
Starknight fencer
第18章 Blockade
PG「はやぶさ」甲板
「君は?」
「あ、艦長かな・・・はじめまして。」
輸送船から戻ってきて、一休みしているところに緑色の髪の毛の少女が尋ねてきた。
「君は?」
「はやぶさ・・・ゆきかぜと同じような感じかな。よろしく。」
ふぅんとカービィがうなずく・・・どうも良くわからないが。
すると・・・クレアが状況を報告に来た。
「・・・戻ってきた。カービィ。
「よかったぁ・・・」
「クリスはちょっとまずい状況だが、それ以外の人に目立った外傷とかはない。ただ、クリスは少々精神的にダメージが大きいから・・・カービィ、行ってやれ。」
「え・・・!?」
はやぶさを連れて、カービィはクリスのところに向かう。
「・・・クリス。大丈夫・・・?」
「カービィ・・・?私・・・」
涙を流しながら、クリスはカービィを見つめる。
だいぶ言葉とかは流暢にしゃべれるようになったが・・・まだ不完全らしい。
「・・・私・・・もう・・・」
「何も言わないで。」
「でも・・・!私・・・何かされた・・・」
「もういい・・・」
クリスははぁとため息をつき・・・ずっと泣き続けている。
「・・・手術、された・・・カービィ。何が・・・なんだかわかんなくて・・・私・・・」
「え?それって・・・」
「そう・・・私、実験台に・・・・・」
何もカービィにはいえなかった・・・ここで何か言ったら、余計に心の傷を深くしてしまいそうで。
すると、ソルジャーも入ってくる。
「・・・話は聞いた。」
「ソルジャー?」
「前向きにすこし考えたらどうだ?結果だけいえば、お前に傷は無くてそうやって中のいい連中と再会できたんだ。もう少し手放しに喜べないのか?」
いきなりの言葉に、カービィは鋭い視線を向ける。
「な、何それ!クリスは・・・!」
「わかっている。まったく・・・たった1回だけそんなことされたくらいで泣きやがって・・・どうかしてるっての。」
「言いすぎだよ、ソルジャー!いくらなんでも!」
「・・・泣くぞ?直ぐ泣くぞ。絶対泣くぞ。ほら、泣くぞ。」
ソルジャーがそんなことを言うと、クリスが泣き喚きながらカービィに抱きついてくる。
「泣けるだけまだいいだろ?お前達は・・・さて、憎まれ役は退散するか。」
ソルジャーが扉を開けて出て行くと、カービィは扉を閉める。
「・・・カービィ、ごめん・・・落ち込んでたら・・・ダメ、よね?」
「そうだね、クリス・・・明るい君のほうが嬉しいんだけどね。」
「わかった・・・ちょっと不安だけど・・・やってみるね。」
・・・そっとうなずくと、ティトとシエルがクッキーを作って入ってきた。
これを食べて、元気になって欲しいということだろうか。
「・・・フィスカ。」
「何?クレア・・・」
2人だけの艦橋で、クレアはフィスカに話しかける。
「・・・私たちの中に裏切り者がいたらどうする?」
「・・・!?どういうこと!?」
「たとえ話さ、フィスカ。いたとして・・・そいつが私達に不利益な情報を持っていて、裏切り者だと明かしたらその情報を流すと言う。お前ならどうする?」
難しい質問だが、フィスカはあっさりと答える。
「私だったら明かしちゃうな。普通に・・・」
「お前の不利な情報が流れても?」
「ってか、あんまり無いしね。そんなの・・・」
「どうだか。ヴェルガンドの刺客と言うだけであるんじゃないのか?」
「・・・あのことだけどね、私、明かすよ?明日。」
あっさりとフィスカが言うと、クレアはふぅと息をつく。
「いいのか・・・?」
「私はやれるよ?あの人たちにちょっとだけ甘えてもいいじゃない?別に・・・クレアがそのことで苦しむくらいなら、早いうちに何とかして対応策をつくろうよ?」
「・・そうだな、フィスカ。取り返しがつかなくなる前に・・・」
クレアとフィスカは頷くと、一端分かれる。
フィスカが艦橋からどこかに向かっていったのを見て・・・クレアはすこし不安になってしまったようだ。
「・・・総帥。」
「ソルジャー・・・ご無事で何よりです。」
ランス卿がソルジャーと・・・「はやぶさ」の一室で話をしている。
これからの方針についてと、近況報告のようだ。
「はっ・・・それと、先ほど無線でシェルドハーフェンに残ったふぶき達から連絡が。シェルディアの将校数名を保護し、潜伏しているとのこと。」
