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フローティング
下半身が浮く基本姿勢
  内容  フローティング姿勢のとり方 (フローティングの基本 猫背姿勢 ローリングの場合 ストレッチ) 
      猫背姿勢の問題 (フローティングと猫背姿勢の比較 )
      クロールの問題 (キックの習慣 下向きキック 速度の2乗に比例する抵抗) 
      参考 (下向きキック泳法とスマートスイミングとの比較 世界水泳2007で見たフローティング 背骨の姿勢 沈む症候群 
        フローティングの成立条件 人間の比重 )

 下半身を浮かせる技術です。  (スマートスイミングの基本姿勢です。)

 抵抗の少ない泳ぎをするための基本になります。

フローティング姿勢のとり方

 

フローティングの基本


 「肩甲骨の間の背骨」を反らせて、背中を沈めることによって、「肺の浮力」を利用する方法です。
 同時に頭を水面上に上げることによって、下半身が浮き上がり、水平姿勢がとりやすくなります。
 
 フローティングができると、下半身が浮きやすくなり、軽い力で速く進むことができます。他の練習も簡単にできるようになります。
 

 

フローティング姿勢のとり方】

  1. 肩甲骨の間の背骨をそらせて耳を上に上げます。
  2. 顔を斜め前に向けて額とマユの間が水面を切るようにします。
  3. 視線を前に向けて、視野の上側に水面が入るようにします。
  4. おなかの所の背骨はまっすぐにしておきます。

【フローティングのメリット】

  1. 水平状態を維持できて、抵抗の少ない泳ぎができます。
  2. 下半身を浮かすためのキックが不要になり、フィンワークが使えます。
  3. 力を使わないで浮いていられるので泳ぎが楽になります。

完全に浮かなくても、ある程度の時間浮けば問題ありません。

泳ぎ出せばサークルスカーリングやフィンワークで下半身が浮きます。

泳ぎ出してもフローティング姿勢をとることによって水平状態を維持できて、軽い力で速く進むことができます。

 上の図で腕や手を水面から浮かしても下半身は浮きやすくなります。

 【目線】
 額とマユの間が水面を切るようにして、前方の壁を見て、視野の上側に水面が入るようにします。

 【下半身が浮く原理】

肺には、息を吐いたときでも空気が残っていて「肺の浮力」が発生しています。このとき背中が水面から出ていますと、背中が出た分だけ肺の浮力が小さくなります。逆に「肩甲骨の間の背骨をそらせて」背中を沈めると「肺の浮力」は大きくなります。

肺の浮力が十分働いている状態で、頭を水面上に上げますと、頭の重さの反力で下半身が浮きます。 

 
 【泳ぐと下半身が沈む?】
 スカーリングの仕方が悪いと、いくらフローティング姿勢をとっても、下半身が沈んでしまいます。
 水を下に押さえつけてプルをしたり、手の平を上に向けてプッシュをする掻き方では、上半身が立って下半身が沈んでしまいます。
 フローティング姿勢を維持するためには、下半身が浮くサークルスカーリングを使います。
 (ひざ曲げキック、大またキックの場合も、下半身が沈んでしまいます。足をばたばたさせるほど下半身が沈みます。)   

 【泳ぎ出したら?】 泳ぐ時は中心が少し下がります。  
 肩や腰が左右に傾きますので、水面にでる頭の部分は少なくなりますが、
 それでもできるだけフローティング状態を維持します。

  
 【注意】
 反らせるのは、「お腹の後ろの背骨」ではなくて、「肩甲骨の間の背骨」です。
 「お腹の裏の背骨」を反らせると、S字姿勢になって、腰が下がって上半身が立って抵抗が大きくなってしまいます。

猫背姿勢


 「肩甲骨の間の背骨」が丸い猫背姿勢だと、下の図のように、背中が浮き上がってしまい、「肺の浮力」が小さくなってしまいます。
 この状態で、頭だけを上げると、全体的に浮力が小さくなって、更に下半身が沈んでしまいます。 
  猫背で頭を上げると更に足が沈みます。
 
