Starknight fencer

第8章 Swordsman

 

シェルディア空軍基地跡 2300時

「まだ遠いのかな・・・」

高速の「はやぶさ」でいくら進んでも、まだ首都にたどりつかない。

明日にはつくらしいのだが・・・

フィンは、夜空を眺めながら首都のことを考えている。

「首都に行きたいの?フィン。」

「レナ・・・」

前はつんとした態度を取られていたが、ここ最近打ち解けてきた。

少しだけ、フィンはそれが嬉しかった。

「どんな世界かな・・・って思ってね。見たことないところだよ?陸地ってものがあって、そこに人が住んでいるんだから・・・」

「ロマンチストね、意外と。そんなこと考えるなんてさ・・・」

「兄さんによく言われたよ。星空が好きなお前を軍人として育てたくないって。」

このレイシスの気持ちは、本心からのものだろう・・・軍人といっても所詮は人を殺すだけ。

そんな殺伐とした職業など、やらせたくないに違いない。

「どこで戦い方を覚えたの?レナ。」

「自衛手段として生まれ故郷で覚えたの。私達をみたら普通の人は驚いて何するかわからない・・・だから、殺そうとしてきたら倒すしかないの。」

「僕も同じ事言われたなぁ。自分の命は自分で守るしかない。特にお前は命を狙われる存在だ・・・って。」

ことに、人魚の肉を食べると不老不死になれるという伝説が横行しているからかなり厄介だ。

少なくとも、2人にとっては。

「・・・ま、同族だし仲良くしよっか。」

「仲良く・・・ね。ま、裏切りそうにないから信用できるかも。」

そっと、レナはフィンの手を握っていた。

誰か信用できる相手が欲しい。それを得たのだろうか・・・

 

「ここでお別れですね・・・」

リシュアはそういうと、廃棄されていた16式魚雷艇に乗り込む。

燃料なども充分にあり、まだ使えそうだ。

「そっか・・・超兵器を壊しにいかなきゃね。」

カービィは2人の使命に納得し、仕方ないと思って手を振る。

「短い間だけどさ、楽しかったよ。じゃあね。」

リシスも手を振ると、16式魚雷艇はそのままどこかに向かっていく。

「・・・彼女たちには目的がある・・・永遠の命を受けつつも、常に新しい目的を見つけて前に進もうとする。カービィ・・・お前の目的は?」

「え?」

クレアに言われ、カービィは少し考えてみる。

シェルディア海軍に所属してもいいが、まずやりたいことがあった・・・サジタリウスの討伐だ。

もう、あの水上集落のような目にはあわせたくない・・・他の水上集落もいくつか彼らのせいで壊滅状態に陥っているのだ。

「僕は・・・サジタリウスを壊滅させるよ。彼らの空母も、戦艦も・・・超兵器を盛っていたら、超兵器も倒すまでさ!」

「威勢のいい・・・奴らはもう1国家としての体裁を整えている、容易なことでは倒せない。それでもか?」

「当然さ。略奪をおこなうだけの国家は倒れて当然だよ!廃棄予定の駆逐艦を探すために行きたいんだ・・・せめて巡洋艦くらい欲しいけど。」

シェルディアでは戦艦こそ廃棄は滅多にしないが、今は大幅な戦力改変期のため巡洋艦や駆逐艦を新鋭艦に置き換えている。

廃棄する予定の巡洋艦は滅多に買い手がつかず安く引き落とせる、それにミサイルなどでも積み込んでカービィは突撃するつもりのようだ。

「巡洋艦1隻の実力など多寡が知れている。廃棄予定の巡洋艦で何ができる?今のミサイル艇「はやぶさ」でもいけるんじゃないのか?」

「それもそうだけどね・・・でも、僕が人を集めて巡洋艦を何とか動かすよ。傭兵とかに頼んでさ。」

「・・・サジタリウスは財宝を抱えている。それをエサに釣るつもりだったか。アイディアはいい・・・が、ダメだ。貴様には艦船の運用能力が足りない。魚雷艇と巡洋艦では戦術が違う。」

