龍伝説

 

 

 

龍(竜)は空想上の動物です。

あのイメージも作られたものです。

しかし、なぜか人は龍に惹かれ 憧れてしまいます。

そこで、龍のつくことばや、日本のあちこちで語り継がれている

龍や龍神の話しを取り上げてみることにしました。

これらを通して、龍や龍神の持つ不思議な力に触れてもらえたら幸いです。

     いちご〜     

 

 

その一「天女と五頭竜」

龍・龍神にまつわる 伝説・昔話・民話

伝説1 「天女と五頭竜」    伝説地:藤沢市・鎌倉市

この伝説は「江島縁起」によるもので、縁起には天女が竜を諭している絵があり、

次の話が詳しく語られています。

 

むかし・・・というても、

千四百年も遠いむかしになろうか。

そのころ鎌倉の深沢に、

まわりが四十里という湖があり、

主の五頭竜がすんでいた。

悪い龍でな。

山くずれや洪水を起こし、田畑を埋めたり

押し流したりして、

村人をくるしめておった。

ときには火の雨をふらすこともあり、

村人は山のほら穴にかくれ、

まわりを石でかこんでいたと。

 

五頭竜の御神体がある龍口明神社

 

ある日、五頭竜は津村の水門のところにあらわれて、はじめて村の子を食った。

それから村人は、ここを「初くらい沢」と名づけて近よらなかった。

津村の長者には16人の子がいたが、一人残らず五頭竜にのまれてしまったと。

おそれおののいた長者は、死んだ子を恋したいながら西の里に屋敷をうつしていった。

それで、深沢から西の里へ行く道を子死恋(こしごい)とよぶようになり、それが腰越(こしごえ)になったのだと。

 

そうしたとき、天地をゆるがすたいへんなことが起こった。

欽明天皇13年4月12日だったと。

まっ黒い雲が天をおおい、深い霧がたちこめ、大地震が起こった。

山はさけ、沖合からは高波が村をねらっておそいかかってきた。おどろおどろと地鳴りがして、地震は十日のあいだ

つづいたが、23日の辰の刻(とき)に、うそのようにとまったと。

村人がホッとしたとき、こんどは海底から大爆発が起こり、

まっかな火柱とともに岩が天までふきあげられて、小さな島ができた。

これが江の島なのだと。



五頭竜は、このありさまを湖の中から目をむいて見まもっていた。

すると、天から美しい姫が紫の雲にのり、2人の童女をつれてしずしずと島におりてきた。

そのとき、どこからともなく美しい音楽が流れ、こうばしいかおりがただよったと。

「うーむ、なんと美しい姫じゃ。よ〜し、わが妻にむかえるぞ」

五頭竜は、波をかきわけて江の島へ行くと、

「わしはこのあたりをおさめる五頭竜。姫を妻にむかえよう」といった。

「なんと申す五頭竜。おまえは田畑をおし流し、なんのとがなきおさな子までのみ、あらんかぎりの罪をおかしてきた。

天女はそのような者の妻にはなりませね」

天女はそういうと洞窟の中へはいってしまったと。

五頭竜は、すごすごと帰っていったが、つぎの日にまた江の島へやってきた。

「天女さま、どうかゆるしてくだされ。これからは心をあらため村をまもります。

どうか信じてくだされ。五頭竜は生まれかわります」

天女は、五頭竜のかたい心を信じて、しずかに手をさしのべた。

それからの五頭竜は、ひでりの年には雨をふらせ、みのりの秋には台風をはねかえし、

津波がおそったときには波にぶち当たっておし返していた。

しかしそのたびに、五頭竜のからだはおとろえていった。

ある日、五頭竜はなみだながらに、

「わたしの命もやがておわるでしょう。これからは山となって村をお守りいたします」と、

海をわたって帰ると一つの山になった。

これが片瀬の竜口山で、山の中腹には竜の形をした岩があって、

江の島の天女をしたうように見つめていたと。

村では、ここに五頭竜を祀った社を建て、竜口明神と名づけた。

明神さまに祀られている神は玉依姫命だが、

本殿には五頭竜の木彫りのご神体がおさめられている。

そして、60年に一度の「巳年式年祭」のときには、

木彫りの五頭竜をみこしにのせ、江の島へつれていって天女の弁財天とあわせている。
                 

―かながわのむかしばなし50選より―

 



<天女と五頭竜 解説>

五頭竜を祀る竜口明神の祭神は玉依姫命だが、御神体は木彫りの五頭竜です。

その五頭竜の彫刻には、養老7年(723)江の島の岩窟にこもった僧泰澄(683〜768)が、

毎日船で来ては彫り続け、明神に収めたという伝説があります。

また、竜口という名前は、山腹の岩石の形が竜に似ていて、江の島の方を向いて

口を開いていたので付けられたといいます。

江の島の弁財天は厳島、竹生島の弁財天とならんで、日本の三弁財天の一つに数えられています。

江の島は、鎌倉時代のころまでは全島が信仰の対象とされて、

みだりに島へ渡ることはできないようになっていましたが、

江戸時代には弁天信仰の地として栄え、浮世絵などで見ると、大変な賑わいです。

突然海底から浮き上がったといわれる江の島の誕生の不思議さと、

古い時代の信仰の神秘性に、想像を絶するような力を持つ竜という空想上の動物が結び付けられ、

語り伝えられることによって、弁財天への信仰がさらに高められてきたのでしょう。

―かながわのむかしばなし50選 解説より―

 

 

                          



江の島は私の崇敬する神社の一つです。

その島に、こんな伝説があるのを知って驚きました。

本当は、龍神さまを信仰している自分としては、竜が悪者になっている話なので

あまり嬉しくないのですが、龍神さまは自然神ですから、自然現象で苦しめられることを

竜に見立てたもの、とも考えられます。

 

「解説」で述べられている様に、こういった伝説が語り継がれることで、

弁財天信仰をより強固なものにしたと思われます。

 

また江の島は、上空からみるとカメの形をしていたり、岩屋の傍には、今にも海に向かって泳ぎ出しそうな

カメの形の岩があったり、亀石があったりして、竜宮に繋がるイメージもあるところです。

 

今は江島大橋で結ばれている江の島ですが、干潮時には海岸を歩いて渡れます。

また満潮時には、海の中に浮かぶ島を視ることができます。

今でも観光客や参拝の人が絶えることはありません。