
Starknight fencer
第21章 Breakthrough
「はやぶさ」艦橋 1400時
「シェルディアの尖兵として丸め込まれたのではないのか?私達は。」
高速で「はやぶさ」は海上要塞「八雲」に向かっている・・・後ろにはフリゲート数隻が随伴。旧式の戦艦や巡洋艦計8隻も随伴している。
いちおうこの艦隊は陽動艦隊。だが『八雲」救援を厳命された艦隊で「はやぶさ」の乗員にも救援に向かえと命令を受けている。
軍所属ではないからそれなりの謝礼は出してくれるらしい。だがどれくらい期待できるだろうか。
「丸め込まれたら、それなりにがんばろうよ。ね?」
「・・・ああ、そうだな。」
相変わらず楽天的過ぎる・・・クレアはそんなことをカービィに言う。乗員はクリスとティト、シエルにフィンとレナ、フィスカにクラウス、イリアとはやぶさ、自分たち含め11人くらい。
あとは戦艦やフリゲートによる支援砲撃がメイン。シェルディア本土へと連合艦隊が進撃し「八雲」に敵をおびき寄せている間に開放するらしい。
まぁ、連合艦隊出撃は明日。夜通し高速を出してカービィたちの艦隊はここに来たのだが・・・
「ってかさ、そろそろ来るんじゃない?」
クリスがレーダーを見ると、大量の航空機が・・・ヴェルガンド軍の戦闘攻撃機が向かってくる。Su-34か。
同時にミサイルを発射・・・こちらに向かってくる。
「総員戦闘配置!ミサイルを迎撃する!」
アルミ箔
チャフをばら撒くと同時に速射砲を発射、ミサイルを次々に迎撃していく。友軍艦隊も次々に撃墜・・・が、戦艦に1発直撃してしまう。爆発しているようだ。
『こちら「きりさめ」、被弾した!被害は軽微!』
「わかった。「はやぶさ」は突撃を敢行する。いいか?」
『よし、頼む!』
すかさずクリスが速度を最大まで上げると、「はやぶさ」は79ktまで加速しそのまま「八雲」へと向かっていく。
敵機は艦隊のほうに向かいこちらには来ない・・・たかがフリゲート1隻、気にしていないのだろう。
「・・・本来は艦長が指示を出すべきだろうが・・・」
「ごめんごめん。でもそういうのはフィンの方が得意だよ。僕はタダの剣客だし。」
「やれやれ・・・まぁいい。第1区画から入る。そこでシェルディア海兵隊が応戦中だ。ここさえ救援できれば、他の区画も救助できる。」
なるほどねとカービィもうなずくと、フィンが駆け込んでくる。
「どうかした?」
「なんか向こうにやばい奴いるってさ・・・超兵器爆撃機で「八雲」の上に降り立って、シェルディア海兵隊を次々に・・・!」
「やばい奴・・・グリフィンかな。」
あいつと決着をつけたい。カービィはそんなことを思っているが・・・はたしてそこにいる敵将が本人かどうかはわからない。
まぁ、強い相手なのだろう。だったら戦っても苦戦するかもしれない。けど・・・どうしてか戦いたくなっている。
「・・・っ!」
「フィスカ、大丈夫?」
レナが船室にいるフィスカに話しかけるが・・・フィスカは大丈夫だという。
「まぁね。最近具合が悪くてさ。」
「・・・血がでてるよ!大丈夫じゃないって!」
「別にいいって・・・どうせ治らないし。そういう病気だから。」
そのままフィスカは座り込んでしまう・・・少し諦めているような表情だ。
絶対安静とは言われていないから別にかまわないのだが・・・
「病気なの?フィスカ・・・」
「だからって明るく振舞ったりしたらだめってわけ?」
「いや、いいんだけどさ・・・見てるほうが辛いよ。」
「そういうものかな・・・でもクレアには言わないで。無用な心配はかけたくないから・・・お願い。」
「わかった。うん。」
レナはうなずくと、「八雲」からの通信を聞く・・・かなり苦戦しているらしい。
海上要塞「八雲」滑走路 同時刻
「とめろ!何としてもとめるんだ!!」
シェルディア海兵隊が一斉に突っ込んでくるが・・・ヴェルガンド兵もすぐに反撃に出る。
防弾用の盾を構えて突撃、そして・・・接近戦で一気に片付けていく。
「出番は無さそうですね。ライフェル様。」
「何言ってんだ?ラディート・・・俺が出なくて戦いは始まるかよ。ぶっ飛ばしてやるよ!」
「・・・仕方のない人だ。全く・・・後ろは守らせてもらう!」
すぐにライフェルが前線に突撃、シェルディア海兵の小銃を受け止めると右手の槍で突き刺す。
すかさず振り払い、流れるように次の敵兵を吹き飛ばす・・・強い。すさまじく強い。
「くっ!ヴェルガンドが何を!俺が相手だ!」
「おいおい、ぶっ飛ばされるために来るならやめとけよ。てめぇごときが・・・」
シェルディア将校が槍を構えて向かってくるが、ライフェルは双槍で受け止めるとすかさずはじき返す。
「勝てるわけ、ねぇんだからな!!」
