Starknight fencer

第5章 Aegis or Justice

 

「・・・何!?」

ソルジャーが思わずうなったのも無理はない。

中央政府からの直接命令で「フォルオールの命令に従わなければ第17艦隊を解体、「ゆきかぜ」を廃棄する」と通達してきたのだ。

一応、シェルディア共和国は総帥府が置かれているが政府の直接命令にも従わなければならない。

それが現実・・・政府が軍の全てを統括しているため上手く軍が動けることが少ないのだ。

統帥権独立・・・以前シェルディアはそれで暴走したため今のような制度になったがなかなかこれでは軍が動けない。

逆に政府が軍をあやつり、このような突拍子もない通達文で無茶な命令を出してくるのだ。

「艦長、何が?」

「・・・どうしたらいいと思う?」

ソルジャーが見せた通達文を見て、ゆきかぜも卒倒しそうになってしまう。

「これが本当に政府から!?」

「ああ・・・だから始末に困っている。総帥もかばいきれまい・・・かといって、逃げる場所もないからな。」

「そんな・・・」

「ゆきかぜ」を潰されるということは、その意思であるゆきかぜもまた死ぬことに成る。

政府にもフォルオールの息のかかった奴がいる。そいつらにこの紙切れを書かせれば簡単にあやつれるわけだ。

「・・・どうしたらいいの?艦長・・・」

「ゆきかぜ・・・」

「あいつについていったら絶対にやばいことになるとおもうよ?でも、私は艦長から離れたくないよ・・・っ!」

ソルジャーも・・・ゆきかぜの表情を見てどうすることもできない。

自分の意思を貫くか・・・それともゆきかぜを取るか。

「・・・ゆきかぜ。」

「何・・・?」

「俺は、お前を見捨てられない・・・」

ソルジャーは、ゆきかぜを抱きとめるとそっと耳元で囁く。

「・・・けどな、頭というのは生きているうちに使うものだ。罠にかける。」

「え・・・?艦長、そうしたら命が・・・」

「命を狙われるのには慣れているさ・・・」

ソルジャーは、この少女だけは誰にも手出しさせないつもりだ。

自分を慕ってくれているのだから・・できるだけ守ってやりたいのだ。

「誰にも、手出しはさせない・・・」

 

「ふぅ、片付いたかな。」

フィスカとカービィが武器を鞘に収め、ほっと一息つく。

「私は45人くらいかな・・・カービィは?」

「何のこと?」

「倒した敵の数。」

やれやれと思ったが、刺客だからそれくらいなんでもないのだろう。

剣客を名乗っている自分だが、さすがに倒した人の数を数える余裕もないししたくもない。

「・・・ごめん。僕には無理さ。」

「ま、そりゃそうよね。平然と数えられる方がおかしいし。ことにカービィ、あなたみたいな人だったら。私は・・・人が死ぬのには慣れてるから。」

「刺客だからね・・・僕は違う。自警団の協力をしていた剣客さ。」

「サジタリウスを何十人も殺してきたんだね・・・」

「そう・・・・けど、守るって目的があったからさ。君みたいに楽しんで・・・人数を数えることなんてできない。」

一安心した様子で、2人は軍港へと向かう。

この市街地もさほど安全ではない・・・ならば首都のシェルドハーフェンに行くのが一番だ。

「さ、行こう。」

「同感。」

「はやぶさ」にはフィンとレナ、クレアも待っていてくれた。

ここでサジタリウスの残党を食い止めてくれたらしい。

「あぶなかったぁ・・・さ、行こう。」

フィンは笑顔を見せて、最大出力で出航しようとした。

が・・・レーダーにノイズが映っている。

「・・・おかしいなぁ?レーダーが壊れたのかな?」

「嘘?」

レナがデッキに出て双眼鏡をのぞくと、目の前に巨大な戦艦が見える。

「え・・・!?何あれ!?」

「何!?」

クレアも双眼鏡をのぞくと、巨大なドリルを艦首に搭載した戦艦が見える。

戦艦自体巨大なもので、メガフロートから比べれば小さいがかなり大きい。

「・・・荒覇吐・・・」

「え!?」

「あのドリル戦艦だ。悪いことは言わない、早く逃げろ!」

「はやぶさ」が高速で離脱するため、機関を最大出力で脱出する。

戦艦はこちらに近づき、メガフロートにガトリング砲を乱射している。

「ひどい、住民が・・・!」

「カービィ・・・あれ・・・!」

ドリル戦艦は艦首のドリルを海上移動都市につきたて、そのまま貫いていく。

「・・・なんてことを・・・!」

「シェルディアも・・・海上移動都市は表向きで裏は海軍の補給基地として使っていた。元凶はシェルディアの招いたことだ。」

冷静にクレアが判断するが、カービィはこんなむごいことをする人たちが許せなかった。

「そうだけど・・・ひどいよ・・・・!」

ドリル戦艦が後進し、ドリルを引き抜くとそこから海上移動都市が浸水していく。

シェルディア共和国の国力の象徴だったメガフロートはあっけなく沈んでいく。

「軍事基地だけど・・・人が居るのにどうして・・・!」

「死ぬことは覚悟のうえだろう。軍事基地の上に民家を作ったのだから。知らなかったとしたらシェルディアの責任に決まっている。」

レナは納得がいかない表情で、あの巨大戦艦を見つめている。

「あれ・・・何なの?」

「超兵器ね。この世界のテクノロジーを超越した兵器。ヴェルガンドが大量に作ってるって噂。」

フィスカが何でもなさそうに答えたが、フィンとカービィ、レナは忌々しそうに見ている。

罪もない人たちを次々に殺していく巨大な悪夢、「超兵器」の姿を・・・

 

