微弱陣痛時の看護

 

 微弱陣痛の種類

@      原発性微弱陣痛:分娩開始当初より陣痛が弱い。

A      続発性微弱陣痛:分娩開始頃は正常であった陣痛が、分娩がすすむにつれて弱くなるもの。

 【原因】

@      原発性微弱陣痛

子宮筋の先天性発育障害(子宮発育不全・子宮奇形)

子宮の過度伸展(多胎妊娠・羊水過多)

子宮筋の機能不全(高年・若年初産婦)

A続発性微弱陣痛

母体の疲労、睡眠不足、栄養低下、恐怖・不安、膀胱直腸の充満、巨大児・水頭症

      子宮そのものに問題はないが、母体の身体的・精神的要素が原因となるものを言う。

疲労性微弱陣痛とも言う。

 【看護】

      安静と安楽・睡眠

      栄養補給

      膀胱・直腸を空にする

      陣痛促進剤。

 

弛緩出血時の看護

  羊水過多症、多胎その他の原因により妊娠中に子宮壁が過度に伸展したり、分娩時の子宮筋の疲労などに

 より、分娩後に子宮筋が弛緩して収縮せず、止血機構が十分に機能しないため、大量の出血(500ml以上)

 がみられるもの。

【治療方針】

A.原因疾患

(a)創傷からの出血:子宮破裂,腔壁裂傷,顎管裂傷など

(b)子宮収縮不全による出血:弛緩出血,胎盤遺残,癒着胎盤,前置胎盤の胎盤剥離後,常位胎盤早期剥離後など

(c)その他:子宮内反症,DICなど

B.治療法

(a)子宮腔用手診査:遺遺物あれば除去,不全子宮破裂の診断,子宮内反症では用手整復を試みる

(b)子宮収縮の促進:子宮体マッサージ,子宮体双手圧迫法,子宮内強圧タンポナーデ,子宮体冷罨法,子宮収縮薬投与など

(c)創部止血・縫合:止血不可能の場合は子宮摘出術・内腸骨動脈結紮術または塞栓術など

(d)その他:DICになっていれば抗DIC療法

【看護】

@      分娩時の状態および引き継ぎ事項を確認し、一般状態の観察、特に顔色、脈拍、呼吸、尿量に注意する。

A      安静・保温に注意し必要ならば湯たんぽ。

B      下腹部の冷罨法は子宮収縮状態がよくなるまえで継続し腹帯はややきつめに巻いておく。

C      輸血時は副作用に注意する。

D      分娩後数時間は再出血の危険性があるため頻回に出血・子宮収縮の状態を監視する。

E      出血多量の場合はその後の回復が遅れるばかりでなく、抵抗力も低下しているため感染に注意する。

F      歩行開始は回復状態をみて決定するが、初回起床時は貧血のおそれがあるため付き添う。

G      鉄剤などの内服指導

H      乳汁分泌が遅れがちではあるが、回復とともに分泌がよくなることを説明し、あせらず希望をもつように指導。


帝王切開時の看護

 

帝王切開術は急速遂娩術のひとつで、子宮壁を切開して胎児を娩出させる方法で分娩の最終的手段である。

手術術式として腹式帝王切開、膣式帝王切開があり、腹式帝王切開はさらに経腹膜帝王切開と腹膜外帝王切開に分類される。経腹膜帝王切開は、子宮壁の切開部位により最も一般的に行われる腹式深部帝王切開と子宮体部縦切開(古典的帝王切開)がある。近代医学の進歩により、帝王切開術は比較的安全な手術となり、また社会情勢の変化により従来より適応が緩和され、帝切率が年々増加する傾向にある。安全な手術とはいえ母体にとってはあくまでも侵襲的であり、以下に示す要約と適応を守り、慎重に帝王切開術に踏み切るべきである。

 

1)母体が手術に耐えうること、2)胎児が生存しており母体外生活が可能であること、

ただし、胎盤早期剥離に伴う出血の場合など、胎児・胎盤の存在が母体の生命に危険を及ぼす場合には児の生死をとわない。

適応

 緊急性がなく、あらかじめ、日時を決めて行う予定帝王切開と、急速遂娩のために行う、緊急帝王切開がある。
 また適応には、母体側適応と胎児側適応、母児双方にとっての適応(総合的適応)がある。