 猫背姿勢で下半身を浮かせる方法としては、顔を下に向けて下方向にキックを打つ「下向きキック」が、一般的に普及しています。
 しかし、「下向きキック」は、キックの抵抗も大きく体力が必要になります。
 一番楽でスピードが出る方法は、フローティング姿勢をとることです。 
 
   
抵抗の違い

   下向きキック
 下半身が沈むのでキックが必要になります。キックは抵抗が大きくて
 体力が必要になります。頭の前の水の抵抗も大きくなります。

 
   フローティング
 下半身が浮き水平姿勢をとりやすくなり抵抗が小さくなります。
 頭を水上に出すとその分、頭の抵抗が小さくなります。
   
    水の流れはカヌーに似ています。
 

ローリングの場合

 
ローリング時の中心軸

  ローリング(スクリューモーション)時の、フローティング姿勢は、右の図のように中心軸がかなり沈んだ状態になります。

肩や腰を傾けると、浮力の原理で体の中心軸が下がるためです。

水面にでる頭の部分は少なくなりますが、それでもできるだけフローティング姿勢を維持することが大切です。
Screw Motion
 

 参考→ トップスイマーの泳ぎを見る場合、頭があまり水面から出ていませんが、これは肩や腰の傾きが大きいためです。

ストレッチ


陸上の習慣
 
 日常の仕事は、斜め下を向く仕事が多いので、長い間続けるとどうしても前かがみになりがちです。その習慣のままプールに入ると
 自然と、背中を丸めて下を向く習慣が出てしまいます。
 背中を伸ばすストレッチ運動によって、抵抗の少ないフローティング姿勢をとるようにしましょう。

ストレッチ運動
 
 次のストレッチ運動が役に立ちます。

 1 「肩の間の背骨」をそらせます。 この時おなかの裏の背骨は平らにしておきます。
      (横から見ると肩甲骨の陰になって背骨の状態がわかりにくいので、斜め後の方から肺の後ろの背骨をチェックしてみましょう。

 2 「腕」をまっすぐ伸ばして肩の後ろの方に反らします。
 
 すぐに効果が出なくても、続けていると、だんだんやわらかくなってきます。                参考→ ヨガステーション >    全体

  「体が柔らかい例」
 米国ナタリー・コーグリン
 2007 年世界水泳100m背泳ぎ:世界新で金メダルを
 取った後のシーンです
 (自由形4X200リレーでも金メダルを取っています。
 イアン・ソープ
 2001年世界選手権
 200mで勝った後。
 「猫のストレッチ」  
 猫は猫背ではありません、背中をそらすこともできます。
 トヨタ自動車のTVのCMの猫は、気持ちよくストレッチしています。

 



 休憩 

以下は、他の方法と比較する場合の参考知識です。初めての方には特に必要なものではありません。


猫背姿勢の問題


他の方法と比較する場合の参考知識です。初めての方には特に必要なものではありません。
 

フローティングと猫背姿勢の比較


 背中を丸くして、顔を下に向けて、キックを打つ泳ぎ方と比較してみました。


肩の間の背骨を反らせて
頭を下げる
(泳ぎにくい)
_ 

_
下半身が沈むので下向きにキック。 普通
肩の間の背骨を反らせて
頭を上げる
(泳ぐ場合は技術が必要)
_

_
下半身が浮くので下向きキックは不要。
後方にフィンワーク。
速い
  猫背姿勢で
頭を下げる 
(泳ぎやすい)
下半身が大きく沈むので下向きに強くキック。 普通
猫背姿勢で
頭を上げる
(実用には向かない)
全体の浮力が小さいので下半身から大きく沈む。
下半身が沈むので下向きに強くキック。
遅い
猫背姿勢で
お尻を上げる
(実用には向かない)
この姿勢を保つには、下向きに強くキック。
息継ぎができない
 