すかさず槍を突き出し、シェルディア将校を刺し貫く・・・すさまじいほど早い一撃だ。
敵将はその場に倒れこむ・・・あっさりと倒れてしまったようだ。
「ったく、弱すぎるぜ・・・俺が強すぎんのか?」
「元帥。ミサイル艇が・・・」
ラディートが海面を見ると、1隻のミサイル艇がシェルディアの確保している区画へと停泊した。
「ミサイル艇ごときで戦況を覆せるんならやってみろってんだ。明日総攻撃、ぬかるんじゃねぇぞ!」
ヴェルガンド兵が一斉に歓声を上げる・・・総攻撃を明日かけて終わらせるつもりだ。海兵隊は兵力4000程度。こっちは2万だ。
5倍の敵にかなうはずはない。いくら有利な地形でもだ。
海上要塞「八雲」第1区画停泊場
「行こう!」
カービィがタラップを下ろし、真っ先に切り込んでいく・・・ほぼ同時にフィンとレナ、イリアも階段を駆け上がり、別方向に向かう。
要塞内部は複雑な構造だ・・・下手をすると迷いかねない。そういう風に作っているのだが。
こうやって敵を分断して、各個撃破していく。ヴェルガンド軍に対して何日も持ちこたえているのもこの構造のおかげだ。
「敵が来る・・・!右だ!」
イリアが槍を構えると敵兵の目の前で突き出す・・・敵兵は急に出てきた槍の柄にぶつかり、気絶してしまったようだ。
単純だとイリアがつぶやき、そのまま奥に向かう・・・何を急いでいるのか解らないが、とにかく危ないと言うことは解っているのだろうか。
「イリア、行き先は!?」
「第2区画・・・そこにシェルディアの捕虜がいる。連れ帰って手土産にする。」
「わかった・・・また大胆だね。相変わらず。」
3人は第2区画へと進んでいく・・・すると、ちょうどよく弾薬運搬用のトロッコがある。レールに置かれているからすぐ動かせる。
隣に血の跡が・・・弾薬補給中にヴェルガンド兵に会って倒されたのか・・・?
「乗ろう?楽できるし。」
「・・・乗りたいだけだとはおもうけど、いいかもしれない。乗ろう。」
レナの提案にイリアがうなずき、乗り込むとイリアが外からスイッチを押す。
するとトロッコが動き出した・・・イリアはすぐそれに乗り、第2区画へと向かっていく。
「・・・お前達は誰だ!?ヴェルガンド兵か!?」
シェルディア海兵が銃を突きつけるが、カービィは首を振って答える。
「僕達はシェルディア海軍の先遣隊としてきたんだ。ランス卿から連絡が行っていると思うけど。」
物怖じせずにカービィが答える・・・極度の緊張状態に陥っているため自分たちが疑われても仕方ないだろう。
ましてや誰もシェルディア海軍所属の人物はいないのだから・・・
「8人だけ・・・?11人いると聞いていたが。」
「フィンとレナがいない!イリアも・・・」
ようやくフィスカがそれに気づく・・・するとクラウスが首を振る。
「要塞の内部が複雑で迷ったのだろう。いずれ見つかる。」
「そうか・・・よし、ルヴァイド提督に合わせよう。こっちだ。」
シェルディア兵は階段を下りて扉を開ける・・・そこは大きな倉庫だが、臨時で兵士の宿舎として使っているようだ。
その一角にいたのが彼・・・ルヴァイドだ。かなりふけているがまだ29歳らしい。
机を置き、椅子も置かれているが周囲の兵士からは丸見え・・・それもしかたないのか。
「総帥からの援軍・・・!?」
「提督、どうかしちゃた?」
クリスが軽い口調で訊ねるが・・・ルヴァイドには何も聞こえていない。じっとカービィを凝視している。
「総帥と何か関係が・・・?」
「いや・・・海上集落に生まれた一般市民さ。ごく普通のね。両親の顔は覚えていない。」
「そうか・・・いや、顔立ちがかなり総帥に似ていたからつい。それより、現在第2区画と第4区画で交戦中。敵の拠点は第5区画だ・・・防衛の後、総攻撃をかける。頼むぞ。とりあえずは敵襲まで休んでてくれ。ゆっくり出来ないかもしれないが。」
「了解っと。」
そんなことを言ってカービイは一旦休む・・・疲れた。いくらなんでもちょっと喰らいは休みたい。
すると、クリスが隣に来る。何か話でもしたいようだ。
「どうかした?」
「うーんと、何でもないけど・・・とにかく近くに。」
「・・・?」
わけが解らないが・・・とりあえずカービィは別に良いよといって座り込む。そして食料を食べ始める・・・味はまずまずか。
「それ、シェルディアのレーションよね?」
「うん・・・前よりも味は改善されてる。4年前くらいに津波で食糧不足なったときに軍から支給されたけど、さ。」
「なるほどなぁ、確かにこれは役に立つね。お湯で戻せばラーメンの具にもいいし、味も悪くない。兵士という高価な一個単位を生かすのに大事なんだってね。」
「そうなんだ。」
「長期戦に備え必要な栄養を全て入れるためにいろいろシェルディア海軍調理研究室が総力を挙げて考えたらしいね。フリーズドライで日持ちもするし。」