1.母体側適応

1)狭骨盤 2)軟産道強靭、3)子宮・卵巣腫瘍・子宮奇形、

4)切迫子宮破裂、特に、前回帝切術などの既往があり子宮破裂の危険が大きいと判断される場合、

5)母体に全身疾患の合併があり、経膣分娩に耐えられないと判断される場合

2.胎児側適応

1)胎児仮死、2)臍帯脱出、3)胎位・胎勢・回旋異常(骨盤位、CPDが予測される場合、横位、反屈体勢など)、

4)胎児奇形や胎児に血小板減少症などの合併症があり経膣分娩に耐えられないと判断された場合、

5)子宮内胎児発育不全(IUGR)、6)早産、7)多胎妊娠

3.総合的適応

1)前置胎盤、2)常位胎盤早期剥離、3)児頭骨盤不均衡(CPD)、4)社会的適応(いわゆる貴重児)など

検査

1.      内診

2.      ドップラー法、胎児心拍モニター(NST)

3.      画像診断:超音波検査、胸部X線、必要時CT検査・MRI検査、マルチウスグッドマン

4.      ECG検査

5.      血液検査(血液型、血算、生化学、感染症、出血時間)

6.      尿検査(尿蛋白、尿糖、尿潜血、ケトン体、ウロビリノーゲン、尿比重)

7.      骨盤外計測

術前の看護

 自然分娩を志していた産婦にとっては、分娩の失敗感や夫に対する罪責感、陣痛を体験しないで分娩することへの自責の念、母親失格という自尊心の低下、痛みに対する不安、ボディイメージへの心配など、否定的な感情を持ちやすい。そのため、これら産婦の心理を理解した上で訴えをよく聞き、おこっている事実やこれからおこることを正確に伝え、誤解している点を正しく理解できるようにサポートしていくことが大切である。また、夫や家族に対しては産婦のよき援助者となれるように情報の提供を行う必要がある。

術後の看護

1.全身管理

 帝王切開術は開腹手術と同様であるが、開腹手術と分娩の両方であることを常に念頭におき、腰椎麻酔又は全身麻酔下手術に対する管理が必要である。

 呼吸器系に関しては、麻酔、創痛によって呼吸運動が抑制される。鎮痛をはかりながら喀痰、深呼吸を促す。なお、腹式呼吸ができない状態であるため胸式呼吸を促す。痰の喀出が困難な場合は含嗽や吸入になどよって痰の喀出を促す。

 循環器系に関しては、心血管系に負担がかからないように、疼痛の軽減がのぞまれる。また、術後24時間で約2,000mlの輸液を行う。尿量時間30ml以上を確保できない場合には、出血などの原因を検索する。合併症が無い場合は、腸蠕動状態を確認の上術後1日目より経口摂取が開始される。

2.術後出血

 主な出血の原因として常位胎盤早期剥離、前置胎盤、肺塞栓などの産科DICをおこす基礎疾患、子宮筋や近接臓器の損傷、弛緩出血があり、外出血だけでなく内出血にも注意し、血圧低下、微弱頻脈、尿量低下等の循環血液量減少の徴候を早期に発見する事が重要である。

3.疼痛の管理

 腹痛の原因は大部分が創痛であり硬膜外麻酔による鎮痛処置が施される事が多いが、創部の血腫、後陣痛、合併症による疼痛との鑑別が大切である。特に内出血では循環血液量減少の徴候が出る前に後腹膜症状や腰背部痛が出現することがある。そのため、鎮痛剤を使用する前には必ずバイタルサインが安定していることを確認する必要がある。

4.術後感染対策

 術後感染には創部感染及び産褥熱などの子宮内感染がある。炎症が広がると付属器炎や腹膜炎を起こす事があるため、創部の癒合状態及び子宮収縮状態、悪露排出状態、発熱、白血球数増加、CRP上昇などを注意してみていく。

5.離床

 帝王切開に伴う肺塞栓症の発生率は正常分娩の約9倍であり、初回体動時や初回歩行時に発症することが多い。術後早期離床をはかることは静脈血栓の発症を予防し、肺塞栓の減少につながる。また腹筋収縮により悪露の排泄を良好にし、産褥復古を促進するだけでなく骨盤内循環をよくする。

6.乳房管理

 母親の術後状態をみながら乳汁分泌を促して、授乳開始の時期までに適切な乳房の管理を行う。

7.精神的サポート

 手術そのものへの不安のみならず、帝王切開術においてはどんなに良い状態で手術をうけたとしても、術後の褥婦は正常分娩後の褥婦に比べて身体的な諸機能の回復が遅延することから、正常ではない、失敗といった気持をひきおこさせる。また、病気から子供を新生児室でケアする場合などは特に母子相互作用の機会が遅れ、愛着行動に悪影響を及ぼしやすい。そのため、両親には早期に相互作用の機会を提供する必要がある。