 一般的な「キック泳法」は、
 陸上生活と同じ感覚で泳げるので泳ぎやすい
 といえます。

体育(水泳) 
体育(水泳)
1.背中を丸めて下を向いていますので下半身が沈みやすくなります。
  下半身の沈みを防ぐために頭の方から見ると、ひざが見えるくらいまで
  下に強くキックします。キックを打つ度に大きな抵抗が発生します。

2.水車掻きのため、上半身が浮き上がります。この上半身の浮き上が
  りを防ぐために背中を丸めて頭を水中に入れています。
3.左の図は一般的なイメージであって、実際のトップスイマーは、
  演技のトップスイマーのように、きれいな泳ぎ方をします。
 
 イアン・ソープのフローティング姿勢
          動画
 
 Ian Thorp nnnnnn- slow motion
カメラが少し下から写していますので、足の甲が少し見えていますが、正面からだと足の指先が見える感じです。水面の下にはゴーグルまでしか見えません。
 イアン・ソープのフローティング姿勢
          動画
 
 
 
Athens 2004 400m Freestyle
2004年アテネオリンピックでのイアン・ソープの泳ぎ。
背中が伸びていて黄色いスイミングキャップが水面上に出たままです。
ダグ・フロスト・コーチはゴーグルのふち:マユで水面を切るといっています。
 www.swimming.jp の管理人さんの
 フローティングも参考になります。
    (動画は 回線用 を2回クリック
     すると始まります。)
www.swimming.jp > 蹴伸び
www.swimming.jp >クロール50m

けのびをして5秒後に浮き上がってから、1分間浮いています。
肺の後ろの背骨を反らせらています。頭は上げていませんが、頭の代わりに腕を水面に出していますので足が沈みません。このことは5秒後に浮き上がった瞬間でわかります。(最後の2〜3秒だけ頭を上げています。)  
泳ぐ動画も、フローティング姿勢を維持して、滑るように軽く進んでいす。


クロールの問題


 クロールを始める時の一番の問題は「後方沈み」です。下半身が沈む問題です。 この問題を解決しないとクロールが始まりません。

キックの習慣


 一般的に、「後方沈み」を防ぐために、習慣としてキックを打ちます。 水を下に蹴ることによって下半身を浮かせます。
 
 しかし、このキックは、水を掻き回して体の後ろに渦をたくさん作りますので大きな渦の抵抗が発生します。
 渦の抵抗は、高速になると、速度の2乗に比例して大きくなり、同時に後退力も働きます。
 ブレーキを踏みながらアクセルを踏むのと同じで、その分体力を消耗します。

下向きキック


 フローティングを使わない泳ぎでは、背中を丸めて、あごを引いて、顔を下に向けて泳ぐ ”下向きキック” がベストとされています。

 下の図は、「下向きキック」と「フローティング姿勢」の抵抗を比較したものです。
    

下向きキック

下にキックを打って後方沈みを防がなけれ
ばなりません。渦抵抗が大きくなります。

猫背姿勢で背中が上がって
水の盛り上がりが大きくなって
抵抗が大きくなります。
 
    

 
フローティング姿勢

下半身が浮くので後ろにだけ押すフィンワー
クが使え抵抗が小さくなります。
 
背中が沈んで水の盛り上がりも少なく
小さな抵抗で進めます。
 「下向きキック」の場合は、抵抗が大きくなり、高速になると体力を必要とします。

 下向きキックには次のような問題があります。

 1 後退力:  キックを下に打つと、「1の緑の矢印」の方向に後退力が発生します。
    足で後ろ向きのスカーリングをしていることになります。

 2 渦の抵抗: キックされた水は、足の甲の高圧側から足の裏の低圧側に高速移動して、渦を作ります。
   このようにしてできた渦を「2の青の矢印」の方向に引きずって泳がなければならないために、体の後の方が低圧になり
   体が後ろに引っ張られます。→圧力抵抗が大きくなります。
        (魚は、体の後ろが徐々に細くなっていって、渦の抵抗が発生しにくい形になっています。)