カービィはなるほどとうなずく。こんな食料1つにもかなりの技術が使われているなんだなと感心してしまう。
なるほど、いろいろ研究したから味もまともになってきたわけか。
「まぁ、でも手料理にはまけるよね。君の兄さんとか。クラウスの。」
「・・・まぁ、ね。ちょっと来て。」
クリスはカービィをつれて部屋の隅の方に行く。何か大事な話をしたいようだ。
「何?」
「・・・私さ・・・あいつの手料理食うくらいならカービィに食わせてもらいたいんだけど。」
「え・・・?」
「それとも私が作ろうか?上手だし。」
「あ・・・そ、それは・・・」
意図をさっしたか、カービィは返答に困ってしまう・・・急にそんなこと言われてもどうしろというのだろうか。
そりゃあまぁ、クリスだから悪くは無いんだけど・・・
「ま、急激に言われてもしかたないしね。返事は後で聞くからね。」
「あ・・・」
そのままクリスは張り出した足場にに出て行く・・・やれやれとカービィはいいつつ座り込んでしまう。
そういう話をするのもちょっと疲れる。けど・・・悪くは無い。なかなか面白い話も聞けたし。
「フィスカ。」
「何?クレア・・・すごーく気分悪いんだけど。」
「船酔いか・・・」
フィスカがかなり気分悪そうだ・・・先ほども足場から海に向かってはいていたが、まだ気分が悪いようだ。
すると、クレアが薬の瓶を出す・・・錠剤が入っているようだ。
「それ、ジアベパムって薬でしょ?狙撃とかの手ぶれを押さえる。私はハンドガンだからめったに使わないけど。」
「まぁ・・・飲んでみろ。船酔いでもしてるなら効くだろ。」
「あ、ありがと。」
フィスカは1つ貰うとそれを飲む・・・そして少し待ってみる。
「・・・ところで、フィスカ。」
「何?」
「仮にだ・・・女性が・・・女性を好きになったらそれは異常なんだろうか。」
「どうだかね。まぁ、絵的によければ私はそれでよし。可愛かったらさ。」
そんなことをフィスカはいいつつ、ハンドガンを分解して掃除し始める・・・埃や血糊がつくと機能不全を起こしてしまう。
入念に手入れをしてまた組み立てる・・・充分だ。
「そういえばさ、クレア・・・暗殺任務やりたてのころ、ダンボール箱使ってなかった?」
「まぁ、使ってた。隠れられるから一応。」
「角とかにそっと置かれてたら役に立つけどね。あれ・・・変じゃないかな?」
段ボール箱に隠れるとは・・・フィスカはそんなことを言った途端笑ってしまう。
「わ、笑うな!」
「だっておかしいじゃない。ふつー気づくよ・・・そんなのさ。ステルス迷彩とかある時代に、そんなものでごまかされる人なんて・・・」
「いたんだって!シェルディアとかヴェルガンド兵・・・気づかなかった。」
やれやれとフィスカは言ってみせる・・・ありえない。普通にごまかされるなんてどうかしているとしか思えない。
でも、さりげなく置かれてると全然気づかないかもしれない。一般兵なら特にありえそうだ。
「で、また持っていくわけ?しかも私のも入れて。」
「戦場では意外と役に立つ。潜入には必需品ともいえる・・・荷物など戦場では無造作に置かれっぱなしのことが多い。」
「はぁ・・・」
こんなときのクレアには何を言っても無駄だとフィスカは知っているが・・・そういえばなんか船酔いが止まった気がする。
2回くらい深呼吸をして確かめる・・・うん、止まった。
「船酔いが止まったね・・・やっぱりジアゼパムの効果?」
「あ、あぁ・・・ちょっと待て。え?」
そんな効果は無かったはず。クレアはもう1回はこの説明書きを読み直す・・・やっぱりそんな効果など無い。
一旦離れてちょうど近くに居るクラウスに話しかけてみる。何か知っているかもしれない。
「・・・クラウス、この薬飲んだら船酔いが止まったって・・・」
「何の冗談だ・・・」
「いや、本気だ。気分よさそうだが・・・」
あぁとクラウスはうなずき、何かを思い返すようなしぐさをしている。何か覚えているのだろうか?
「どうかしたのか?」
「・・・まぁ、薬など利くと思えばビタミン剤でも痛み止めになりえる。そういうことだ。一応そうしとけ。フィスカの奴、単純そうだからな。」
「・・・むっとくるが、そうしておくか。」
クレアはうなずくと、フィスカに近づいていく・・・何かわかったような様子だ。
「どうかした?」
「いや、効くらしいな。お前の体質とかもあるからフィスカにしか効かないだろうが、とりあえず効く。」
「そっか。わかった・・・ありがと。」
案外単純だなとクレアは思ったが・・・そういうところが好きだ。あっさりと感情を出して表裏なく行動できる。
どれだけ隠してしまったか解らない自分よりはいい。そう思って。
続く