Starknight fencer

第9章 Enemy fleet

 

「総帥。話を聴いてくれますか?」

参謀長そうりゅうは・・・次の日になってシェルディア軍総帥に話しかける。

桃色の髪の毛に蒼い瞳の、軍服を着込んだ総帥・・・ランス・アルベーヌに。

「何ですか?」

「・・・海軍基地の食堂の米に何か混ざっているのです。調査願えませんか?」

ランス卿はうなずくと、すぐに考えを打ち明ける。

「私も気づいていたんです・・・ただ、兵士の一部にクーデターを起こす気配があるので、黙っていたのです。」

「クーデター!?シェルディア共和国を乗っ取るつもりですか!?」

「声が大きいです。聴こえてしまいますよ・・・」

「失礼・・・」

そうりゅうは頭を下げると、ランス卿に尋ねる。

「何故クーデターを・・・?」

「今の体制に不満を持つ人が多く射るようです。私を「政府の手先だ」とか言う人も目立ちますよ。私も政府には逆らいたくないだけなんですけどね・・・」

「それは総帥の責任ではありません!政府が・・・」

「ええ・・・それも、隙を見ているだけなんですけどね。いずれ・・・粛清しようと思っていますけどね。」

が、それは今じゃないと言うのがランス卿の意見。不満を抱えている人物もいると聞いたが・・・

「・・・どうします?」

「そうりゅう。ひりゅうと共に艦隊の運用を確かめてください。クーデター軍に内通している提督もいるはずです。海兵隊も・・・できるだけ早く。」

「はっ。」

そうりゅうは部屋を退室した後、ランス卿は後ろに飾られている槍を取り出す。

そして・・・丹念に磨き始める。

「この槍で人を殺めることは・・・できることならやりたくないのですが。」

 

シェルドハーフェン近海 0800時

「あれ?何で・・・?」

「はやぶさ」が近づくと、何故かオイルフェンスと防潜網で海上が封鎖されている。

入れそうな場所にはシェルディアのイージス艦「ふゆづき」が待機している。

「こちらDDA-21「ふゆづき」。航行中のミサイル艇は所属とクラスを言え。」

フィンは無線を片手に、応答を開始する。

「ミサイル艇「はやぶさ」級。所属は自警団。」

「・・・了解だ。通れ。」

48ktの巡航速度で「はやぶさ」はイージス艦のすぐ傍を通り抜ける。

管制官の誘導に従って埠頭に誘導され、コルベットやミサイル艇が停泊する第6埠頭に接舷した。

タラップを下ろして上陸したが・・・人通りがあまり多くない。

民間の船舶も停泊しているが、人が少ないのだ。

「あれ?首都って人が少ないね?」

フィンがそんなことを言うが・・・どう考えてもこれは異常事態だ。

シェルドハーフェンはかなり大きい島の南端部にある港湾都市。他の都市と道路でつながっているが通行止めらしいのだ。

もともと、この都市は海底に柱を立て、その上に市街地を建設したため橋で島とつながっている。

そこが、全部落ちたというのだ。

「・・・おかしいよ。どういうこと?」

「分かれて探そうよ。ね?」

カービィはフィンとレナを連れて、フィスカはクレアと共に市街地に向かう。

 

