
Starknight fencer
第11章 Coupdetat
「・・・総帥のランス・アルベーヌだな?」
執務室にはいてきたのは武装したクーデター軍の兵士・・・ランス卿は落着いて出迎える。
「ええ、そうですけど・・・物騒な。私に向けるとはどういうことです?」
「処刑し、新たな総帥を迎え入れる。ヴィンセント卿を。」
「すみません・・・もう少しで食べ終えますから待ってくれます?」
最後のステーキの一切れを食べ終わると、ランス卿は手元のナイフを敵兵に投げつける。
敵兵の腕にナイフが刺さり、小銃を取り落とした刹那・・・後に飾られた槍を取り、ランス卿はすかさず敵兵の胸元を一突き、絶命させていた。
「ぐ・・・!」
「私の武芸の腕前、侮られては困ります。」
槍を引き抜き、振って血を払い落とすとランス卿は軍令部執務室から廊下に出る。
視界に敵兵が機銃を構えている・・・映画ならここで非業の最期を遂げるだろうが、その結末は相手に降りかかるものだ。
「総帥自ら!?撃て!」
「死を覚悟してのことですか?」
自分の目の前の銃弾だけをはじき、敵兵の間を一瞬ですり抜ける。
槍の穂先から血が滴り落ち・・・敵兵は倒れてしまう。
「・・・格が違いすぎます。刃向かうなど考えなければよかったものを。」
2.5mくらいある槍を軽々と扱いこなし、ランス卿は軍令部外への突破を図っている。
途中の敵兵は全て切り裂かれていく・・・彼に傷一つつけることも無く。
「総帥に突破された!」
「たった1人だぞ!?何で止められ・・・ぐわあっ!!」
微笑を浮かべながらランス卿は敵兵の無線を貫き、軍令部の外まで出て行く。
シェルドハーフェン市街地 第6管区
「・・・酷い・・・なんでこんなことを!」
ティトとシエルは第6管区にある自分たちのいた家に戻ってきたのだが・・・そこに見たのは無残な光景。
ちょっと前まで生きていて・・・歓迎してくれるはずの孤児たちが死んでいる場面。
「そんな・・・!」
「誰がこんなことを!誰なのさ!」
ティトが剣を抜いた途端・・・目の前に誰かが剣を抜いて立っている。
「俺だ・・・悪かったな。騒がれると厄介なんでね。」
「誰・・・!?」
「ヴェルガンド帝国軍海兵隊元帥、ライフェル・アーティガル・・・悪ぃけど、皆殺しだ・・・お前ら2人ごとな。あの暗殺者をおびき寄せるにはこれくらいしねぇと。」
ティトとシエルは剣を抜き、鋭い視線でライフェルを睨みつける。
「許さない!よくも!」
「立ち向かう勇気だけは褒めてやるよ。けどなぁ・・・」
2人が切りかかっていった途端、ライフェルはいきなり槍を引き抜き2人の剣に突き出す。
明らかに武器を狙う行為・・・意表を突かれ、2人は思わず剣を手放してしまう。
「実力の差ってのは、埋めらんねぇな!」
その途端に銃弾がライフェルの目の前を掠める。
「・・・あの刺客に用があるのか?」
「貴様は・・・?」
「そいつは俺の獲物だ・・・悪いけどな、俺の獲物に手を出すんじゃない。」
コートをまとった刺客・・・それもクリスと同じコートの刺客が機銃を構えてライフェルを睨む。
「ほう・・・あんたがあの刺客の・・・ボロボロだな。」
「さっき1人しとめ損ねたが、貴様を倒す余力はある。」
「余裕だな・・・おい、ルウ。ちょっと作戦変更だ、ティトとシエルって奴、捕まえとけ。」
「ふん・・・2人とも早く逃げろ。こいつらは俺が食い止める。」
ライフェルを一瞥すると、クラウスはティトとシエルに話しかける。
「・・・君、クリスの兄さんなの・・・?」
「細かいことは聞くな!早く行け・・・行かなければ貴様を先に殺す!」
クリスとは違った冷たさを持つが、中にクリスと同じものを感じた・・・
シエルはうなずくと、剣を取ってティトと共に逃亡する。
「・・・悪いがここで終わりだ。」
目の前にいたのは先ほど呼んだライフェルの部下・・・が、その後ろにいる2人も敏感に感じている。
