
Starknight fencer
第4章 Fleet in being
「・・・しっかりしてよ、本当にさ。」
レナは、クレアに包帯を巻き終えて傍らに座っている。
「助けられたか・・・」
「まぁね。何で狙ってるわけ?」
「・・・理由はいえないが・・・これで終わりだ。シェルディアの艦船に保護され、無傷で帰ってきたなど報告できるか?」
そんなことはありえないし、普通疑ってかかるだろう。
もしかしたら、逆にスパイとして疑われて殺されるかもしれない。
「そう・・・そんな運命なの。」
「ああ。せっかくだ・・・殺される運命なら同行したい。」
「え!?こ、殺そうとしておいて・・・もしかして、隙をうかがってるんじゃないの!?そんなこと言ってさ!」
やれやれと思い、クレアは拳銃を差し出す。
「そいつで私を殺せばいい。私の特製の拳銃だ。銃弾に毒を仕込んでいるからどこに当たっても死ぬ。解毒剤はこれだ。」
ビンの中に大量のカプセルが入っているが、これがそうらしいのだ。
「20時間以内にそれを飲ませれば助かる。やってみるか?」
「いい・・・わかったよ。こいつは預かっておくけど、信用しておくね。」
レナは拳銃だけを返すと、クレアに手を差し出す。
「・・・宜しく頼む。」
「こっちこそ。」
2人は手を取ると、クレアは上着を着て立ち上がる。
まだ傷口は傷むが、何とかなりそうだ。
「いたっ・・・もっと優しくやってよ!」
「それくらいで痛いなんて言ってどうするのさ。」
フィスカはやれやれと言った感じで包帯を巻き終える。
「ってかさ、こいつ・・・「はやぶさ」級だよね?幻のミサイル艇って言われてる。」
「知ってるの?」
「艦艇を知ってる人ならね、多少は知ってるよ。ステルス性と無限航行機能を備えたミサイル艇で、予算不足で採用されなかったって。」
どちらかといえばデモンストレーションのような艦船で、もてる全ての技術をつぎ込んで製作した艦船といったほうがいい。
最新鋭技術を全てつぎ込んで、どれだけの艦船ができるか・・・誰もが考えてみたいところだろう。
できた艦船を基にして、どれだけの船を量産タイプとして作るか・・・それを図る意味でも必要な艦船だったはずだ。
現代でもときどきこういう話があるのは事実だ。
「78ktの世界最高速艦船ね・・・「ゆきかぜ」級を超えるけど、超兵器には及ばないよ。」
「超兵器?」
「ヴェルガンドはシェルディアに侵攻する機会をうかがっているからね。私も事情は良くわからないけど巨大な艦船を作ってるって。80ktを出せる100000t級の巨大艦船とか。」
とてつもない戦艦の建造計画だが、実際にあるとは思えない。
「ところで、フィスカ・・・どうするの?これから。」
「クレアを助けて貰ったから、ついていくよ。恩返しってこと。」
「え・・・?まさか、後から撃つなんてしないよね?」
カービィがちょっとやばそうだと思いたずねると、フィスカは首を振る。
「何言ってるのさ。嘘つかないよ。刺客ってのは・・・黙ってることは会ってもね。」
「そういうもの?」
「信じてくれる?」
いきなりそんなことを言われてもどうかとは思うが、カービィの場合・・・すぐ信じてしまう。
敵意のない人を斬るなんてできない・・・そういう性格だ。
「・・・わかったよ。君がそこまで言うなら。」
「ありがと。でもさ・・・何で信じてくれるの?」
「敵意がないって言うのもあるけど・・・疑うより、信じることの力のほうが大きいじゃない。」
それがカービィの本心でありモットー。人は疑うより信じるべきだ。
フィスカはあははと笑うと、うなずいてみせる。
「そりゃ、そうよね。信じてる方が気楽だし。」
「わかるよね?」
「当然・・・って、どこに向かってるの?この艦船。」
「メガフロートさ。」
シェルディアの誇る海上移動都市「メガフロート」、そこに向かっているらしい。
あれほどの大都市ならば、見つかることも少ないだろう。
「なるほどね。あそこで体制を整えるんだ。」
「そういうこと。」
カービィは微笑すると、また船室のベッドで眠り始めた。
シェルディア共和国首都 シェルドハーフェン
「・・・何があったんだ?まったく・・・」
AH-1ヒューイコブラの後部座席からソルジャーは地面に降りる。
着陸したのはとある屋敷の敷地内部。
操縦席を開いてゆきかぜも降り立ち、とある屋敷の前に来た。
「・・・やばくない?艦長。」
