外断熱 vs 充填断熱

最近、いろいろなネット上の議論を見ていると、ちゃんと防湿施工された充填断熱が見直されてきたというか、「いい家がほしい」でけなされた反動が出てきて いるように思う。特によく見かける議論は、ちゃんとしたツーバイは外(張り)断熱なんかよりQ値が低くできるためにより高性能で住み心地がよい、といった 論調である。このような議論に対してIV地区の場合について、私見を述べてみる。

よく出てくる比較のモデルケースとしてIV地区で次の2つの住宅を比較してみよう。外張り断熱代表として、屋根断熱、基礎断熱、そして第3種換気で、外壁 のデメリットがないと考えられるくらいの断熱厚さ(50mm以下)でQ値1.9程度は期待できるであろう。それに対して、ツーバイの代表選手としてR- 2000基準をクリアということで、充填断熱、天井断熱、床断熱、第1種熱交換換気でQ値1.4としてみよう。Q値だけ見るとツーバイの方が性能が良いよ うに見える。さて、これらを比較するとどうなのだろうか?もちろん、本当のところはその他のいろんな要素にもよるし、住み比べてみないと分からないが、理 論的な考察をしてみたい。

まず、Q値というものが目安として役立つ場合に2つあることに注意しなければならないので、これを分けて議論することが重要ではないだろうか。2つという のは、(1)外気温の影響をどのくらい受けやすいかということと、(2)冷暖房のコストがどれくらいになるか?ということである。

(1)外気温の影響をどのくらい受けやすいか?

これは、住み心地に影響する重要な部分である。熱損失係数が暖房OFF後の温度変化にどう影響するのかを単純なモデルで計算したものが
http://www.ii-ie.com/pastlog/lng0403/04020041.htm
のfkinさんの書き込みにある。時刻tにおける温度θ[度]は、熱損失係数をQ[W/m2度]、熱容量(比熱×質量)をC[J/度]、外気温度を θout、初期温度をt=0でθ=θini、延べ床面積をA[m2]とすると、
(θ−θout)/(θini−θout)= exp{−(Q*A/C)*t }
と単純には計算できる。つまり、暖房OFF後、内外温度差は指数関数的に減っていく。ここで大事なのはexpの中の(Q*A/C)という値である。この値 の逆数C/(Q*A)が時定数となり、つまりこの値だけの時間がたてば温度差は最初の1/eとなる。したがって、床面積Aが同じ場合、C/Qの値が大きい ほどゆっくり温度が変わり、外気温の影響を受けにくいということになる。熱容量Cが一定ならQ値が低いほど有利である。
さて、上の外張り断熱の場合と充填断熱の場合を比較すると、
http://sotodan.jp/column/col09000.htm
によると、外断熱の方がおよそ3倍熱容量が大きいらしい。そうすると外断熱はQ値は一見劣っているが、このC/Qの値は実に充填断熱の場合の2.2倍以上 にもなる計算である。従って、上のようなモデルケースの場合、外断熱の方が外気温の影響を受けにくく、住み心地の向上が期待できる。
実はこのようなことから、充填断熱の場合、外気を直接導入する第3種換気が嫌がられるのかもしれない。第1種熱交換型を導入してQ値をできるだけ下げるこ とがまさに命綱となっているのではないだろうか。ちなみに熱交換型は
http://www.iesu.co.jp/shinbun/2003/15-10-25.htm
にて色々と問題が指摘されているので、この点からも(特にIV地区以西では)第3種換気+外断熱の方が現時点ではベターだと思う。

(2)冷暖房のコストについて

さて、暖房コストは基本的にはQ値が低いほど(もう少しちゃんというとQa=Q*Aが低いほど)安いということになると思う。最も単純な計算では上のケー スで床面積140m2とすると、年間の暖房コスト差は
(Q値の差)x(床面積)x(暖房デグリーデイ)x24x(電気代/kWh)/(平均COP)=0.5x140x1000x24x20/3= \11,200
となる。実際は上の考察で述べた外気温の影響を考えると、もっと差は小さいはずであり、年間で1万以下の差は換気システムのランニングコストの差で吹っ飛 んでおつりがくるくらいではないだろうか。
なお、冷房コストについては、Q値の差はほとんど関係なく、主に防湿とμ値によるところが大きい。
結局冷暖房コストについても、上の比較のQ値0.5の差よりも、防湿が確実にできる方がより重要と思われる。
防湿の施工性については外断熱の方が確実であろう。特に防湿シートを使った外断熱ではイザットのように隙間係数0.1を切ることも夢ではないが、充填断熱 ではまず無理だろう。

実際に、Q値がよいと思われる充填断熱で建てた人のサイトで実際の光熱費を見てみると、そんなに安くない場合が多い(光熱費の絶対値については使う人によ るところが大きいが、冷暖房しない月とする月の差を見れば、冷暖房費の大体の察しはつく)。Q値によるセールストークには特に気をつけるべきではないだろ うか。


以上のようにQ値だけを比較してR2000ツーバイの方が性能がよいと考えるのは早計である。ヒートブリッジや夏型結露に対する優位性を考えても、理論的 には外断熱の方に魅力を感じてしまうのは私だけだろうか。


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