「わかりました。それだけ残っていれば上出来です。兵士は?」
「100名ほど。分散して・・・中には民間人に隠れています。」
「いいでしょう。私の命令で近衛兵400を隠していますから再起には十分な兵力です。ヴェルガンド軍および我が軍の超兵器は?」
「ハリマはすでに敵軍に鹵獲されましたが・・・「きりしま」は未だ奪取されていません。ドレッドノートは航行不能になった後、ルーメン公国に拿捕された模様。リーネ国王より報告がありましたので。」
「・・・良好ですね。ルーメン公国に直接向かいましょう。」
この「はやぶさ」の後ろから大量の連合艦隊艦艇が追随、南西のルーメン公国に向かう。
世界最強の潜水艦隊を保有する国家。その潜水艦は世界中に散らばり、来るべき決戦に備え世界の海で待ち構えているという。
すると、早速1隻の潜水艦が浮上・・・思いっきり「はやぶさ」よりも巨大な潜水艦だ。
窓からその様子を眺めると・・・潜水艦の艦橋から扉を開けて1人の女性が出てくる。
「・・・着ましたね。」
「ああ。ルーメン公国の国王・・・」
親衛隊数名を従え、彼女は「はやぶさ」に乗り込んでくる。
「・・・あれが・・・!」
巨大な潜水艦が見える・・・そして国王が乗っているということを示す旗が掲げられる。
全長は150mくらいあるだろうか?そしてこの「はやぶさ」の巡航速度45ktに軽々と追いついている。
カービィはクリスをつれて艦橋に向かうと、クレアが誰かと話している。
「この人は誰?」
「・・・失礼な!」
付き添うの人が剣を抜こうとしたが、クレアと話していた人が止める。
「すみません・・・一応このミサイル艇の副官のクレアです。艦長のカービィと相棒のクリス。よろしくお願いします。」
「あ・・・よろしく。」
クレアが頭を下げるということは、よっぽど偉い人だと思いカービィは頭を下げる。
「ルーメン国王のリーネです。こちらは護衛のフィーネ。よろしく。」
「あ・・・こ、こちらこそよろしく!」
クリスが思わず頭を下げる・・・カービィもまさか此処に来るなんて思いもよらなかったようだ。
「と・・ところで・・・」
「あ、堅苦しいの抜きでかまわないから・・・慣れてないみたいだし。」
「・・・じゃあ、どうしてこのミサイル艇に?」
「シェルディア海軍では、旗艦を艦隊の真正面に配置する風習だからそうかなと思って・・・それに総帥搭乗を示している旗も掲げられてるから。」
艦橋からいったん出てマストを見ると、確かに旗が掲げられている。
銀色で縁取りされた白の盾の前に、斜めに描かれた槍が見える・・・銀縁の盾は「国民や国家を守る義務」を現し、白は「穢れ無き心、そして潔白さ」を示す。
この白い盾はシェルディア軍の旗であり、紋章。そして槍はランス卿のブリューナクを現している。
「あれかぁ・・・なるほどね。」
ああとカービィは頷き、リーネもカービィの隣に来る。
「あの旗はハーメリア海軍のだよね?」
「ええ。そういうこと。そしてあの潜水艦がルーメン公国の技術の結晶、U-517。」
国王専用艦とも呼ばれている大型の主力潜水艦。魚雷はシェルディアの技術を流用しているため攻撃力は高い。
おまけに浮上しての砲撃も可能な潜水艦。主な任務は敵艦隊の攻撃と敵沿岸基地への奇襲攻撃だ。
ルーメン公国は輸送潜水艦や潜水揚陸艦、挙句の果てには潜水戦艦と呼べる潜水艦まであるようだ。
そのルーツは海底資源発掘のために潜水艦の技術を向上させたところから始まったと言う。
「・・・あれが・・・テレビでしか見たこと無かったからなぁ。目の前で見ると圧倒されるよ。」
「そうなの・・・カービィ、どうしてこの戦いに身を投じているの?気になったんだけど。」
「僕が幼いから聞くの?それとも・・・そういうの抜きで気になったの?」
「そういうの抜きって言うところ。」
安心した様子でカービィは一息つくと、海を見ながら話し始めた。
「最初は成り行きで巻き込まれてただけだったけど・・・しっかりと意思はあるんだ。仲間を守る。僕はそのために戦う。そのためなら・・・」
「敵も同じことを考えて向かってきても?」
「・・・敵への優しさは味方への偽善。そういうことさ。リシュアがよく言ってた。」
驚いた様子で、リーネがカービィの肩をゆする。
「え・・・!?どうして!?先代の国王に使えてたあの影の存在のような・・・」
「どういうこと!?僕の剣術の師匠が・・・17歳くらいに見えたけど・・・」