「ヤバイだろうが・・・命の危険もある。とにかく聞くだけ聞こう。」
目の前の屋敷は、確か政界の黒幕とも呼ばれたフォルオールの屋敷・・・
2人は扉を開け、ガードマンに連れられて応接室にたどり着く。
「豪華なものばっかりだね・・・」
「ふん・・・くだらんものばかりだ。まぁ、スターナイトにも兵器を売っている兵器商人の1人だ。恩もあるわけだしな。」
そんなことを行っている間に、黒いタキシードの人物が入ってきた。
「第17艦隊提督のソルジャーか。私はフォルオール。」
「・・・時間がない。手短に頼む。」
「ああ。他言無用にして欲しいことだ。そちらの連れには退場願おうか。」
ソルジャーは、フォルオールを睨みつける。
「それはできない相談だ。ゆきかぜは俺の相棒・・・退室させるのなら後で俺が聞かせる。口は堅いほうだ。」
「そういうこと。信じてよ。」
ゆきかぜも笑顔で同意し、フォルオールは仕方ないなと言う。
「まぁ、それはどうでもいい。第17艦隊の提督だからこそ頼む任務だ。用件はただ1つ・・・あるものを持ってきて欲しい。かつて星の軍勢が手に入れた最終兵器とやらだ。」
「またやばそうなものを。何故だ?」
「理由は聞かないで貰おうか。後で必要だ。」
どうせろくでもないことに使う、ソルジャーの直感がそういっている。
「天候を自由に操る類の超兵器か?」
「おそらくは・・・そうだ。場所は特定した。飛行型の超兵器らしい。サジタリウスが周辺に艦隊を停泊させているが・・・突破して貰いたい。」
「クルーは・・・?俺は空軍じゃないしパイロットなんて海軍航空隊から引き抜くことは不可能だ。」
「何、非公式に訓練しておいた連中がいる。「ゆきかぜ」にそいつらを乗せて欲しい。」
かなりやばそうだ。大体こんな依頼を引き受けたら総帥がなんと言うだろうか。
それはとにかく、フォルオールの顔も真剣になっている。
「ここまで打ち明けたからには、協力してもらわなければなるまい。さもなければ・・・私の顔を潰すことになる。」
ふん・・・とソルジャーは笑うとはっきりと言い返す。
「あんたの顔など、10枚つぶれても俺は痛くも痒くもないんでね。俺は断る。他の提督でも呼んでくれ。」
「ほう・・・」
「このことは他言しない。が・・・俺に付きまとうなよ。そのときは、あんたの屋敷に90式対艦誘導弾をぶちかます。」
「ふ・・・威勢のいい提督だ。暗い道路では後ろに気をつけておくんだな。」
「それはあんたの部下に言う言葉だ。行くぞ、ゆきかぜ。」
ソルジャーはゆきかぜを連れてヘリまで戻ると、そのまま乗り込んで第17艦隊のDDH-47「はるかぜ」に戻っていく。
急用と聞き、ヘリをかりてきたのだ。
「艦長、大丈夫なの?」
「俺は海にいることが多い。それに、命を狙う奴も返り討ちだ。」
「そりゃ、そうよね。サジタリウスの刺客も6人くらい返り討ちにしたんだし。」
ソルジャーもゆきかぜも、白兵戦ではかなり強い。
2人とも10人くらいの敵兵に囲まれても逆に倒せるだけの強さを持っているのだ。
「帰ろうか、ゆきかぜ。お前のカレーでも食いたい。」
「艦長のためなら、喜んで♪」
AH-1ヒューイコブラは、そのまま第17艦隊停泊地へと戻っていく。
海上移動都市 メガフロート
「ここが・・・かなり大きいね。」
「はやぶさ」を停泊させ、フィンが最初に行った言葉だ。
海上集落とは比較にならない大きさ。艦隊の補給基地としても十分に役立っている。
移動するのはワルター機関を使うが、燃料生成装置があるため燃料のことは気にしなくてもいい。
「じゃ、散開しよう。夜は「はやぶさ」の船室で寝ること。」
「はぁい。」
レナはフィンをつれてどこかに向かっていき、クレアも1人でどこかに行ってしまう。
「フィスカ、一緒に行かない?」
「仕方ないなぁ。クレアと行きたかったんだけど。」
そんなことを言いつつも、2人は笑顔でどこかに向かっていく。
当てはない。ただ・・・珍しいものを見物するだけだ。
「露店かぁ・・・たくさんあるね。」
「こういうところに良いものってのはあるの。えっと・・・」
フィスカが露店を物色していると、1人の少女が道の真ん中に座っているのが見える。
腰にレイピアをかけた、水色のロングヘアーの少女だ。
「・・・何してるの?そんなところで。」
「来たようですね・・・話を聞いてくれますか?ここでも何ですので、こちらに。」
少女は2人を連れて飲食店に入り、イスを勧める。