前期破水時の看護

前期破水(PROM)とは、分娩開始以前に卵膜の破綻をきたしたものをいう。

 

妊娠満期で分娩が開始したあと破水した場合には、あまり問題にならないが、早期産の前期破水では胎児の

成熟、特に肺機能の成熟と胎児・母体の細菌感染が臨床上問題となる。妊娠中期での前期破水では、1週間

以内に分娩になることが多く早産の原因の3分の1を占めるといわれている。したがって、その診断及び、

その後の管理により児の予後もかなり違ってくる。原因はいまだ解明されていないが、前期破水を起こさせると考えられる因子は多数あり以下の通りである。感染(絨毛羊膜炎、腟頸管炎)、頸管無力症、羊水穿刺及び絨毛

採取、母体喫煙、母体の電解質・ビタミン不足、性交、内診、前回PROM、外科的処置(頚管縫縮術、妊娠中の虫垂炎の手術、人工妊娠中絶)の既往など、胎児の性別(男児:女児=1.271.961)、妊娠中の出血、羊水過多、子宮奇形、先天性の胎児異常、胎位の異常(骨盤位)

 

 

症状

 羊水の流出(他覚的、自覚的)、破水感、腹部緊満感、性器出血

検査

 

治療・管理

 1.安静

      ベッド上安静で羊水の流出防止、臍帯・胎児部分の脱出防止。羊水貯留目的で骨盤高位とすることもある。妊娠週数に

よりポータブルトイレのみ可、トイレ・洗面可も考慮する。

 2.薬物療法

・抗生物質の投与(種類、投与期間に注意する)

・子宮収縮抑制剤の投与:薬剤の副作用に注意し、分娩時期を考慮し管理する

 (1)β-受容体作動薬(イソクスプリン、リトドリン)

 (2)硫酸マグネシウム(マグネゾール)

 (3)インダシン

 3.子宮内感染予防

・全身、陰部、手指の清潔保持

・腟洗浄

 4.胎児のwell-beingの評価

・NST

・超音波検査

・BPS(Biophysical Proflile Scoring)

 5.手術療法

・胎児切迫仮死、四肢脱出などの緊急時には帝王切開術が行われる

看護

前期破水患者においては、破水時の妊娠週数により母児管理が異なってくる。羊水の流出が続けば、細菌感染の頻度が母児ともに増加し、羊水の減少による子宮壁の圧迫で胎児が障害を受ける頻度が高くなる。そのため、まず胎児にとって胎内生活か胎外生活のいずれが望ましいかを評価する事が必要である。児の成熟が十分である場合には、自然経過をみて必要時分娩誘発が行われる。
 待機的管理中は胎児のwell-beingを評価し、胎内生活が望ましい場合はまず安静とし、予防的抗生物質、子宮収縮抑制剤の投与が行われる。前期破水患者の看護において問題となるのがこの時期の管理であり、妊娠継続や生まれてくる児
の未熟性に対しての不安も大きくなるため精神面のケアも大切になってくる。


