
Starknight fencer
第7章 Snowwind
DDB「ゆきかぜ」艦橋
「艦長、ノイズがレーダーに!」
それを聞いた途端、ソルジャーは陸戦隊を見捨てそのまま出航する。
最初からほうっておくつもりだったのだが・・・超兵器が出撃したとあればなんとしても止める必要がある。
あの高速戦艦は第4艦隊へと向かっている・・・第4艦隊はサジタリウス討伐のため揚陸艦と巨大双胴戦艦「ハリマ」を有している。
そこに超兵器が突っ込めば、大被害は確実だ。
「すぐに向かうぞ・・総員戦闘配置!」
「ゆきかぜ」は69ktの最高速力で敵超兵器に突撃、先制攻撃といわんばかりに巡航ミサイルを発射する。
敵艦はそのミサイルに気づくと、57mmバルカンで迎撃。
艦首をめぐらせ、51cmクラスの主砲を発射してきた。
「回避するぞ!」
着弾地点がレーダーに表示、「ゆきかぜ」はその間をすり抜けるように動く。
1万トンクラスのイージス艦はかなり小回りが聞き、敵艦の砲弾でも意図も簡単にかわせる。
だが、それだけ装甲が薄く被弾したらひとたまりもない。
周囲に水柱が次々に吹き上がるが、「ゆきかぜ」へのダメージはない。
「射程距離到達!」
敵超兵器をロックオン、「ゆきかぜ」は右舷を向けて魚雷発射管を艦内から出す。
「敵艦をロックオン、魚雷にデータ入力!」
「撃て!10発斉射!!対艦ミサイルをまとめて撃て!」
10発の特殊弾頭魚雷が、高速で敵艦に向かっていく。
敵艦は57mmバルカンで必死に迎撃しようとしているが、酸素魚雷は高速で敵艦に向かっていく。
しかも対艦ミサイル迎撃のためにバルカン砲がそちらを迎撃してしまい、魚雷も全然迎撃できず10発全てが着弾してしまう。
「さて・・・そろそろだ。」
魚雷は弾頭部分が硬く、なおかつ鋭いため敵艦の装甲をあっさりと貫通してしまう。
敵艦の艦底を突き破ると同時に気化燃料を放出、十分に燃料が充満したところで引火させ大爆発を引き起こさせるのだ。
敵超兵器は右舷部分が吹き飛び、搭載されていた右舷部分の兵装も大きく吹き飛んでしまったようだ。
「早く脱出しようよ!もうあぶないよ!」
だいぶ「ヴィルベルヴィント」の速力も低下し、何とか脱出できそうな気配だ。
このままだと艦と運命を共にするということにもなりかねない。
「こっちだよ!」
ミサイル艇「はやぶさ」が左舷に接舷、フィスカがロープを投げてきた。
この上を滑り降りて、早く飛び移れとでも言いたいのだろう。
「リシス・・・こうなったら一緒に出よう?ね?」
「しっかたないなぁ・・・超兵器はきっと沈めてくれるはずだしね。」
レナに言われ、リシスはロープの上を滑り降りてフィスカにキャッチされた。
続いてレナとフィンもそのまま滑り降り、カービィもすぐに向かう。
「やばいよ、はやく!」
「はやぶさ」と「ヴィルベルヴィント」が逆方向に舵を取ったため、今にもロープが切れそうだ。
間に合わない・・・そう感じたカービィは途中でジャンプして甲板に飛び降りる。
途端にロープが切れ、「はやぶさ」は超兵器から離れていく。
「間に合ったね・・・」
ふぅとため息をつき、カービィはその場に座り込む。
本当に判断を間違えていたら、海に落ちて大怪我していた・・・いや、「ヴィルベルヴィント」のスクリューに巻き込まれて命はなかったかもしれない。
「まだだと思う・・・早く艦内に!」
フィンがカービィを連れて艦内に入ろうとした途端、敵艦の57mmバルカンがこちらを向いた。
ミサイル艇ではあの銃撃だけでも致命傷を負いかねない・・・ましてクルーなら。
「ぼーっとしてる暇はないよ、艦橋に入って!」
フィスカもリシスを連れて艦橋に向かい、レナは艦橋よりも近い機関室に入っていく。
その途端に無数の重々しい銃声と共に水柱が巻き上がった・・・57mmバルカンの砲撃だ。
数発がマストに命中したが、たいしたダメージではない。
「あぶなかったぁ・・・」
「1発帰してやる。発射!」
クレアが対艦ミサイルVを操作、57mmバルカンの砲塔に直撃させる。
「ゆきかぜ」の対艦ミサイル迎撃に気を取られていた隙に破壊され、起動しなかったようだ。
「全速で逃げるよ!出力最大!」
ワルター機関がうなりを上げ、独特の甲高い音をなびかせながら「ヴィルベルヴィント」から離れていく。
それが幸いだったのかもしれない・・・この後の悲劇を見なくて済んだのだから・・・
「敵超兵器停船!無線で降伏すると言ってます!」
戦闘中はゆきかぜも敬語を使っているが、副官として当然らしい。
ソルジャーは無線機を片手に、敵に呼びかける。
「救命ボートを出せ。超兵器は曳航する。」
「応じました・・・って、敵超兵器再起動!」
無線から悲鳴のような声が聞こえ、同時に敵超兵器が満身創痍ながらも対艦ミサイルを発射してきた。
敵兵が驚きの声を上げているが、その悲鳴とは別物のようだ。
同時に魚雷も発射、飽和攻撃を仕掛けるつもりだ。
「CIWSを対魚雷迎撃に、後はミサイルを片付けさせろ!」
RAM発射機と速射砲がイージスシステムと連動、1分間に80発もの砲弾を発射する。