「前に首都着たとき、こんな感じ?クレア。」

「・・・違う。」

フィスカとクレアは市街地中央に来たが・・・殆どの人の表情は普通だ。

が・・・目に光が宿っていない。殆ど無気力状態だ。

「おっかしいなぁ・・・何この無気力連中。」

ためしにフィスカが1発拳銃を真上に撃ってみたが、数名が逃げ出した以外は一瞬だけ止まっただけで後は普通に歩いていく。

「・・・無気力連中、的をいた表現だ。貴様には珍しいな。」

「貴様にはっての余計だよ!」

そこを突っ込むのか・・・とクレアは言いたくなった。普通は「珍しい」って方を突っ込むだろう。

「・・・ずれてるぞ、フィスカ。」

「ま、そんなことよりこいつら何か食ったの?悪いものでも。」

「貴様では在るまい・・・」

「だから貴様ってのは余計なの!」

フィスカは怒りながらも、とにかくクレアについていく。

到着したのは飲食店・・・海軍御用達のところだ。

そこにまともそうなのが2人いる・・・蒼い髪の毛の2人。

1人はすこしぼさぼさで軍服を着こんでいるが、もう1人はすこし露出が多めの私服。が・・・2里とも海軍の軍人だ。

何があったか、事情を聴きたいようだ。

「・・・失礼。」

「何か?」

「・・・町の人が異常事態だ。どうなっている?」

1人の・・・軍服を着込んだ少女のほうはクレアに答える。

「何か米とかパンに劇薬が混ざったらしい、私とひりゅうはスープで何とかしているから構わないが。」

「参謀長のそうりゅうか・・・?」

「ああ。」

似たもの同士・・・フィスカはそう感じている。

あまりクレアも身だしなみに気は使わない。言葉遣いも同じだ・・・

「おなかすいてる?」

「あ・・・ま、まぁね。」

「じゃ、おごってあげるよ。ここはサンドイッチがおいしいけど・・・これでもいいかな?」

注文したのはハンバーグとスープ。実はフィスカもかなり好んでいる。

刺客の場合、かなり敏捷に動くので体力もかなり消耗するのだ。

「ほんっとうに姉さんってやばいでしょ?口調とか。あの口調聞いてると本当に♀かって言いたくなるよ。」

「あ、こっちの相棒もそんな感じ。粗雑で気遣いなしでさ、しかも冷静すぎて地震でも動じないっての。」

「おんなじじゃない。あれじゃ、近くに爆弾が落ちても平然としてるかも。」

「あ、言えてる。」

案外、あっさりと意気投合してしまった。

相手は海軍、こっちは刺客・・・相容れない存在のはずだが。

 

「ってか、これは完全にやばいな。」

「ま・・・暗殺がやりやすいしいいかな。」

2人の刺客が、悠々と市街地を歩いている。

1人は蒼い髪の毛と蒼いコート。黒い瞳。もう1人は黒のショートヘアーに青のコート。

原因不明に住民が無気力になった・・・それを見て、何を思っているのだろうか。

「キリル、お前は何を考える?こいつらを見て。」

「・・・クーデター。絶対に起こるに決まってる。だから食い止めるんだ・・・クラウスさ、平然としてられるの?クリスとか・・・」

「あんなの・・・妹でも何でも無い。気ままに仕事をする奴ってのはダメだ。」

クラウスにとって、気ままに刺客をやっている奴は「命への冒涜」らしい。

生きるために相手を殺すのもどうかと思うが・・・クラウスにとっては「そんな気ままな奴に殺される相手なんか浮かばれない」ようだ。

まぁ、どちらも変わりないだろうが・・・結果が同じなら。

「代わらないと思うの、こっちだけかな?」

「・・・知るか。」

クラウスはため息をつき、この無気力な集団の中を歩いていく。

何か起こる、そんな予感を感じつつ。

 

「やっぱり、どうかしてるね・・・」

「うん・・・」

カービィとフィン、レナもこの異変にうすうす気づいている。

市街地を歩いて道を尋ねたが、殆どが無気力な状態なのだ。

「・・・なんでこんなことしてるのかな?」

フィンが訊ねてみたが、2人ともその理由はわからない。

住民を無気力にさせてどうしようと言うのか・・・その真意は誰にもわからないのだ。

が、海軍の警備兵も同じようになっている。裏がありそうだ。

「・・・何かありそうじゃない?クーデターとか・・・」

レナがそんなことを言ったが、今の3人には何もわからない。

計画が何であるのか、何のためにこうなったのか・・・

「・・・フィン、レナ。尾行されてる。」

「まずいね。早めに「はやぶさ」に戻ってフィスカとクレアを待とうよ。ね?」

異変に気づいたカービィの言葉を訊き、フィンが提案する。

2人はうなずくと、すぐに「はやぶさ」まで戻ろうとしたが・・・取り囲まれてしまう。

「何か用でも?」

「そういうことだ。手荒な真似はしない。おとなしくついて来い。」

何かやったら殺す、そんな雰囲気だ・・・しかも銃を構えた兵士が6人くらいいる。

やむなく、3人はそのままついていくことにした。

 

