Starknight fencer

第17章 Schwert

 

ヴェルガンド輸送船「フェアディーンスト」号艦底部

「いた!?」

「いや・・・こっちにはいない。」

ティトとシエル、ソルジャーが船底を探しているがどこにもいない。

あの魚雷艇は輸送船に格納されているのが発見されたから、ここに来たのは間違いと思うのだが・・・

「・・・ねぇ、ちょっと来てくれる?」

シエルが呼びさしたのは・・・明らかに怪しいハッチだ。

こんな船底につけるなんて正気の沙汰とは思えないが・・・何かあるのだろうか?

「ランプが緑色だし、降りてみない?」

「セオリーじゃ増援を呼ぶべきだが・・・このハッチの開放時間がわからない異常、乗り込むという手段も悪くないな。行くぞ。」

ハッチを開けて、3人は直ぐに侵入する。

かなり長い梯子で、ずっと降りていくと潜水艦の艦内のような場所に出た。

すると・・・目の前でリシュアとリシスが待っていた。

「・・・なんで此処に?」

「あなた達なら、無茶すると思っていましたから・・・冷静な判断を下せなければ、どんな武芸者でも標的同然です。」

落ち着いた声でリシュアが言う・・・シエルははぁとため息をついてしまう。

こんな敵地にわざわざ乗り込むのに、何でとめなかったのか・・・

・・・理由ならある。クリスを助けるため・・・それしかない。

「ありがと。じゃ・・・行こう?時間が惜しいから。」

シエルがそんなことを言うとティトとリシュアもうなずき、先に向かう。

「行くのはいいんだが、お前達はこの超兵器をどうするか考えないのか?」

「え?」

「そこらにヴェルガンド兵がいる。下手に捜索したら見つかって俺たちも死ぬか捕まるぞ。大体、超兵器ってのは普通の艦船より人員が多いんだぞ?」

ソルジャーの言うとおり。通常の戦艦でも500人程度の人員だが超兵器クラスだと1000名くらいはいる。

戦闘力こそ低いが、まともに戦うにしては5人程度で不可能だろう。

各個撃破にしても・・・難しいだろう。大体目的は敵の殲滅ではなく仲間の救助だ。

「どうするのさ?」

「この超兵器は超巨大潜水戦艦「ドレッドノート」だ。空調設備を壊せば艦内に悪い空気が充満する。艦内は大混乱に陥るだろうからその隙を狙って救出する。」

「脱出方法は?」

「脱出用の小型ポッドがあるだろう。そいつを使う。」

ソルジャーが綿密に計画を立てていくが・・・問題はクリス達がどこにいるかということ。

それさえ解ればどうにかなるのだろうが・・・

「シェルディアの連中か。」

「誰!?」

「私はルシア。シェルディア海軍の総帥と話がしたい。どこに居る?」

桃色の髪の毛に緑色の瞳の少女・・・年齢はリシュアと同じくらいか。

武器は槍のようだが・・・彼女が話しかけてくる。

「総帥はここにいない。何か用件なら俺が取り次ぐ。」

「そうか・・・まぁ構わない。私はお前達の仲間の場所を知っている。」

「だったら、どうして私たちに知らせるんです?ヴェルガンド軍でしょう?」

リシュアがルシアの瞳を覗き込むが・・・ルシアは首を振る。

「別に・・・ただの座興。意味はないから。」

「意味なくです?信用できません・・・」

「情報は教える。裏切ったと解れば殺せばいい。私は殺されるためにこんなことをするような人じゃない。それだけ。艦尾はこっち・・・」

ルシアの案内に従い、ソルジャーたちは先に進んでいく。

 

 

「・・・ソルジャーたちは?」

「いませんね・・・」

輸送船から跡形もなく、5人が消えてしまった・・・

いや、どこかに行ってしまったのだろうか?

カービィはまた仲間が消えて・・・不安を隠せないようだ。

「大丈夫かな・・・?」

「仲間なら信頼するべきじゃないか?カービィ・・・彼らは無事だ。」

「そうだよね・・・けど。僕たちの前から仲間がいなくなると・・・不安なんだ。何があるんじゃないかって。」

「・・・そうか。」

「クレアは強いよね。フィスカとあんなに仲良くしてたのに・・・」

そんなことをカービィが言うと、クレアは首を振る。

「それは強さじゃない・・・大事な人を守れるのが強さだ。それが出来ないならば、弱いと言うことだ。」

「そういうもの?」

「・・・そういうものさ、カービィ。まぁ、私にとってはフィスカだな。何も出来ないなら信じるしかないはず。違うか?」

「それもそうだね・・・」

制圧した輸送船の甲板で、カービィは不安げに海面を見詰め続ける。

 

