
Starknight fencer 第10章
Blooddy bule gale
「あと30分だ。」
「ゆきかぜ」は進路をシェルドハーフェンへと取り、巡航速力の45ktで進んでいる。
艦橋にいるのはゆきかぜとソルジャーだけ・・・
「よーやく陸地に上がれるね、艦長。」
「ああ。もう一安心だ・・・ここまでくれば。」
この近海までくれば、もうシェルドハーフェンまですぐだ。
ここが一番安全な海域・・・だが、2人はクーデターが起こっていることなど知らない。
「提督、急な用件が。」
「何だ?」
その途端に銃声、ソルジャーの腹部を銃弾が貫通した。
「か・・・艦長!?」
「ちっ・・・!貴様は「ゆきかぜ」のクルーじゃないな・・・」
振り向いた先にいるのはシェルディア海軍の服を来た刺客・・・
手に銃剣を装着した17式機銃を装備している。
「悪いが、その命を貰うぞ。」
「何・・・っ!?」
ソルジャーの傷はかなり深く、軍刀すらまともに握れない状態だ。
すると・・・ゆきかぜがソルジャーの軍刀を取った。
「ゆきかぜ・・・?」
「艦長の命は奪わせない!私が・・・守る!」
鞘を床に捨ててソルジャーの軍刀を持ち、ゆきかぜは刺客を睨みつける。
「ほう、貴様が・・・?まぁいい、貴様も標的だ。死んで貰おうか。」
刺客が銃を構えた途端、ゆきかぜは片手でロケットランチャーを構える。
IRシーカーつきのタイプで誘導弾を発射できるものだ。
「ぶっ飛んで貰うよ・・・」
ゆきかぜが引き金を引きロケットランチャーを発射、同時に刺客が飛びのいて機銃を発射する。
すぐにゆきかぜは軍刀ではじき返し、接近して軍刀で切りつける。
「・・・馴れていない物は扱うべきじゃないな・・・」
刺客は機銃で受け止め、はじき返すと引き金を引く。
銃弾をゆきかぜはロケットランチャーで受け止め、逆にその引き金を引く。
刺客は機銃でミサイルを撃破、すぐに銃口をゆきかぜに向けて発射する。
「あぶないって!」
ゆきかぜが軍刀ではじき返した途端、刺客は銃剣で接近戦を挑んできた。
超重量のミサイルランチャーとリーチが長めの軍刀、接近戦は不利だ。
「・・・っ!」
避けきれず、コートと服が銃剣で着られてしまう。
ゆきかぜはかわしてから軍刀を突き出すが、かわされてしまう。
「いたっ・・・」
「ゆきかぜ・・・!?」
交わした瞬間に刺客は銃剣でゆきかぜの腕を切り裂いていたようだ。
その重さに耐え切れずゆきかぜはロケットランチャーを手放し、右腕だけで軍刀を持っている。
「・・・さてと、殺してやるか・・・」
刺客が機銃を構えた途端、横から殴られてぶっ飛ばされてしまう。
見ると・・・ソルジャーが榴弾砲を構えているようだ。
「誰を殺すって・・・?」
「生きてたのか・・・!?」
「俺はこの程度の怪我、何回もやってるんでね・・・!」
刺客が起き上がろうとした途端、ソルジャーは榴弾砲の砲口を向けていた。
「よけてみな。」
引き金が引かれ、榴弾が発射・・・刺客は吹き飛ばされて艦橋から落下した。
多分助からないだろう・・・
「・・・あぶなかったな、ゆきかぜ・・・」
「艦長・・・怪我、大丈夫?」
「やばいな・・・」
2人とも、かなり多くの血を流していて・・・もう今にも倒れそうだ。
ゆきかぜは得に左腕の傷が深く、もう立っていられないほどの激痛だ。
そんな時・・・真っ先にクリスが駆けつけてきた。
「なーにしてんのさ。あんな刺客に遅れとって。」
「・・・悪かったな。」
その途端、クリスは無理にソルジャーに肩を貸し右手でゆきかぜを背負った。
「え・・・?」
「手間かかるなぁ・・・ティト、シエル。ソルジャーを担架で運んでいって。」
「わかったよ。もう用意してる。」
クリスがソルジャーを担架に寝かせると、2人はすぐ救護室まで運んでいく。