「ヴェルガンドが黒幕・・・どうりでヴィンセントが総帥か。」
「悪いけどね、知った以上ヴェルガンド軍は生かさない・・・行くよ。」
槍と剣をそれぞれもった青い髪の毛の姉妹・・・軍服からしてシェルディア海軍の軍人だろう。
「ちっ、ひりゅうとそうりゅうか・・・シェルディア海軍のランス卿側近2人、危険な人物だ。」
「深追いすんじゃねぇ!殺さずにその2人を捕らえろ。」
なんだか解らないが、ティトとシエルは何とか逃げ切れたようだ。
戦闘中に付け込み、すぐに第7埠頭まで逃げていく。
「なんで邪魔するんだよ。」
ライフェルはクラウスに槍を向け、不機嫌そうな声で言う。
「2つあるな・・・1つはこいつらの敵を取るため。俺もしょっちゅう遊んでやったからな・・・」
「ほう?刺客が何故・・・」
「込み入った事情があるんでね。もう1つは貴様の探している刺客には合わせたくないからだ。」
クラウスは機銃の先端に剣を装着する・・・本気で戦うと言うことだろう。
「何故?」
「死ぬ貴様に応えるだけ時間の無駄だ。」
「倒せる自信ありか。けどなぁ、そいつぁ相手を見て言う台詞じゃねぇか?」
「ほう・・・ならばやってみるか!?」
すかさず引き金を引き、機銃を掃射。
ライフェルは横に交わすとクラウスに突撃、両方の槍を突き出す。
「・・・ふん。」
真上に飛んでクラウスは回避、ライフェルの後に回る。
「そういうのは常套手段って言うんだよな・・・鈍いからばれてるっての!」
振り向きつつライフェルはクラウスを蹴り飛ばす。
そして・・・倒れたクラウスの腕に槍を突き刺した!
「ぐっ・・・!!」
「手負いで俺に勝てると思ってるからだ。さぁ・・・」
狙いはクラウスの胸元。・・・ライフェルは槍を振り下ろそうとする。
が・・・別方向からの銃弾に気づきすぐに身をかわす。
「相棒に手出しさせると思った・・・?」
「増援かよ・・・」
キリルが海軍の17式機銃を持って狙撃・・・投げ捨てると剣を抜きライフェルに切りかかる。
「やめとけ・・・かなう相手ではない!」
クラウスも立ち上がり、左手だけで機銃を持つ。
「お前の相棒のほうが腕前をよく解ってるみてぇだな。」
「それはどうも・・・クラウスは逃げて。」
「・・・今死ぬのは無理だからな・・・すまない!」
ライフェルが追撃しようとした瞬間にキリルが前に立ち、剣の柄で殴りつける。
それをライフェルは受け止め・・・その間にもクラウスは逃げていく。
「・・・参ったな。お前じゃ人質にもなりゃしねぇ・・・」
「どうするの?だったら・・・」
「殺す。悪いか?」
ライフェルは槍を構え、キリルを睨みつける。
「ふん・・・2人揃っても俺にはかなうまい。」
「ほう・・・」
そうりゅうは槍を構え、ルウに向かって突き出す。
すぐにルウはかわし、鎖鎌をひりゅうの剣に絡みつかせる。
「悪いけどさ・・・負けたくないんだよね。こういう力比べってのに!」
ひりゅうは剣を引き・・・全力で手繰り寄せようとする。
が、ルウの方が力が強くあっさりと引っ張られてしまう。
「わ・・・!」
「無茶なことはやめとけばよかったものを!」
ひりゅうの首筋を狙い、ルウが鎌を突き出す・・・が、そうりゅうの槍に受け止められる。
「すぐに退け!ひりゅうは総帥への連絡を!」
「わかった・・・!」
剣を鎖から引き抜いてひりゅうは撤収・・・そうりゅうは鎌を弾き飛ばし槍を構える。
「ちっ・・・お前、あいつの姉か?」
「そんなところだ・・・貴様の口は封じておく必要がある・・・なんとしても!」
そうりゅうはすぐに槍を振り下ろすが、ルウは鎌で受け止める。
「弱ぇよ!ったく・・・参謀は軍略だけ立ててろ!」
鎌でルウは受け止め、すかさず分銅を投げつける。
その分銅がそうりゅうの脚に直撃、思わず膝を突いてしまう。
「・・・ふん、弱いな・・・」
「油断した・・・か。くっ・・・!」
槍を杖の変わりにそうりゅうは立ち上がるが・・・かなり傷が深い。