潜水戦艦「ドレッドノート」艦首

「これでいいかな?」

「うん、大丈夫。ビックリするに決まってる。」

爆弾を魚雷発射管に仕掛け、フィンとレナはほくそえんでいる。

艦首の浸水を食い止めるため、一端浮上して何とかしようとするだろう。そこを狙って何とかするという作戦だ。

・・・ずいぶんな作戦だが、これしかできることは無い。

この超兵器の内部に入ってしまったからには、何とかしなければならない・・・こっそり隠れてあとをつけてきて、途中で見失うと言う失態を犯した以上は。

「じゃ、艦中央部でスイッチを押すよ。」

「え?何でそんな遠くで・・・この近辺で見つからないうちにやっちゃえば?」

レナが疑問符を浮かべているが、フィンは首を振る。

「浸水を食い止めるために、艦首一帯の区画を封鎖することだってあるんだ。非人道的だけど、ヴェルガンドにはそういう奴らも多いんだ。僕たち人魚じゃなきゃ死ぬと解っているのに、自分達の命惜しさに締めるんだから。」

「そうね。私達なら見捨てない。たとえ少数でも助けるために危険を冒すなら構わないと思ってるからね・・・人間って酷いかも。」

「僕も同感さ。さ・・・行こう。」

艦中央部へと2人は向かう・・・彼らの仲間を助けるために。

 

「よし、この程度でいいか・・・」

だいぶ爆弾を仕掛け終わり、あとは点火するだけ。

すぐに艦中央部に向かうが・・・敵兵に見つからないのが不思議なくらいだ。

見つかっても、ソルジャーとリシュアは変装しているから何とかなるのだが。

「・・・点火!」

安全圏内まできて爆弾に点火、同時に鈍い衝撃が艦全体に伝わる。

ほぼ同時に艦首でも爆発が起こったが、何かあったのだろうか?