魚雷艇は一撃離脱で責めればいいが、巡洋艦は小回りがイマイチ聞かないので相手によって戦術を変える必要がある。

駆逐艦は火力で押し切り、巡洋艦や戦艦に魚雷やミサイルによる一撃離脱を使う・・・が、その判断が難しい上に巡洋艦では大きいので被弾しやすいのだ。

シェルディア海軍でも一番なるのが難しいのは巡洋艦の艦長と言われるほどなのだから、カービィ程度では無理・・・それがクレアの意見だ。

「でも・・・それは何とかなるよ!僕達は・・・」

「正しさは常に強さと結びつくことは無い。カービィ・・・正規軍と同行した方がいいと思う。これが私の意見だ。」

「そう・・・」

まぁ、第17艦隊でも協力してもらえれば何とかなりそうだ。

が・・・そんな余裕もないだろう。ヴェルガンド帝国やルーメン公国などの隣国がある以上、迂闊に戦力は引き抜けない。

最近は潜水艦での攻撃が激しくなり、駆逐艦隊はひっきりなしに出撃しているのだ。

カービィは、その答えに落ち込むしかなかった。

「まぁ、総帥に直談判して第4艦隊と行動を共にすればいい。このミサイル艇なら中枢を叩く能力がある・・・そう思わないか?」

「そっか・・・」

「どっちにしても首都に向かうわけだ。明日6時出立だ。」

「わかった。」

カービィはうなずき、船室に戻っていく。

フィンとレナはまだ眠らないようだが、いずれ戻ってくるだろう。

 

「ゆきかぜ」艦内 2330時

「あー・・・」

ティトは眠そうな表情でまたベッドにもぐりこむ。

先ほど緊急の警報が係り敵潜水艦を発見、アスロックをぶちこんで撃沈したようだ。

が、その警報の製でティトとシエルが起きてしまったのだ。

「ごめんごめん・・・この部屋の警報切っておくね。」

ゆきかぜが入ってくると、2段ベッドの上に上がり警報のスイッチを切った。

「ゆきかぜ・・・さっきはごめん・・・」

「いいよ、あんまり気にしてないし。けど・・・シエルの両腕って義手?」

見た感じはわからないが、良く見ると実際それだとわかる。

かなり精巧で見た目にはわからないが。

「触ってもいい?」

「・・・切り裂かれるの覚悟なら。刃を仕込んでるからね。」

「じゃ、やめとこうかな。」

確かにそれは意表をつく武器であり、どんな状況下でも確実に使えるだろう。

が・・・相当な訓練が必要なはずだ。それにシエルの場合両腕・・・何かわけありのようだ。

「あんまりシエルに迷惑かけないで。気にしてるんだから。」

「ごめんごめん。用が済んだしもう戻るよ。」

ゆきかぜはそっと扉を開けて、どこかに向かっていく。

ティトは扉を閉ざすと、ふぅとため息を吐く。

「・・・気楽だよね。君の過去知らないで・・・」

「もう慣れた。お姉ちゃんに聞かれてティトに聞かれて・・・この両腕も、今じゃなんとも思わないから。それに・・・もう、報復は果したからね。」

「そっか。お姉ちゃんのおかげかな・・・」

ティトはクリスに入院の資金を貸してもらったこともあり、またシエルの義手のためにお金を出していた。

シェルドハーフェンの孤児たちに暗殺で稼いだ資金で食費などを用立てている。

「私達なんて幸運よ・・・こうして元気に動けるだけ。首都じゃ感覚とかやばくて、治せないのもあるんだしさ。」

「そうだね・・・でも、やっぱりダメかな・・・?これってさ。」

「どうせ死ぬのはヤバイ連中だし、いいんじゃない?」

であったときこそ少し暗かったが、最近のシエルはポジティブになっている。

それはそれでもいい。ただ、クリスの影響が強いのかもしれない・・・ティトはそう感じていた。

あのポジティブの塊である姉にカウンセリングを受けたら、間違いなく自殺志願者でも明るくなるだろう。

・・・もっとも、ほとんどが刺客だの傭兵だの物騒な仕事につくことになるだろうが。

「まぁね。それでいいかな・・・」

ティトは難しく考えるのをやめると、冷房を効かせて寝ることにした・・

が、シエルが引っ付いてきた。

「シエル・・・暑くなりそうだから他のでねて。」

「ベッドが2つしかないんだから、仕方ないよ。」

「・・・ごめん。明日怪我するかも・・・」

ティトは、寝ぼけてシエルが自分を斬らないかと不安で仕方ないようだ。

 

