産褥期

産褥とは:分娩後、全身や性器が、完全に妊娠前の状態に復帰または退縮するまでの期間6〜8W間

褥婦とは:産褥期にある女性。

 

1.産褥期の全身状態

  1)一般状態

    @体温:分娩直後に一過性に悪寒・戦慄を起こすことがあり、37.5℃ぐらいの発熱をみることもあるが

        38℃を超えれば感染を疑う。

    A脈拍:正常

    B呼吸・血圧:特に変化しない

    C体重:分娩直後は約5sの体重減少。さらに発汗、利尿、子宮重量の低下により減少していくが

        分娩前体重の10%程度の体重減少となる。

  2)消化器

     口渇をきたしやすい。食欲は産褥当初低下しているが、授乳開始につれて亢進。便秘は産後2〜3日続く。

  3)泌尿器

     産褥期初期は尿量が著しく増加。15002000ml/日。児頭圧迫で尿路屈曲による分娩後尿閉は十数時間で回復。

  4)血液

     赤血球は産褥1〜2日は最低となり9001000mlの全血量の減少をみるが4〜5日ごろから上昇し、産褥1ヶ月

    ころに妊娠前の値に回復。白血球は分娩開始とともに増加し、その後減少し1w後には正常値となる。血小板は基準値内の

    変動。

  5)精神衛生

     内分泌に激変が起こり、更年期的様相を示す。したがって自律神経失調状態となりやすく、精神・情緒面で不安定に

なりやすい。

 

2.性器の復古

 


1)子宮復古:子宮が正常に戻っていく。

    分娩直後:臍下34指横経

    12時間後:臍高

    第1日目:臍高

    第2日目:臍下2横指

    第6日目:臍と恥骨結合上縁の中央

     8~10:恥骨結合上わずかに触れる

     6W:前の状態

 

2)悪露:産後に性器から排出される分泌物。

   赤色2~3・褐色8~14日黄色3~4W・白色5~6

     通常悪露は46週でなくなる。量は5001,000g
    授乳をすると収縮が良いので悪露の排泄が良く、

    性器の復古が促進される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3)子宮頸部・陰唇・会陰縫合部の観察

    子宮頸部の分娩による損傷は速やかに治癒する。外子宮口は1週間後には1指をとおすほどになり

   4週間後にはほぼ閉鎖する。膣壁は速やかに緊張を回復し4週間後には非妊期に近づくが、皺壁の減少と膣壁の

   平滑化は残る。外陰は会陰切開創の縫合で3,4日疼痛をともなうが、抜糸後はほぼ消失する。

 

3.乳汁分泌

 

1)乳管の開通と乳汁分泌

プロラクチン:乳汁分泌。排卵障害.下垂体前葉

オキシトシン:射乳。子宮収縮作用.下垂体後葉。陣痛誘発剤

初乳:黄色。ラクトアルブミン/IgA 産後2日目ごろまで

移行乳:クリーム色      産後3〜7日目ごろまで

成乳:カゼイン.白       

 プロラクチンは授乳開始によって増加する
    下垂体後葉からオキシトシンが分泌される――吸引刺激で
    乳汁分泌は経産婦で早く、分娩12時間後ころから見られる。
初産婦では産後3〜4日ごろから急激に亢進。
 ※1回の哺乳量は、日数に10または20を足した量
      (1ヵ月では、1120140当たりが無難)
 
    ・授乳時間・授乳間隔(1回の授乳は、30分以上にならないようにする)
      (1)規則授乳法――3時間おき、167回で夜間夜間の授乳を1回抜く
      (2)自律栄養法――乳児が空腹のため泣いたときに、時間に関係なくいつでも、授乳をする
 

 2) 母乳の欠点と利点

利点

赤ちゃんにとって理想的な栄養である

免疫物質(IgA)が含まれており病気にかかりにくい

消化吸収がよい

アレルギーを起こしにくい

顎の発達がよくなり、歯並びがよくなる

顎や口をしっかり使うので脳を刺激し、発達を促す

子宮収縮を促し、産後の回復がよい

いつも新鮮で清潔、適温、経済的である

スキンシップにより、母と子の情緒が安定する

問題点

ビタミンKの不足

環境汚染による母乳汚染(ダイオキシンなど)

母乳性黄疸

母乳のアクセルとブレーキ

アクセル

血液循環促進(乳房マッサージ、温罨法)

乳房圧抑制(排乳促進)

中枢への刺激(直接乳房、乳頭マッサージ、ドグマチール)

ブレーキ

血液循環抑制(乳房圧迫、冷罨法)

乳房圧亢進(排乳抑制、乳房圧迫)

中枢への刺激(パーロデル、テルロン)