分娩時の異常

1.胎児の異常

【胎位の異常】

 《骨盤位》

   縦位であり、胎児先進部が臀部(70%)、膝部(1%)、足部(30%)のいずれかであるもの。

   2500g以上の胎児では全分娩数の4〜5%にみられ、低出生体重児の場合はさらに多い。

   27W以前のものは自然回旋で頭位に戻ることが多い。

  原因:胎児下肢の伸展、多胎妊娠、低出生体重児、前置胎盤、狭骨盤、双角子宮または子宮筋腫などの子宮変形

     水頭症、無脳児などの胎児奇形、死亡胎児など

  予後@母体:軟産道の裂傷。弛緩出血

    A胎児:窒息、頭蓋損傷、臍帯脱出、その他分娩時外傷

 《横位・斜位》

   胎児の長軸が母体の長軸とほぼ直角に交差する⇒横位

                  斜めに交差 ⇒斜位

  原因:骨盤位と同様

  予後:放置すれば母児とも不良。児は100%ほぼ死亡。母体は子宮破裂、感染を起こす。

【胎勢の異常】

  《反屈位》

    児頭が伸展反屈し、頭部が胸部より離れ後頭以外の部位が先進する。

    軽度のものから順に頭頂位、額位、顔位。

   原因:児頭の骨盤入口・固定を妨げる因子がある場合。胎勢が伸展位のある時に起こった破水、微弱陣痛、先天短頭

   分娩機転

@      前頭位:軽度の反屈位で前頭(大泉門)が先進する。

A      額位:額が母体の前方に向かい、これが先進する。極めて少ない。

B      額位:高度の反屈胎勢をとり、顔面特に頤部が先進。

【回旋異常】

  第2回旋で先進後頭部が後方に回旋するもの。

後方後頭位・高在縦定位・低在横定位

【胎児の大きさの異常と奇形】

@      巨大児:すべての点で成熟児より大きく、出生体重4000g以上

A      奇形  ・水頭症:脳脊髄液が脳内に多量貯留するため、児頭が著しく増大。

      ・無脳症:頭蓋及び脳の全部を欠き、頭蓋底が露出し、それが膜または不定形の軟組織で覆われている。

      ・重複奇形:一卵性双胎において両胎児の分離が不完全なため生じる。

【双胎分娩時に起こりやすい異常】

  前・早期破水、胎位異常、四肢脱出、微弱陣痛、弛緩出血など

【胎児仮死】

  胎児・胎盤系における呼吸・循環不全を主徴とする症候群。

  原因:陣痛薬の乱用、胎盤血行障害、臍帯血行障害、産道中の血行障害

  症状:胎児心音の異常、頭位で羊水混濁、産瘤の急激な増大、激しい胎動

 

2.付属物の異常

【卵膜の異常】

1)前・早期破水:分娩前破水=前期破水、分娩開始後でも子宮口の開大が不十分=早期破水

2)遅滞破水:卵膜が非常に強靭で子宮口が全開大しても自然破水が起こらない。

【胎盤異常】

1)胎盤残留:児娩出後も胎盤が子宮内に残留。(全体と一部)

2)癒着胎盤:床脱落膜欠損により、胎盤の全部や一部が直接子宮筋に癒着しその剥離が困難なもの。

3)形態異常:分葉胎盤、副胎盤、有窓胎盤、周郭胎盤

4)梗塞、変性

5)胎盤組織の石灰化

【臍帯の異常】

1)臍帯下垂:破水前に臍帯が胎児先進部の側方、または前方に触れるもの

2)臍帯脱出:破水後、産道内や膣内に脱垂

3)臍帯巻絡

4)過短臍帯:20p以下

5)過長臍帯:100120p以上

6)臍帯の卵膜付着

7)臍帯真結節

 


 

3.母体の異常

 【娩出力異常】

  《陣痛異常》

1)微弱陣痛:陣痛発作の回数、持続時間、強さのいずれか又は全部が減弱して分娩が遷延するもの。

@      原発微弱陣痛:分娩開始時から弱い。A続発微弱陣痛:最初正常、分娩経過中微弱

2)過強陣痛:子宮収縮が異常に強く、その持続が長いもの。

3)痙攣陣痛:間欠がなく、子宮筋が持続的に収縮するもの。

  《腹圧異常》

1)微弱腹圧(腹圧不全症):腹圧が微弱で胎児の圧出が障害され、分娩が遷延。

2)過強腹圧:腹圧が過強になって分娩が急速に進行。

 【産道の異常】

1)狭骨盤:小骨盤における諸径線の一部、あるいは全部が基準値より短いもの。

    骨盤外計測:外結合線18.0cm未満

    X線計測上:産科真結合線9.5p以下、入口横径10.5cm以下    ⇒狭骨盤

2)広骨盤:小骨盤における諸径線のうち1つあるいは多数が基準値より長いもの。

3)軟産道・その周囲組織異常

    軟産道強靭症:子宮頚管の開大異常、膣狭窄・骨盤底筋群の緊張、外陰・膣口の開大異常

 【母体損傷】

1)子宮破裂

@      不全子宮破裂:損傷筋層限局。腹膜健全

A      完全子宮破裂:子宮体、腹膜とも損傷。

2)頸管裂傷:子宮膣部から子宮頸におよぶ。

3)膣・会陰裂傷

 【異常出血】

@      弛緩出血:分娩終了後の子宮筋が正常に収縮しないために起きる。

A      頸管裂傷(無フィブリノーゲン血症)

 【その他】

    妊娠早期中絶、母体の全身的・局所的疾患による異常