 3 胸の抵抗: 上半身の角度が立つために、3のところで胸の抵抗(圧力抵抗)が大きくなります。

 4 造波抵抗 : 胸の抵抗が大きくなると、体の前の水が「4の青の矢印」の方向に盛り上がって、造波抵抗が大きくなります。
        (圧力抵抗とは別に、先端の水を常に上に持ち上げる動力が必要になり、この動力分が造波抵抗となります。)
            参照 → スクリューモーション>抵抗の種類>造波抵抗

 5 息継ぎ問題: 猫背で顔を下に向けていると、口が水面上に出るまでに時間がかかり、息継ぎがしにくくなります。
    息継ぎがしにくいので、余計水面を押さえつけて頭を上げます。→水面を押さえつけると上半身が立って更に下半身が沈みます。
    →そのため更に強く下側にキックをするという悪循環になります。


下向きキックだと水の盛り上がりが大きくなる事を示したアニメ図です。

 

速度の2乗に比例する渦の抵抗

 渦の抵抗は、速度の2乗に比例して大きくなります。 
 
 ゆっくり泳ぐ時の抵抗を1キログラムとすると、2倍の速度になると4キログラムの抵抗になります。
 ゆっくり泳ぐ時の抵抗が2キログラムだと、2倍の速度になると8キログラムの抵抗になります。
 低速で、このくらいなら問題ないと思って渦の大きいキックをしていると、スピードを上げたとき、抵抗が大きくなってきて大変になります。


湾曲姿勢と水平姿勢の抵抗の差

 盛り上がった波の形に合わせて上半身を「傾けた湾曲姿勢」にすると、湾曲した板で水を押していくことになり、全体の抵抗が大きくなります。
 これとは逆に、波の形に逆らって上半身を「水平姿勢」にしますと、あまり水を押さなくなり、全体の抵抗が小さくなります。

 これは次の実験で確認することができます。 
   実験1 水面近くで手の平を傾けた湾曲形にして、水平方向に動かしてみましょう。すごく力がかかり、波も大きくなります。
   実験2 水面近くで手の平を平らにして水平にして、水平方向に動かしてみましょう。軽く動いて、波も小さくなります。


 終わり 



参考


 特に必要なものではありませんが、理解に役立つかもしれません。

下向きキック泳法とスマートスイミングとの比較

  主なものを比較してみました。
 
  下向きキック泳法 スマートスイミング
水に浮くのは楽か 浮きにくいので苦しい 浮きやすいので楽
水に浮く方法 下を向いてキックをしながら浮かぶ フローティングである程度下半身が浮ければ、
泳ぎだすとサークルスカーリングやフィンワークで楽に浮く。
必需品 プルブイとビート板 両方不要 かえって邪魔
足の疲れ 非常に疲れる ぜんぜん疲れない
息継ぎ 熟練が必要で苦しい すぐに覚えられて楽
スピード ひたすら力を使ってピードを出す 力を使わなくても体の動きとリズムでスピードが出る
練習方法 ひたすら泳ぎ込む 短時間で上達できる
観客 見ていて大変そう 見ていて軽やかで気持ちがいい
普及度 広く普及している 陸上生活の感覚と違うので普及していない
 

世界水泳2007で見たフローティング


 ●200m  世界新記録で金メダルをとったロール・マナドゥ のフローティング姿勢

 
  2で素早く、くるっと頭を回転させます。3→8にかけて息継ぎをしますが、
1→10の間、頭の軸の角度は45度くらいに傾けたままです。
  8→9でわずかに沈み込みますが、頭は水面上に出ていてフローティング姿勢を維持しています。

  11からは逆サイドでの息継ぎです。11は頭がくるっと回って向こう側を向いたところです。
  11→17
にかけて息継ぎをしますが、頭の角度は45度くらいに傾けたままです。16から17、18へとわずかに沈み込んでいきますが、それでも頭を
  45度くらいの角度で水面上に出して、フローティング姿勢を維持しています。