「同じこと考えたのか?フィンとレナが・・・」

ソルジャーの言葉には誰も答えず、ルシアの案内にしたがって階段を下りていく。

兵士が大慌てで右往左往しているあいだを駆け抜け、簡単に部屋にたどり着く。

「お姉ちゃん!」

「・・・参謀長!」

そうりゅうが立ち上がり、早速ソルジャーを見つけたようだ。

ティトとシエルはクリスに抱きつくが・・・フィスカは周囲を見渡している。

「クレアは?」

「私たちだけで来たんですよね?リシス。」

「まぁね・・・見つけられなかったみたいだし。」

つまんないなぁとフィスカはぼやくと、隠していた双剣を取り出す。

残りの武器は隣の部屋にあるらしいが、フィスカは念のため隠していたのだ。

一般兵士の武器よりも、そうりゅうやひりゅうの武器は頑丈な上に扱いやすいから取り戻しておくに越したことは無い。

「・・・リシュア。見て・・・」

「何があったんです?」

ティトはクリスの様子がおかしいことに気づいている。

何も変らないが・・・瞳がうつろで、声をかけてもあまり反応しない。

「・・・っ!なんて事を・・・」

リシュアは何されたか知っているようだが、ティトもシエルも何がなんだか解らない。

「・・・強化人間手術?まさかとは思うけど・・・」

「キリルさん、その通りです・・・とにかく脱出が最優先事項です。脱出ポッドで何とか出ましょうか。」

「そうだね。今はそれしか・・・」

キリルが何か言いかけた途端、銃弾が飛んできた。

その銃弾をクリスがすかさずソルジャーの軍刀ではじき、鞘に戻す。

「・・・敵軍の将校か!こんなときに・・・!」

ソルジャーが軍刀を引き抜き、先に行けという。

リシュアは頷くと、すぐに他のメンバーを護衛しながら戻っていく。

「貴様がソルジャーか・・・シェルディア海軍第17艦隊提督。一番の障害になるのは貴様だと感じていたが、やはりそうなるか。」

「お前は誰だ?邪魔するな・・・消えろ。さもなくば殺す。」

「我はトレイキア。ヴェルガンド軍人にとって退くことは死も同然。ならば前に進むまで!」

槍をトレイキアが突き出し、ソルジャーが榴弾砲で受けとめる。

軍刀とかの剣は槍に対してリーチで不利。榴弾砲メインで攻めたほうがよさそうだ。

「やれやれだ。俺の相棒にとっとと会いたいから消えろ。二度は言わない。」

「3度目すらいえなくさせてやる!」

トレイキアが槍の先端から銃弾を発射、ソルジャーの右腕をかすめるが構わずに攻める。

榴弾砲に煙幕弾を装填して発射。引き金を引いて発射。

槍が砲弾を貫いた途端、煙が発生し周囲の視界を奪う。

「・・・っ!」

「邪魔だからな。構ってる暇は無い。」

真上から榴弾砲を振り下ろし、殴りつけるがトレイキアは槍で受けとめてはじき返す。

すかさずソルジャーは榴弾砲を発射。空中で銃弾と榴弾が衝突し爆発を起こす。

「・・・どう攻めるか。さーてと・・・」

なかなか敏捷で直感も鋭い。厄介な相手にめぐり合ったものだ。

早めに突破しないと、脱出が困難になってしまう。

「・・・トレイキア。飛び道具なしでやらないか?」

ソルジャーは榴弾砲を投げ捨て、軍刀を右手で振り回す。

「・・・何のつもりだ?」

「なんとなくな。とっとと決着を付けたいのは貴様も同じじゃないか?だったら、かったるいことは抜きにしたい。」

「自信ありか。いいだろう!」

トレイキアが槍から銃弾を退き縫い、そのまま構えなおす。

すかさずソルジャーは切りかかるが、トレイキアは受けとめてはじき返す。

反動を利用してソルジャーが跳躍、真上から軍刀を振り下ろす。

「死ねぇっ!!」

鋭い白銀の一閃が、ソルジャーを貫く・・・はずだった。

が、その白銀の穂先の上にソルジャーが片足で立っている。

「こんなもんだ。終われ!」

軍刀を突き出してトレイキアの腕に突き刺すと、直ぐに引き抜き柄で敵の頭を殴りつける。

榴弾砲を改修して直ぐに逃亡。これ以上ここにいる理由も無い。

「・・・時間がかかりすぎた。まだ大丈夫か・・・!?」

 

「・・・ティト・・・?」

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

脱出ポッドの内部で、ようやくクリスはティトに気づいたようだ。

「・・・う・・ん・・・な・・・なんとか。」

言葉が途切れ途切れで、声の調子もすこし変・・・ティトは思わずクリスに泣きついてしまう。

表情すら上手く表せない・・・こんな酷いことをしたヴェルガンドは許せないと。

「・・・どうなったの?リシュア・・・」

「シエルさん・・・クリスさんは無理矢理人体を改造させられたんです。だから・・・記憶も断片的なものしかないし、精神もかなり蝕まれてるんです・・・」

「・・・っ!」

「クーデター軍についた主な将校なども、同じようなことをされたのかもしれません・・・でも、酷いです・・・こんなこと酷すぎます・・・実験の道具にするなんて・・・!」

リシュアの手が震えている・・・本気で怒っているのだろう。

「リシュアさん、わかってるよね・・・?脱出が最優先事項だって。だから・・・」

「わかってます、シエルさん・・・けど、許すわけには行かないんです!こんなこと・・・こんなこと、許されて・・・!」

かつて自分も闇の軍勢に大量の薬物を投与され実験体にされたためか・・・リシュアは怒りが抑えられないようだ。

涙まで流しているほどだ・・・かなり感情的になっているのだろう。

「・・・リシュア・・・ねぇ・・・私、もう・・・痛い思い・・・しない?」

「しません・・・ええ。絶対に私が守ります!絶対・・・絶対・・・っ!!」

途切れ途切れのクリスの言葉に、リシュアは思わずだ食い止めてしまう。

すると・・・足音が聞こえてくる。この音はソルジャーだろうか?

「敵の将校をぶっ飛ばしてきた。入れろ。」

「わかった。」

そうりゅうが扉を開けると、ソルジャーが血の着いた軍服をまとって入ってくる。

扉を閉めると、直ぐに脱出装置を起動させる。

「いいか、捕まってろ。本当に頭ぶつけるぞ。」

「了解。」

潜水中の潜水艦からカプセルが射出。直径4mくらい、長さ10mくらいはあるだろうか。

水上に着くとそのまま漂流。これで救助が来るまで待つしかない。

 

「うわぁ・・・」

フィンとレナは潜水艦のハッチから直接脱出・・・見ると艦尾もかなり破壊されている。

あの潜水戦艦も、これから浮上して離脱するようだ・・・当分の戦線復帰は無理だろう。

あるいはルーメン公国に鹵獲されるか。まぁ、とにかく戻るしかなさそうだ。

「・・・レナ。飛んだことになっちゃったね。」

「うん。同感。」

「・・・やれやれ。さーて・・・輸送船に戻ろう?そろそろ戻ってくる頃だし。」

レナは頷くと、フィンと一緒に輸送船に向かっていく。

 

続く