「気持ちいいか?艦橋の天井なんかで夜空を見上げて。」

夜空を見上げながら、クリスは物思いにふけっていたが・・・ソルジャーが着たので起き上がる。

「まぁね・・・」

「何で刺客って言う職業なんだ?正規軍でも充分通用する腕前だ。敏捷性、狙撃の腕前・・・」

「あんた、いっつもそうやって核心を聞くの?ま・・・いいけど。」

クリスはふぅとため息をつくと、少しずつ語り始める。

「私さ、普通に食べていくだけならシェルディア海軍か海兵隊でいいと思う。けどね、私は孤児を預かってるの・・・戦争で両親を殺されたり、病気で死んだりしたのをね。」

「何?」

「まぁ、私はお金だけ送ればあとは何とかなるんだけどね・・・正規軍の稼ぎじゃ足りないからこうしてるわけ。あんたにわかる?」

「・・・わからないな。けど、感じるから聞いた訳だ。あんたは絶対に悪人じゃないからな。」

ソルジャーがそんなことを言うと、クリスは屈託のない表情で笑う。

「何考えてんの?私刺客だよ?人殺しの職業を悪くないといえるなんてさ、あんた、そーとーやばいんじゃないの?」

「俺は何千も相手を殺した。お前みたいに直接見るわけじゃないが・・・知ってるのか?対艦ミサイルが直撃しただけで何十人も死ぬ。魚雷で一瞬で沈めたら殆ど助からない・・・それをわかっているのか?」

ようやく、クリスもそれに気づいたがまた笑ってみせる。

こいつに人命尊重とか、そんな考えは殆どないようだ。

「侵略してきた相手を倒すだけなら、自業自得ってものよ。」

「それもそうだが・・・俺は刺客でも別になんとも思わない。どんな罪をかぶろうが・・・俺の犯した罪以上のものはないと思っているからだ。」

撃沈する艦船の大半は人が乗っている。無人ミサイル艇なども存在するが殆どに乗っている。

ソルジャーは・・・それがわかっているが、それだからこそやっているようだ。

「・・・ソルジャー、強いのかな。」

「何?」

「そんな風に自分のやったことと向き合って生きていけるって。私なんか快楽主義者だし、こんな風だしさ。自分が殺した標的と向き合うなんてできないし。」

「深く考えるな。だいたいの軍人もそういう奴が多いんだ。ジョーク飛ばしたり、荒々しい言動が多いのもそれで忘れようとしているだけだ。」

が、ソルジャーも天井に寝転がると微笑してみせる。

「って、俺もそんなシリアスなこという奴でもねーし・・・やっぱりこの話はやめないか?疲れる。」

「ま、私もそうだしね。敵だから倒す・・・それでいいかな。」

「ああ。俺なんてそんな真似できないな。ってか、そういうのがいることは知っていたんだけどな。」

「首都で紹介してあげる。」

クリスはそう答えると、手帳を取り出し1人ずつ紹介していく。

その内容をソルジャーはしっかりと覚え、そんなことをしながら夜を明かしていく・・・

 

シェルディア海軍軍令部 0015時

首都シェルドハーフェンの軍港にたたずむ巨大な建物。

遠距離狙撃砲台や対空バルカン、ガトリング砲などが配置された城壁が海軍の停泊地、およびこの軍令部の建物を囲んでいる。

そして・・・軍令部自体はくすんだ灰色で塗装されているがその姿は戦艦にも似ている。

1基の巨大な主砲・・・80cmクラスの主砲と超兵器クラスの56cm砲連装5基。

巨大な口径を持つガトリング砲に鋭い先端・・・ドリルにも見えなくは無い。

建物の近くに行くと、いきなりコンクリートの地面が木の床にかわっているがこれも理由は不明。

その線をたどると丁度戦艦のようなので、戦艦ではないかともっぱらの噂だ。

が・・・その真偽など誰にもわからないのだ・・・総帥の信頼が厚いこの2人でも。

 