 
 4.産褥症状
1)      後陣痛:産後4日目頃まで。一般に経産婦のほうが強く訴える。
2)      創部痛:会陰裂傷や会陰切開部の疼痛。
3)      乳房痛:分泌量が哺乳量を上回れば乳房が緊満し疼痛を訴える。
4)      排尿障害:膀胱の弛緩、麻痺、尿道の浮腫、腹壁の弛緩、ベッド上排泄などが原因。
5)      恥骨結合離開:難産に多く、恥骨結合部の圧痛が強く、歩行困難となう。
6)      皮下気腫、結膜下出血:分娩時のいきみが強すぎた。
7)      発熱:分娩後2日間37.5度の発熱をみることがある。大部分は一過性で12時間程度のうち解熱。発熱が持続する場合
      産褥感染症を疑う。

 
 5.褥婦の診察(右上表参照)
@      一般診察:体温、脈拍、血圧、貧血の有無
A      産褥復古状態の観察
B      乳房の観察
C      精神的・心理的状態の観察
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


6.産褥の管理
 (目標)
@      褥婦に生じる生理的変化が正常に行われる。
A      母親の役割としての機能が個々の自己概念に沿って順調に果たすことができる。
B      母子関係の円滑化。
C      新しい環境への適応がスムーズに運ばれる。
1)分娩後2時間以内の管理
異常出血などの合併症が起こりやすい。顔の表情、脈拍、呼吸、体温、血圧、出血の有無、子宮収縮状態、膀胱の充満を観察。
2)分娩後24時間以内の管理
D      分娩の疲労を回復させるために十分な睡眠を取る必要がある。周囲を静かにし、面会を避け、温かい飲み物を飲むと身体を温める。
E      膀胱の充満に注意する。
F      悪露交換を行う。
G      一般状態の観察。
2)      日常生活の管理
@      褥室環境:明るく、換気のよい、静かな部屋。室温18〜20度。環境整備。
A      動静
分娩後2時間は集中観察。
6時間で起座位をこころみ、介助歩行によるトイレ。その後は自分のことは自分の身の回りのことは自分で行い
育児はおそくとも24時間で開始する。
産褥2週目に入れば多少の家事は行ってもよい。
3週目では起きている時間を長くして軽い家事から行う。
4週目は床をあげ家事の殆どを行ってよい。十分休息し、疲労は避ける。
4週以後1ヶ月検診を受けその結果により妊娠前の生活に戻る。
早期回復のため産褥1日目から産褥体操実施。
産褥体操
      目的
      1.骨盤底筋肉の回復をすみやかにし
      2.血液循環を良好にして
      3.下腹部臓器のうっ血を防ぐ
      4.子宮、膣、外陰の復古を助ける
      5.気分を爽快にする
      種類
      深呼吸、手足の運動、腹筋の運動、骨盤底筋の運動
      方法
      24〜48時間後から深呼吸
      次の日、上肢の運動
      3〜10日目から頚、下肢の運動
      褥日数が進むにつれて、運動の程度を強くし回数も増やす
 
 
B      休息・睡眠
睡眠は産褥の復古や乳汁分泌に大きく影響する。8時間の睡眠時間を確保し、2時間ぐらいの昼寝や休息が必要。
C      姿勢・体位
臥床時は好みの体位でよい。歩行時は正しい姿勢をとると腹腔内や骨盤内臓器を正しく元に戻し、悪露の排出にも役立つ。
D      排泄
便や尿の排泄は子宮復古や悪露排出に関連する。産褥期は4〜6時間毎に排尿するよう指導。排便は11回。
E      清潔
産褥期は発汗や悪露のため清潔を保ちにくい。
分娩直後は蒸しタオルで全身清拭。
産後1日目からシャワー浴。悪露が白色になったら浴槽に入ってもよい。
F      外陰部の清潔(別途「悪露」参照)
G      乳房の清潔
分娩直後にオリーブ油で乳栓除去し蒸しタオルで清拭。
産褥1日目からシャワー浴にて清潔にするほか、乳汁が自然漏出しはじめたら清潔なパッドをあてブラジャー固定。
授乳前後に清潔な拭き綿で清拭。
H      食事
バランスのよい食事。
I      性生活
産褥1ヶ月目の検診にて異常がなければ通常に再開可。月経リズムができるまで避妊。
J      母児の1ヶ月診断
3)      精神面への看護
@      心理面への看護
     褥婦に接するときは分娩という大事業を乗り越えたばかりであるということを念頭において十分にねぎらい、女性としての
   満足感を味わい、自信が持てるよう関わる。
     分娩のストレスや創部痛による不眠など身体的な疲労や神経の消耗などが重なっているため、それらの回復を最優先に
   援助し、育児にも集中できるようにする。
     また産褥初期にはマタニティーブルーも約半数にみられる。
A      育児教育
     褥婦は短い入院期間中に育児技術を身につけて育児への責任感と役割意識を育てていく。
B      母子関係及び母親役割機能への看護
産褥期は母親としての自己概念が行動として発揮されていく時期なので母子相互作用が円滑にしかも良好に行われるような
看護を行う。
 7.異常産褥の看護
   異常産褥は育児ができないことや家族に対しての申し訳なさなど単に疾病を治療することでは解決されない問題が生じる。看護師は
  異常症状の早期発見と予防に努めるとともに、異常が生じたときは褥婦の心理的・社会的側面を特に重視して関わる。