「その人、先代の国王・・・私の叔父に仕えてた軍事顧問なの!60年前くらいから・・・ど、どうして!?どうして・・・」
明らかに不自然だ・・・70年くらい経てば多少なりとも外見は変るはずだ。
リーネも彼女の顔を見たが・・幼い頃から身長も顔も変っていないようだ。
「・・・僕に気になる話を持ちかけたんだ。リシュアは・・・自分が不老不死で、僕たちはずっと昔にいた人たちの生まれ変わりだって。」
「もしかしたら・・・ありえるかも知れない。ということは・・・」
「陛下、そろそろ国内です。乗艦を願います。」
フィーネに呼ばれ、リーネは仕方ないという。
「面白い話、ありがと。後で続きを聞かせてくれる?」
「もちろん。あとちょっとしかないけど・・・リシュアも呼ぶね。」
「ありがとう・・・進路このまま!U-517より「はやぶさ」へ、随伴求めます!」
「了解。」
すぐにU-517の後ろについていくようにして「はやぶさ」も続く。
もうルーメン公国の首都マーレブルグの首都が見え始めた・・・連合艦隊47隻が停泊できるだけの埠頭も用意されている。
無論、ルーメン公国も少ないながら最新鋭技術を生かした精強な海軍を保有している。だからこそ軍港のサイズもかなり大きい。
連合艦隊の艦艇は、U-517に導かれて軍港に向かう。
ヴェルガンド公国国内 総司令部
「・・・集まったか。現シェルディア海軍総帥ヴィンセント卿。サジタリウス司令官グラッジと参謀のディルガン、イリア・・・そしてライフェル、ルウ、グリフィン。」
「はっ・・・」
中央に座るのはヴェルガンド軍元帥ルーシャス。かつてシュトゥルムヴィント甲板で出会った人物だ。
「トレイキアが超兵器ごと鹵獲された。よりによって潜水艦だ。ルーメンのいい手土産になっちまうじゃないか・・・お前の部下だったな、ルウ。」
「ライフェル・・・やれやれだな。思わぬ邪魔が入りましたゆえ、連合艦隊の撃滅は失敗に終わりました。手違いで偽装輸送船に数名のメンバーが入り込み、爆破工作を仕掛けられまして。」
ルウが簡潔に状況報告をすると、ルーシャスはやれやれと言う。
「・・・ふん、まぁいい。超兵器など元はタダ同然だ。我等はただ発掘したものをそのまま使っただけ。シェルディア海軍第10艦隊、第8艦隊を撃滅したなら採算は取れた。」
「どうします?次の一手は。」
ヴィンセントが話しかけると、ルーシャスはライフェルを見る。
「ライフェル、貴様がルウを讒言する以上それ以上の作戦はあるのか?」
「はっ。自由シェルディア海軍はルーメン公国を頼った模様。それゆえに対策もあります。航空機を使いルーメン公国海軍の戦力を減らせばいいのです。」
「・・・それは試みたが、ルーメン公国はランス卿の入れ知恵で対空ミサイルの配備をしている。潜水艦からの対空ミサイルは哨戒機では交わせないし戦闘機では哨戒効果が低い。」
「だからこそ、閣下・・・アームドウィングの投入を要請します。」
「・・・いいだろう。グリフィン、情報はどうなっている?」
ルーシャスがグリフィンを見据え、報告を聞く。
「諜報員の報告によると、ルーメン国王とシェルディア海軍総帥が面会した模様。正式に同盟を保ち、シェルドハーフェン奪回を目指す模様。」
「なるほど。その諜報員は例の刺客だな。感づかれた様子は?」
「裏切り者の口を封じると。彼女達にわかっても他の人物には知られていません。」
「よし。ドレッドノート撃破に関連した人物を抹殺するように伝えろ。グリフィン、およびグラッジは増援を送り一人残らず抹殺しろ。ルーメン公国の公爵にも内応者がいる。彼らを最大限に利用し、我が国の名前を出すな。」
「はっ。」
「会議は解散だ。命令の無いものはそれぞれの任務を最大限にこなすこと。」
ほぼ全員が解散した後、ルーシャスは近衛の将校・・・ナイトメアを呼ぶ。
彼の本名は誰もわからない。ただ全身を蒼い鎧で固め巨大な剣を持っている・・・ルーシャスが彼をそう呼んでいるのだ。
「蒼騎士。ランス卿を抹殺してもらう。」
「・・・了解。」
「奴は今後の計画に邪魔だ。それに・・・おそらく後継はそうりゅうあたりだ。彼女なら私も作戦を立てやすい。堅実ゆえにな・・・わかったら迎え。」
「はっ。」
ナイトメアが退室し、ようやくルーシャスは一息つく。
計画は全て整った・・・あとはその完璧な計画で倒れるところを見るだけだ。
続く