そして、彼女もゆきかぜを背負って救護室に向かう。
「・・・なんでさ、ソルジャーをそんなにしてまで守るのさ?ゆきかぜ・・・」
なんとなく、クリスは気になったことをゆきかぜに効いてみる。
「12歳かそのあたりでクルーなんて・・・何があったの?」
「・・・艦の意思、この言葉知ってるかな・・・?私はこの艦船に宿っている精霊みたいなもの。」
「精神だけでなんで艦船の外に出たりできるわけさ?」
「わかんないけど・・・でも、私は艦長が好き。何かいつも粗雑で乱暴だけど・・・あの瞳に引かれたの。何か一生懸命生きているけど・・・楽しんでいるような、そんな瞳に。」
「わかんないなー、人って。他の人好きになったら、欠点とか見えなくなっちゃうのかな・・・?」
クリスはそんなことを言うが・・・やっぱりわからない。
そんなことを考えるまもなく救護室に到着、軍医に預けて自室に戻っていく。
「・・・やっぱ、私には無縁かな・・・?」
標的の顔写真見て、少しかっこいいとか思ったことはあるが・・・
自分にそんな感情はない、クリスはそんな気持ちになった。
「本当に大丈夫だよね?ウェイン・・・」
「まぁな・・・」
何とか武器は奪還した・・・ちなみに、ウェインの武器は長い槍だ。
カービィは息をひそめながらどこから脱出するか考えている。
見張りは厳重・・・突破してもいいがウェインにとっては元部下・・・殺したくないようだ。
すると・・・足元にある排水管のふたがいきなり押し上げられ、なかから声がしてきた。
「カービィ、早くここから逃げて。」
「・・・フィン!?」
「ああ!?」
排水管からフィンが顔を出してきた。
ウェインは突然のことにびっくりしているが・・・カービィは笑顔で対応する。
「ごめんごめん、へまやっちゃったよ。」
「そっちの軍人さん、僕の姿みても嫌いにならないでね?」
謎めいた・・・カービィとフィンにはわかっている意味。
ウェインは笑うと、はっきりと断言する。
「命の恩人を嫌いになる奴がいるか?こんなに可愛いのに?」
「わかった。じゃ、しっかりと手掴んでて。カービィはレナを。」
フィンはウェインの手をしっかりと掴むと、排水管の水にもぐり高速で泳いでいく。
流れるスピードもあり、かなり早いようだ。
「・・・お、お前・・・!?」
「だから嫌いにならないでね・・・って言ったじゃない。」
排水溝からシェルドハーフェン第4埠頭付近に脱出・・・幸いにも直線の排水口だからぶつかることはなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・人魚なんてきいてないぞ・・・」
「いいじゃない。別にさ。」
「・・・俺はそういうのが苦手なんだ。」
ウェインはふぅとため息をつくと、すぐに埠頭にあがる。
続いてカービィが上がり、フィンに手を貸してひき上げる。
「どうしてさ?何で人魚とか苦手?」
「いろいろあるんだよ・・・いろいろとな。」
ウェインが立ち去っていこうとしたが・・・いきなりシェルディア海軍兵から銃を突きつけられる。
こいつらはクーデター軍兵士だ・・・すぐに3人にはわかってしまったようだ。
「ちっ、俺って何で不運なんだろうな?」
「排水口など見張っている。残念だな・・・2人も同罪だ。」
その途端にカービィとフィンは剣を抜き、後の敵兵をすかさず切り裂く。
致命傷は与えていない・・・腕や肩に深い傷を負わせただけだ。
「人質なんてずるいよね、人質は。」
「それもそうだな。」
銃を掴み、ウェインは兵士2人を海に放り投げてしまう。
もう1人が銃を構えたが、その前にウェインが槍で銃を叩き落とす。
「くっ・・・!」
「っと・・・逃すかよ!」
逃げようとした兵士の襟を掴み、後にウェインは放り投げる。
兵士が海に落ちてしまい、おぼれているようだ。