もう感覚がない・・・左脚だけで何とか立っている。
「さて・・・貴様はランス卿をおびき寄せる人質だ。生かしてやるよ・・・あとわずかだが。」
「・・・そうはいかない・・・まだ、戦う!」
「どう戦うんだよ?その体でよぉ・・・悪ぃが、片付けるぞ!」
分銅が来た・・・すぐにそうりゅうは槍で受け止める。
片脚でバランスは取りにくいが・・・戦えないことはない。
すぐに鎖を左手で掴み、そのまま力を入れる。
「・・・何!?」
「甘く見るな・・・!この私を!」
空中に放り投げた途端、そうりゅうも高く飛びルウに狙いを定める。
「ちっ、まだ余力が・・・!?」
「・・・死を!」
空中でそうりゅうとルウがすれ違い・・・2人とも着地する。
ルウのわき腹から・・・血が滴り落ちているのが見える。
「貴様・・・この俺に傷を・・・!?」
「過信は切れ味を鈍らせる。私の一撃に迷いも過信もない・・・ただ、倒すだけ!」
ルウはそうりゅうの様子を見ると、高笑いする。
「何がおかしい!?」
「殺されたことにまだ気づかないのか?」
そうりゅうが胸元を見てみると・・・確かに、鎌の突き刺さった後がある。
「・・・足の怪我に比べれば大した事でもない。」
「強がるのもそこまでだ。この鎌は幻覚を見せる毒薬を含んでいるんでね・・・今頃、貴様には無数の俺が・・」
「つまらないことを言うな・・・ならば全て突き刺すだけだ!」
すかさずそうりゅうが切り込むと、槍を突き出す。
それをルウが鎌で受け止め、分銅を投げつけるがそうりゅうはあっさりとかわす。
――本気でこいつ、片足だけで戦ってるのかよ・・・!?幻覚見てこれかよ!?
一瞬の隙を突き、そうりゅうはルウに槍を突き出す。
確かに幻覚こそ見ているが・・・その全てに連続で槍を突き出している。
「貴様の幻覚も・・・見えている全てを倒せば済む話だ。」
「ちっ!」
一撃を左腕に喰らい、ルウは一端距離を置く。
「なんっつー強さだ・・・」
「・・・そろそろ総帥が出立する。私は時間稼ぎだけ。好きにすればいい。」
「なるほどな・・・その間に全力を出し切ったわけか。けどなぁ・・・」
ルウは分銅を相当な速さでそうりゅうになげつけた。
直撃し、鈍い音も聴こえ彼女は力なく倒れてしまう。
「総帥があんたを好きだということは誰でも知ってる話だ。人質としては充分だ。」
「・・私を見捨てているに決まっている。それが計画だ・・・」
彼女が最後に見たのは、悲しげな後姿を見せたランス卿の姿。
意識が途切れると同時に何も見えなくなり、彼の姿も見えなくなった・・・
「うわっ・・・あのイージス艦、追って来るよ!」
フィンが「はやぶさ」の後に見たのはイージス艦「ふゆづき」だ。
クーデター軍に所属する艦艇・・・だから負ってくるのだろう。
「ミサイル艇「はやぶさ」は停船せよ!繰り返す、ミサイル艇・・・」
「停船理由を求めたい!」
クレアが無線に怒鳴ると、敵艦はいきなり威嚇射撃してきた。
14cm砲弾が周囲に着弾・・・被害はない。
「仕方ない、最大速力で突っ切ろうよ!チャフばらまければイージスシステムを1分潰せる!」
「その後は?第4艦隊もクーデター軍に乗っ取られている可能性もある。頼れるのは第17艦隊と司令艦隊だけだ。」
「じゃ、第17艦隊の母港で待機すれば・・・!」
フィスカがそんなことを言うが、フィンは首を横に振る。
「僕はあそこから追い出されたんだ・・・今行っても危険だよ。」
「同感。私も近づかないほうがいいと思う。」
レナも同意を示すが・・・まずは目の前のイージス艦をどうするかだ。
こちらは旧式のハープーンミサイルだが敵艦は93式対艦誘導弾、アウトレンジで何発も撃たれると自衛武装の少ない「はやぶさ」では対応不可能になってしまう。
威力に対して違いはない。だが、敵の迎撃システムは完全。しかも魚雷を搭載しているため迂闊に舷側には近づけない。
どうしようもない・・・とおもったその瞬間、「ふゆづき」の艦橋が爆発した。
続く