から引用してみましょう。「母親が子どもを虐待する」ケースについての本です。少し耳を傾けて下さい。「こころの薬箱」に適切なように改変してあります。
「わたしはいま、家庭から離れて、夫に子供を預けて、診療所でケアを受けています。虐待してしまう母親もまた、やはり子供のころ親から十分愛されていなかったということを知って下さい。虐待の問題を考えるときに、親に罰を与えるという立場で話してほしくないのです。できたら共感してほしいと思います。」
 「虐待というのはいきなり子供の頭蓋骨陥没からはじまるとは思えないんです。最初はこの子なんか憎たらしいとか、ちょっと突き飛ばしてみたくなるとか、それぐらいからはじまると思うんです。そんな子供と親との相性の悪さに気づいた時点から、相談できるような窓口がもっとあったらいいな、と思います。虐待防止のための窓口がありますよぐらい宣伝してほしいなと思います。」
 「保育園や学校がお休みになったり、長期の休みになったりすると、子供と接する時間が長くなってしまい、親のいらいらがつのって子供に当たることが多くなってしまうんです。夫に相談しても、夫は仕事や自分の趣味で忙しい。そうすると、母親が一人で子どもを抱えてうつ状態になってしまう。休日も安心して子どもを見てもらえる場所がほしい。一時間でも二時間でもいいですから、安心してみてもらえる場所がほしい。」
 「虐待で苦しんでいるのは子どもだけじゃない。母親の苦悩にも目を向けてほしい」
 「いまわたしは診療所でケアしてもらって、共感してもらって、とてもいやされています。悩んでいる母親はわたしだけじゃない。あなただけじゃないんですよ。」
 「虐待してしまう親も子供のころ、親から十分愛されていなかった。親を罰するより共感してほしい。」
 「夫は相談にのってくれない。子どもを安心してみてもらえる場所がほしい。」
 「虐待からの救出とケアは子どもだけでなく親にも必要だ。」
 「虐待している親自身も心を病み、虐待に苦しんでいる。」
 「親が子供を虐待してしまう原因を知り、専門家の手助けを受けながら病んだ心を癒せる社会システムがない限り、虐待問題の解決にはならない。」
 「親が子供を愛する代わりに、虐待へと追いつめられてていくのはなぜなのだろうか。親の心の闇とは何なのか。」
 「虐待してしまう親に共感するとはどういうことなのか。どうすればいいのか。」
 「虐待に苦しんでいる母親は、子どもを愛せなかった自分をものすごく責めている。第三者の前で虐待の体験を語ることは、つらい過去を再現することでもっと自分を責めることになる。きちんとした親の治療体制がない限り、話せない。」

ケアが必要

さて、虐待といえば、母親が子供を虐待するほかにも、父親→子ども、祖父母→孫、夫→妻、妻→夫、姑→嫁、嫁→姑などもあります。それぞれに事情が異なります。また、肉体的暴力のほか、言葉による暴力や、「無視することによる暴力」もあります。男性の暴力の背景に、女性の言葉の暴力がある場合を何度も経験しています。女性は言語能力が高く、記憶していることを言語化できるため、男性は「あんなに昔のことをよく細かく覚えているものだ」とあきれたりします。言葉で言い返せないので暴力をふるいます。
肉体的暴力、言葉の暴力、無視などに長時間さらされていると、人間の心には取り返しのつかないような傷が生じるのです。ですから、このような暴力や無視の被害者をケアすることはわれわれ医療分野でも大切な仕事です。
そして、今日お伝えしたいのは、「加害者となっている側にも、精神的問題があり、専門家によるケアが必要なのだ」ということです。上に紹介した本で分かるように、虐待せざるをえない母親はとても苦しんでいるのです。ケースによっては、子どもの側に発達上の問題が隠されていて、それを解決しない限りは、健全な母子関係が難しいこともあります。わたしたちは以上のような多様な側面からのアプローチを試みています。悩んでいる方は是非一度医療機関を訪ねてみて下さい。

アダルトチルドレン 共依存 アルコール症 機能不全家庭 AC,ACOA,ACOD

アダルトチルドレン関連についても、カウンセラーが担当して相談に応じています。機能不全家庭で育った成人が苦しむ様々な悩みです。典型的にはアルコール症の父親、そんな父を補助することで生きている母親、そういった両親に育てられた人です。簡単な解決はないのですが、じっくりと取り組みましょう。
参考に少し硬い解説をしてみましょう。アダルトチルドレン AC, ACOA: Adult children of alcoholic アルコール依存症の親のもとで成人した子ども。親がアルコール症で家族機能に欠損があったために、成人してから苦しんでいる人たちをさす。親がアルコール症以外でも、薬物依存やギャンブル依存などで家族機能に欠損があった場合には同様のことが起こりうるので、ACOD: Adult children of dysfunctional family(機能欠損家族で成人した子ども)と呼ぶこともある。子供の頃から問題を起こさず症状も出さず、いい子として適応し、優等生といわれて周囲の人の支えとなるが、成人する頃に息切れを起こす。孤立感・孤独感,極端な自己評価の低さ、愛と同情の混同、怒りや批判へのおびえ、自分の感情に気づき表現する能力の欠如、自己肯定感のなさ、絶望的なまでの愛情と承認の欲求がみられる。さらに自己非難、失敗することの恐怖、支配することの欲求、頑固さ、一貫性のなさがある。これらの特徴の中でもっとも本質的と思われるのは「自己承認への欲求」であり、診察室における「居場所がない」「生きていてもいいのだろうか」「この世に存在していてもいいのだろうか」などの言葉となる。「自分はACだからこんなに苦しいんだ」と自分で気づいたときにはじめて救われる側面がある。アルコール依存症者、共依存の配偶者、ACの子どもの三者がセットになって病理を形成している。
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