「さて・・・クーデターを阻止するんだったな。どうやって脱出する?」
「ミサイル艇があるんだ・・・こっち。」
カービィはフィンとウェインを連れて第7埠頭まで向かう。
「・・・言っておくが・・・ただ利用するだけだ。仲間ではない・・・利害の一致だけだ。」
「それでもいいよ。信用できるし。」
調子が狂う・・・とウェインは言いたかったがやめておいた。
この剣客と人魚をどこまで信用していいか・・・わからないからだ。
「・・・伏せて、ウェイン!」
「な!?」
その途端に銃声、1発がウェインの頭上を霞めて地面に跳ね返る。
すぐに武器を構え、3人は臨戦態勢に入る。
「やはり貴様らにはかなわないようだ・・・」
「同感・・・殺すだけ。」
クラウスとキリル・・・2人の刺客が彼らを狙っていたのだ。
「ウェインとカービィか・・・貴様らを殺せと命令が届いている。死んでくれるか?」
「やだ。君たちを倒してでも生き残るよ。」
カービィは剣を構えると、すぐにクラウスに切りかかるが・・・クラウスはカービィの視界から消えてしまう。
振り返ってもいない・・・上を見てもいない。
「・・・どこ!?」
「甘いな・・・貰う!」
クラウスの声がして、剣が突き出される。
が・・・突然のようにコートに剣が突き刺さってしまう。
「・・・何!?」
「戦闘中はね、無意識に剣を突き出すんだ・・・僕の場合ね。何も考えないで・・・より早く、より鋭くさ。」
「訓練で身に付けたのか・・・ったく、少し厄介だ。」
が、クラウスのコートには余り傷がついていない・・・防刃コートのようだ。
それくらい身に着けている・・・相手が剣客ということをわかっているからだろう。
「本気で相手してやるか・・・」
クラウスはコートの裏から剣を取り出すと、機銃の先端に装着した。
「・・・面白くなってきた。クラウスだね・・・腕ききの刺客って聞いてるよ。」
「ほう・・・光栄だな。だが負けるつもりなど最初からないっ!!」
その途端にクラウスはすかさず前進、カービィは1歩下がるが反応が遅れ切り裂かれてしまう。
服が裂かれ、そこから血が出ているようだ。
「・・・やばいかも・・・!」
「本気で来い・・・俺も弱い貴様を殺すよりはいい!」
機銃を構え、クラウスはカービィに切りかかっていく。
が・・・カービィは逆に自分から前に出て行く。
「ちっ、裏を・・・!」
「かいてあげたよ。悪い?」
水平方向になぎ払われた機銃を伏せて交わし、下から剣を斬り上げる。
クラウスは反応こそできたが、かわすのが遅れ首筋に傷を負う。
「・・・早すぎるな。この勝負に無血の戦いはありえないか・・・」
「そうみたいだね・・・・!」
寸前で見切ってこそいるが・・・早すぎて回避がどうしても遅れてしまう。
武器を構える間すらない・・・ただ、致命傷を負わないように交わすことだけしか。
「くっ!」
「・・・っ!!」
双方、武器を持っていない腕に傷を負い片手で傷口を押さえている。
「・・・まだいける。ここで負けるわけに・・・!」
「来い・・・!」
カービィの剣がクラウスの胸元を軽く引き裂き、逆にクラウスも機銃を突き出した。
剣がカービィの頬を掠めたが、構わずにカービィは剣を逆にもち柄で殴り飛ばす。
「戦い慣れした相手ほど殺しがいがあるというものだ・・・命のやり取りほど、この世界で面白いゲームはない!」
一端体制を整え、クラウスはすぐに機銃を撃つ。
突然の行動にカービィは驚き、すぐに剣で銃弾をはじき返す。
その隙にクラウスは接近・・・とっさにカービィはホルスターから護身用拳銃を引き抜く。
「・・・ちっ。相打ちか。」
「もう少し早かったら倒せたのに・・・」
互いに銃口を突きつけあった状態・・・もう手詰まりだろう。
「今日はひき上げておいてやる。が・・・次であった時は必ず倒す。キリル、退くぞ。」