「疲れたなぁ・・・」

「仕方ない。ここ最近は潜水艦が多いからな。」

通商破壊の戦果などを書きとめ、参謀長そうりゅうと第1司令艦隊副官、ひりゅうは食堂に向かっていく。

この2人は巡洋戦艦「そうりゅう」とガトリング戦艦「ひりゅう」の艦の意思であり、人手不足のシェルディア海軍に採用されたのだ。

一応は同じ船体から製作された姉妹艦のため、2人とも姉妹らしいが・・・外見以外では姉妹と立証するものは殆どない。

「さ、夜食でも食べるか・・・」

そうりゅうが食堂に向かい、さっそくカレーを注文。ひりゅうも同じものを頼む。

「しかしさ、最近は民間の客船も狙われてるよね。特に中型から大型の客船が。」

待っている間、ひりゅうはそうりゅうに話しかける。

「シェルディアの鉱山資源は殆どルーメンからの輸入品かH8海域の海底鉱山から採掘している。それとシェルドハーフェンを切り離して資源を枯渇させようというのだろうな。」

陸地は殆どないこの世界、かなり大き目の島に作られたシェルドハーフェンは食料こそしっかりと確保できるが鉱山資源が殆どない。

だから海底採掘用の潜水艦を製作し鉱山資源を採掘、さらに潜水艦大国であるルーメンから大量の物資を仕入れているのだ。

「でもさ、客船を狙うなんて酷いよ・・・」

「潜水艦はソナーだけが頼りだ。最近は潜水艦対策で客船にもフリゲートをつけるから客船と間違えるのだろうな。」

最近ではシェルディアは民間客船の武装などを呼びかけているが、輸送艦はとにかく客船は「そんなことはできない」との文句が多い。

かといって民間人に犠牲者を出すわけにも行かず、結局フリゲートで護衛をしているが・・・これまでに2隻が撃沈されている。

大災害から唯一残った大陸、南方大陸への客船2隻がヴェルガンド潜水艦「セイルフィッシュ」の対艦ミサイル攻撃で轟沈してしまったのだ。

敵潜水艦はその時の提督の機転で12.7cm砲がぶち込まれて潜水不能になり浮上、拿捕された。

「客船にCIWSなどつけたら不恰好になるのはわかるが・・・命がかかっているんだぞ?」

「姉さんはいっつもそう。見かけより性能重視だからね。客船じゃなくて良かったと思う。」

「かもしれないな・・・」

すると、給仕がカレーライス2つを持ってきた。

丁度良くおなかもすいていたのでそうりゅうは口をつけたが・・そのまま沈黙してしまう。

「姉さん、どうかした?」

夢中でカレーライスをほおばっているが、そうりゅうはすぷーんを置く。

「・・・急に吐き気がしてきた。ひりゅう、行くぞ。」

代金を置いて、そうりゅうは無理やりひりゅうを連れて部屋に向かう。

「ね、姉さん!まだ食い残してる!」

「・・・そんなことを言っている場合ではない。とにかく寝るぞ。」

無理やり部屋に連れ込まれ、そうりゅうは鍵をかけるとイスに座る。

「何で食べかけのまま出たのさ!?ねぇ!」

「ひりゅう・・・今日からパンと御飯は食うな。何か入っている。」

「え!?」

何か・・・とききひりゅうはびっくりしてしまった。

もう、ほとんど食べてしまった・・・

「・・・食べた感じだが、即効性の毒ではないな・・・むしろ抗生物質だ。」

「た、食べたらどうなるの?ねぇ、どうなるの!?」

ひりゅうは恐怖のあまり振るえ、そうりゅうを揺すっている。

「お、落ち着け!」

「無理だよ!恐いよ、かなり恐いよ!」

「お前が食べた量なら影響はない!1日くらいまともに食えば影響がでるから話をよく聞くんだ!」

ひりゅうはようやくイスに座り、話を聞く。

「で、どうなるの・・・?」

「無抵抗で無気力な状態になってしまう。そんなところだ。脳に影響がでるから気をつけておくんだ。まぁ、メインディッシュには入ってないから明日からそれを選べ。」

「う、うん・・・」

「あの様子だと住民や兵士にも影響が出るかもしれない。自分のクルーの兵士だけでも良く伝えておくんだ。いいな?」

「わかったよ・・・」

「私は、明日総帥に上申する。よく眠っておくんだ。」

そうりゅうは毛布をかぶり、ベッドで眠ってしまう。

が・・・ひりゅうはあまりの異常事態に何がなんだかさっぱりわからない。

「何があったの・・・?何でこんなことに・・・?」

 

続く