 
1      →      2      →      3      →      4      →      5      →      6

7     →     8      →     9      →       10       →     11      →      12

13      →     14      →     15      →      16      →     17      →     18
参照 → YouTube - Laure Manaudou 200 m Freestyle Gold World Record M2007 2007.03.28  1:55.52  Melbourne

 

背骨の姿勢

 
   
背骨の姿勢をアニメで示してみました。
灰色の線は肩甲骨です。
フローティング姿勢と、背中を丸くした姿勢が交互に動きます。

  
 

 

沈む症候群

  
 フローティングを理解するために、沈む例を見てみましょう。2000年のシドニー・オリンピックの100m予選1組(Heat1)でおぼれているような泳ぎで人気になったギニアのムサンバニ(Eric Moussambani)の泳ぎです。飛び込んだ直後は思い切りバタバタしていますが50m近くになるとヘトヘトに疲れて100mのゴールに着く頃は止まりそうになって何とかたどり着きました。一生懸命に泳いでいますがなぜ下半身が沈むのでしょうか。なぜ進まないのでしょうか。
 レースの動画:YouTube  エリック・ムサンバニ Wikipedia  
「Take your marks」(位置について)の合図がしてからムサンバニが位置につき始めが遅かったので次の「ピー」が鳴らず、他の2人は本来「ピー」が鳴るはずのタイミングで飛び込んでしまってフライング失格。しばらくは泳ぐつもりでゴーグルをつけていましたが、失格と知った後の落胆の姿がかわいそうでした。そのため、1人で泳ぐことになりました。

 原因がわかれば、きれいな泳ぎができると思います。
 右のアニメが参考になるかと思います。 GIFアニメ:S字姿勢  GIFアニメ:水車掻き 
 

 
 原因
 1 肩の間の背中を丸めています。陸上で作業する姿勢のままです。
 2 お腹の裏の背中をそらせてS字姿勢で上半身を立てて泳いでいます。
 3 息継ぎの仕方を知らず頭を大きく水面上に出したまま泳いでいますので、水車掻きで上半身を立てる必要があります。
 4 水車掻きでものすごい後方回転力を出しています。この後方回転力によって上半身が立って下半身が沈みます。
 5 ひざを曲げてばたばたしていて、水を前に押していることになりますので前に進みません。
   
 泳ぎを知らない人が突然おぼれる時は、多分このように頭をあごまで出したまま水車掻きで泳ぐのかもしれません。

 オリンピックの後、練習して速く泳げるようになったそうです。

フローティングの成立条件

  

フローティングの成立条件  
 

フローティングが成立するためには、浮力の中心に対して後方回転力と前方回転力がつりあう必要があります。

このつりあい条件を式で表すと次のようになります。

F: 水面下の体積の浮力(灰色の部分)
L: 水面下の体重(灰色の部分)
U: 水面上部の重さ
Fの線: 水面下の体積の中心位置 
Lの線: 水面下の体重の重心位置 
Uの線: 水面上部の重心位置 
a: 前方回転半径
b: 後方回転半径 

U*a=L*b ・・・ 回転つりあい条件
 フローティング姿勢
 猫背姿勢

また、沈まない条件として、上向きの力(F)と下向きの力(L+U)がつりあう必要がありますので次の式が成り立ちます。

      F=L+U ・・・ 垂直つりあい条件

この図を体重60kgの人の場合で考えて見ましょう。

水面上部の重さを1kgと仮定すると、水面下の体重は59kgになります。ですからLの大きさは実際にはこの図よりずっと大きくて、Uの大きさの59倍もの大きさになります。

このことから小さなUの力による前方回転力と、その59倍もの大きなLの力による回転力を釣り合わすためには、水面下の体重の重心位置(Lの線)と、水面下の体積の中心位置(Fの線)がかなり接近している必要があります。


