日本語を織りつむぐ幻燈の祠


偽乳キャンセラー

「偽乳キャンセラー」


 日本はどこまでアメリカ化していくのだろうか。占領下に下地を作らされたものはもう歴史的に仕方ない。また、戦後の若者たちに押し寄せたアメリカのファッションやカルチャーは誰も止めようがなかった。だがしかし! だがしかしだ!
 恐ろしいのは、この事実。アメリカは美容整形大国である。この子の七つのお祝いに、は日本の映画だが、アメリカでは娘の十六の誕生日記念や高校卒業記念に両親が豊胸手術の費用をプレゼントするという話も決して珍しいことではない。そもそも母親のバストが偽物なのだから、いわんや娘をやなのだ。
 政治的にも文化的にもアメリカ服属を脱さない日本において、アメリカで広がる美容整形技術に、こどもに甘い現代家族が侵されないはずがない。Aカップブラの生産量は激しく減り、C以上が基本という風潮が蔓延した。バレンタイン前、夏休み前、クリスマス前は三大デベロップと呼ばれ、この時期に美容クリニックは女性客の予約で埋まるほどになった。
 何か問題があるか、と言われれば素直にイエスとは言いがたい。当然、高度な技術による女性の豊胸を歓迎する男性もあった。三大デベロップも若い女性の戦績向上に一定の成果があったことは否定しない。そして、人気モデルやタレントもテレビで平然と豊胸を明かし、かわいいアザラシのマスコットを使った巨乳化キャンペーンが大々的に展開され、メディアもこれに加勢した(この裏にアメリカのクリニック協会の巨額な投資があったと噂される)。やがて戦後最大の思想弾圧と称されるほど、微乳派は秘匿を余儀なくされるまでに排除されていった。
 生来の微乳派であった私は、資産家であり、この理不尽な(どこに正当な理由があるというのか!)風潮を打破すべく、あらゆる策に資金を投じた。そして、ついに契約した生物学研究所で画期的な発明を得た。それが『偽乳キャンセラー』である。スコープ型の装置で、左目に通常見えるバストサイズ、右目に真実のバストサイズが表示されるという驚異のシステムである。個人認証としてシリコンの製造ナンバーまで判明するのだ。
 私は試作機をかぶり、まずテレビ放送を見た。夕方の報道番組において、私はすべての因果を理解した。日米のファーストレディ同士が偽乳だったのだ。しかも、両国の女性閣僚もすべて偽乳化されていた。そのいずれもプレミアムナンバーであった。つまり、日米の国家首脳が巨乳派であったことが、諸悪の――


(おわり)

偽乳キャンセラー




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