シェルドハーフェン軍令部に連れ込まれ、3人はイスに座らされている。

テーブルを挟んで、向こうに誰かがいる・・・名前はわからない。

「何で軍基地に呼ぶのさ・・・自警団の僕達を。」

フィンは文句ありそうな目で相手を睨みつける。

「正常な人間が邪魔だからな。無気力な状態のままでいればいいものを・・・」

「どういうことさ・・・」

カービィが鋭い視線で相手を見つめるが・・・動じていないようだ。

むしろ、薄っすらと笑みすら浮かべている。

「第17艦隊と第4艦隊に連絡したらどうなると思うかな・・・?「ゆきかぜ」級イージスで壊滅されるのは君たちだよ?」

「たかがイージス1隻だ。貴様らが抱いている「ゆきかぜ」神話は幻想にすぎない。まぁ、ヴィルベルヴィントは撃沈しただろうが・・・こちらは第2艦隊と第3艦隊、第6艦隊を味方につけている。「ゆきかぜ」もクルーがいなくなればただの鉄の箱だ。」

まぁ、確かにそうだ・・・とカービィはうなずいてみせる。

が、こいつらはかなり危険だ。下手をしたら何するかわからない。

「で・・僕達はどうするのさ?シェルドハーフェンを他の島とかから隔離してさ。」

「クーデター発生まで黙っていて貰おうか。そうすれば手出しはしない。」

「・・・難しい相談だね。僕達の命をうばうならやめといた方がいいかも。逆襲されるから。」

いたずらっぽくカービィが笑った途端、いきなり剣が突きつけられてしまう。

「それでもか?」

「まぁね。この兵士2人の命を奪うならいいけど・・・?」

少しも臆することのない表情を見て、相手は不機嫌そうな声で言う。

「・・・こいつは監禁しておけ。あとの2人は外に放り出せ。」

「ははっ!」

兵士に連れられ、カービィはどこかに連れ出されていく。

その途端・・・フィンとレナはいきなり睡眠薬をかがされて眠ってしまった・・・

 

「・・・はぁ。ああ言われたら対抗したくなっちゃうじゃないかぁ・・・」

カービィは牢獄に入れられ、ため息をついてしまう。

同じ部屋に誰かいるようだ。

「裏に気づいた人は同じ宿命をたどる。頭を使えばよかったんじゃないか?」

「君は?」

「ウェイン・ディルカス・・・シェルディア海兵隊副司令官だ。元・・・ってつくけどな。」

カービィもその名前は聞いたことはある・・・サジタリウス討伐で何度か活躍した人物だ。

が・・・司令官がその人気をねたみ航空支援を送らず、敗戦の責任を全部擦り付けて幽閉させたと・・・

「・・・お前も閉じ込められたんだな。何やったんだ?」

「クーデターの裏事情知ったらこの有様。ところで、君は・・・」

「囚人の食料に変な薬が先日あたりから入ってきたんで飯だけ投げ捨ててあと全部食ったんだが・・・クーデター関係か?」

カービィがうなずくと、ウェインは胸をなでおろす。

「俺が用無しになって殺されるんじゃないかと不安でね・・・ま、そうとわかれば第17水雷艦隊に知らせなければな・・・俺が脱獄の方法を教えてやる。だからクーデター潰すのに協力してもらう。」

「いいよ。僕も許せないと思ってたんだ。協力するよ。」

二つ返事でカービィは合意すると、ウェインは針金を取り出す。

そして、鍵穴に差し込むと弄繰り回す。

「俺はこういう懲罰房に何度も入れられたけどな、鍵開けて脱走しまくったんだ。こういう針金とか何度も作ってな。」

「ふーん・・・ずいぶん問題ありだったんだね。」

「上官の目からすればそうだ。ま、あいつらは保身しか考えていないからな・・・俺から見れば軍人の屑だね。確かにランス卿も参謀長も、ソルジャーだっていい奴だけどな・・・」

「真ん中に居座ってるのが悪い奴らってこと?」

ウェインはうなずくと針金を弄繰り回し、鍵をあける。

そして・・・看守が離れた一瞬の隙を突き、カービィを連れて逃げる。

 

続く