浮力中心はどの辺にあるかを考えて見ましょう。体重が60kg、U が1kg、a が400mm としますと、回転つりあい条件の式から逆算して、

b= a*U/L=6.78mmとなり、重心と浮力中心の間の距離は1cmもないということになります。肺に空気があるのにそれだけしかずれていないのは変だと思われますが、肺の空気の体積を2リットルとすると体の体積の1/30しかありません。しかも肺の中心と体の中心のずれは20cmくらいです、おおよそ 20cmの1/30と考えると、浮力中心と重心のずれ(b)が 6.78mm というのはそれほど変ではなさそうです。

大きめに見て約1cmくらいと考えてよさそうです。

 

浮力中心と沈む力の中心の測定方法

 

「陸上での重心位置」をバランスボールなどの上に乗って大体の位置を調べておきます。

 

上の図のバランス状態では、「浮力中心の位置」で「体全体の体重」を支えていると考えることもできますので、「陸上での重心位置」がわかればそこが「浮力中心の位置」となります。

 

「沈む力の中心位置」は「水面下の体重の重心位置」ですので、「陸上での重心位置」から、bだけ前の位置になります。

 

 

猫背姿勢をとった時の変化

 

次に、頭を沈めた猫背姿勢を考えて見ましょう。水面上部の重心位置(Uの線)が背中の上部となって、浮力の中心である水面下の体積の中心位置(Fの線)にかなり接近してきます。

またわずかですが、頭を沈めた分だけ、水面下の部分が前方に延びますので、水面下の体重の重心位置(Lの線)も、水面下の体積の中心位置(Fの線)も前方に移動します。

これらのため、前方回転半径(a)が短くなり、前方回転力(U*a)も小さくなります。このことから猫背姿勢だと、後方沈みを防ぐことは難しくなることがわかります。


では、Fの線やLの線がどのくらい前に移動するかもう少し細かく見てみましょう。(猫背の場合はつりあいは成立しないとして、移動量だけを計算します。)

1段階目として頭が沈んだ分のFの線の移動距離をXf1としますと、比例配分で、U/F=Xf1/(a-Xf1) となり、a-Xf1=Xf1*F/U  a=Xf1(1+F/U)

Xf1=a/(1+F/U)  となります。体重60kgでUが1kgでaが400mmとしますと、6.56mm前に移動します。

2段階目として、背中が浮いた分のFの線の逆方向への移動距離をXf2とします。

これも比例配分で、U/F=Xf2/(a-Xf1-Xf2) となり、(a-Xf1-Xf2)=Xf2*F/U  (a-Xf1)=Xf2(1+F/U)  Xf2=(a-Xf1)/(1+F/U)  となります。

2段階目のaは背中の位置で200mmとしますと、Xf2=(200-6.56)/61=3.17mm後ろに移動します。

以上合計で6.56-3.17=3.39mm前に移動したことになります。


次にLの線についてみますと、aをa+bに、FをLに置き換えればいいだけです。a/b=L/Uの関係からb=a*U/L=6.78mmとなります。

1段階目の移動距離Xl1は、Xl1=(a+b)/(1+L/U) となり、Xl1=(400+6.78)/60=6.78mm前に移動します。

2段階目の移動距離Xl2は、Xl2=(a+b-Xl1)/(1+L/U) となり、同様にaを背中の位置200mmとして、bはそのままとします。

Xl2=(200+6.78-6.78)/(60)=3.33mm後ろに移動します。

以上合計で6.78-3.33=3.45mm前に移動したことになります。

 

以上から、Fの線が3.39mm前に移動し、Lの線が3.45mm前に移動した結果、Fの線とLの線の間隔は 0.06mm 詰まったことになり、

b は6.78-0.06=6.72mmとなり、1%短くなります。

これらのことから、猫背姿勢にすると、前方回転半径は400mmから196.61mm になり、、後方回転半径は6.78mmから6.72mmに変化することになります。

前後の回転力の比は、(1*400)/(6.78*59)=1/1 から (1*196.61)/(6.72*59)=0.496/1 となり、つりあわなくなります。

 
猫背姿勢に必要なキック力
  

上で示したように、猫背姿勢の場合は、フローティング姿勢に対して前方回転力が半分くらいになります。頭の上部の重さを1kgとしますと、その半分の 500gくらいの重さの回転力に相当します。重心から足までの距離は重心から頭までの距離の2倍くらいありますので、下向きキックの力は、常時250g出せばつりあい条件が成立することになります。