なんとなくだますような雰囲気でもないので、カービィとフィスカもそこに座る。
「来たって、僕達が来ることを知ってたみたいじゃない。何かあったの?」
「・・・聞いてほしい話があります。貴方たちの仲間にも、ぜひ聞かせて欲しいのです。」
「いいけど・・・」
少し不審に思ったが、それを打ち消すかのように彼女は言う。
「私は食うに困らないだけの資金があります。ですから・・・騙そうとは思っていません。」
「ま、それっぽいよね。服装も身なりも。」
服装は純白のローブに赤い宝石のブローチ。緑色の瞳は澄んでいて曇りが1つもない。
フィスカは信用できると思い、話を聞き始める。
「・・・聞いてください。この昔の・・・何千年も昔、星の軍勢と闇の軍勢という2つの軍勢がいました。」
「なるほど・・・」
「私は・・・その戦いの始まりの時代から生きているんです。」
2人とも、言っている意味が良くわからないようだ。
もどかしいとおもった彼女は、ストレートに言う。
「私は・・・何千年という時間をこの姿のままで生きてきたんです。終末の戦争も・・・新しい世界の始まりも何もかも見て・・・」
「嘘!?じゃ・・・不老不死ってこと!?」
「すこし違います・・・致命傷を負えば倒れますよ。食事もしますし・・・私は普通の人と変わりません。ただ、永遠に行き続けること以外は。」
2人ともなるほどとうなずくと、彼女は1枚の写真を見せる。
「これは・・・?」
「かつて、貴方たちの仲間だった人の写真です・・・転生ということを信じますか?」
「転生・・・」
「同じ宿命を、生まれ変わった魂の人が行き続ける・・・見てくれます?」
写真をみると・・・そこにはカービィやフィスカいがいにも、クレアやフィン、レナ・・・そしてこの前であったソルジャーとゆきかぜも混じっている。
よく分らない人もいるが、自分たちとソックリだ。
「え、これって何なの!?トリック写真じゃないの!?」
「・・・何千年も前に撮った写真です。それを焼き増ししたものですよ。もしかすると・・・貴方たち以外にもこの写真の誰かが転生しているかもしれません。」
フィスカが驚くのも無理はない・・・全員服装や武器まで一緒だったのだから。
しかも、このバックはイージス艦「ゆきかぜ」・・・艦の構造まで同じだ。
「・・・この世界が後世であり、貴方たちのいた世界が前世・・・貴方たちの出会いは宿命であり、必然です。」
「必然・・・?君は誰?」
「リシュア・シュライツ・・・不老不死の剣客です。」
その途端、いきなりメガフロートに空襲警報が鳴り響く。
「ヴェルディアかサジタリウスか・・・どちらでもかまいません。応戦準備をしてください。」
「え・・・?」
「早く!武器を取って戦うんです!」
カービィとフィスカが外に出ると、上空を数機の戦闘機が駆け抜けていく。
あれはトーネードIDS、サジタリウス軍の軍用機だ。
「早く、カービィ!「はやぶさ」で逃げようよ!」
「・・・やめた方がいいと思うよ。見て。」
港湾外に高速艇が次々に発進していくが、その途端に誘導爆弾を喰らって爆発していく。
シェルディアの24式対空ミサイル艇だが、あっさりとやられている。
「まともな対空武装のない「はやぶさ」でどう切り抜けろって言うの?無理だよ!」
「でも・・・ここにいたらやられてしまう!」
「大丈夫・・・敵が狙っているのは対空火器さ。」
確かに、敵はミサイルで防空火器を次々に破壊していく。
民間への被害はできるだけ抑えようとしているようだ。
「でも、何故・・・?何で対空火器だけ狙うの?」
「あれだよ・・・」
遠くに見えるのは輸送機C-160トランザール。あれに空挺部隊をたくさん乗せているのだろう。
上空に差し掛かった途端、いきなりたくさんのパラシュートが開き敵兵が降りて来る。
機銃掃射で住民などを容赦なく殺し、降下地点を確保しようとしているようだ。
「黙ってみてるつもり?あんなことされて!」
「そ、そんなことはない!私も戦う!」
フィスカは双剣を抜くと、柄の部分に仕込んでいる拳銃で敵を狙う。
銃声がした途端に敵兵はぐったりとして動かなくなってしまう。
「なかなかじゃない、行くよ!」
カービィは拳銃を引き抜くと、両手で構え降下している敵兵に撃ち始める。
1発で敵兵は急所を疲れ、息絶えてしまう。
「降りてきたよ。ここからが始まりかもね。」
「あんたと組むなんてね・・・」
フィスカは双剣を構えなおし、カービィも剣を引き抜く。
続く