「あ・・・了解。」
ようやくクラウスとキリルが照った・・・安心したのかカービィも剣に寄りかかってしまう。
「本当につかれたよ・・・痛いしさ・・・」
「早く戻った方がいい・・・クーデター軍の兵士も来る。」
ウェインはカービィを背負うと、フィンの案内で第6埠頭まで向かう。
「遅かったね・・・って、誰か余計なの引っ付いてる。」
艦橋のデッキから双眼鏡をのぞきながら、フィスカはそんなことを言う。
「シェルディアの軍人か・・・関わりたくないのが本音だが仕方ない。レナ、機関をかけておいて欲しい・・・私は医務室に向かう。」
「え?何でさ?」
「あの軍人はカービィを背負っている・・激戦でもあったのだろう。私も一応応急処置くらいは出切る。」
怪我がたいしたことがないといわんばかりの態度で、クレアは艦橋を降りて医務室に向かう。
カービィの様子を見ると重傷でやばそうだが・・・出血多量だろう。
「・・・エンジン稼動。」
「了解。」
エンジンがかかったところでフィンだけが艦橋に上がってきた。
ウェインとカービィは医務室にでも向かったのだろう。
「急いで出よう!ここはもうクーデター軍にやられてる!」
「わかった!出航!」
「はやぶさ」は一気にエンジン出力を上げて港湾の外に向かう。
「ねぇ、ティト。」
「何?」
ティトとシエルが無断で艦橋にいるが・・・レーダーに「はやぶさ」が映っている。
それだけなら別段気にしなかっただろうが、無線がつけっぱなしになっていて会話が全て聴こえていたのだ。
『急いで出よう!ここはもうクーデター軍にやられてる!』
『わかった!出航!!』
「クーデター軍って・・・!?」
ティトは驚いて、真っ先に救護室に向かう。
途中でシエルはクリスに言うために別れ、ティトは救護室に入ってきた。
「提督いる!?ゆきかぜでも!」
「・・・俺に何か用件か?」
痛む身体を引き起こし、ソルジャーはティトの話を聞く。
「クーデター軍にシェルドハーフェンが乗っ取られたって!無線で「はやぶさ」から・・・」
「何、「はやぶさ」から!?」
「お願い、僕とシエルを下ろして!クーデターが発生したら・・・」
これは本気でまずいとソルジャーも感じた。
「はやぶさ」乗員の情報なら確かなことだ・・・あいつらは信頼できるとソルジャーも思っている。
「クルーで陸戦隊を編成し軍令部になだれ込め!俺が陣頭指揮を・・・くっ!」
まだ傷が完治しているはずも無く・・・傷の痛みに顔をしかめてしまう。
「艦長、私が行くよ・・・」
「ゆきかぜ、怪我は?」
「人じゃないからね・・・最初からさ。むしろ精霊みたいな感じだし、傷はすぐ治るの。私が艦長代行で陸戦隊を指揮するから・・・艦長は休んでて。」
「お前じゃ不安だ・・・補佐が誰かいる。誰か呼んで来い。」
すると・・・丁度良くシエルがクリスをつれてきた。
「丁度いい。正規の依頼だ・・・クリス、ゆきかぜを支援しろ。」
「は!?」
「報酬は海軍の予算から捻出する。必要なら契約書でも交わすか?」
少し考えた後、クリスはうなずく。
「報酬がよさそうだし・・・いいよ。シエルとティトは私達の家のあった場所を捜索して・・・みんな「ゆきかぜ」に運んで。」
「ああ!?」
今度はソルジャーが仰天する番だった。
「ってわけで、報酬は無事に私の預かってる孤児を逃すこと。それだけでいいよ。」
「待て!おい、イージス艦に民間人の出入りって・・・」
「いいよ、じゃ、これ・・・」
ゆきかぜがあっさりと承知し、何か紙を要しているのを見てソルジャーは止める。
「何やってるんだよ!ゆきかぜ・・・民間人をイージス艦に入れるな!」
「いいじゃん、別に・・・艦長ももうちょっと柔軟にしたら?船室なんていっぱい開いてるし。」
「よくないっての!」
シエルとティとは、その様子を笑っている。
続く