それが全て対艦ミサイル予想進路上にばら撒かれ、次々に爆発しミサイルを落としていく。
同時にバルカンが射線上の魚雷を片付け、「ゆきかぜ」の安全を確保する。
「スクリューを魚雷で狙う!通常炸薬魚雷装填!」
「了解!」
「後部左舷発射管、撃て!!」
魚雷が敵艦の航跡をロックオン、一斉にスクリューに向かっていく。
スクリューは大破、敵超兵器の行動が止まってしまった。
が・・・敵艦もまだ主砲を発射してきたのだ。
「兵装システムがまだ生きてる・・・中枢を破壊しないと!」
「面倒だ、撃沈するぞ!」
「もう本当にどーにかしてよ!」
「無理だよ!」
先ほどから扉はロックされる、集中攻撃は受けるでクルーの大半が吹き飛んでしまった。
艦橋にいるのはクリスとティト、シエルの3人程度。
機関室に向かったクルーは何とか脱出したようだが、ここから脱出しないと危険だ。
「こっち。早く急いで。」
シエルが防弾ガラスを剣で切り裂き、艦橋外の梯子を見つけてきたようだ。
窓からクリスとティトは逃げ出し、梯子を降りて艦橋から降りていく。
が、対艦ミサイルを受けた衝撃で一番上にいたティトが手を放してしまった。
「うわ・・・わぁぁっ!」
「・・・っ!」
とっさにクリスはティトを抱え、そのまま梯子から飛び降りる。
甲板に着地する前に身体を丸め、その上を転がって落下の衝撃を少なくしたのだ。
「さっすが、お姉ちゃん。やっぱり凄いよ。」
「もう二度とヘマやるんじゃないの!こっちがきついんだから・・・」
シエルも梯子から降りて甲板に立つと、救命ボートを持ってきた。
すぐに膨らませたが、海に落とすには少し高すぎる。
超兵器は船高が高く、甲板から海までの距離も通常艦艇の比較にならない。
幸いにも、少し傾斜しているようだが。
「せーので行くよ・・・シエル、ティト。乗って。」
「わかった。」
クリスが救命ボートの上に2人を乗せると、そのまま押して舷側から海に落とす。
そしてクリスも甲板から飛び降りて、海に飛び込んだ。
「っと・・・!2人とも大丈夫!?」
「なんとかね・・・」
上手く救命ボートは舷側を滑り降りて、着水する。
もう「ヴィルベルヴィント」は急角度で傾斜。戦闘続行など不可能だ。
とどめと言わんばかりに右舷に魚雷が命中、高い水柱が上がるのが見えた。
「お姉ちゃん・・・「ゆきかぜ」、やっちゃったね・・・」
この超兵器は装甲がかなり薄いようだが、それでもかなりの火力を有している。
あのイージス艦の性能はかなり良く、強力な武装を備えているに違いない。
「まぁ、漂流するわけにも行かないし助けて貰う?」
「そーしようか・・・」
救命ボート備え付けのエンジンをかけ、3人はそのまま「ゆきかぜ」に向かっていく。
「敵超兵器傾斜、爆発をおこしてます!」
「意外と弱かったな・・・図体は大きいくせに。」
並の戦艦程度の装甲で敵クルーの錬度もさほど高くないから勝てたようなものだ。
速度を生かされては厄介だが、そんなことをしないで火力で押しつぶそうとした結果だろう。
「漂流者の救助に当たれ。」
「あまりいないみたいです。特殊弾頭魚雷を喰らって大半が戦死したかと。」
クルーが、双眼鏡を見てから答える。
ずっと前、コンピューターシミュレーションで特殊弾頭魚雷が着弾した時の火災の広がり方を検証したことがあった。
そのとき、炎は艦橋下部を一瞬で焼き尽くしてしまったのだ。
あの超兵器も同じことが起こったのかもしれない。
「提督、向こうにボートが。」
「とりあえず助けてやれ。乗っている奴の特徴は分るか?」
「3人ですね・・・16歳くらいと12、3歳くらいの少年と少女。1人は蒼いロングヘアーです。」
「救助してやれ。」
クリスとティト、シエルの3人・・・そう読んだソルジャーは「ゆきかぜ」を接近させる。
速度は24kt程度に落とし、兵士の安全を図る。
69ktも出した場合、艦船自体の波でボートを転覆させてしまうからだ。
「あぶなかったね・・・」
「はやぶさ」は安全な海域へと脱出。ようやく彼らも安心できた。
ここまでくれば、敵軍も襲撃してくることなどないだろう。
「ところで・・・リシスとリシュアって似てない?」
フィスカの率直な疑問に、リシュアは静かに答える。
「ええ・・・妹ですけど、何か?」
「そんな気がしたからね。瞳の色と髪の毛の色が同じだったら大抵それっぽいし。」
刺客だが、フィスカは推理力が鋭いようだ。
すると、リシュアは1つの提案をする。
「私達をシェルドハーフェンまで送ってくれませんか?用ができたのです・・・超兵器を止めるという。魚雷艇1隻を購入して、超兵器のある場所を爆破します。」
「いいよ。」
フィンはあっさりうなずいたが、カービィは少しさびしいと感じた。
仲間がいなくなるのだから、多少・・・
――僕の悪い癖かな。
親しくしたりするとあっさり信用してしまう、そして仲間だと思って分かれるのも辛くなってしまう。
まぁ、それが自分のいいところだが・・・離れてしまうのは仕方ない。
「じゃ、それまで・・・」
何を言いたいか分らないが、それでもいい・・・
カービィは、船室で眠るため階段を降りていく。
続く