しかしキックでは足の1往復の1/3くらいしか下向きの力は出ません。また足を下に打ったら次には上に持ち上げなければなりませんので上下運動の力の差で出せる下向きの力は1/2か1/3くらいになります。

したがって最終的には 2kg くらいの力で下向きにキックする必要がありそうです。

 

人間の比重

人間の一般的な比重を調べてみました。

自分の比重を簡易的に測定することもできます。

  
人間の比重

 

人間の体の構成は大きく分けて、次のような構成になっています。

 1 筋肉 比重 約 1.05 人体模型 

 2 脂肪 比重 約 0.90 筋肉と脂肪の比重について  

 3 骨  比重 ? コラーゲン(比重1)、リン酸カルシウム(水酸燐灰石:水酸アパタイト:66%比重3.15)、海綿質、骨髄、血管などからできて

       いて、複雑な構造になっています。比重2.0という説もありますがどの部分を指すかによって異なります。

       骨の構造と成分 - goo ヘルスケア

 4 血液  比重 約 1.05  血液比重

 5 肺の空気

   1 残気量  約 1 リットル 息を思い切り吐ききっても肺の中に残っている空気の量 0.5〜1.5リットルとも言われています。

   2 肺活量  約 3 リットル 成人女性2〜3リットル、成人男性3〜4リットル、スポーツ選手4〜6リットル

   3 全肺容量  約4リットル  残気量+肺活量 

            肺気量について 解剖生理 肺活量とは 

比重って何?

   比重=(体重)/(体の体積と同じ量の水の重さ)

   です。比重が、1より小さいと水より軽くて浮き、1より大きいと水より重くて沈みます。比重 - Wikipedia 

人間の比重
   平均的な人で普通に呼吸している状態では水より軽くて浮くそうです。人間の比重は肺の中の空気の量や脂肪や骨の量などによって

   個人差があるそうです。比重としては、0.923〜1.002 0.98〜1.06 0.97 0.95〜0.96 などの数値が出ていました。

   アルキメデスの原理、人間の比重 人間の体積はどのくらいですか? ダイビングコラム 空中遊泳を目指す研究 

体脂肪率と浮力

   脂肪で10kg増えたとしますと、10kg*(1-0.9)=1kg の浮力が出ます。脂肪が多いと浮かびやすくなります。

   体脂肪率は、体重に対する脂肪の割合で、普通の人の適正値は約20%前後です。スポーツ選手は10%前後ですので、

   60kgの場合、体脂肪率が10%違うと脂肪にして6kg、浮力にして0.6kgの違いが出ます。

   体脂肪率 - Wikipedia スポーツ選手の体脂肪率 スポーツ選手の理想体脂肪 

骨の量

   骨は10代の時に成長して後減っていきます。成長期に力を使うスポーツ選手の骨の量は普通の人より20〜40%多くなりますが、

   水泳の選手は無重力状態ですので、普通の人と同じくらいです。(骨に力がかからなと骨の量が減っていくそうです。)

     一流スポーツ選手の種目別の骨量  骨を作るスポーツ 運動が骨を強くする カルシウムと運動10代の健康生活 

     競泳選手の骨密度 骨粗鬆症の予防に水中運動

骨の割合

   人間の 骨の割合は、5%や20%などの説があります。高機能アパタイト 体脂肪量・筋量・骨量・体水分量 骨について 骨の重さ  

骨の量と骨の比重の推定

   1 骨の割合が20%、骨の比重が2.0、骨以外の比重が1.0と仮定すると、

   体重60kgの人の場合、骨の重さ=12kgで骨の体積=6kgですので、水中で沈む力が6kgにもなってしまいます。

   これでは通常の肺活量(3リットル)いっぱいに息を吸っても浮くことはできません。

   この仮定は通常は水に浮くという現実と矛盾します。

 