シェルドハーフェン市街地

「クリスお姉ちゃん・・・」

「何?」

蒼い髪の毛に黒い服を着た少女が、イスに座りながら本を読んでいる。

「僕も手伝うよ。」

「私も。」

「な・・・何言ってるの!?シエル、ティト・・・私1人で十分なの!危険な目にあわせたくないよ!」

クリスが首を振ったが・・・緑色の髪の毛の少女、シエルはまた食い下がる。

「・・・お願い。お姉ちゃんを危険な目に合わせたくないから。」

「あのね・・・生易しいものじゃないの!戦いなんだから!」

どうしてもクリスは反対しているが・・・この2人だけは戦場に出したくないのだ。

5年前から一緒に生活し、クリスが刺客で生活資金を作っていたのだがティトとシエルは絶対に前線に出すつもりはなかった。

「・・・僕達だって鍛えたよ!お姉ちゃんと訓練してきて!」

「わからない?私はあなたたちを死なせたくないの!」

「いいよ・・・勝手についていくから!」

ティトは壁にかかっている剣を取り、それを腰にさした。

それなりに決まっているが、クリスは不安をぬぐいきれない。

「でも・・・」

「お姉ちゃん、行かせてよ・・・いつも不安なの。帰ってこないんじゃないかって・・・」

刺客だから、いつ死ぬかも分らない。

だから2人は不安に思い、いつもいない間不安に思っていたのだろうか。

「・・・わかった。そこまで言うなら来て。」

クリスはしかたないなぁと言う表情でうなずくと、ティトとシエルはかなり喜んでくれた。

やれやれと思い、クリスは任務の内容を聞かせる。

「いい?私達は第17艦隊旗艦「ゆきかぜ」に乗り込むの。そこで降りた先にある『超兵器」って物を起動させればいいの。相手はサジタリウス兵、手を抜かないで。真剣だから。」

「わかった・・・行こう。」

「じゃ、武器をとって。剣だけじゃ足りないから銃も。」

「OK。すぐ行こう!」

クリスは小銃を取り、床の板をはがし箱を取り出す。

7.7mm・・・シェルディア共和国軍正式採用の弾薬が大量に収納されていたのだ。

「さて・・・行こう。そろそろ行かないと・・・「ゆきかぜ」の出航時間に間に合わせなきゃ。」

「いいよ。じゃ、急ごう!」

3人は扉を開け、2階の手摺を乗り越えて1階の地面に着地する。

ティトとシエルは着地に失敗しそうになったが、クリスが上手く受け止めてくれたので無事だ。

 

「・・・ひどいなぁ・・・これ・・・」

ドリル戦艦のせいで完膚なきまで叩きのめされた海上移動都市。「はやぶさ」は超兵器がいなくなってから戻ってきた。

救命ボートに乗っているのはこの都市の人口のほんのわずか・・・それをシェルディア共和国軍の輸送船が救出している。

「あ・・・」

右舷に出てフィンが見つけたのは・・・リシュアだ。

すぐにロープをひっかけて引き上げ、心臓が動いているか確かめる。

「・・・生きてる。しかしひどいけがだなぁ・・・」

右腕がかなりひどい怪我を負い、破片が突き刺さっている。

全身にガラスの破片まで突き刺さっているため、かなりやばい。

「・・・フィン、さん・・・?」

「名前知ってるの!?」

いきなり自分の名前を呼ばれ、フィンは少し困惑している。

「・・・そんな気がしただけです・・・何千年も昔にいたんです、そういう人が。」

「何千年って・・・君、頭の方は大丈夫なの・・・?幻覚を見てるんじゃないの・・・?」

そんなことをフィンが言っている間に、リシュアが意識を失ってしまう。

怪我をしているのに無理に話しすぎたせいだろうか・・・

「早く治さなきゃ!急いで・・・!」

フィンは船室へと駆け込むと、リシュアを寝かせ数少ない医薬品を持ってくる。

 

「・・・すみませんね。貴重な医薬品を使わせてしまって・・・」

「いいよ。怪我してる人にそんな文句は言えないさ。」

フィンは笑みを浮かべながら、食料を持っていた。

保存の利く圧縮食料で料理したものだからあまり味は良くないが、それでも食べられないことは無い。

「・・・私がおかしいと思っているでしょう?あのようなことを言って・・・」

「そ、そんなことないよ!そんな・・・」

あわててフィンは否定するが、リシュアはいたずらっぽく笑みを浮かべる。

「慣れてますよ・・・そんな風に言われるのは。」

「え・・・?」

「精神病院に入れられたこともありましたよ・・・脱走しましたけど。ただ・・・私は不老不死なんです。何千年も生きてきて今の時代にいるんです。」

「その目で・・・全てを見てきたんだ。この世界の始まりから終わりまで。」

「そこまでは見ていませんよ。ですけど・・・あなたたちが伝説として語り継ぐ時代のことはよく知っています。」

フィンはその話を聞きたいとリシュアにねだると、快く彼女は承知してくれた。

誰かに言いたくて仕方なかったのだろう。

 

続く