   2 骨の割合(多分硬い部分の割合)が5%、骨の比重が3.0、骨以外の比重が1.0と仮定すると、

   体重60kgの人の場合、骨の重さ=3kgで骨の体積=1リットルですので、水中で沈む力が2kg になります。

   息を吐き切ったときの肺の空気量が1.0リットルですので、少し息を吸えば浮くことになります。

 

   3 眼で見える骨全体として考えた場合は、骨の割合が5%というのは考えにくいし、骨全体の比重が2.0というのも考えにくいので、

   仮に、骨の割合が20%、骨の比重が1.2、と仮定しなおすと、骨の重さ=12kgで骨の体積=12/1.2 = 10リットルですので、

   水中で沈む力が2kg になり、少し息を吸えば浮くことができます。(後の方で測定した鶏の骨の比重は約1.1でした。)

 

   スポーツによって骨の量が30%多くなっている人の場合は、沈む力は2*1.3=2.6となり、少し多めに息を吸えば浮けるという計算になります。

   体脂肪率が普通の人より10%減った場合は、0.6kg重くなり、筋肉量が体重の20%増えた場合は、60*0.2*(1.05-1)=0.6kg 重くなります。

   このような体質を全て持っている人を想定すると、沈む力が3.8kgとなり、かなり息を吸わないと浮かない計算になります。

   推定では本当のことはわかりませんので、実際に測定してみるのが一番だと思います。

 

鳥の骨の比重測定

 

 参考までに鶏の骨の比重を計ってみましょう。
料理用の台秤があれば簡単に比重が求められます。
 
鳥の骨の重さを測って W とします。次に容器に水を入れて台秤の上に乗せます。次に鳥の骨を糸でつって、容器の水の中に入れて、底からわずかに離してつるします。そのときの台秤の増えた重さを A とします。
比重Cは C = W / A で求まります。
鶏の骨の比重はやや沈み、約 1.1  くらいでした。

フライドチキンの骨はやや浮くものとやや沈むものがあって、約 1.0 くらいでした。
(水より軽い場合には、水面下に押し付けて台秤の増えた重さをAとして同様に計算すれば比重が求まります。)
   

 

自分の比重の測定

 

プールで簡易的に測定できます。

 

【息を吸った状態で浮く場合】
1 友達に体を水面下まで押さえもらいます。
2 このとき押さえたおおよその手の力を友達の手の感覚で言ってもらいます。
3 手の感覚は、500mlのペットボトルの水1本の重さを覚えてもらっておいて、
  何本分くらいの力だったかを言ってもらいます。
4 この力 F が浮力になります。
5 この力 F から次の計算式で自分の比重が求まります。
    比重=(体重)/(体重+F)
6 ペットボトル4本分くらいだったら2kgですので浮力は2kgとなり、
  比重は、体重が60kgの場合、(60)/(60+2)=0.97 となります。
 
【息を吸った状態でも沈む場合】
1 友達に体を水面下まで引き上げてもらいます。
2 このとき引き上げたおおよその手の力を友達の手の感覚で言ってもらいます。
3 手の感覚は、500mlのペットボトルの水1本の重さを覚えてもらっておいて、
  何本分くらいの力だったかを言ってもらいます。
4 この力 f が沈む力になります。
5 この力 f から次の計算式で自分の比重が求まります。 
    比重=(体重)/(体重− f )
6 ペットボトル4本分くらいだったら2kgですので沈む力は2kgとなり、
  比重は、体重が60kgの場合、(60)/(60-2)=1.034 となります。 
 

比重が重いと泳げない?

   

 比重が重い場合でも、泳ぎ出せばサークルスカーリングやフィンワークで浮きますので、そのまま泳げないということにはならないと思います。

 比重が重い場合でも、フローティング姿勢をとることによって、軽い力で速く進むことができ泳ぎが楽になります。


 2007.04.28  

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